〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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ついに海の皇帝達を発表!
ここまで長かったです。

ちなみに、時系列で言うと原作開始より8年前。ハートの海賊団が結成された年ですね。


第68話〝FIVE EMPERORS〟

 新世界、とある島。

 前年の〝海侠のジンベエ〟の王下七武海加入に続き、〝天夜叉〟の異名で知られるドンキホーテ・ドフラミンゴが加入した事で世間が騒ぐ中、クロエは久しぶりに()()()の弟分と手合わせしていた。

「ハァアアッ!!」

「フンッ!!」

 覇気を纏った刃と刃を叩きつける音が、辺りを包み込む。

 シャンクスとクロエが繰り広げる、互いに一歩も譲らぬ剣戟。目にも止まらぬ勢いでぶつかり合い、火花を散らす。

 その様を、双方の船員達が見守る。

「あのロジャーのところの見習い小僧が、ここまで化けるとはな」

「いいぜお頭ーー!! そのまま下剋上しちまえーーっ!!」

「しかし、さすがに〝鬼の女中〟はレベルが違うな……お頭の覇気が決定打にすらならねェか」

 両者の実力は拮抗しているように見えるが、余裕綽々のクロエに対し、シャンクスは少しばかり息が上がっている。その時点で、クロエがシャンクスを超える実力者である証だ。

「シャンクスー!! 負けないでー!!」

「母さん、頑張れー!!」

 少し離れた場所から、ウタとヤマトは自分たちの義理の親に歓声を送る。

 その声が届いたことで、二人は覇気を高めた。

「娘の前でみっともない姿は晒せねェなァ、姉さん……!!」

「フッ、全くだ……!」

 褒めながら、しかし攻撃の手を休めないクロエ。

 シャンクスは笑みを浮かべつつも、姉貴分の圧倒的な強さに内心では冷や汗が止まらなかった。

(……やっぱり、まだ敵わねェか)

 しかし、シャンクスはそれで諦めるような男ではない。クロエの一瞬の隙を突いて、渾身の一撃を繰り出した。

 その斬撃は防がれるが、シャンクスは諦めずに連撃を叩き込む。覇気を帯びた刃によるゴリ押しを、クロエは見事な太刀捌きで防ぎ続ける。

 

 ガギィン! ガチガチガチ……

 

 やがて、グリフォンと化血の鍔迫り合いとなる。

「昔以上に剣の腕が上がってるじゃないか、シャンクス」

「そりゃあ、〝鷹の目〟とドンパチしてるからなァ」

「だが、足元が疎かだぞ」

「!?」

 クロエは右足で地面を強く踏み付けた。

 すると、右足を起点に八衝拳の衝撃波が地面を伝播し、鍔迫り合いで距離を詰めていたシャンクスに襲いかかった。

 防御不能の衝撃を与えるこの遠当て技を、シャンクスは咄嗟の反応で全身に覇気を纏って防ごうとするが、距離の近さゆえに間に合わず、モロに受けてしまう。

「があぁっ!!」

 シャンクスの全身を、衝撃が駆け巡る。

 武装色の高等技術とは別ベクトルの内部攻撃は、シャンクスに確かなダメージを与えていた。

 その隙を逃さず、クロエは上段蹴りを放って腹を穿つ。ドゴンッという想い音を立てて地面と水平に蹴り飛ばされたシャンクスは、地面に激突してバウンドした。

『お頭っ!!』

「シャンクスっ!!」

 赤髪海賊団の面々は、思わず叫んだ。

(……相変わらず化け物だ)

 肺の中の空気を全て吐き出し、激痛に顔を歪める。

 だが、シャンクスの目には諦めの色は浮かんでいない。それどころか、猛禽類のようにギラギラと血気に満ちている。シャンクスは素早く立ち上がると、覇王色の覇気をグリフォンに纏わせた。

「姉さん…何もロジャー船長から受け継いでるのは、アンタだけじゃない!!」

 覇王色の覇気を纏った刃を構えるシャンクス。その堂々たる立ち振舞いは、かつてのロジャーを彷彿とさせる迫力があった。

 クロエもそれに応えるべく、どこか嬉しそうに笑いながら覇王色を纏う。

「姉に勝る弟はいないぞ、シャンクス」

「それは偏見ってヤツじゃないか? 姉さん」

 互いに軽口を言い合ったところで、両者は一斉に膨大な覇気を込め、同時に横薙ぎの一撃を繰り出した。

「「〝神避〟!!!」」

 愛刀から凄まじい衝撃波を打ち出す二人。

 爆音を轟かせて放たれ、一直線に衝突した二つの衝撃波は、相殺し合って互いに霧散。荒れ狂う覇気の奔流が辺りを包み、ぶつかった余波で木々は吹き飛び、地面は大きく抉れて巨大な土煙を巻き上げた。

 視界が遮られるが、クロエは飛ぶ斬撃の嵐で煙を晴らす。すると、彼女の攻撃を掻い潜ったシャンクスが突っ込んで来た。

「〝神威〟!!!」

「っ!?」

 シャンクスは覇気を纏った強烈な斬撃を飛ばす。

 クロエは弟分が自分の技を繰り出した事に度肝を抜かれたが、すぐに持ち直し〝神凪〟で相殺する。しかし、シャンクスは立て続けに追撃を仕掛けた。

「ふんっ!!」

 グリフォンに覇気を帯びさせ、思いっきり刃を地面に叩きつける。

 土煙が再び高く巻き上がり、周囲は1メートル先も見えなくなる程の視界不良に陥る。

(即席の目眩しか……だが、甘いな)

 クロエは見聞色の覇気でシャンクスの位置を探り当て、捕捉しようとする。

 が、どれ程精度を高めても、シャンクスの気配を感じ取る事が出来ない。

「この感覚、まさか…!?」

 クロエは驚きを隠せない。

 彼女は知っているのだ。見聞色の覇気が使えなくなるこの状態を。

(シャンクスの奴、私やロジャーと同じように〝見聞殺し〟を…!?)

 覇王色は鍛え続けると、相手の見聞色を無効化できる〝見聞殺し〟という技能を扱えるようになる。シャンクスがそれを扱えるという事は、彼の実力はクロエに迫りつつあるという事だ。

 まさかここまで早く会得するとはな――クロエは弟分の想像を超える成長速度に感心した。

 そして一方のシャンクスは、煙に紛れて見聞殺しを発動しつつ、背後に回り込んでいた。

(姉さんは気づいていない……攻撃を仕掛けるなら、ここだ!!)

 シャンクスはクロエの真後ろから飛び掛かり、渾身の突きを放つ。

 グリフォンの刃先がクロエを貫く。……が、あまりの手応えのなさに、逆にシャンクスの方がゾッとした。

(――残像!?)

 そう、彼がグリフォンの刃で貫いたのは、クロエの残像だった。敵の攻撃から生じる空気に身を任せて回避する「六式」の技の一つ・紙絵の派生技である〝残身〟で、クロエは不意打ちを躱したのだ。

 攻撃を外したシャンクスは、死角に回り込んだクロエから距離を取るべく、素早く飛び退く。しかし、見聞色が警鐘を鳴らし、彼はハッとなって振り向く。

 視線の先には化血を振りかぶっているクロエがいて、その刃には覇王色の覇気が纏われていた。

「くっ…!!」

 シャンクスはバックステップで回避。

 すかさず二撃目、三撃目が襲い掛かるが、グリフォンで捌いて凌ぐ。四撃目、五撃目、六撃目を冷静に躱し、斬り上げてクロエの化血を弾き飛ばす。

 弾き飛ばされた化血は宙を舞い、彼女の後方の地面に突き刺さった。

(取った!!)

 グリフォンに覇王色を纏わせ、〝神避〟を仕掛ける。

 距離を詰められ、愛刀も手放した以上、クロエは丸腰だ。今なら確実に当てられるだろう。――そう己の勝利を確信した時だった。

 

 バリバリバリ……!

 

「は?」

 シャンクスの視界に、クロエが長い物を両手持ちで振り上げているのが映る。彼女が持っているのは、愛刀・化血の鞘だ。

(しまった、判断を誤った!!)

 シャンクスは一瞬で血の気が引いた。

 何を隠そう、クロエは自他共が認める「戦闘の達人」だ。愛刀を手放し剣術が使えない状態になっても、他の戦闘手段で相手をすぐさま圧倒できる。

 それに気づくも時すでに遅く、クロエは振り上げた鞘に武装色と覇王色を纏わせた。

「〝()(てん)(おう)(げん)〟!!」

 赤黒い稲妻が迸り、溢れ出る覇気に空気が震える。

「〝(ラグ)()(らく)〟!!」

 

 ガァン!!

 

 化血の鞘を振り下ろし、シャンクスに叩きつける。

 それは、ワノ国で対峙して以来、幾度となく激闘を繰り広げてきた永遠のライバル――大海賊〝百獣のカイドウ〟を彷彿させる一撃。

 さすがのシャンクスも、全身に強い衝撃を受けて身動きが取れず、そのまま倒れ伏した。

 

 

 手合わせが終わり、クロエは赤髪海賊団船医のホンゴウに傷の治療をしてもらっているシャンクスの側に腰かけ、容体を見守った。

「具合はどうだ?」

「いででで……!! 身体中が悲鳴上げてるなこりゃ……」

「この程度の傷でよく済んだもんだぜ、お頭」

 クロエの質問に痛みに顔をしかめるシャンクスと、呆れたように溜め息を溢すホンゴウ。

 同じ元ロジャー海賊団でも、二人の差はあまりにも大きい。シャンクスはメキメキと頭角を現しているが、クロエは全ての覇気を極めながら未だに戦闘力の上限を見せないのだから。

「クッソ~…ウタに親父としていいトコ見せようと思ったんだがなァ……」

「姉に勝る弟はいないと言ったろう、シャンクス」

「うるへー!! これからだ、これから!!」

 クロエは呆れた表情を浮かべながら揶揄い、シャンクスは痛いところを突かれて喚き散らす様子に、ベックマンたちは思わず笑みが溢れた。

 その時、ウタが新聞を手に慌てて駆け寄ってきた。

「シャンクス!! クロエおばさん!! これ見てよ!!」

 ウタはとある新聞を二人に見せつける。

 そこに記載されているのは――

「「五人の「海の皇帝」達……!?」」

 何と、白ひげとカイドウ、ビッグ・マムと共に自分達の顔写真が載ってあったのだ。

 

 

           *

 

 

 一方、マリンフォード。

 海軍本部の会議室で、選定された五人の大海賊に関する議題が話し合われていた。

「世界政府が選定した五人の大海賊……「五皇」の現時点における状況についてご説明します」

 会議の進行役であるブランニューが、皇帝達の勢力図を語る。

 

 赤髪海賊団。

 ロジャー海賊団の見習いだった隻腕の大海賊〝赤髪のシャンクス〟が率いる、高い懸賞金アベレージを誇る「鉄壁の海賊団」。

 海賊界でも屈指の穏健派で民間人に手を出す事はなく、自由に海を冒険をする陽気な一味である一方、敵対者と判断した者には一切容赦しない非情さも持ち合わせている。

 また、近年は新世界でナワバリを拡大させており、傘下も弱小ながら名の知られた賞金首が雁首を揃えている。

 

 白ひげ海賊団。

 海賊王ロジャー最大のライバルである〝白ひげ〟エドワード・ニューゲートが率いる巨大勢力。

 規模・戦力共に全海賊中最大で、白ひげ自身も伝説と呼ばれる海賊達の頂点である。

 彼の「仲間=家族」と思う心意気ゆえに鉄の団結力を誇り、同時に〝仲間殺し〟を最大のタブーと見なしてるため、「白ひげは仲間の死を許さない」というのは世界的に有名な話だ。

 

 ビッグ・マム海賊団。

 半世紀以上も海に君臨している〝ビッグ・マム〟シャーロット・リンリンが率いる、長い歴史を誇る海賊団。

 白ひげ海賊団と違って血の繋がった家族で構成されている為、海賊の中でも組織統制が高い組織である。

 拠点のホールケーキアイランド周辺の海域で独立国家「万国(トットランド)」を運営し、お菓子の為なら平気で国を滅ぼす恐ろしさを見せ、さらに海賊業界一の情報力を誇っている。

 

 百獣海賊団。

 伝説のロックス海賊団で見習いをしていた〝百獣のカイドウ〟が率いる一味。

 圧倒的な強さを誇るカイドウに惚れ込んだ荒くれ者達が集った、所属の悪魔の実の能力者のほとんどが動物(ゾオン)系で占められている実力主義の武闘派集団。

 総督であるカイドウも「最強の生物」と呼ばれる程に強く、危険度も高い。

 

 クロエ海賊団。

 ロジャーの部下として悪名を馳せた〝鬼の女中〟クロエ・D・リードが率いる少数精鋭の海賊団。

 傘下の海賊を一切持たず、たった20名足らずの一団で他の巨大勢力と互角以上に渡り合っている「孤高の無双集団」。クロエ自身の奔放さも相まって海賊界でも足取りの掴みにくさは随一で、世界政府と天竜人への攻撃も平気で行う為、世界秩序を最も脅かす海賊団として恐れられている。

 ナワバリは未だに未確認であり、そもそも持つ事自体を面倒臭がるのではと見なされている。

 

「五人の大海賊は、それぞれ睨み合ってる状況に近いかと。ですがもし衝突した場合、世界に対する影響は計り知れないでしょう。我々海軍本部と王下七武海で、五皇を常に牽制し、均衡を保つ事が急務です!!」

「ムゥ……」

 ブランニューの言葉に、センゴクは唸る。

 新世界の海の皇帝達は、ロジャーの時代から互いに浅からぬ因縁のある強者ばかり。海賊王に次ぐ存在である彼ら彼女らが衝突すれば、世界の平穏が崩れる恐れがある。

 しかも五人の中で最も奔放であるクロエは、目的達成の為なら世界政府との武力衝突すら辞さない。過去に起こした大事件の数々がそれを物語っており、海軍の信頼と威厳の為にも、常に先を見越して警戒する必要がある。

「七武海はおれらの損害無しで戦力を削れるんだけどなァ……」

「その枠組みから外れてる奴が、海の皇帝の一人となってるからねェ~…」

「あの女は、海賊共を潰し合わせる制度すら物ともせんじゃろう……! 全くもって歯痒いわい……!」

 三大将の意見に、センゴクは顔を顰める。

 七武海は世界中の海賊達の抑止力として機能するが、そんな彼らでも迂闊に五皇に喧嘩を売ることはできない。特にクロエは自分の自由を邪魔する人間は誰であろうと牙を剥くため、うっかり地雷を踏んだ七武海の誰かを討ち取られる危険性がある。

 しかし、クロエは海賊王にも〝ひとつなぎの大秘宝〟にも興味を示さず、世界征服にも無関心な海賊界屈指の変わり者でもあるため、下手に刺激さえしなければ先のマリージョア襲撃のような事態はないだろう。

「ともかく、五皇の動向には細心の注意を払う他あるまい。特にクロエは、ロジャー並みに海軍の脅威になりかねんからな」

「あー……でもセンゴクさん、おれらとかが街中でバッタリ会っちまったりしたらどうします? 流石に指示待ちってわけにも……」

「今回ばかりは、クザンの言う通りじゃけェのう…! 悠長なことは言っておれんわい…!」

 普段は折り合いの悪いクザンとサカズキが同調した意見を述べ、センゴクは思案する。

 海軍やサイファーポールが遭遇した場合、戦闘になれば政府側が崩壊もしくは壊滅的被害を受けるため、本部の指示なく戦うことは許されない。しかし、一々指示を待てるほど悠長なことはできないのも事実だ。

「よかろう。中将以下は本部の指示を待つとし、大将に限っては現場判断として非常時のみ交戦を許可する旨を、五老星の方々に私が直々掛け合ってみよう」

 センゴクの言葉に、大将達は無言で頷いたのだった。




シャンクスとクロエの、久しぶりの手合わせは予想通りの結末に。(笑)
本作のシャンクスは、ロジャーの〝神避〟だけでなくクロエの〝神威〟も受け継いでます。威力はクロエとほぼ互角ですね。
あと、クロエが繰り出した鞘を使った打撃技〝()(てん)(おう)(げん)(ラグ)()(らく)〟。カイドウの技を盗んだものですが、八衝拳の衝撃もプラスアルファされてるので、ぶっちゃけ本家より質悪いです。名前の九天応元は、道教の雷神たちの頂点に立つ「九天応元雷声普化天尊」から来てます。


そしてついに皇帝たちが決定しました。
本作における五皇は「世界的に強い影響力を与える大海賊」を基準としてます。
五人の中でクロエだけが傘下勢力を保有してませんが、ルーキー時代から起こしてきた大事件と天災級の実力から選出されました。

次回はどうしよっかな……王直不在のハチノスとかやろっかな?
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