〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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海賊無双4がまた新しいDCを…!!
楽しみです、マジで。

あと原作、エライ事になってますね。


第85話〝ソルベ王国〟

 ロジャーの死から18年が経った。

 四十路を過ぎたクロエは、世経の一面に載った()()()()を知り、〝南の海(サウスブルー)〟を航行していた。

「そんなに気になるのか? その男は」

「私の友人の一人だからな」

 穏やかに笑うクロエに、コル寿郎は愛刀・秋霜の手入れをしながら興味深そうに目をやる。

 〝鬼の女中〟の友人といえば、同じ五皇であり喧嘩友達でもある〝百獣のカイドウ〟だ。世間からは幾度となく命のやり取りをしてきた「永遠のライバル」として語られてるが、同時に酒盛りをするなど大海賊同士の付き合いをしている間柄でもある。ちなみに二人の関係性は、エマやラカム曰く「傍から見れば熟年夫婦」らしい。

 そんな彼女の友人とは、一体何者なのか。興味が湧かないわけがない。

「それで? その友人とやらは一体何者だ?」

「……もうそろそろ着く」

 クロエがそう呟いた時だった。

 見張り台にいたデラクアヒが声高に叫んだ。

「船長、見えたど!!」

「あれが「ソルベ王国」か。上陸準備をして土産も用意しろ。せっかくの祝いだからな」

「了解だど!!」

 その一言により仲間達が縮帆作業をしに動き出し、クロエは自ら操舵をする。

 帆が縮められたことで船は徐々に速度を落とし、小さな港の桟橋に接岸。エマ達が協力して浅瀬の底に錨を下ろし、折り畳んだ帆をロープを使ってヤードに縛り固定すると、クロエは桟橋に降り立った。

 すると、どこからか老人達が現れ、彼女に優しく声をかけた。ソルベ王国の国民達だ。

「あなた達、海賊かい?」

「悪いけどこの国は貧しいんでね……物が欲しいなら他所を当たっておくれ」

「心配せずとも、堅気に手は出さないさ。略奪は同業者のみと決めてるんでな」

 舫い綱を杭に巻きつけ終えると、クロエは自分の目的を語った。

「新世界から友人達に会いに来たんだ。一人革命とはやるじゃないか、ジニーも参加すると思ってたが」

「……まさか、くまちーとジニーを知ってるのかい!?」

 老人達の顔色が変わる。

 何を隠そう、このソルベ王国は革命軍の創立メンバーであるバーソロミュー・くまの生まれ故郷。政府加盟国どころか世界屈指の民度の高い国で、現在は暴政を強いた先代国王・べコリを追放したくまが君主を務め、彼の妻であるジニーは王妃で娘のボニーは王女なのだ。

 そしてクロエとバーソロミュー一家は、五皇の一角と革命軍の幹部という肩書を超えた交流をしているのである。

「あの三人に会いに来たが……政権交代後だから忙しいか?」

「国王達の御友人なら、追い払うのは気が引けるねェ――」

「あーーーーーっ!!!」

 不意に聞き覚えのある声が響き渡り、全員がそちらに目をやると、カジュアルな恰好の女性が物凄い速さで走ってきた。

 右頬をはじめ、露出した肌には所々小さい青い宝石のような痣があるが、その容姿は間違いなく――

「ジニー…!」

「クロエ~~~~!!!」

 ジニーはそのままの勢いで飛び付き、クロエの首に顔を埋める。

 突然の事に周囲は面を喰らったが、それも束の間。ジニーはクロエの首に腕を回しながら涙声で叫ぶように話す。

「会いたかったよォ……!! ウチもボニーも、病気どうにか治ってェ……!!」

「そうか…よかったな、ラカムも安心する」

 クロエは優しくジニーの背中を叩きながら宥める。

 すると、そこへ眼鏡をかけ熊の耳のような髪型をした巨漢の牧師が慌てた様子でやって来た。ジニーの夫・くまだ。

「クロエ!! なぜここに!?」

「お前に会いに来たんだ。青玉鱗も気になってるしな」

 突然の来訪にくまが驚く中、クロエ海賊団の面々も集まり出す。

「くまちー、久しぶり!」

「元気そうで何よりだわ、くま」

「どうだ? 今日も嫁に尻に敷かれてるか?」

「新聞見たぜ、一人革命だって? ウチの船長といい勝負してるじゃねェか!!」

 軽口も交えながら、くまとの再会を喜ぶクロエ海賊団。

 そこへ、派手ではないが身なりのいい服装をした高年の人物が姿を現した。ソルベ王国の先々代国王を務め、現在はくまの補佐役をしているブルドッグ氏だ。

「新世界から遠路遥々ようこそ…君達がジニー王妃とボニー王女を助けてくれたのか」

「それは買い被り過ぎだ、私は選択肢を与えたに過ぎない。あいつらは自らの意志で行動したんだ」

「しかし、助けになられたのは確かだ。我々としても感謝しますぞ…国王様、ささやかながら国を挙げて歓迎するのはいかがかな?」

「そういう揶揄いは止してくれ……だがおれは賛成だ。彼女達と関わらなければ、ジニーもボニーも今頃……」

 くまは苦笑いしつつも、クロエ達を歓迎する意向を示す。

 ジニーもまた「ウチも賛成ーっ!!」と声を上げて提案を承諾。こうしてソルベ王国での滞在が決定した。

 

 

 クロエ海賊団歓迎の宴会は、夜も更けた頃に始まった。

 本来なら王宮で催したいところだが、先日の事件で王宮が粉々になってしまった為、くまの実家である古い教会で開催。

 宴会に並べられた料理は家庭料理ばかりだがどれも体に染みる味で、特に元王太后のコニーが作ったピザが大好評。エマとステューシーが作り方を教えてもらうよう頼む程だった。

「わざわざ悪いねェ、そちらの食糧も使う事になって」

「なに、今夜は無礼講だ。飯が足りないならその辺の海王類でも素潜りで獲りに行くさ」

「素潜りで海王類を? 肝っ玉が据わっているね」

「水泳は得意なんだ」

 クロエはコニーと談笑する。

 史上最恐の女海賊を相手に一対一(サシ)で話をするあたり、かなり強かな老婆である。

 そこへコル寿郎が「六十七酒 五番」という銘柄の酒を片手に顔を出し、クロエの隣に腰を下ろした。

「やはり、こういう飾り気のない世俗の宴会の方が余の性に合う」

「随分と楽しそうじゃないか。神々の地はそんなに窮屈だったのか?」

「ひたすら趣味が悪くて美味い酒も不味くなるとだけ言っておこう」

「なら今日は運がいいな。天に満月、潮風はやわら……こういう時はどんなに安い酒でも、いい酒になる。()()()と過ごした最後の夜も満月だった」

 ロジャー海賊団解散の夜を懐かしみながら、クロエは天を仰ぐ。

 そこへコニーが朗らかな表情で尋ねてきた。

「そこの剣士さん、もしかして天竜人なのかい?」

「厳密に言えば元天竜人だ、コニー元王太后。今はただの海賊だからコル寿郎と呼んでくれ」

「ではお言葉に甘えて……随分と人間らしいねェ、〝堕天〟コル寿郎」

「褒め言葉と受け取ろう」

 コル寿郎の素性を知り、周囲の視線が集まる。

 しかしその眼差しに恨みはなく、元とはいえ天竜人なのに下界の人間と平等に接する姿勢に興味を惹かれているといった感じだ。

 ……いや、それよりも聞き捨てならない単語が出てきた。

「――待ってくれ、〝堕天〟とは何だ?」

「何だい、自分の事なのに把握してないのかい? 手配書を見てみなさい、23億の賞金首さん」

「「!!?」」

 発覚した衝撃の事実に、クロエとコル寿郎は驚きを隠せない。

 懸賞金の評価基準上、20億ベリーを超える賞金首はちょっと動くだけで海軍本部に厳戒態勢が敷かれるレベル。すなわち、コル寿郎は政府から相当危険視されているという事になる。これは天竜人の一族だからという意味も大きいだろうが……やはり何だかんだ強いのだろう。

「……私が20億超えたのは、ロジャー海賊団の頃だったな。コル寿郎、お前いくつだ?」

「余か? 今年で28歳だ。ミョスガルドの兄上の一個下でな」

「お前ヤマトの次に若いのか…」

「わははは!」

 クロエの呟きに大笑いするコル寿郎。

 それにしても、新入りが23億の賞金首という一味は凄まじすぎる。

 するとそこへ、ブルドッグが歩み寄った。その神妙な顔つきから、ただ事ではない事を予見する。

「クロエ殿……実は折り入って話があるのだが…」

「私に?」

 きょとんとするクロエに、ブルドッグは昨日の世経を渡した。

 そこには、「悪の支配者 暴君くま」という見出しでくまの顔写真が載っていた。

「べコリが世界政府を味方につけ、王位を取り返しに来る。軍艦の準備をしてると情報もあるのだ」

 その言葉に、クロエは顔を顰める。

 天竜人に媚び諂う血も涙もない先代国王が、ソルベ王国の新しい王となったくまを情報操作で悪政の王に仕立て上げたのだ。記事に載っている「村を燃やし暴力で王位を奪った」というのも、真実は南部の村ごと国民を焼き払おうとしたべコリ王をくまが倒したというものである。

 しかし悲しいかな…ジャーナリストとしての矜持やリテラシーは皆無だが、世経は文字通り世界各地で読まれている世界最大手の新聞社。一度情報操作したら、モルガンズが直々に訂正記事でも出さない限りはそのまま事実として報じられてしまうのだ。

(ボニーやジニーの病気の件があって辞めたとはいえ、くまが出張ってもしもの事があれば、ドラゴン達にも危険が及ぶ。それに王族が相手となれば、海軍大将が護衛も兼ねて迫っている可能性もゼロじゃない……)

「……クロエ、どうする?」

「……どっちみち来てるんだろう? 結果は変わらんさ」

 クロエはそう言って立ち上がると、コートをなびかせながらくま一家に歩み寄り酒盛りを始めた。

 ブルドッグとコル寿郎、コニーは互いに目を配ってから頷き合った。

 

 

           *

 

 

 翌朝。

 教会の外でクロエ海賊団は、くま一家と朝食を食べていた。

 ちなみに朝食のメニューはサンドイッチと厚切りベーコンエッグ、肉団子スープである。

「……で、結局誰がべコリってクズを()るんだ?」

「ケースバイケースだ。私一人でも事足りるが……大将が出張ってきた場合は面倒だ。それに天竜人と仲が良いなら、こないだ戦った騎士団が来るかもしれない」

 クロエはサンドイッチを頬張りつつ、ガスパーデの質問に答える。

 一概に軍艦が来るとはいえ、戦力は不明のままだ。もしクロエの情報が出回っているならバスターコール級の艦隊で来るかもしれないし、軍艦がたった一隻だけでも大将が乗ってる可能性もある。べコリが天竜人と仲が良ければ、フールシャウト島で戦った神の騎士団の誰かがいるかもしれないのだ。

 一応クロエの推測では、もし大将が来るとすれば〝赤犬〟サカズキか〝黄猿〟ボルサリーノのどちらかであり、職務に関してはある意味でバランスの取れている後者と読んでいるが……。

「海軍だ~~!!」

「べコリの野郎が帰ってきたぞーー!!」

 不意に、港にいた国民達が叫んだ。

 ついにあの悪名高き先代国王が、我が物顔で戻ってきたのだ。

「来たか海軍……。強い覇気を感じないという事は…私達の事は予想外だったようだな」

 クロエはコーヒーカップを置いて立ち上がる。

「敵は今頃パニックかもな」

「ああ、何せ海の皇帝の一角が辺境の地にいるんだからな」

「ぎゃははは!! おいラカム、軍や政府の上層部の処方箋でも用意しろよ!!」

「考えておこう」

 凄腕揃いのクロエ海賊団の面々は、これから起こるであろう大混乱を想像しながら笑い合う。

「戦うの? クロエ」

 これから起こる事態を想像し、不安そうな表情をするボニー。

 するとクロエは、彼女の頭にポンッと手を置いた。

「この島を戦場にはさせない。そういう約束だからな」

「ねェ、クロエ。次の航海どうする?」

「そういえばまだ話してないな。先にそっちから済ませよう、流石にすぐ攻撃は来ないだろ」

「暢気なこったな……」

 戦闘準備に取り掛かろうとしたところで、次の目的地を決めてなかった事を思い出し、ひとまずはそれが先だとべコリと海軍を後回しにした。

 政府および海軍は「上層部の許可なしに五皇と戦闘を行ってはならない」という方針を取っている。その中でもクロエは利益や損得を度外視した戦争も辞さない…というかそっちの方が多い為、他の皇帝達よりも喧嘩っ早い認識なので、余程の事でない限りクロエに先制攻撃を仕掛ける事は無い。

 クロエ海賊団がいる――それだけで海軍は迂闊に手出しできないのであるはずなのだが……。

《おい、海のクズ共ォ!!》

 沖合の軍艦から、拡声器越しの怒鳴り声が響き渡る。

 声の主は、ソルベ王国先代国王のべコリだった。

《我が国で悪政の限りを尽くす暴君に加担するなら、死よりも恐ろしい目に遭わせてやるぞ!!! 私は大義ある国王だぞ!!!》

「「……」」

 その言葉に〝鬼の女中〟と〝魔弾〟の目から表情が消えた。

 するとエマは沖合の軍艦をチラ見すると、徐に片手用ライフルに手を伸ばし、ノールックで銃口を向けた。

 

 ズドォン!

 

 エマの愛銃が火を吹き、放たれた弾丸は遠く離れた軍艦の甲板に立つべコリの頭部を正確に撃ち抜いた。

 直後、軍艦から海兵達の悲鳴と叫びが木霊する。

「分を弁えろ、痴れ者が……」

「……で、今はどこまで話したっけ?」

 まるで何もなかったかのように、再び続きを話し出すクロエとエマ。

 この情け容赦ない対応に、一味だけでなくバーソロミュー一家も顔を引き攣らせたのだった。

 

 

 所変わって、マリンフォード。

 元帥室でべコリ王の末路を聞いたセンゴクは、盛大に溜め息をついていた。

「だからやめておけと言ったのだ……」

「まァ、仕方ないさね。あの子はそういう海賊だ」

 センゴクのボヤきにつるが答える。

 新世界に君臨する五皇にも、対海軍に対してそれぞれスタンスがある。ロジャー最大のライバルである白ひげは、壊滅させる事は容易くとも必要が無ければ避け、シャンクスは敵対者やその可能性がある相手には威圧するが自ら無用なトラブルは起こさないし、カイドウとビッグ・マムも目的遂行以外で自分から海軍と交戦する事はそこまでしなかったりする。それはお互いに組織としての大きさをわかっており、小競り合いも命取りになると判断しているからだろう。

 だが、クロエは違う。白ひげを差し置いて現役最強とも噂される彼女は、ちょっとしたきっかけで海軍に容赦ない攻撃を浴びせてくる。その最たる例がマリージョア襲撃であり、その理由は「船員のヤマトを迎えに来たから」だった。要するに無用なトラブルを五人の中で一番起こしやすい為、海軍もクロエに関しては刺激しないよう、基本的に大将及び一部の中将以外は監視のみで済ませているのが現状だ。

 なので、今回のような事態に陥っても、センゴクの判断は「いかなる事態になってもソルベ王国から撤退し、最寄りの基地に帰還せよ」の一択だった。

「幸い、世経にはバレていないようだが……どうすんだい?」

「…べコリの件は不慮の事故死としてもみ消す。事実、航海の途中で時化にも遭っていたそうだしな」

「まァ、それが妥当だろうね」

 センゴクの意見につるも頷く。

 べコリのソルベ王国における悪政は有名で、平和を重んじ市井の人々の安全を第一に考えるセンゴク個人としても、彼に手を貸すのはあまり気乗りしなかったようだ。

 たった一人の王の我が儘に付き合って〝鬼の女中〟を怒らせるか、王の死因を隠蔽してソルベ王国の国民達の安全を守るか……センゴクは後者を選んだのである。

「しかし、べコリ王は天竜人の手先も同然の人間だったろう? 何か言われないかい?」

「その時は五老星も何らかの介入はするだろう。我々もあの女と無益な戦争は望まんし、政府上層部も同意するはずだ」

 センゴクの言葉に、つるは静かに頷いた。

 こうして、べコリ王の死は「時化の最中に高波にさらわれて死亡した」という形で処理されたのだった……。




ちなみに海賊無双で例えると、ウチのオリキャラ4人はこんな感じです

クロエ…アクションタイプ:パワー(ロジャーとほぼ同じスペックだが、少し機動性が高い)
エマ…アクションタイプ:スピード(覇気を纏った銃撃と体術を駆使し、コンボが強力)
ラカム…アクションタイプ:パワー(様々な範囲の攻撃を生み出し、少ない手数で圧倒できる)
コル寿郎…アクションタイプ:テクニック(ローを上位互換で、あらゆる状況に対応できる)
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