〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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今ちょうど「ONE PIECE ODYSSEY」をプレイしてまして。
いつかアディオ達も登場させたいなと思ってます。

今回は前半が革命軍、後半がクソゲーの話。
なお、終盤で最後の転生者が登場します。


第77話〝聖地随一の奇人〟

 ジニーの一件で動き出したクロエ海賊団は、新世界を逆走して革命軍の部隊と接触し、動物も草木もピンク一色のハート形の島――モモイロ島に案内された。

 この島は「カマバッカ王国」という名前通りのオカマだらけの国ゆえ、どこもかしこも絵面がスゴいが、実はニューカマー拳法という拳法一派の総本山という側面があり、住民はほぼ全員が拳法家という中々の武闘派国家である。同時に革命軍の創設メンバーであるエンポリオ・イワンコフが女王として治めている為、革命軍の拠点の一つでもあるのだ。

 そんな色々とスゴい島に案内されたクロエ海賊団は、オカマ達の歓迎を受けていた。特に、ラカムが。

「あら~、スゴいイケメンのお医者さんじゃない!!」

「一緒にお茶しましょうよ♡」

「あたすらもしっっかり診てちょうだい、メカクレ男前船医のラカムちゃん♪」

「急患が優先だ!! てめェらは引っ込んでろ!!!」

 

 ドゴォン!!

 

『ギャアーーーー!!!』

 しつこく付き纏われる事に激怒し、武装色を帯びた戦鎚を振り回してオカマ達を薙ぎ払うラカム。

 それを見たクロエは、柄にもなくニヤつきながら声をかけた。

「人気者は大変だな、ラカム」

「やかましい!! おいドラゴン、早く診せろ!!」

「すまんな……。ハック、くまとジニーの下へ案内しろ」

「うむ」

 ラカムはエビスダイの魚人の革命家・ハックに城内へ案内され、ジニーの診察を行う。

 その間、クロエ達はドラゴンと革命軍の幹部達と顔を合わせる事となった。

「海賊界の皇帝と世界最悪の犯罪者……お互い〝D〟の名を持つから縁が出来るのかもな」

「クロエ……お前には世話になる」

「気にするな、私も好きに動いているだけだ」

 ピンクの芝生の上に置かれたテーブルの席に座ったクロエは、ドラゴンと向かい合いながらコーヒーを飲む。

 そこへイワンコフが現れ、ドラゴンの隣の席に腰をかけて紅茶を淹れる。

「ヴァナータも昔は海賊の割にはヴァターシ達寄りの活動……いやそれ以上にヤンチャだっチャブルわね…〝神殺しのクロエ〟」

「懐かしいな、その二つ名……」

 詮索するように口を利くイワンコフに、クロエはコーヒーを一口飲んでから答えた。

「イワンコフ、言っておくが赤土の養豚場の豚共など心底どうでもいい。そもそも私の自由を邪魔しなければ命まで取らない」

「えっ、そうなのォ!!?」

 イワンコフは目を点にして驚いた。

 世界史上最も多くの「神」を殺めたであろう悪名高い女海賊は、自分達を〝神の末裔〟だと踏ん反り返る天竜人には何の恨みも無く、わざわざ故意に殺す気はないというのだ。

 これにはドラゴンや他の幹部達、そしてクロエ海賊団の面々も驚いた。

「じゃあ、何であんなに容赦ないの?」

「私は善意には一杯のコーヒーで、悪意には暴力で応えると決めているんでな」

「鬼だ…」

 微笑みながらとんでもない事を口走ったクロエに、その場にいる全員がツッコミの声をあげたのだった。

 

 

 一時間後、診察を終えたラカムがクロエ達のいるテーブル席へ歩み寄る。

「随分長かったな。どうだ、ラカム」

「……落ち着いて聞いてほしい」

 神妙な面持ちのラカムに、この場にいる全ての者が固唾を呑んで耳を傾けた。

「結論から言うと、ボニーにも青玉鱗と思われる症状があった。露骨に見えてたジニーと違って青痣の状態だったが、触れると()()()があった。母子感染するのは確定だな」

「……初期症状がそれか。それが進行して石化が始まると」

 ラカムの診断に、ドラゴンは険しい顔で呟いた。

 当初は硬さを持つ青痣で、それが徐々に青く石化し始めていて、全身の皮膚が青く石化して死に至る――そういう症状のようだ。

 だが、ラカムの診断にくまが異を唱えた。

「ま、待ってくれ!! 彼女は確かに戦場には行ったが、その度に清潔保持の為に手を尽くしていた!! そ、それに……彼女とは、その――」

「わかってる……()()()()()()()()()。おれだって一度は梅毒の類かと思ったが、革命軍で管理されてる全構成員のカルテに目を通しても、感染経路及び履歴は見当たらなかった」

 ラカムは腕を組み、静かに唸る。

「これはおれの仮説だが……青玉鱗は人工的な疾病だと睨んでる」

『!!?』

 クロエ海賊団の命を支える船医が導き出した答えに、全員が絶句した。

 それはつまり、誰かが意図的に作った病だという事なのだ。

「実はついでに、革命軍の報告書も見させてもらった。戦場では常に飢謹と伝染病をもたらす……ジニーが派遣された戦地に何かあったんじゃないかと考えてな。そうしたら気になる報告書を一つ見つけた」

「本当か……!? 一体何だ?」

「敵が催涙弾を投げてジニーに直撃した、という文言さ」

 ラカムの言葉に、一同は怪訝な顔をした。

 戦場で催涙弾の使用など、よくある話だ。その際は速やかに冷たい水で洗い流すよう努めている。

 だが、もしその催涙弾が「青玉鱗を発症させるナニか」を含んでたとしたら話は別だ。自然界に存在したり人間の体内で発症するような疾病じゃないとしたら、化学兵器ぐらいしか見当がつかない。

「医療分野だけでなく化学の分野にも精通している奴じゃなきゃ、アレを治すのはどんな医者でも無理だ。これだけは断言する」

「……そうなると、ベガパンクの力が必要不可欠になるな」

 ドラゴンの言う通り、青玉鱗を治すにはベガパンクに頼る他ない。

 しかし、同時に気掛かりな点もあった。

「誰がそんなものを……」

 そう、開発者である。

「催涙弾を模した化学兵器を製造できる人間など、それこそベガパンクぐらいだろうな」

「――待てクロエ。ベガパンクはそんなあからさまな人殺しの道具は作らない!!」

「だとしたら、奴の同僚だな。海軍配属の科学者なのは間違いないが……」

 面識のあるドラゴンは、ベガパンクの身の潔白を語る。

 そこでふと、ステューシーがハッとなった。

「もしかしたら、シーザー・クラウンかもしれないわ!! 彼は化学兵器の開発の第一人者よ!!」

「成程、実験の一環というヤツか……」

 ステューシーの指摘にクロエは渋い面で腕を組んだ。

「でも、この一件に彼が関わっているとしたら、もっと大物が裏で動いている可能性もあるわ」

「そうだな……」

 ステューシーの言葉にドラゴンが頷く中、ラカムはバツが悪そうに頭を掻く。

 読み通り青玉鱗がベガパンクの同僚によって産まれた化学兵器とすれば、製造を依頼した人間が裏でいるはず。現海軍元帥のセンゴクや大将達は思想信条からまずあり得ないし、サイファーポールが使うにはあまりにも不向きだ。

 そうすると、依頼者として考えられるのは政府中枢、それも……。

(〝五老星〟か…?)

 天竜人の最高位にして、世界政府最高権力である五老星。

 彼らもまた、秩序の維持の為ならば冷酷無比な手段も厭わない。五老星がシーザーに化学兵器の製造を依頼するという展開も十分考えられる。

 その対象は、世界政府の支配に逆らう者達――革命軍や海にのさばる海賊共、この歴史を解き明かそうとする者達だろう。

「いずれにしろ、ベガパンクと接触を図るしか選択肢はないね。問題はどうすれば会えるかだなァ……」

 エマは顎に手を当て思考に浸る。

 海軍お抱えの天才科学者とコンタクトを取るなど、そう簡単にはいかない。情報では彼は世界政府直轄のパンクハザード島で活動しており、マリージョアや海軍G-1支部が近い。警備は間違いなく厳重で、下手をすれば海軍大将が送り込まれる可能性すらある。

 考えあぐねていると、ステューシーがハックに尋ねた。

「ねェ、電伝虫使っていいかしら?」

「ああ、構わんが…白電伝虫は繋げておけ。傍受されたら大変だ」

 ハックの許可をもらったステューシーは、電伝虫を繋げて通話を始めた。

 その相手は……。

《もしもし、こちらベガパンク》

「久しぶり、ベガパンク。私よ」

《ステューシー!? お前さん、確かクロエ海賊団に…!?》

 何と、ベガパンク本人であった。

 誰もが驚いている中、ステューシーは手早く用件を告げる。

「頼みたい事があるんだけど……いいかしら?」

《……わかった、聞くだけ聞こう》

「青玉鱗を患ってる私達の知人がいるんだけど、どうも政府の化学兵器の試作品かもしれないの。心当たりないかしら?」

《青玉鱗が化学兵器の試作品じゃと!? ……さてはシーザーだな!? あいつめ、性懲りもなく……!!》

 ベガパンクは電伝虫越しに怒りと呆れが入り混じった声で、ラカムの予想が正しかった事を示す。

 やはり青玉鱗はシーザーが開発したようだ。

「私の一味の優秀な船医さんが、青玉鱗は自然界には存在しない病気の可能性が高く、治療するとしたら「一から新しい幹細胞を作って移植するしかない」と言ってたの。出来るかしら?」

《――うむ、成程!! 医療現場では下ろしておらん技術が一つある、それなら確かに青玉鱗を治す事が出来るかもしれん!!  その考えに至れるとは、ミリオン・ラカムはかなりの切れ者じゃな》

「そうか……二人の病気は治るのか……!!」

 世界一の頭脳を持つ天才科学者の言葉に、くまは顔を手で押さえて涙を流し、ステューシーは小さく微笑みながら彼を見つめた。

「だからベガパンク、治療の為にあなたに会いたいの」

《うーむ……そうじゃな、あまり派手に動く訳にはいかんし…………よし!! 他の研究所の視察として、我が故郷・バルジモアで合流というのはどうじゃ? そこならば今の拠点であるパンクハザードよりも海軍の警備は緩い!!》

「ホント? それならありがたいわ♡」

 ベガパンクの出した提案に、ステューシーは顔を明るくした。

《……ところで、ステューシー。その知人とは?》

「……おれの同志だ、ベガパンク」

《んなァ!? ド、ドラゴン!?》

 ここでドラゴンが名乗り出て、電伝虫越しに驚きの声が上がる。

 一連の流れから、ベガパンクは革命軍とクロエ海賊団が接触をしているという事を理解したのか、矢継ぎ早に質した。

《ドラゴン、お前さん五皇と手を組んだのか!? いくら何でも危険すぎる!! 〝鬼の女中〟はあの〝神の騎士団〟の抹殺対象じゃぞ!? 海軍には話がわかる者は多いが、汚らわしい天竜人の直属部隊は違う!!!》

「随分と人気者だな、船長」

「さっきの根に持ってるのか、ラカム」

 ラカムに嫌味を言われたクロエは、視線を電伝虫に移す。

「手は組んじゃいない……恩があるだけだ、革命軍としてもな。それよりもベガパンク、いつ来れそうだ?」

《……なるべく早く行こう。青玉鱗の進行具合で生存率も手術の成功率も変わる!! これからすぐにでもパンクハザードを離れてバルジモアに向かうわい!!》

「わかった、こっちもすぐ出航する。また後で会おう」

 ドラゴンはそう告げて通話を切ると、くまに微笑みながら「希望が見つかったな」と声をかける。

 くまは何度も頷き、ドラゴンと固い握手を交わし、それを眺めたクロエも柔和な笑みを浮かべた。

「用が済んだな……私達も出るとしよう。武運を祈る」

「世話になった。お前に借りがまた出来てしまったな…」

「フフ……海賊は自由だからな。返済無用だ」

 クロエは借りを返す必要はないと告げ、一味を連れて船に戻り出航。

 水平線に消えていくオーロ・ジャクソン号を、革命軍は総出で見送ったのだった。

 

 

           *

 

 

 1週間後、フールシャウト島。

 巨大なサボテンが林立する荒野の島で、宇宙服のような特殊な防護服を纏う者達が、和装の青年を一斉に非難していた。

 天竜人達が、一人の天竜人と揉めているのだ。

「どういうつもりアマス!?」

「せっかくの〝大会〟を台無しにするつもりかえ!!」

「身の程を知れ!!」

 罵詈雑言を浴びせる天竜人達を、薄い灰色のコートをなびかせながら男は静かに見つめる。

 緑色の髪の毛をした端正な顔立ち、細身だが筋肉質な体格、右胸の大きな刀傷、腰に差した一振りの刀……そのどれもが、民衆がよく知る天竜人とは一線を画している。

 

 男の名は、ドンキホーテ・(アール)・コル寿(じゅ)(ろう)

 世界貴族ドンキホーテ家の一人で、才能に溢れてるが破天荒な言動によって聖地随一の奇人扱いされている天竜人であり、クロエ達と同じ〝前の世界の記憶〟を継承している人物である。

 

下々民(しもじみん)だけでなく、役立たずの奴隷共にも味方する気かえ!?」

「奴隷が不要なら、そもそも持たずに余のように自分で為せばいい話だろう」

 淡々とした口調でコル寿郎は呆れながら告げた。

 なぜ彼が同胞達に責められてるのかと言うと、今から行われる大会――先住民一掃大会に反対していたからだ。

 世界政府非加盟国に対して3年に一度行う、下々民と連れてきた罪人と問題のある奴隷を〝脱兎(ラビット)〟と称して〝人間狩り〟をするという、海にのさばる海賊達もドン引きのデスゲーム。その大会に初参加する事になったコル寿郎は、実態を知って「遺憾の意を示す」という理由で囚われた人々を解放したのである。

「お前達のつまらぬ世界観に付き合わねばならぬ余の身にもなってみろ…自分で飯もロクに作れない奴らが〝至高の集団〟? 〝最も誇り高く気高き血族〟? 理解に苦しむ……」

「な…!? わちし達を侮辱する気アマスか!?」

「事実を述べたまでだ」

 激昂する天竜人に対しても、コル寿郎は依然として冷静沈着な姿勢を崩さない。

 そんな彼の態度に更に怒りを募らせた天竜人は、彼を睨みつけながら言い放つ。

「もうウンザリだえ!! この男も〝脱兎(ラビット)〟にするえ!!!」

「そうアマス!! この神々の恥晒しをミョスガルドへの見せしめとして処刑するアマス!!!」

「これ以上の身勝手は、もう許せんぞ…悪く思うな」

 怒り狂った天竜人達に加え、彼らを護衛する任務も与えられた〝神の騎士団〟すら、コル寿郎を人間狩りの標的にする事を宣言。同胞すら狩りの対象にするあまりの残虐さに、彼に助けてもらった者達は戦慄する。

 だが、コル寿郎はそんな彼ら彼女らに「余の事は気にするな」と声をかけ、腰に差した愛刀に手を伸ばして柄を握り締めた。

「これで余も天に仇なす大罪人か……上等だ」

 コル寿郎は自信に満ちた表情を浮かべながら、刀の鯉口を切る。

 一触即発の異常事態が島内で起こっている事が知れ渡り、島を取り囲んでいる海軍の艦隊は混乱の極致にあった。

「報告します!! 天竜人同士の抗争が勃発寸前です!!」

「何だと!?」

「コル寿郎聖が、島内で行われる〝例の大会〟に反対し…!!」

「ちょっとちょっと…勘弁してくれよ」

 海兵達の慌てように、島を取り囲む艦隊を指揮する大将〝青キジ〟もといクザンが頭を掻く。

 コル寿郎聖は天竜人であり変わり者でもあるが、クザン個人としては好印象を抱いている。天竜人の中でも異端視されている彼は、護衛に就いた際は労いの言葉をかけ、襲撃を受けた際は自らも刀を抜いて戦ってくれる。どうやってあれ程の覇気と剣術を会得したかは不明だが、少なくとも「誰か死んだら死刑だ」と喚く他の天竜人よりも断然マシだ。

「……何でマシな方を、()らなきゃならんのかねェ……」

 そうボヤいた時、別の海兵が慌てて駆け付けた。

「クザン大将!! 沖合にクロエ海賊団が!!」

「……マジ?」

 クザンは驚きながら沖合に視線を向ける。

 そこには、ソードクロスの赤い海賊旗を掲げた船――オーロ・ジャクソン号が、こちらに進路を向けて接近していた。

「……始末書、どうしよっか……」

 これから起こるであろう事を想像し、クザンは頭を抱えるのであった。




というわけで、次回は先住民一掃大会…ゴッドバレーの再来です。
クロエ海賊団、海軍大将、神の騎士団だけでなく、もっと厄介な奴も現れて大乱闘になります。

そして最後の転生者は、ドンキホーテ・R・コル寿郎。
名前の由来は死兆星を意味する「アルコル」の捻りです。名前が五老星のナス寿郎聖と近しいものを感じますが、何の血の繋がりもありません。
実力の程は、次回明らかにします。
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