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オーロ・ジャクソン号の甲板では、〝
「……どうすんだ?」
「どうするも何も、物凄い数の軍艦だよ?」
「ざっと20隻はあるな…それ以上か? バスターコールも真っ青だぞ」
「うーん…でも上陸しないと次に進めないんだよね?」
仲間達が口々に意見を出し合う中、クロエは一隻の軍艦を見据えていた。
それに気づいたロジャー世代の古参海賊――レッドフィールドとナグリは声をかける。
「どうした、クロエ」
「誰か顔見知りでもおったのかのし?」
「ああ……クザンが乗っている」
その名前を聞き、全員が驚きの声を上げる。
海軍大将は海賊達の頂点に位置する「五皇」でも油断できない存在。当然、大規模な艦隊の中にも屈強な中将達も雁首を揃えているはずであり、もし戦闘になれば島で暢気に
しかし、クロエはそんな状況でも冷静に言葉を発した。
「今の海軍は昔と違い、〝上〟の許可が下りない限りはこっちと戦争できない。このまま上陸するぞ」
海軍大将が乗っていようがいまいが、五皇という肩書きを持ってる以上こちらから手を出さなければ戦闘になる事はない――クロエはそう判断し、仲間達にそう伝える。
「じゃあ、決まりだね。皆、上陸の準備を!!」
エマが副船長として号令をかけると、全員が島に上陸する為の準備を整える。
その島が狂気のイベントの会場であり、その是非で参加者同士の抗争が勃発寸前と知らず。
フールシャウト島内。
先住民一掃大会の被害者達を庇うコル寿郎は、愛刀である大業物「
神の騎士団と一触即発になっていた。
(参ったな……海兵がまごついている分、こちらが有利ではあるが……)
コル寿郎は覇気が込められた攻撃の嵐を凌ぎつつ、脱出を図る背後の奴隷達に目を向ける。
海軍は天竜人に逆らえないが、基本的に毛嫌いしている者が多いので、天竜人同士が衝突した場合は海軍が介入する事はない。問題なのは、人権のない奴隷達の捕縛に動く事だ。神の騎士団は天竜人の中でも位が上の面々なので、聖地随一の奇人の自分とは格が違う。海軍大将でも命令に従わざるを得ないので、奴隷の捕縛には動くだろう。
奴隷達を庇いながらの戦闘の厳しさを実感しつつ、孤軍奮闘で時間稼ぎに徹していると――
バリバリ…!
「軍艦が囲っているから何事かと思ってたら……まさか養豚場の豚共の修学旅行先になってたとはな」
「アレは……!!」
巨大な覇気を感じ取って振り向くと、そこには海の皇帝が仲間達を率いて馳せ参じていた。
五皇の中でも取り分け政府に攻撃的な、二つの伝説の系譜を紡ぐクロエ海賊団だ。
「まさかとは思ったけど……〝先住民一掃大会〟の最中だったのね」
「こんな悪行を世界政府が黙認しているとはな……」
「信じられない……人の命を何だと思ってるんだ!!?」
息を呑む者、呆れ果てる者、義憤に燃える者など、様々な反応を見せるクロエ海賊団の猛者達。
しかし、クロエはそんな反応を見せる事もなく、ただ一言だけ告げる。
「つまらない連中だ」
クロエは愛刀・化血を抜いて覇王色を纏うと、奴隷達を庇うように立つ男に視線をやる。
着物姿で相当な業物と思われる刀を携える彼は、一目で只者ではないと悟った。
だが、クロエは臆する事なく彼に声をかける。
「そこの貴様」
「!」
「温室育ちの割には中々の覇気だが……あの豚共の同類か?」
クロエの問いかけに、コル寿郎は真っ直ぐ見据えて叫んだ。
「余は世界貴族ドンキホーテ・R・コル寿郎!! クロエ・D・リード、余はこの民草達を島から逃がしたい!! 協力してくれないか!?」
「!?」
名乗り出た和装の男に、クロエは仰天した。
まさか天竜人が、奴隷解放の為に海賊の自分に協力を求めてくるとは思わなかったからだ。
当然、この言葉に神の騎士団を筆頭とした他の天竜人達は非難の声を上げる。
「何を言うアマスか!?」
「これは反逆だえ!! あの者共を血祭りにあげるえ!!」
「〝神殺し〟もコル寿郎も打ち首にするんだえ!!」
神の騎士団だけでなく、大勢の天竜人が銃を構えて次々と発砲。
同時にクロエが抜刀し、斬撃を飛ばしながら全ての弾丸を打ち払いつつ接近し、一人の天竜人の首を一閃しようとした。
が、突如と真横から冷気が襲い掛かり、クロエは球状の氷塊に閉じ込められた。
「クロエ!?」
「コル寿郎聖……あんたの思想信条は否定しねェが、こっちにも体面ってのがあるんですよ」
クザンは冷気を放ちながらコル寿郎に声をかける。
その声色はひどく困った様子で、海軍大将としての立場が彼を縛っているのは明白だった。
「あの愚か者が凍ったえ!!」
「早く蜂の巣にするアマス!!」
天竜人達は、氷漬けのクロエに嬉々として銃を向ける。
それを見たエマは、溜め息交じりに呟く。
「ハァ……それでクロエを倒せる訳ないじゃん」
バリン! バリバリバリ!
すると、クロエが氷塊を覇気で破壊して脱出。
同時に、放たれた覇王色に当てられて天竜人が次々と泡を吹いて地面に倒れ伏した。
「……相変わらず、エゲツねェ覇気だね」
「ロジャー亡きこの海で、私を超える覇気使いはいないさ」
覇気の稲妻を迸らせるクロエは、淡々と告げる。
(とんだ貧乏くじ引いちまった…)
そう思いながら、やる気なさげに頭を掻く。
尊敬するガープがゴミクズ呼ばわりする程の醜悪な集団の為に、伝説の女海賊を相手取るなど、気の進む話ではない。
クザンはダメ元でクロエに交渉してみる。
「なァ、クロエ……おれァお前と戦う気はねェ。ここは引いちゃくれねェか?」
「分を弁えろ、クザン。この私に指図していいのはロジャーだけだ」
クロエは目を細めて睨む。
まるで研ぎ澄まされた刃のようであり、鋭利な覇気がクザンに襲い掛かる。
そして、この一触即発の事態を更に加速させる存在が乱入した。
「クザン大将!! ご報告します!! 島の沖合に、巨大な岩塊が!!」
「岩塊?」
「それも……金獅子海賊団の旗が!!!」
思わぬ名に、クザンは目を大きく見開く。
かつては
「……シキの奴、小賢しいマネを」
クロエは、伝説の大海賊の目論見を看破していた。
シキは獅子の名を冠する程の豪快な姿だが、その性格は極めて用意周到且つ辛抱強い生粋の策略家だ。この島で人間狩りの対象となった奴隷達に恩を売り、自分の兵力に組み込む腹積もりなのが見え見えだ。
あの男にロジャーが愛した海を支配下に置かれるのは……ひどく不快だ。
「……大人しく隠居していれば痛い目に遭わずに済んだものを」
「ジハハハハ…そいつァ誰に対して言ってんだ?」
不意に、上空から高笑いと共に葉巻を咥えた大男が降下してきた。
舵輪が刺さった頭、両足に義足として着けている両刃刀、獅子の鬣を想起させる金の長髪、最後に会った時にはなかったしわやシミができた顔……目に見えて老いているが、その威圧感は健在だった。
『〝金獅子のシキ〟だァァ!!!』
「ジハハハハ…!!! 久しぶりだなァ、ベイビーちゃ~ん…!!!」
シキは、かつてと変わらぬ呼び方でクロエをからかう。
その口振りは余裕に満ち溢れており、まるでクロエが手も足も出ないと確信しているような……そんな印象を受けた。
「見ねェ内にイイ女になったもんだ……まだ誰の女にもなってねェのか?」
「つまらない事を言いに来たなら今すぐ海に沈めるぞ」
「ジハハハ!! じゃじゃ馬っぷりも変わらねェなァ!!」
シキは葉巻を吹かしながら笑う。
「まァ、いいさ。おれはお前とやり合う為にここに来たんじゃねェ……」
「――断る」
「いや、まだ何も言ってねェだろうが!!!」
シキは葉巻を口から落とし、クロエの即答にツッコんだ。
もっとも…彼の性分を知る者からすれば、この流れで何を望むのかなど容易に想像がつくが。
「クザンにも言ったが、私に指図していいのはロジャーだけだ。貴様程度の器の人間に、この私が遜るとでも?」
「相変わらずつれねェじゃねェか……まァ、そこがいいんだがな」
シキは愉快そうに笑いながらクロエを見据えると、右腕を振り上げた。
それに呼応するかのように、凄まじい地鳴りが響き始め、地面が盛り上がり巨大な獅子の形を模した。
「つ、土のライオン!?」
「囲まれた…逃げられねェ!!」
「いつ見ても厄介なものだな、〝フワフワの実〟…!!」
土の獅子達に囲まれ、ヤマト達と海軍は冷や汗を流し、民間人も恐慌状態に陥る。天竜人達に至っては神の騎士団を除いて阿鼻叫喚で、目も当てられない。
クロエとコル寿郎、クザンなどの一部の猛者は眉一つ動かさないあたり、流石の胆力と言えよう。
「昔、ロジャーにも言ったが……今度はお前だ、ベイビーちゃん!!」
シキはニヤリと獰猛な笑みを浮かべると、クロエに誘いを持ちかけた。
「今のお前はロジャーには及ばねェが、
「……」
「この〝金獅子のシキ〟の右腕になれ!!! 〝神殺しのクロエ〟!!!」
空を統べる男が手を差し伸べる。
それに対し、クロエは鼻で笑った。
「――それで応じる私だと思うか?」
「!?」
「私もロジャーも同じ信念を掲げてる。貴様の嫌う〝自由〟という名でな。それにロジャー以外の相手に王のイスは座らせ――」
座らせないと言い切ろうとした時、クロエは言葉をいきなり区切った。
ふと思い出したのだ。ある小さな村で出会った、一人の子供を。
――あの子なら、ロジャーが鎮座した海の王者のイスを譲ってやっても……。
「……まァ、ルフィなら座っても許せるな……」
「?」
クロエの呟きに、シキは怪訝な顔を見せる。
直後、彼女は化血を掲げて刀身から無数の覇気の雷を放つ〝
「っ…!!」
「土砂には纏ってなかったな…随分と気を配ってるじゃないか」
不敵な笑みを浮かべるクロエに、シキは葉巻を噛み締める。
すると、クロエの隣にエマが並んで片手用ライフルの銃口を向けた。
「お師匠の元仲間でも……まァ、敵だし。あなたの申し出は丁重に断らせていただくよ」
撃鉄を起こし、覇王色の覇気を纏うエマに、シキは青筋を浮かべた。
妥協する気も、譲歩する気も、ましてや承諾する気もゼロ。この流れは、エッド・ウォーの時と同じだ。
自分に刃向かう者は絶望させて殺す性分のシキは、血走った双眸で睨みながら死刑宣告をした。
「つまり、その答えは……今ここで殺してくれという意味だよな!!?」
シキの言葉に、クロエとエマは笑いながら返した。
「「お前ら全員叩き潰すって意味だよ!!!」」
「!?」
かつてのロジャーの面影を重ね、一瞬たじろぐシキ。
その隙を逃さず、クロエは跳躍して覇王色を纏った。
「〝神避〟!!!」
クロエは横薙ぎに化血を一閃し、強烈な衝撃波を放った。
見聞殺しで急接近した為、シキは彼女の攻撃をモロに受けて吹き飛ばされ、浮遊する島船の岩肌に叩きつけられた。
その間にエマは、副船長として一味に命令を下した。
「皆、クロエを金獅子に集中させて!! 私達はコル寿郎聖と手を組んで民間人を島から逃がすよ!!」
「すまん、恩に着る!!」
「……結局こうなっちまうか」
クザンは予想通りのだらけられない展開に、頭を抱えた。
しかし、このまま手をこまねいて黙って見てる訳にはいかない。海軍として、海の皇帝と伝説の大海賊を止めねば。
「仕方ねェ、殺す気で行くぞ!!」
クザンは一気に距離を詰め、右手で拳を作ると氷と武装色の覇気を纏わせた。
迫る最高戦力を迎撃するのは、武装色と覇王色を左手の拳に纏うエマだ。
「〝
「〝
ドッ!! ボゴオォォン!!
互いの拳が激突し、衝撃の余波で周囲の建物や瓦礫が吹き飛ばされる。
海軍最高戦力と五皇の右腕――二人の強者が戦闘を開始し、周囲の空気と地面を振動させた。
「海軍大将ともあろう者が、たった一人の女に足止めか……行くぞ〝神の騎士団〟!!」
「まさに大混戦だな……クロエ海賊団!! 卿らの助力に感謝する!!」
「へェ…天竜人のクセに、人としての筋は通すんだな。――こいつに後れを取るなよ、全員気合入れろ!!!」
五皇の一角である無双集団、〝鬼の女中〟が率いるクロエ海賊団。
かつてロジャーと覇を競った、伝説の金獅子海賊団。
世界の頂点に君臨する天竜人を中心とする、神の騎士団。
大将〝青キジ〟が指揮する、海軍本部の精鋭達。
四つの勢力が入り乱れる戦いの幕が、今切って落とされた。
という訳で、次回も大混戦の模様です。
ここまで暴れると、クロエは50億超えてもおかしくないなぁ……。