怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、宝石の中では一番エメラルドが好きな片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。エメラルド……幸運とか希望とかの石言葉を持ってる宝石だったか」
政実「そうだね。緑色が好きなのもあるけど、石言葉が好きなのもあるかな」
元気「なるほどな。さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第12話をどうぞ」


第12話 獲物の決定と教団の暗躍

「『ネフェルティティの微笑み』……」

「でも、どうして名前が違うんですか? さっきは出自を隠すためって言ってましたけど……」

 

 アリスが不思議そうに言うと、RDがそれに答える。

 

『それはこの宝石が盗品だからですよ。二人はネフェルティティという名前に聞き覚えはありますか?』

「……いや、ないな」

「私も……でも、微笑みっていうからには誰かの名前みたいだよね?」

『その通りです、アリス。ネフェルティティというのは、エジプト新王国時代の第18王朝のファラオ──簡単に言えば王様です──であるアクエンアテンの正妃の名です。ファラオとして一般的に有名なツタンカーメンの養母でもあります』

「あ、ツタンカーメンならたしかに聞き覚えがあるな。つまり、この『ネフェルティティの微笑み』はエジプトの博物館から盗まれたのか」

「そういう事だね。見たまえ、この見事な輝きを。美しき女性の名を冠するに相応しいのに、その姿は一人の悪どい金満家にしか見られないんだよ。実に残念だとは思わないかい?」

「たしかに……って、あれ? そういえば、ミック神父がアイリスを拾ったって言ってたのもエジプトだったよね?」

「そうだったな……俺は日本でアリスはイギリス、クレールがフランスでアルテナイとセルゲイがロシア、アイリスがエジプトって言ってた気がする」

「ふむ……それに関しては後で調べてみても良いかもしれないね。さて、RD。『ネフェルティティの微笑み』を取り戻す事に決めたわけだけど、まずはその星菱大造という男と『ネフェルティティの微笑み』について改めて教えてくれるかい?」

『畏まりました』

 

 RDの声が聞こえた後、スクリーンがするすると降りると、そこに指輪につけられた『リンデンの薔薇』と何冊もの本が納められた本棚の前でワインが入ったグラスを片手に持ったふくよかな体型の男性の写真が映し出された。

 

『まず、『リンデンの薔薇』こと『ネフェルティティの微笑み』ですが、これは二十六年前にカイロの美術館から盗まれた物で、発見されたのは中世のエジプトでして、これは百八十カラットあるかなり大粒のダイヤモンドです』

「カラット……ダイヤモンドみたいな宝石に使う単位なのは知ってるけど、百八十カラットだとどれくらいなんだ?」

『カラットは宝石の質量を示す単位で、一カラットが0.2グラムですから、これは36グラムですね。因みに、鑑定では時価数十億はくだらないと言われていますよ』

「す、数十億……そんなにあったら、すごい豪華な教会を建てても余っちゃうよ……」

『ただ、このダイヤモンドは手に入れた人間が必ず不幸に見舞われる事から、“血塗られたダイヤモンド”とも呼ばれています。高価な宝石や絵画などには曰くがついている事が多いので、あまり驚く事ではないですね』

「そうだろうけど、どうしてそういう事が多いんだ? それらに何か力があるわけじゃないだろ?」

 

 首を傾げる元気の問いにクイーンが静かに答える。

 

「物に特殊能力があるというよりは、高価な物が持つ魅力が原因だろうね。例えば……元気、アリスさん、君達がとても高価な宝石を持っていたとして、それを誰かが狙ってるとする。その時、君達はどうする?」

「……別に宝石はどうでもいいけど、それが大切な物なら盗られないように周りを警戒するな。宝石が高価な事を知ってる奴なら、隙をついて盗ろうとしてきてもおかしくないし」

「うん……それにその内、誰も信じられなくなりそうだよね。この人ならって思ってたのに裏切られ続ける事もありそうだし……」

「まあ、そういう事さ。物の価値に目が眩んだ人物は時には強行な手段に出る事もあるし、事故に見せかけて持ち主の命を奪おうとする事もある。それに、盗られまいとして他の注意力を欠いてしまって、不慮の事故に遭う事だってあるから、そうやって不幸を招く物というのは出来ていく事もあるんだ。もっとも、中には本当に力を持つ物もあるかもしれないけどね」

「なるほど……」

 

 クイーンの説明に元気が納得していると、アリスはその隣の写真に写る星菱大造の顔に嫌悪感を示す。

 

「……なんかこのおじさん、私は嫌いかも。絶対に良い人じゃないと思うし……」

『そうですね。彼は星菱大造、日本の資産家の男性で、この『リンデンの薔薇』は数年前に購入したようですが、彼には中々黒い噂が多いです』

「黒い噂……盗まれた『ネフェルティティの微笑み』を持ち続けている時点で良い人間ではないのはわかるけど、しっかりと調べたら色々悪事が明るみに出そうだな」

『ジョーカーの予想通りです。詳細は省きますが、彼にはマネーロンダリングなどの噂がありますよ』

「マネーロンダリング……マネーはお金なのはわかるけど、ロンダリングってなんだろう……?」

『ロンダリングとは洗浄という意味を持つ言葉なので、マネーロンダリングは資金洗浄という意味ですね。ただ、洗浄と言っても実際は綺麗になるわけではなく、犯罪によって得た収益の出所や持ち主を隠す事で警察などからの捜査から逃れようとする事なので、簡単に言えば脱税の疑惑があるわけです』

「……つまり、証拠がないだけで大悪党なのは変わらないわけか」

「そういう事だね。クイーン、星菱大造から『リンデンの薔薇』を盗むのはわかりましたが、どのように盗みますか?」

 

 ジョーカーからの問いかけにクイーンはにこりと笑って答える。

 

「それはこれから考えるさ。それよりも……まずはこの子達の事を考えないといけないんだ」

「この子達って……クイーン、犬猫よりも仕事の方が大事じゃないのか?」

「獲物が決まった以上、仕事ももちろん大事だよ。だけど、この子達が安心して暮らせるような里親を見つけるのも大事だ。シュルツとイヴは二人がお世話をしているけど、この子達には安心出来るような飼い主がいないからね」

「たしかに……クイーンさん、私も手伝って良いですか?」

「もちろん良いとも」

「ありがとうございます。頑張ろうね、元気」

「いや、俺はやるとは言ってないって……」

 

 元気は突然の事に驚くが、アリスはそれに構わず微笑みながら口を開く。

 

「元気だってRDさんのシステム管理には関わってるし、抜け毛による空調の故障の件は心配でしょ? だったら、早めにこの子達の里親を見つけて、その心配を無くした方が良いと思うな」

「……なんだか乗せられてる気はするけど、アリスの言う事も一利あるしやるしかないか。けど……こんなクイーンの姿を見てると、本当に怪盗なのか疑いたくなるな。怪盗なんて本当はいなくてクイーンは怪盗だと言い張る暇人なんじゃないのか?」

「ふふ……私は怪盗だし、この世の中には他にも多くの怪盗はいる。漆黒の夜闇に憧れを抱き、赤い夢の中で遊ぶ子供達が居続けるなら怪盗もまた居続けるのさ」

「赤い夢……? なんだそれ?」

「そうだね……人によって解釈はそれぞれだろうけど、ただ言える事があるとすれば、それは私や友人の名探偵のような存在が活躍をし続ける夢と謎に満ち溢れた素晴らしい物だという事だね」

「説明されてもよくわからないような……」

「まあ、いずれわかるさ。とりあえず今はこの子達の件や『ネフェルティティの微笑み』の件に集中しよう。RD、他に何か情報はあるかな?」

『今のところ、特にはありません。ただ、クイーンが動くとなったら、警備には上越警部と岩清水刑事が配置されるでしょうね』

「ああ、彼らか。ふふ……元気そうだといいね」

 

 クイーンが嬉しそうに笑う中、元気とアリスは顔を見合わせてからジョーカーに視線を移す。

 

「ジョーカー、その二人は誰なんだ?」

「警部さんと刑事さんって事は警察の人なんですよね?」

「うん、そうだよ。二人は警視庁の特別捜査課に配属されていて、警視庁の中でも大分厄介な事件が回されているようだね」

「つまり、クイーンは厄介な相手扱いなんだな」

「だけど、それだけじゃないんだよ。上越警部は私の友人である名探偵とも知り合いで、これまでに遊園地で五人の人間が消えた事件や映画の撮影が行われていた島が消えた事件、夜間に光る怪人の事件などで協力していたみたいなんだ」

「実際はその名探偵が謎が大体解けていても中々謎解きをしようとしないから、警部達が頑張っていただけなんですけどね……」

「それは仕方ないよ。彼が言うようにデータや証拠もないなら、それはただの推測に過ぎず、しっかりとした謎解きではないからね。彼もまた遊び心を大事にしているだけさ」

「……少なくとも、その名探偵も厄介な奴なのはわかった。それで、いつ頃に『リンデンの薔薇』を盗みに行くんだ?」

 

 元気からの問いかけにクイーンは子猫を撫でながら答える。

 

「そうだね……この子達の蚤取りと里親探しを終わらせてからになるから、少し余裕も持って六十二日後かな」

「六十二日……」

「あはは……だいたい二ヶ月後だね。でも、クイーンさんが仕事をする気になったのは良い事じゃないかな?」

『それはそうですが……また予告状を見た上越警部が頭を抱えますよ。彼らはクイーンが犬猫の蚤取りや里親探しを優先しているとは知りませんから』

「そもそも、それを優先するなんて思わないしな……」

「まったくだよ……」

 

 アリスが微笑み、元気達がジトッとした目でクイーンを見る中、クイーンは楽しそうに子猫の蚤取りをしていた。

 

 

 

 

 同時刻、セブン・リング・サーカスが興行のテントを張っている空き地では団員達が荷物の運搬や演技の練習を行っており、団長室ではピエロの扮装をしたホワイトフェイスが机に向かって書類を書いていた。

 

「ふぅ……これで良いか。さて……それでは話をしようか」

 

 ホワイトフェイスが振り向かずに声をかけると、本棚の本を眺めていた短い茶髪の大柄な体格の少年はホワイトフェイスに視線を向けた。

 

「……ようやくか。本なんて読まねぇから待ってる間は暇で仕方なかったぜ」

「そうか。それにしても、断ったにも関わらず君を派遣するとは……あの神製教団というのは中々強引なようだね」

「……そうだな。それで、俺をここに置いてくれるのか、団長さん?」

「まあね。君も派遣されてきた以上は手ぶらでは帰れないだろうし、私は子供は未来を担う素晴らしい存在だと考えているんだ。たとえ、君が神の候補だとしてもね」

「それは助かるな。まあ、身体能力には自信があるから、軽業でもなんでも仕込んでくれて構わないぜ。俺には負けたくない奴がいるから、そいつに再会出来た時はこんな事が出来るようになったって自慢してやらないといけないんだ」

「向上心があるのは何においても良い事だよ。因みに、その負けたくない奴とは誰なのかね? “クレール・カルヴェ君”」

 

 ホワイトフェイスからの問いかけにクレールはニヤリと笑う。

 

「……神野元気。いつも落ち着いていていけすかねぇ奴だよ」




政実「第12話、いかがでしたでしょうか」
元気「ここでクレールが出てきたか……って事は、こんな風に原作の話の時はみんなと再会していけるのか?」
政実「そこはまだ未定。だけど、何かしらの形で再会はさせていく予定だよ」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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