元気「どうも、神野元気です。他の作品でも水晶はよく出してるし、納得の答えではあるな。そういえば、今回から原作の話に入っていくんだよな?」
政実「うん、そうだよ。基本的には原作の流れには忠実に行くけど、オリジナル要素や映画の内容も織り混ぜていけたら良いなと思ってるかな」
元気「わかった。それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第11話をどうぞ」
第11話 偽りの名の宝石
「ふんふんふふーん♪」
遥か上空を航行する超弩級巨大飛行船トルバドゥールの船内を水色のワンピース姿のアリスは鼻唄を楽しそうに歌いながら歩いていた。冷たい飲み物と白いタオルを持った腕の中には白い子犬と黒い子猫がおり、アリスは船内の廊下を歩きながら二匹に微笑みかける。
「ふふ、今日も良い天気だね」
「わんっ!」
「にゃあ」
「うんうん、良いお返事だね。さあ、道場にいる頑張り屋さんに会いに行こうか」
そう言ってからアリスは前方に視線を向け、道場へ向けて歩き続けた。数分後、道場へ着いてみると、そこでは中国服姿の元気とジョーカーが稽古に励んでおり、汗を流しながら突きや蹴りを繰り出す二人の姿をアリスは端に立ちながら楽しそうに眺めていた。
「やってるやってる。それにしても……こうして元気達が一緒にいると、服装も雰囲気も似ていてなんだか兄弟みたい。いつも仏頂面だけど落ち着いていて優しいジョーカーお兄さんと素っ気ない時が多いけど本当はすごく思いやりがある弟の元気。まあ、元気は否定しそうだけど」
二人が兄弟となった姿を想像してアリスがクスクスと笑う中、二人の特訓は終わり、元気達はアリスへと近づく。
「来てたのか、アリス」
「うん、ついさっきね。はい、飲み物とタオル。ジョーカーさんもどうぞ」
「ありがとう、アリス」
「アリスさん、ありがとう。それにしても……今日もその二匹はアリスさんの腕の中にいるんだね」
ジョーカーが二匹を見ながら言うと、アリスは微笑みながら頷く。
「はい。他の子達も懐いてくれますけど、この子達は特別懐いてくれてますから。元気もシュルツを抱っこする?」
「……別にする必要はないけど、俺が世話してる方だからとりあえずしとくか」
「うん、わかった。はい、どうぞ」
「ああ」
元気が子猫のシュルツを受けとると、シュルツは少し眠たそうに元気の顔を見てから小さくにゃおと鳴いてから元気の腕の中で丸くなる。
「……シュルツはいつも物静かだな。他の猫達が遊び回る中でも一匹だけのんびりとしてるし」
「そういうところも元気っぽいよね。教会にいた時も元気はみんなと一緒じゃなく一人で本を読んだりミック神父に勉強を教えてもらいに行ったりしてたもん」
「それに対してアリスさんが世話をしているイヴはいつも他の犬猫と遊んだり色々なところへ行こうとしている。RDも言っていたけど、二人と二匹はやはり似ているんだね」
「俺と似ても良い事は無いと思うけどな。ところで……アリス、クイーンは何してる?」
「クイーンさんならRDさんに仕事しろーってせっつかれてたよ。本人は気にせずに蚤取りしてたけど」
それを聞いたジョーカーはため息をつきながら額を押さえる。
「……また蚤取りをしているのか。いい加減次の仕事に移ってくれたら良いのに……」
「俺達が来てから一回も仕事をしてるところを見た事がないし、クイーンが怪盗だっていうのを疑いたくなるよな……もちろん、それは本当で、実力だってしっかりとあるのはわかるけど」
「あはは……クイーンさん、気に入った仕事じゃないと嫌みたいだからね。だから、RDさんも色々候補は見せてるみたいだけど、クイーンさんからしたらどれもイマイチみたい」
「……仕方ない。僕もRDを少し手伝うか。二人も手伝ってくれるかい?」
「……このまま何をせずに蚤取りだけされても困るからな。それに、みんなでアイデアを出し合えば何か良い物が見つかるかもしれない」
「だね。RDさんの苦労を少しでも減らしてあげよう」
元気とアリスが頷き答えた後、三人は道場を出てそのままリビングとなっているデッキへ向けて歩き始める。その道中、デッキに近づくにつれて見かける猫や犬の姿が増えていき、その声に元気の腕の中のシュルツはうるさそうな顔をし、アリスの腕の中にいるイヴは落ち着かない様子でキョロキョロとし始めた。
「……なんだか前よりも数が増えてないか?」
「そういえば、この前も新しい子達を拾ってきてたもんね。この調子だとわんにゃん王国みたいになりそう」
「……クイーンがその王国を統べる前になんとかしないといけないな」
「同感だ。賑やかなのは良いとしても、このままだとただ騒がしいだけだし、RDが犬猫の抜け毛で換気システムが異常を起こす事が多いって嘆いていたからな。システム管理を手伝ってる身としてはその状態を放置する事は出来ない」
「たしかにRDさんがしくしく泣いてる時があるもんね。それじゃあ早く行ってあげようか」
その言葉に二人が頷いた後、三人は犬猫で溢れる廊下を更に進んでいき、デッキのドアを開けた。すると、デッキ内は廊下にいた数よりも遥かに多くの犬猫で溢れ返っており、その光景にジョーカーは額を押さえる。
「……もう遅かったか」
「……いつからここは犬猫達の楽園になったんだ?」
「それかわんにゃんフェスかな? ほら、この前RDさんに夏場にやってるらしい音楽のイベントの映像を観せてもらったでしょ? あの映像の中の人達みたいにいっぱいだよ」
「ああ、夏フェスって奴か。だけど、このまま演奏は始まらないし、とりあえずその主催者に一言言ってやらないといけなそうだな」
そう言いながら元気がソファーに視線を向けると、そこでは足元に積まれた紙を置いて穏やかな笑みを浮かべたクイーンが三毛猫の蚤取りに夢中になっており、三人は足元の犬猫をうっかり踏まないようにしながらクイーンに近づいた。
「クイーン、何をしているんですか?」
「おや、これはこれはお揃いで。見ての通り、趣味の蚤取りを楽しんでいるんだよ」
「ジョーカーが言いたいのはそういう事じゃない。仕事もせずに何を蚤取りなんてしてるんだって事だろ、まったく……」
「でも、その猫ちゃんは気持ちよさそうにしてますね。やっぱり蚤取りされてると気持ちいいのかな?」
「自分の体にしがみついているものが無くなるならやはり気持ちが良いのだろうね。私も蚤取りを楽しめているし、Win-Winだよ」
「クイーンと犬猫はWin-Winでも、僕達からすればそうじゃないんです。早く次の仕事を始めてください」
冷たい視線を向けながらピシャリと言うジョーカーの言葉に対してクイーンはどこ吹く風と聞き流す中、スピーカーからRDの声も聞こえ始める。
『仕事もそうですが、この犬猫も早くどうにかしてください。ようやく抜け毛の処理が終わりましたが、これではキリがないんですよ……』
「抜け毛くらい仕方ないじゃないか。それに、元気にはシュルツが、アリスさんにはイヴがいるんだから、彼らだって抜け毛を出すだろう?」
『その二匹はしっかりと二人が世話しているから良いんです。シュルツは他の個体と違ってあまり動き回りませんからそこら中に抜け毛は落とさない上に決まった時間に元気がグルーミングをしてますし、イヴは他の個体と遊び回りはしますがグルーミングが必要な際は自分からアリスの元へ行きます。二匹とも飼い主の世話が行き届いているのです』
「ふふ、そうか。その年でそこまでしっかりとしているなんて二人の友人として誇らしいよ。もちろん、同じく大切な友人であるジョーカー君とRDの日々の活躍も誇らしいと思っているよ」
「お言葉ですが、僕はあなたの友達ではなく仕事上のパートナーです」
『私も世界最高の人工知能に過ぎません』
「俺もクイーンの友達じゃなく仕事上の助手だ」
「それなら私は仕事上の助手見習い……かな?」
四人の言葉にクイーンはショックを受けたような表情は浮かべると、その表情のままで猫を見つめる。
「ああ、私の悲しみをわかってくれるのは君達だけだよ」
「ショックを受けた振りは良いのでやる事をやってください」
「そうだぞ、クイーン。RDから獲物のリストは見せてもらってるんじゃないのか?」
「ああ、スクリーンに映し出したのは見たし、まだ見てない追加情報は足元に置かれている。だけど、どれもただ高価な宝石だの有名な名画だので心が踊らないんだよ」
「心が踊らないって……どれも怪盗らしい獲物ばかりじゃないのか?」
元気の問いかけにクイーンはそれは違うといった気持ちを全開にした顔で元気に向かって指を指す。
「それだよ! 怪盗といえば宝石や絵画を盗む物だというその考えが嫌なんだよ。私はただの怪盗なんかではなく、怪盗クイーンだ。普通の宝石や絵画を盗んで喜ぶなんていう真似は私の怪盗の美学に反するよ」
「じゃあ俺のこのロザリオはその怪盗の美学的には良い獲物って事か?」
「そういう事だね。大切なのは価値ではなくロマンなんだよ」
「ミック神父から貰ったロザリオはロマン……クイーンさんが言いたいのは物としての価値というよりはそれまでの歴史の方が大事って事ですか?」
「もちろん、それも大事だ。ただ、どれだけ歴史のある物でも普通に盗んでは意味がない。難攻不落の警備の中を掻い潜って盗み出し、それに気づいた警察や探偵が慌てる中を優雅に去っていく。ああ……なんと素晴らしいのだろうね」
まるで観客達のスタンディングオベーションを前にしながら舞台に立つ演者のように目をキラキラと輝かせるクイーンに対して元気とジョーカー、そしてRDが送る視線は冷ややかだった。
「……どんなに難解な問題よりもクイーンの怪盗の美学を理解する事の方が難しい気がするな」
「……僕もそう思うよ」
『……同感です』
「世の中には影や自分の運命すらも盗んでしまった怪盗がいると聞くからね。そんな怪盗がいる中で私が普通の物を盗んで満足しても良いのか。その答えは否だ!」
「……本当にそんな怪盗がいたのか?」
『……不確かではありますが、日本のとある田舎町にはいるようですよ』
「……世の中って広いんだな」
RDの返答に元気が感心した様子を見せていたその時、静かにしていたシュルツがクイーンの足元にある紙束に目を向けてから元気に視線を向けた。
「にゃおん」
「ん……シュルツ、もしかしてその紙束が気になるのか?」
「にゃ」
「シュルツもお仕事がしたいのかな?」
「クイーン、あなた……」
『猫にまで仕事への熱意で負けているのですか……?』
ジョーカーとRDの突き刺すような冷たい視線が向けられる中、クイーンはそれを気にせずに微笑みながらシュルツの頭を撫でる。
「素晴らしいじゃないか、この子は良い怪盗になれると思うよ」
「ウチのシュルツを勝手に怪盗にしようとするな。とりあえず色々見てみよう」
「うん、シュルツが興味を持ったのなら何かクイーンさんが心踊るような獲物があるかもしれないし」
そして一度シュルツをアリスに預けた後、元気は紙束を持つと、全員でその中身に目を向けた。紙束は全てが高価な宝石や有名な絵画の情報やその所有者の情報だったが、その中のある一つを見た瞬間、シュルツは鳴き声を上げた。
「にゃん」
「シュルツ、これが気になるのか?」
「にゃおん」
「これ……『リンデンの薔薇』っていう宝石の情報みたいだね」
「持ち主は
「……いや、これは『リンデンの薔薇』じゃないよ」
「え……?」
「『リンデンの薔薇』という名前は、この星菱という男が手に入れる前に出自を隠すためにつけられた偽名だ。この宝石の本当の名前は……」
クイーンは紙の中の『リンデンの薔薇』を見ながら少し楽しそうに口を開く。
「『ネフェルティティの微笑み』だよ」
政実「第11話、いかがでしたでしょうか」
元気「前回出てきた子猫と子犬に名前がついてたな。それで、原作の話は何話くらいやるつもりなんだ?」
政実「具体的には決めてないけど、だいたい20話前後で出来たら良いなと思ってるよ」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしているので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと……それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」