〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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久しぶりのワノ国で今年を締めようと思います。


第82話〝咒一文字〟

 数多の伝説的な戦いを経て、海の皇帝の一角として君臨するクロエ。

 そんな彼女にとって、故郷・花ノ国と同等以上に思い入れのある国がある。新世界の強国・ワノ国である。

 ワノ国は前世の祖国に似ている国であり、永遠のライバルとなる〝百獣のカイドウ〟、そして〝鬼姫〟の二つ名を冠して仲間となる彼の娘のヤマトと出会った地。ある意味では、クロエ海賊団の真の出発点と言える場所だ。

 この侍の国はかつて復讐者・黒炭オロチが当時のカイドウと組んで圧政を敷き、おでんに卑劣極まりない脅迫をして天下無双の強さを封じ込めていたが、クロエの来訪が暴君オロチの運の尽き。クロエ海賊団と百獣海賊団の全面戦争が勃発し、双方の大将の痛み分けで決着。それに乗じて各郷の大名達が結託して反乱を起こし、黒炭一派は全員御用、カイドウもクロエとの約束でワノ国から撤退した事により、ディストピアだったワノ国は晴れて自由になったのだ。

 そしてクロエは今、久しぶりにそのワノ国に訪れていた。

 

 

  ワノ国の中心に位置する、桜の花びらが舞い散る花の都にそびえ立つ城。

 その城内の大広間で、クロエ海賊団は将軍となったおでんとその妻のトキと面会していた。

「おお、クロエ!! エマ!! 久しぶりだなァ、また来てくれたのか!!」

「フフ…流石に老けたな、おでん」

「そりゃそうだって、最後に来たの相当前なんだし」

 歌舞伎役者のような精悍な顔立ちを破顔させたおでんは、下座で胡坐を掻くかつての仲間達の肩を叩いて再会を喜び、クロエとエマもつられて柔和な笑みを口元に浮かべた。

 ロジャー海賊団が解散して16年、ワノ国がオロチの支配から解放されて12年が経ち、おでんも五十路に突入して多少老け込んだ。しかしその覇気に満ちた豪快さは健在であった。

 その後に遅れて、エメラルドグリーンの長髪が印象的な賢女が姿を見せる。おでんの妻・トキである。

「クロエさん、エマさん、お久しぶりですね」

「久しいな、トキ」

「やっほー♪」

 クロエは琥珀の瞳を細め、エマは手をヒラヒラと振って再会を喜び合う。

 すると、おでんがクロエ一行の中に見慣れない顔がいる事に気づいて尋ねた。

「ん? 仲間が増えたのか」

「ああ。あの日いなかった面々はこいつらだ。ガスパーデ、エルドラゴ、ステューシー、スレイマン、ウィリー、ナグリ、そしてコル寿郎だ」

「コル寿郎? お前、もしかして名前的にワノ国の人間か!? 出国したのか!?」

 おでんは着物姿の緑髪――コル寿郎に詰め寄る。

 しかしコル寿郎は、生まれも育ちも全く違うとキッパリ否定した。

「余が和装なのは、こっちの方が着心地がいいからだ。何せ余が住んでいた〝赤い土の大陸(レッドライン)〟の顔見知り共は皆、防護服みたいな暑苦しい格好ばかりだったからな」

「ハァ!? お前、あのデッカい大陸が故郷なのかァ!!?」

「という事は、あなた……まさか天竜人!?」

 まさかの事実におでんは衝撃を受け、トキも驚きのあまり口元を押さえた。

 かつて白ひげとロジャーの船に乗って大冒険した身である以上、〝赤い土の大陸(レッドライン)〟が何なのか、そしてどんな連中が住んでいるのかを知っている。

 しかし、世界で絶対の存在として君臨する特権階級の人間が、まさかクロエ海賊団のメンバーになるとは……。

「余はあの赤土の暮らしが窮屈でたまらなかった。古い慣習や価値観、歪んだ選民思想に囚われ、新しいモノに触れられない……心を腐らせて人生を終わらせるのは御免だったからな」

「その気持ちはおれもよくわかるぞ!!」

 コル寿郎の主張に、おでんは力強く頷いた。

 若い頃から「常識」に囚われる事を嫌っていたからこそ、強いシンパシーを感じたのだ。閉鎖的環境に自由人が生まれると、世界の広さを知りたがるのだろう。

「他にも話したい事がいっぱいある。そして貴様に尋ねたい事もある」

「そうか、じゃあ早速宴の準備をしないとな!! トキ、錦えもん達に伝えてくれ」

「ええ!」

 穏やかに笑いながらトキが大広間から出ていく。

 妻の背中を見届けてから、おでんは一行に提案した。

「お前達、宴まで時間がある。どうだ? ひとっ風呂浴びていくのは」

 

 

 城内の岩風呂、女湯。

 クロエはステューシーとヤマトの二人と一緒に湯船に浸かり、湯加減を堪能していた。

 すると、クロエは自分をまじまじと見る視線に気がついた。

「……どうした二人共、私の体なんか見て」

「いや……」

「な…何でもないわ」

 ヤマトとステューシーは、クロエの体を観察するように見る。

 270センチの高身長の体格は筋肉質で程よく引き締まり、腹筋もくっきり割れている。胸は女性らしく豊満で尻も大きくしっかりしているが、全体的には無駄を削ぎ落とした肉付きをしている。何より目を引くのは彼女の体に刻まれた数々の傷痕で、刀傷や銃創、火傷痕まであり、背中や腰にも細かい傷がいくつかある。

 女を捨てて強さをひたすら追求した、魅せる為ではなく戦う為の肉体。怠る事なく鍛え続けた末に辿り着いた、世界最高峰の大海賊〝鬼の女中〟のチカラの結晶。

(改めて見ると、随分キレのある身体ね……)

(僕も結構鍛えてるつもりなんだけどなァ……)

 ステューシーとヤマトは、改めて体つきからクロエの圧倒的強さを実感する。

 するとそこへ、洗髪を終えたエマがやって来た。

「いや~、お待たせ!! 真打ち登場!!」

「誰も待ってないぞ、阿呆」

 湯船に入ってくるエマに、ヤマトとステューシーは見やる。

 彼女もまた、引き締まって鍛えられた体つき。クロエ程多くはないが歴戦の傷痕が刻まれており、くぐり抜けてた修羅場は数知れない。

「あ~、極楽極楽……」

「おっさんの反応だぞ、それ」

「あのねェ!! こういうのはそう言う風に感じたいの!!」

 クロエのツッコミにエマはガンを飛ばして抗議する。

 すると彼女は一息ついてから、親友の船長を質した。

「……ねェ、結局どうするの?」

「何が」

「え? 〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟」

 突然言い始めた重大案件に、風呂場は静まり返る。

 この海で生きるなら、必ず関わるモノ――海賊王ゴール・D・ロジャーの遺した大秘宝。

 現状、クロエ海賊団はラフテルへの永久指針(エターナルポース)を所有し、さらに生前のロジャーから思い出の品として〝ロード歴史の本分(ポーネグリフ)〟の写しを貰っている。海賊王への称号にほぼ王手をかけてる状態と言えるが、当のクロエは自分は無関係だからどうぞと言わんばかりの姿勢だ。

「やる事ないなら取りに行ってもいいと思うけど?」

「どうもしない。そもそも〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟は()()()()()()()

 キッパリ答えたクロエに、三人は愕然とした。

 ――この世の全てとされる〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟が、クロエに合わない?

 一体どういう意味かと尋ねる前に、クロエは明かした。

「〝ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)〟を手に入れて世界をどうこうしようなど考えた事もない。挑むなら迎え撃つ、邪魔をするなら叩き潰す、興が乗れば酒盛りにも稽古にも付き合うだけだ。私は私なりの自由を求め続けているに過ぎない。すでに存在が確認できた宝を求める事こそ理解に苦しむ」

「……今時の海賊から見たら別の何かに思えるセリフだね」

「隠された財宝も〝歴史の本分(ポーネグリフ)〟も、価値が無ければただの遺物だろう。豚に真珠さ」

 クロエは湯船から上がると、太腿あたりまで無造作に伸ばした黒髪から水滴を滴らせながら風呂場をあとにした。

 その同時刻、男湯ではラカム達が湯船に浸かってコル寿郎の衝撃的な話を聞いていた。

『世界政府の、真の頂点……!!?』

「余はまだ謁見してない。五老星のおじじ様方しか会えないからな。もっとも、もう会える立場ではないが」

 ラカム達は世界政府の頂点が五老星ではないと知り、目を丸くして驚愕した。

 五老星は言わずと知れた世界政府最高権力だが、何とその更に上の存在がいるらしい。

 世界政府は「各国の王は平等、独裁の意志は持たない」「世界にたった一人の王などおらず、パンゲア城の玉座には誰も座らない事こそが平和の証」という理念を表しており、いわゆる〝唯一王〟を禁じている。その為、世界最高権力である五老星も複数人であるとされる。

 だがコル寿郎の話は、そんな世間一般の常識を覆すものだった。

「世界政府の隠蔽体質は今に始まった事じゃねェが、五老星以上の存在とはな……一体何者だ?」

「余も詳しくは知らん。空白の100年についての認識も世代によってズレがあるくらいだ、天竜人の中でも知ってる者は限られてると思う。もっとも、あの歴史に関しては余の親世代以上は核心に近い知識を持っているようだが」

「おい、天竜人の小僧!! それはわしらに話しちゃマズイ内容じゃないのか?」

 ラカムの質問に軽く答えるコル寿郎に、エルドラゴは苦言を呈する。

 しかし本人は全く意に介さず、世界政府の裏事情を話す。

「この国の鎖国政策は、世界政府の管轄という名の支配から逃れる点では正解だ。卿らも関わっただろう、先住民一掃大会を」

「あの胸糞悪い大会か」

「あの大会は世界政府が支配したい島の住民を天竜人を使って始末する為だ。島民を狩り尽くした後は、島と保有していた資源ごと世界政府が所有することになり、所業そのものが歴史の闇に葬り去られる」

 海賊すらもドン引きするような略奪行為を世界政府が働いてる事に、ラカム達は絶句する。

「……先住民一掃大会に海賊が乱入するのは、これで二回目だろうな」

「二回目? 前に一度あったのか」

「〝西の海(ウエストブルー)〟に存在したゴッドバレーという島だ。そこでは世界最強だったロックス海賊団が乱入し、その後に当時のロジャー海賊団が殴り込み、大混戦になったらしい」

 天竜人同士の抗争は今回が初めてだろうがな、とコル寿郎は語る。

 ロックス海賊団を知るレッドフィールドやナグリは、ロジャーの前は間違いなくロックスの時代だったと頷いた。

「あとで聞いたが、ロックス海賊団を率いた男も〝D〟の名を持っていた。〝D〟の一族はマリージョアでは〝神の天敵〟と言われていたと聞く……余も幼い頃は「行儀の悪い子は“ディー”に食われてしまうぞ」とよく言われたものだ」

「コル寿郎、お前まさか……!?」

「ああ……もしかすればクロエは、いや我々はいずれ世界政府の真の王と戦う事になるかもしれないな」

 五老星をも従える、世界政府の真の頂点との激突の予感。

 世界最大の禁忌と言える、存在してはいけない「世界の王」の真実に誰もが息を呑んだ。

 

 

           *

 

 

 湯浴みのあとは、宴の時間。クロエ海賊団と光月一家が大広間に集まり、会食が始まっていた。

 ワノ国一の料理人で茶道の達人でもある将軍家お抱え料理長・千利休留(せんのりきゅーる)が拵えた宴席料理は、純和風の粋を凝らした見事な品々。きくらげと春菊の汁物、若鮎の天ぷら、花蓮根、擬製豆腐、酢の物などなど、どれもこれも美味で酒が進む。

「天ぷら美味しい!!」

「花蓮根の食感がたまらんな」

「量は足らねェが、洒落た飯も悪くねェ」

「体に染みるな、このお吸い物……」

 酒と共に味わい、舌鼓を打つエマ達。クロエも気に入ってるのか、どこか満足げだ。

 しかし、かの〝鬼の女中〟の意識は料理よりも……。

「フフ…見ない内にデカくなったな、モモ」

「お……お主は変わらんでござるな、クロエ…!!」

 柔和な表情のクロエに、しどろもどろに答えるピンク色の着流しの若武者。

 その正体は、おでんの息子のモモの助。最後に会った時は子供だったが、今では豪放な父を髣髴させる屈強な体つきと精悍な顔立ちで、身長も270センチのクロエを見下ろす程の長身になっている。

「ははっ!! モモの助君、母さんの前でモジモジしてたら酒の肴にされるよ?」

「な、何を言うヤマト!! 拙者は次の将軍になる男だぞっ!!」

「私から見ればまだまだ坊やだ。せいぜい強くなれ」

 軽口を叩くヤマトをモモの助が叱り、クロエも悪戯っぽい笑みで返す。

 その光景をおでんは腹を抱えて笑い、トキとその娘の日和も穏やかに笑って眺める。

 するとそこへ、思わぬ人物が来訪した。

「盛り上がってるところ悪いが、邪魔するぞおでん」

「父上!?」

「お、おじじ様!!」

 襖を開けて白髪の大柄な老人が姿を現す。

 ワノ国の先代将軍・光月スキヤキだ。

「貴様は……!」

「クロエ殿、先の一件は本当に世話になった。お主がいなければ、この国は今頃どうなっていた事か……」

「私が好きで首を突っ込んだんだ。気にする事はない」

 クロエは座ったままながら、恭しく頭を下げようとするスキヤキを手で制す。

 彼は「そうか…」と一言だけ呟くと、自らが顔を出した理由を語った。

「実はクロエ殿と、コル寿郎殿…だったか? お二人の刀を見せてもらいたい」

 刀を見せろと言われて、クロエとコル寿郎は目を瞬いた。

「わしは趣味で刀を打っていてな……もしこの目に曇りがなければ、それは伝説級の名刀のはず。ぜひとも見せて欲しい」

 

 

 食事を終えた一同は、スキヤキの周りを囲むように集まった。

 まず彼が手にしたのは、コル寿郎の愛刀・秋霜だ。

「……何と美しい」

 スキヤキは目を大きく見開いて唸った。

 秋霜を鞘から引き抜くと、刃は美しい薄氷のような輝きを放ち、おでんやモモの助も息を呑んだ。

「これが噂に聞く幻の名刀・秋霜……!! お主、どこで手に入れた?」

「余は刀剣コレクターでな……家系ゆえに財力や人脈でかき集めた。その中でも一番気に入っているのが秋霜だ。他の業物もあるが、見るか?」

「いや、構わん。この広間で足りぬ程ならば、後日見せてもらう」

 そう言ってスキヤキは秋霜を鞘に収めると、秋霜にまつわる話を語った。

「まずはこの刀を打った者だが……ワノ国の古文書によると〝秋水〟の製作者が晩年に作ったとされている」

「何ィ!? ホントか父上!?」

 父の言葉におでんは目を剥いて驚き、トキも「信じられない……!!」と驚愕する。

 秋水はかつて、竜斬りをやってのけた伝説の侍・リューマの愛刀である黒刀。所有者だったリューマ自身が「刀神様」と崇められている事もあり、国宝として認知される程の名刀だ。コル寿郎の愛刀は、その伝説の黒刀と製作者が同じだというのだ。

 愛刀の逸話を初めて知ったコル寿郎は、驚いた顔でスキヤキを見た。

「ただの刀ではないとは思ってたが、そんな逸話があったとはな……」

「秋霜は秋水の後に打たれた一振り。没後は雨月家が代々受け継いできたそうだが……外界のお主が腰に差しているという事は、何らかの形で海外に渡ったのだろう……いずれにせよ、秋霜は秋水の系譜であり、大業物に相応しい一振りである!!」

 スキヤキは秋霜をコル寿郎に返すと、今度はクロエの愛刀……最上大業物・化血を手にした。

 鞘からゆっくり引き抜くと、文字通り血の色をした刀身が露わになる。

「っ……! こ、これは、まさか……!?」

「……スキヤキ翁?」

 刀身を見たスキヤキは、一気に額に脂汗を浮かべる。

 明らかに尋常ではない様子の先代将軍に、おでんは勿論、トキとモモの助、日和も不安げな顔で見つめる。

「……クロエ殿、一度確かめたい事がある。銘を見てよろしいか」

「別に構わないが」

 スキヤキはクロエから許可をもらうと、目釘抜きで柄の目釘を押し出し、柄を茎から外す。

 すると、露わになった茎には銘ではなく「(じゅ)」という一文字が彫られている事に気づいた。

 本来なら刀工名や制作年月日が刻まれているのだが、これは一体どういう意味なのか……?

「ク…クロエ殿は、何もなかったのか?」

「別に何とも」

 クロエの返答に、スキヤキは複雑な表情を見せる。

 そして、ある事実を口にした。

「実は昔……ある一振りの無銘刀がワノ国の郷中をたらい回しにされていた。その刀は何でも人間の血を使って鍛えられた刀……もしかすれば、それがこの化血かもしれん」

「に、人間の血で!?」

「これはわしの完全な憶測だが……おそらく水減しの際に人間の血を使ったと考えている」

 スキヤキの推測に、クロエ以外の面々は絶句する。

 加熱した玉鋼を一定の厚さに打ち延ばし、水に入れて急冷する作業に人間の血を使うなど、一体誰が何の目的の為にそんな刀を鍛えたのか、皆目見当がつかない。

 少なくとも言えるのは、製作者は何らかの悪意を持ってその刀を作ったという事だけだ。

「過剰に〝流桜〟を放出する制御困難な特性は勿論、何よりも災難を引き起こす。持ち主を死に至らしめるなど些事の事……酷い場合は一族を破滅に追いやり、その土地を血の絶えない無法地帯に変えた」

「そ、そんな危険な刀だったの!?」

 重々しい様子のスキヤキの言葉に、ヤマトは震える。

 船長室の古い本には「主人どころか神の生き血すら欲する、災いの1口」「残酷と災禍の化身」と記されていたが、どうやら盛った話ではなく真実だったようだ。

 そんな呪われた刀をクロエは腰に差して20年以上経つが、五体満足でピンピンしているどころか海の皇帝の一人として君臨している。それはつまり、化血を完璧に制御していると同時に刀自身もクロエを主と認めているという事になる。

「お主はただ強いだけではなく、その魂も強靭なのだろう。この刀がお主を主としたのも頷ける」

「大袈裟だな……だが、そんな曰く付きの刀なら、私の愛刀に相応しいな」

 クロエは化血を手にし、外れた柄を茎に嵌めて目釘を締めた。

「ちなみに、私以外でこの刀を扱えた者は?」

「少なくともワノ国にはいない。そもそも化血は、今から四百年程前に海に葬られたのだ」

「それが紆余曲折を経て花ノ国に流れ着き、私が所有する事になったのか」

 クロエは琥珀の目を細め、感慨深げに呟く。

 化血の刀身には、主人の姿が赤く映し出されていた。




という訳で、今回はヤバい情報ばかりの回でした。
コル寿郎の秋霜ですが、これはモリアがワノ国を侵攻した際に秋水とリューマの遺体と一緒に強奪した代物です。それが途中で紛失し、裏ルートで聖地マリージョアに運ばれた時にコル寿郎が他の天竜人から買ったという経歴があります。
そしてクロエの愛刀・化血に隠された血塗られた経歴。普通、人間の血液で冷やすなんて不可能なはずなんすがね……。まぁ、「善悪問わず弱い人間は周りの人間ごと〝死〟に支配される」って事なんでしょう。
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