〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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センゴクさん、すいません。(笑)

あと、なぜか同じ話を二つ投稿しちゃったんですけど、全く記憶にないんですよ……。


第63話〝敗北を恐れない女〟

 赤髪海賊団が出航して一週間。

 ついにクロエ海賊団もフーシャ村を発つ日が来た。

「クロエ達も行っちゃうのか?」

「そもそもシャンクスとウタの件で殴り込んだようなものだ、本来は来る予定じゃなかった。それに悪名高さで言えば私はシャンクス以上……長居はよろしくない」

 見送りに来たルフィに、クロエは答える。

 ルフィはいつになく悲しそうな顔でクロエを見ると、彼女は不敵な笑みを浮かべると、自身の名前が刻まれたコーヒーミルを渡した。

「私のコーヒーミルを譲ろう。強くなって私を倒しに来い。この時代の頂点でまた会おう」

 そう笑いかけられ、ルフィはコーヒーミルを受け取りながら頷いた。短い間であったが、二人の間には友情が芽生えていた。

「者共、出航だ!!」

『おォーーーッ!!!』

 クロエの号令に、海賊達が大声を上げて応える。

 オーロ・ジャクソン号は帆を上げ、海原へ飛び出し、港ではルフィが涙目で出立を見送っていた。

 クロエ海賊団はついにフーシャ村を発ったのである。

 

 その10年後に少年――モンキー・D・ルフィもフーシャ村を出航し、前代未聞の海賊団「麦わらの一味」を率いる大海賊に成長する事になるのだが、それはまだ先の未来。

 

 

           *

 

 

 さらに一週間後。

 クロエ海賊団は「平和の象徴」と言われる海域を発ち、〝凪の帯(カームベルト)〟を強行突破する形で再び〝偉大なる航路(グランドライン)〟に突入し、ある無人島に赴いていた。

 その島は文字通りに何もない島で、本来は寄る必要性がないのだが、事情が事情なので停泊していた。なぜなら……。

「カハハハ……!! 昔以上に強くなってるな……安心したぜ」

「お前も随分とデカくなったじゃないか、バレット」

 そう、クロエの弟分である〝鬼の跡目〟――ダグラス・バレットと接触したからである。

 かつては「ロジャー海賊団の双鬼」と称され、若輩船員ながら圧倒的な実力で当時の海を震撼させた二人が、またもや激突していた。

「ぬおおおおおっ!!」

 バレットは強大な武装色の覇気を纏った無数のパンチを繰り出し、クロエは愛刀だけでなく脇に差したままの鞘も取り出し構え、二刀流で的確に防ぐ。

 当然、バレットは力押しだけでなくフェイントを織り交ぜながら猛攻を続けるが、クロエは最小限の挙動で完璧にいなしていた。

(ここまで迫られると、うまく攻撃できんな……)

 クロエは全身の力を抜く。

 バレットの拳が迫り、彼女の身体を吹き飛ばすかと思われたが――

「――「紙絵」〝残身〟」

 

 ボッ!

 

「!?」

 残像が明確に残るほどの瞬間移動で回避し、死角となっている背後に回る。

 ロジャー海賊団にいた頃にはなかった技に、バレットは驚いた。

「はっ!!」

 武装色と覇王色を纏わせた鞘で平突きを仕掛ける。が、バレットは身を翻して右腕でガシッと掴み、空いた左腕を武装硬化させて殴りかかる。

 クロエは瞬時に額を武装硬化させ、〝武頭〟で受け止める。外に纏う覇気の効果も相まって、頭突きはバレットの拳を弾き返し、大きくのけ反らせる。

 その一瞬の隙を見計らい、クロエは愛刀を鞘に収めて居合の構えを取った。

「――〝(かむ)(とけ)〟」

 

 ドンッ! 

 

 神速の抜刀術で放たれた斬撃は、バレットの鋼の如き頑強な肉体を斬り裂いた。が、彼は血を流しながらも獰猛に笑っていた。

 抜刀した瞬間に、バレットは武装色の覇気を全身に流して防御力を飛躍的に高めたにもかかわらず、それすらも凌駕するクロエの技に、バレットは沸き上がる興奮を抑えきれずにいた。

「カハハハ!! それでこそ、おれが認めた女だ!!」

 バレットは右腕に覇王色の覇気を纏わせると、地面を殴りつけた。

「〝アインザム・フィスト〟!!!」

 

 ドゴォン!!

 

『!!!』

 バレットの拳が地面に減り込んだ瞬間、稲妻状の覇気が迸りながら巨大な衝撃波が発生。島の大地を割り、クロエを吹き飛ばした。

 その余波は遠くから眺めるクロエ海賊団にも届き、体を屈めて必死に耐えるしかない。

(覇王色もしっかり高まってる……バランスよく鍛えてるな)

 クロエは空中で受け身を取って着地し、笑みをこぼす。

 バレットもニヤリと笑みを浮かべ、追撃の為に動いた。

 ズシンッ! と覇気の拳が叩きつけられ、衝撃とともに地面にクレーターが生まれる。が、すでに彼女は飛び退いていた。

「〝神威〟!!」

 クロエは化血を振るい、覇気を纏った強力な斬撃を飛ばす。

 バレットは避けることなく拳を握り締め、飛ぶ斬撃を正面から殴りつけて打ち砕くが、直後に斬撃の嵐が襲い掛かった。斬撃が頑強な肉体を斬り刻まんとするが、全身を武装硬化させることで耐え抜き、やり過ごした。

 その間にクロエは一気に間合いを詰め、拳を構えた。

「ふんっ!!」

「おおっ!!」

 

 ドォン!!

 

 互いの武装硬化した拳が激突。その瞬間、覇王色の衝突を起こして天が割れた。

 文字通りの規格外な戦いに、一味は圧倒されるばかりだ。

「……全く、滅茶苦茶な女だ」

「流石ロジャーと言ったところじゃな! あれほどの暴れん坊を二人も御すとは、見事じゃのし」

「バレットは筋金入りの戦闘狂だけど、クロエも人の事言えないよね」

 レッド、ナグリ、エマが各々呟く中。

 二人の戦いは佳境に入りつつあった。

「んんんん……!!」

 バレットは全身に武装色を全開で纏う。

 筋肉がパンプアップして大きく膨れ上がり、青き熱を帯び、目が赤くギラギラと輝く鬼神の如き姿となる。

 その異常な覇気に、エマ達は息を呑んだ。

「クロエ……!! 貴様が()()()()()()()()()()()()……おれはそれを超える!!!」

 野太い声で、バレットは吼える。

 

 ゴール・D・ロジャー。

 あらゆる意味でバレットが手も足も出なかった男。バレットがロジャー海賊団に志願したのは、自分にはない強さを持つロジャーに惹かれ、そしていつの日か彼を倒す為だった。

 クロエ・D・リード。

 根幹こそ同じ孤高でありながら、ロジャーのチカラの正体を知り、それを受け継いだ女。彼女には甘い一面もあったが、それを踏まえても圧倒的なチカラで自分の前に君臨している。

 

 だから、バレットは戦うのだ。

 ロジャーとクロエの二人を超える事が自分の目標であり、強者としての在り方そのものであるがゆえに。

「食らえ、クロエェッ!!」

「来い、バレット!!」

 クロエは化血の刀身に、バレットは自身の左腕に覇王色を含めた膨大な覇気を纏わせる。

 そして、力強く踏み込んでから同時に振り抜いた。

 

「「〝神避〟!!!」」

 

 片や愛刀を横一文字に一閃し、片やラリアットの要領で左腕を薙ぐように振るい、互いに赤黒い稲妻を迸らせながら強烈な衝撃波を飛ばす。

 両者の渾身の一撃は、ぶつかった瞬間に先程以上の覇王色の衝突を起こし、覇気の稲妻が島どころかその周囲の海域にまで勢いよく駆け巡った。

 

 

 

 〝鬼の女中〟と〝鬼の跡目〟の決闘は、痛み分けで終わった。

 とはいえ、世界最高峰の強者達だけあって、タフさも相当なもの。ラカムが応急処置を施しただけで、すぐに動けるようになった。

「まさかお前も覚えたとはな、〝神避〟を」

「世界最強になる為には、貴様やロジャーと同じ事をするのも手かと思ってな」

「……変わったな、バレット」

 クロエは柔和な表情でバレットを見やる。

 一人であることが最強だと信じ続けてきた彼が、かつての仲間の強さに目を向け、己の糧としている。昔のバレットなら、他者の技を盗むことすら「仲間に頼るという〝弱さ〟」と曲解していただろう。ロジャーとクロエという、自分に恐れることなく受け止めてくれる人間と過ごしたことで、広い視野で〝強さ〟を知るようになったのかもしれない。

 人間、心にゆとりを持てば自然と考え方が豊かになるものだ。

「どうだ? 最近は」

「ハッ……貴様やカイドウ、〝鷹の目〟ならいい血祭りになるが、それ以外は期待できねェな。七武海なんてのも、クロコダイルが鳴りを潜めてつまらねェ連中の集まりに見えちまう。――で、そこの見覚えのあるジジイは?」

 バレットは今時の海賊たちを辛辣に評すると、ナグリに目を向けた。

「ナグリか? 昔、エマがいなかった頃のロジャー海賊団に挑んだ男だ。覇王色の覇気使いだぞ」

「ほう……」

「これ、クロエ!! わしは今リハビリ中じゃというのに!!」

 バレットの目が底光りし、ナグリはクロエに一喝する。

 完全に獲物を見る目だったのだろう……。

「そうだ。せっかく会えたんだ、ウチの仲間の出来を見てほしいんだが」

『えっ?』

 クロエの突拍子もない発言に、空気が凍り付いた。

 そして、姉貴分の言葉の意味を理解したバレットは、笑みを深めた。

 それはつまり――

「……全員まとめてでいいか?」

「お前のやりたいように頼む。なに、私の一味はそんなに柔じゃない」

 やはりと言うべきか、クロエはバレットに自らの一味の力量を推し量ってほしい魂胆だった。

 ヤマトはやる気満々だが、それ以外はお通夜ムードである。

「フーシャ村に滞在していた時は、シャンクスの件もあって長期休暇みたいな状態だったからな。今日からビシバシ行くぞ」

「鬼だ、鬼がいる……!!」

「何とでも言え。私は〝鬼の女中〟であり〝神殺し〟だ」

 青ざめるエマを一蹴し、クロエは微笑む。

 そして当然、このあとエマ達はバレットと組手を余儀なくされ、 悉く薙ぎ倒される事になる……。

 

 

           *

 

 

「ハァ…全く、だらしないぞお前達」

『殺す気か!!!』

 バレットを見送りながら告げるクロエに、一同は吼えた。

 多少消耗していたとはいえ、〝鬼の跡目〟と呼ばれる男の無双ぶりに振り回されボロボロだ。

 万全の状態で相手取ってたらと思うと、背筋が凍りそうだ。

「イタタ……これじゃあいかんのし」

「いや、バレット相手に大した立ち回しだったぞ、ナグリ。三つの覇気の基礎がしっかりしてる。覇王色の覇気を纏えば、なお良いんだが」

「全く、随分と注文が難しい船長じゃのし」

 クロエの総評に、ナグリはパイプを吹かしながら笑みを溢す。

「お前達も、覇気の扱いに関しては文句なしだ。日々の鍛錬が大きな実を結んだな。これからも精進してほしい。強いて言えば〝量〟がイマイチ足りない者がいる事ぐらいか」

「そればっかりは素養もあるからな~……」

 エマは苦笑いする。

 先天的な素質も影響するが、覇気は鍛える程に使用量が増える。込めた量と練度の高さに少しでも優劣が生じれば、その瞬間に勝敗が決する事もある。その為、〝質〟と〝量〟をバランスよく向上させねばならないのだ。

「全く、私達もいつかは次の世代の若者達に挑まれるんだぞ? たるんでる様を見せてはならない」

 クロエはこれからの海を駆けあがってくる新世代に思いを馳せるが、仲間達はそう思っていないようで……。

「いや、それどんな命知らずだよ!?」

「自殺行為だから誰も挑んでこねェって!!」

「今まで散々ヤバい事しでかしたんだぞ、特にあんたのせいで!!」

「新世代の若者の方が気の毒だわ、どう考えても!!」

 むしろ一番相手にしたくない勢力だという見方が圧倒的に多い。

 実際、そう思われても仕方がないほどの暴れっぷりである。そもそもの話、あのクロエを脅かせる相手など今後現れるかどうかも怪しいが……。

「そうでもないさ。あの子ならば可能性がある」

「……ルフィ君のこと?」

「ああ」

 エマが尋ねると、クロエは微笑みを向けて頷く。

 フーシャ村で会った少年ルフィ――彼はいつか自分を超えると確信しているのだ。

「私だって心臓一つの人間一人だ。いつまでもこの海の頂点にいられないし、負ける時は負ける」

『……!!!』

「私の夢は「人生の完成」だ……敗北も人生の大きな糧となる。だから私は敗北することを恐れていない。いずれ再会する新時代の申し子に期待しているのさ」

 クロエはニヤリと不敵に笑った。

 その笑顔は、在りし日のロジャーの笑みと全く同じものだった。




バレットの神避は、バージェスの〝不沈艦(ガレオン)ラリアット〟みたいな感じでやります。
それと彼が披露した新技〝アインザム・フィスト〟。これはサウスト引用です。

そしてクロエ唯一の抜刀術〝神解〟。名前の由来は落雷を意味する「神解け」で、文字通りの神速の居合です。

次回はクロエの愛刀にまつわる秘密です。今まで詳しく触れなかったのですが、一応あの刀は曰く付きですので。
ハンコックとの戦いはその後やりますので、お楽しみに。
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