〝鬼の女中〟と呼ばれる女   作:悪魔さん

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ついに99話目。
本作のマリンフォード頂上戦争は、原作よりもカオスにする予定です。


第99話〝頂上戦争・開戦〟

 世界政府の三大機関を結ぶ巨大な渦「タライ海流」に乗り、ルフィは数多の協力者・脱獄囚と共に軍艦を乗っ取って海軍本部へ向かっていた。

 その際に囚人達にチヤホヤされたり、せっかく命掛けで脱獄したのに海軍本部に突っ込んで行くなどという狂気の沙汰に巻き込まれてパニックを起こしたりと色々あったが、海軍本部からの通信が入った事で一変した。

 そこはやはりと言うべきか、ルフィが電伝虫の受話器を取って対応したが、本部の伝令将校は淡々と言葉を紡いだ。

《通信が途絶える前の監獄からの情報とで割り出された、今回の大脱獄事件の〝主犯〟は…〝麦わらのルフィ〟と〝千両道化のバギー〟の二人》

「え…なぜおれに!?」

 予想外の言葉に、バギーは目が点になる。

 脱獄を通じて彼に心酔している脱獄囚達は「キャプテン・バギーが七武海を抑えて主犯!?」「あんた一体何者なんだ!?」とざわつく。

 そして、海軍本部からとんでもない言葉を突きつけられた。

《〝東の海(イーストブルー)〟から進出した一介の海賊だろうと甘く見ていた……まさか貴様が、〝海賊王〟ゴールド・ロジャーの船の元船員(クルー)だったとはな!!》

「ゲッ!! なぜバレた!?」

『えェ~~~~~!!?』

 驚愕の事実の発覚に、脱獄囚達は大混乱。

 しかし、海軍本部の暴露は止まらない。

《さらには同じ船に乗っていた〝ダグラス・バレット〟〝赤髪のシャンクス〟〝クロエ・D・リード〟〝魔弾のエマ〟とは兄弟分である事も調べはついている!!》

『ん何だって~~~~~!!?』

 留まる事を知らないバギー伝説に、悲鳴に近い叫びを上げる。

 経歴だけで言えば完全に大海賊中の大海賊である。

「そのような()()()()()が、よくも今まで際立った事件も起こさず水面下に潜んでいたものだ……この戦争の勃発を好機と見て動き出したか。〝火拳のエース〟との繋がりは見えてこなかったが、目的は当然〝麦わらのルフィ〟と同じくエースの救出であろう」

 何だかとんでもない誤解が広まってる気もするが、事実は事実なので何も言えなくなるバギー。

 その間にも、伝令将校は語る。

 〝海侠のジンベエ〟、〝砂漠の王〟サー・クロコダイル、〝革命軍幹部〟エンポリオ・イワンコフをはじめとした曲者200人以上の脱獄囚が乗船しているのは確認済みという事。

 海軍本部側が「正義の門」を開かない限り、マリンフォード到達はおろか、タライ海流からの脱出すらできない事。

 その事実に気づき、脱獄囚達は狼狽え始める。

《お前達全員には逃げる海もなければ、生きる道もない。覚悟しておく事だな。……以上だ》

 その一方的な言い分に腹を立てたルフィは「エースは必ず助け出す!! お前ら芋洗って待ってろ!!!」と言い返して電電虫を切った。

 芋洗って煮っ転がしてる場合じゃないだろうとツッコミたいが、それどころではない。船上は、もう一人の大物海賊の話題で騒然とした。

「キャプテン・バギー!!! あんた、海賊王の元船員(クルー)だったのかっ!!!」

「それにあの〝五皇〟や〝鬼の跡目〟の兄弟分!!?」

「おれ達の救世主は、やっぱものスゲェ海賊だったんだ!!!」

 さらなる尊敬を集める結果となったバギーは、頭を抱えたくなった。

 そして、まさかの真実に旧七武海やその他の大物も驚きを隠せなかった。

「何と、そんな関係が……!!」

「あの合体野郎の弟分だと…!?」

 ジンベエは一筋の汗を流す隣で、クロコダイルは眉間に皺を寄せる。

 というのも、クロコダイルは過去にバレットと交戦した事があるのだ。ガシャガシャの実の欠点をクロコダイルが見抜いた事、バレット自身がまだ覇王色を纏う技術が未熟であった事、他の勢力の妨害があった事など、様々な要因が重なった為に決着は着かなかったが……いずれにしろ彼の強さを実感している分、バギーとの関係が内心信じ難いものだった。

 クロコダイルと同じ事を思う面々は多く、バロックワークス時代からの付き合いであるダズ・ボーネスとギャルディーノは「こんなに小心なのが、元ロジャー海賊団なのか?」と言わんばかりの表情で、イワンコフに至っては「どんな船にも、俗っぽい人間はいるものね……」としみじみと呟いた。

「そういや副船長のおっさんもそう言ってたな」

「ん? 副船長?」

「レイリーっていう名前のおっさん、知ってんだろ」

「なぬーっ!? てめェ、レイリーさんに会ったのか!? 懐かしいぜェ~~副船長!! 一体どこで?」

 伝説の〝冥王〟の名が出てきた事で、囚人達はさらに熱狂する。

 海軍の買い被りすぎだろうが、いかに見習いと言えどゴールド・ロジャーの仲間だったという事実はこの時代において十分すぎる名声だ。

 そして、今の海賊王候補の筆頭格や〝鬼の跡目〟といった大海賊達と繋がりを持っている事実が、彼らに生ける伝説の一人と崇められるまでに至らせたのである。

(…待てよ、こいつら下手すりゃおれより懸賞金の(たけ)ェ奴らばかりだ……うまく利用すりゃ、それこそもしおれが白ひげの首なんか取っちまった暁には……クロエ姉さんと肩を並べられるって事じゃねェか!?)

 白ひげをもし討ち取れれば、シャンクスやバレットを差し置いて尊敬する姉貴分と肩を並べる事ができる…と考えるに至り、バギーは囚人達を扇動して世界を取りにいくことを焚きつけた。

「鎮まれハデバカ野郎共ォ!! 全く、とんだ酔狂メンだお前ら!! この艦はもう止まらねェんだ!! 戦争のド真ん中へ向かってる!! 乗り掛かった艦って事もあらァな」

『キャプテン・バギー…!?』

「ハラァくくってよく考えろ!! 手を伸ばせば届く距離に、クロエ姉さんと共に世界の頂点する男が!! 首を磨いて現れる!! もう生涯こんなチャンスはねェだろうな~……」

 背を向けたまま語るバギーは、徐に振り返った。

 

「男なら……!! おれと一緒に夢を見ねェか…!? おれは今日、〝白ひげ〟の首を…即ち()()()()〝世界の頂点〟の内の一つを取る!!!」

 

 ――うおおおおおおおお!!!

 バギーの熱い思いに、囚人達は忘れていたロマンを思い起こし吼える。

 心が燃え、躍る。生きているとは、こういう事なのだ。

「いくぞ野郎共ォ!!! いざ海軍本部へ!!!」

『ウオオオオオオオオ!!!』

「スゲェ、まとまったぞ」

「こういう才能はあるようじゃのう」

 高くない実力をカバーできる非常に高いカリスマ性に、ルフィだけでなくジンベエも脱帽するのだった。

 

 

           *

 

 

 同時刻。

 海軍本部のある島・マリンフォードには主に海兵達の家族が暮らす大きな町がある。現在、住人達には避難勧告が出ており、避難先のシャボンディ諸島からモニターによって人々は公開処刑の様子を見守っていた。

 世界各所より集まった記者やカメラマンもまた、ここから世界へ情報を一早く伝えるべく身構えている。

 当然と言えよう。この公開処刑は単なる一海賊の処刑ではない。今後の世界の行方を左右するのだから。

「緊張を解くな!! 何が起きてもあと3時間!! そこで全てが終わる!!」

 巨人族であるラクロワ中将が檄を飛ばす。

 

 世界各地より招集された名のある海兵達、総勢約10万人。

 三日月形の湾頭及び島全体を50隻の軍艦が取り囲み、湾岸には無数の重砲が立ち並ぶ。

 港から見える軍隊のその最前列に構えるのは、戦局のカギを握る5名の曲者達〝王下七武海〟。

 そして広場の最後尾に高くそびえる処刑台には、「白ひげ海賊団」二番隊隊長のポートガス・D・エースが跪いており、その眼下では三人の海軍大将が処刑台を堅く守っている。

 今、考え得る限りの正義の力がエース奪還を阻止する為、白ひげ海賊団を待ち構えている。

「いいなガープ…全て伝える」

「勝手にせい。わしゃ下におるぞ」

 海軍元帥センゴクの声掛けに、ガープは吐き捨てるように言う。

 処刑台の下に降りると、同期である伝説の海兵二人がガープを迎えた。

「……あんたに罪は無いよ、ガープ」

 〝大参謀〟つるはいつになく優しい声を掛け、ゼファーはガープの肩に手を添えた。

 同じ時代に同じ海を生きたからこそ、彼の苦悩に思うところがあるのだろう。

《諸君らに話しておく事がある。ポートガス・D・エース…この男が今日ここで死ぬ事の大きな意味についてだ》

 全世界が注目する中、エースの横にセンゴクが姿を現し、電伝虫越しにこの公開処刑の意義を語り出す。

《エース……お前の父親の名を言ってみろ》

 センゴクの言葉に、ざわめくマリンフォード。

 当然、エースは自分の親父は〝白ひげ〟だと返すが、センゴクは否定しながら彼の真の出生を語った。

《〝南の海(サウスブルー)の「バテリラ」という島……母親の名は「ポートガス・D・ルージュ」。彼女は子を思う一心で常識を遥に超えて、実に20ヶ月もの間、子を腹に宿していたのだ!! そしてお前を産むと同時に力尽きてその場で命を落とした。父親の死から実に1年3ヶ月……()()()()()()の血を引いて生まれてきた子ども、それがお前だ》

 

 ――お前の父親は!!! 〝海賊王〟ゴールド・ロジャーだ!!!

 

 センゴクの言葉に、海軍本部は波を打ったように静まり返った。

 この処刑は、白ひげ海賊団との戦争という意味だけではない。もっと巨大な歴史的背景があったのだ。

 当時、海賊王の痕跡を必死に消そうとしていた世界政府と海軍。ロジャーに関わるあらゆる人間が刑を受けてきたのに、生き延びていたのだ。

《2年前、お前が母親の名を名乗り、「スペード海賊団」の船長として卓抜した力と速度でこの海を駆け上がっていった時、我々はようやく気づいたのだ。ロジャーの血は途絶えていなかった事に!!》

 センゴクは冷静に話を続けた。

《かつてお前がクロエに戦いを挑み、為す術も無く一味を壊滅させられ船も失ったと知った時……我々は一度は生死だけでなくその血筋ごと疑った。クロエはロジャーを愛していたが故、奴の息子だと知れば必ず庇護下に置く、あるいは懇意にすると考えたが、結果は真逆だったからだ……!!》

「っ……」

《だが今思えば……我々が気づいた事を察していたのだとしたら、その行動も辻褄が合う…!! 奴は自分の庇護下に置けば勘づかれると判断し、あえて潰して白ひげに譲ったのだ!!! 奇しくも白ひげも気づいていたのか、かつてのライバルの息子を自分の船に乗せた。――お前を〝海賊王〟に育てあげるべくな》

 その話にエースは反論した。

「違う!!! おれがオヤジを海賊王にする為にあの船に…」

《――そう思っているのはお前だけだ。現に我々が迂闊に手を出せなくなった。お前は()()()()()()()〝白ひげ〟に守られていたんだ!!!》

 その言葉に、エースは愕然とした。

《お前を放置すれば、必ず海賊次世代の頂点に立つ資質を発揮し始める!!! だからこそ今日ここで、お前の首を取る事には大きな意味がある!!! たとえ〝白ひげ〟と全面戦争になろうともだ!!!》

『ウオオオオオオ!!!』

 マリンフォードは震えんばかりの雄叫びに揺れた。

 海軍の士気が最高潮に高まる中、ガープは一人小声でボヤいた。

「……センゴク…クロエのところだけは違う気がするぞ…」

 ガープは思い返す。

 おそらくクロエは、海軍からエースを護る気はこれっぽっちもなく、スペード海賊団壊滅の件は本気でエースを潰そうとした可能性が高い。その根拠は、彼女の仲間にあのコル寿郎がいる事だ。

 ルーキー時代から〝神殺し〟の異名で天竜人を殺し続けた女が、天竜人を仲間にしているという事実。それはつまり、血筋で人を判断しないという事でもある。エースが愛する海賊王(ロジャー)の息子だとしても、自分の中の一線を越えれば容赦なく殺す――それがクロエという海賊なのだ。

「あの女がもし聞いてたら、相当お冠だろうな」

「シャレにならない事言うんじゃないよ、ゼファー」

 センゴクの同期達もボヤいていると、一人の海兵が驚愕の報告をした。

「センゴク元帥!! 報告します、正義の門が誰の指示もなく開いています!!! 動力室とは連絡もつかず…!!」

「何だと!?」

 開くはずのないマリンフォードの「正義の門」が開いたという、緊急事態。

 動力室はマリンフォード内にあるはずなのに、一体誰が……!? と考える余地を与えず、霧の中から海賊船の大艦隊が押し寄せてきた。

 〝大渦蜘蛛〟スクアード、ディカルバン兄弟、〝氷の魔女〟ホワイティベイ――いずれも「新世界」に名の轟く錚々たる船長ばかりで、白ひげ海賊団の強大さを物語っている。

 だが、海軍は白ひげ海賊団傘下に手を出す事はしない。狙いはモビー・ディック号――白ひげの本隊に攻撃力を集中させたいからだ。

 

 ――ゴボゴボゴボ…!

 

 張り詰める緊張の中、一部の海兵達は湾内から泡の音がする事に気づいた。

「まさか…!!」

「おい、この音…!!」

「こりゃあ、とんでもねェ場所に現れやしねェか…!?」

「布陣を間違えたかねェ」

 海賊王世代の伝説の海兵達が冷や汗を流す。

 そして時同じくして、タライ海流で海軍本部前まで来ていたルフィ達は、「正義の門」が開いていく事に驚いていた。

「開いた!!!」

「どういうこっちゃい!!! 「動力室」はおそらくマリンフォード…一体誰が…!?」

「まァいいや!! とにかく行くぞ!!」

 理由はわからないが、チャンスと見て直進し、「正義の門」を突破する。

 そんな中、イワンコフはドラゴンが来るのではと推測してルフィに耳打ちするが……。

「ああ…おれとエースは父ちゃん違うぞ!? おれの父ちゃんはドラゴンだけど、エースの父ちゃんはゴールド・ロジャーだからな。せっかくすげェのに会った事ねェんだと。これ言うとエース怒るんだけどな」

『ハァ!!?』

「あ、それとこれ内緒だった」

『えええええええ!!?』

 こちらはこちらで、大混乱であった。

 

 

 その頃、シャボンディ諸島近海のクロエ達はと言うと。

『マリンフォード側の「正義の門」を破壊しに行く!?』

「その方が手っ取り早い」

 クロエの提案に、仲間達は騒然とした。

 なぜなら、目的であるバギー救出の為にインペルダウンへ向かうのではなく、海軍本部へ先回りするというものだったからだ。

「現在地を考えるとどうしても回り道になるだろう? それに脱出するなら必ず軍艦を使うはずだ、エニエス・ロビーまで行くとは考えづらい」

「いや、まァそりゃあそうだがよ……」

「少なくとも「正義の門」を破壊しに行く人間なんてクロエだけだよ……」

 バギーの強運を信じて賭けに出たクロエの主張に、一味の両翼は遠い目をする。

 しかし、インペルダウンを脱出したとしても「正義の門」が開かなければ延々と渦に乗り続けるだけというのも事実。最短でバギーを救出するには、マリンフォード側の「正義の門」を破壊し、強制的に海流を流し込むしかないのだ。

 何度聞いてもちょっと何言ってるのかわからない作戦だが、合理的と言えば合理的……かもしれない。

「破壊するにしても、どうする? あの巨大な門は厳しいぞ」

「私とヤマトで覇王色を纏った合体技を放ち、風穴を開ける! それでも開かないなら全員で同じ一点を集中して攻撃し、開くまでやる」

「成程!!」

「いや、成程じゃねェだろ…」

 ポンッ! と手を叩いて納得するヤマトに、ウィリーはジト目になった。

 中身は何てことない強行突破。結局は脳筋のやり方である。

「だがクロエ…仮に風穴を開けたとて、その余波を考えると得策とは言えんぞ」

「!」

 そこへ、コル寿郎が別の案を提示した。

「余の能力は、指定した空間内であれば瞬間移動も可能だ。「正義の門」を覆う程の領域を展開し、その中でオーロ・ジャクソンごと場所を入れ替えればいい」

「じゃあ、それで確定じゃねェか!」

「随分と使い勝手のいい能力だな」

 戦闘だけでなく移動手段としても有用な〝バショバショの実〟の能力に、一同は驚嘆した。

「どの道マリンフォードへ向かうのは変わらないが……クロエ、戦争中に殴り込めば仲裁もできるかもしれないぞ?」

「あ~~……白ひげのオヤジさんが死ぬと、血の海に変わるのもあっと言う間だろうなァ……」

 コル寿郎に続き、エマが頭を掻きながら面倒臭そうに言う。

 五皇は多くのナワバリを持ち、当然島によって資源も異なる。白ひげが陥落すれば、彼の領海は他の勢力の侵略を許してしまうだろう。そうなれば血で血を洗う抗争が各地で起こり、確実に()()()()()()()()()()()()()()」が崩れる。

 ちなみにクロエ海賊団はドック島と海賊島のたった二つだけが領海に近い立ち位置だが、ドック島は元船乗りの老人が経営する小さな造船会社しかない為にナワバリとしての価値があまりない上、海賊島に至っては元ロックス海賊団の王直が支配しているので迂闊に手を出せないのが現状である。

「フン……白ひげ海賊団が崩壊しようが、センゴク達が滅ぼうが、七武海が何人死のうが、私には心底どうでもいい。ただ末弟(バギー)の窮地にシャンクスとバレットが行けないのなら、私が行く。――それだけだ」

「ホント、身内に結構甘いのね」

 ステューシーはクスクスと笑う。

 天下の〝鬼の女中〟にとって、弟分は可愛いものなのだろう。

「……ひとまず、マリンフォードへ進路を取るぞ」

 琥珀の瞳で水平線を眺めながら、クロエは腰に差した愛刀の柄を指で撫でるのだった。

 

 

           *

 

 

「こうも接近されるとは……!!」

 マリンフォードの処刑台で、センゴクは歯噛みする。

 モビー・ディック号を始めとする4隻の白ひげ海賊団本隊の海賊船は、何とコーティング船で海底を進み、海軍本部の湾にいきなり浮かび上がってきたのだ。

 大海賊時代以前から海の平和維持に貢献した智将の布陣が、完全に裏をかかれてしまった。

「グララララ……何十年ぶりだ? センゴク」

「白ひげ……!!」

 白鯨の船首に、海の王者が堂々と現れた。

 

「おれの愛する息子は、無事なんだろうな…!!!」

 

 五皇筆頭にして、伝説と呼ばれる海賊達の頂点――〝白ひげ〟エドワード・ニューゲート。

 その堂々たるその威容に、海軍は圧倒される。

 〝世界最強の男〟の貫禄が、ただそこに居るだけで空気を震わせているのだ。

「ちょっと待ってな、エース……!!!」

 白ひげはぐぐっ…と拳に力を込めると、両腕で〝大気〟を叩いてヒビを入れた。

 刹那、海が爆発して不自然に浮き上がった。〝(かい)(しん)〟を起こして海を歪ませたのだ。

「オヤジ…皆…おれはみんなの忠告を無視して飛び出したのに、何で見捨ててくれなかったんだよォ!!!」

 あのティーチの事件以来の、望まぬ形の顔合わせ。

 湾内の白ひげ海賊団(かぞく)に向け、エースは叫ぶ。

「おれの身勝手でこうなっちまったのに…!!!」

「いや、おれは行けと言ったハズだぜ、息子よ。そうだろ? マルコ」

 白ひげはどんと答えると、マルコも続いた。

「ああ、おれも聞いてたよ、とんだ苦労かけちまったなぁエース!! この海じゃ誰でも知ってるハズだ。おれ達の仲間に手を出せば、どうなるかって事ぐらいなァ!!」

「お前を傷つけた奴ァ誰一人生かしちゃおけねェぞ、エース!!」

「待ってろ!!! 今助けるぞオオオ!!!」

 雄たけびを上げる白ひげ海賊団。

 それに呼応するかのように、先程白ひげが仕掛けた〝海震〟が地鳴りと共に津波に変わって島を襲ってきた!

「勢力で上回ろうが勝ちと高を括るなよ!! 最期を迎えるのは我々かもしれんのだ……あの男は、世界を滅ぼす力を持っているんだ!!!」

 今、時代の命運をかけた一大戦争が幕を上げた。

 

 そして、戦争勃発を海底深くから感じ取っている者が一人。

「カハハハ……!! さァ、狼煙を上げるぜ……!!」

 糊の利いた軍服の下で古傷が痛むのを覚えながら、男は笑う。

 鯨型潜水艇の操縦席で、海賊王が遺した伝説の怪物(バケモノ)がその時を待っていた。




現時点の各勢力

クロエ→バギー救助を手短にする為、マリンフォードへ先回り。
白ひげ海賊団→エース救出へ湾内進入
海軍→白ひげ海賊団迎撃、エース処刑へ
七武海→一応白ひげ海賊団迎撃
ルフィ達→マリンフォードへ
????→マリンフォードの沖合に到着。タイミングを見計らって殴り込む予定
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