怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、ニュースになる程の事件に遭遇した事がない片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。いや、それは良いことだろ。それくらいお前の周囲が平和なわけだからな」
政実「たしかにね。色々な事はあるけど、そういう事が起きてない今をありがたく思うべきかもね」
元気「そうだな。さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第13話をどうぞ」


第13話 潜入と再会

 クイーンが『リンデンの薔薇』を獲物に決めてから六十二日後の夜、『リンデンの薔薇』がある星菱邸の周囲がクイーンを一目観ようとする野次馬やテレビ局のスタッフ、そして警備に当たる警察官達の声で騒がしくなる中、その野次馬の中に一人の人物の姿があった。

 

「さて……俺はここで待機って団長から言われてるけど、本当に怪盗なんてくるのか? 来るなら来るで良いし、団長からの指示だから断れはしないけど、他のメンバーみたいにちゃんと作戦に参加したかったなぁ」

 

 クレールは少しつまらなそうにしていたが、その表情はどこかワクワクしたものだった。

 

「まあ、俺は俺でこの賑やかし役に徹するか。ウチの団員達の見事なショーをただで観られるのは悪いことじゃ──」

「く、クレール……?」

「え、って……あ、アリス!?」

 

 野次馬達で周囲が賑わう中、クレールは自分を見ながら信じられないといった表情を浮かべるアリスを見ながら自身も信じられないといった表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 クレールとアリスの再会の数分前、超弩級巨大飛行船トルバドゥールは星菱邸上空に浮かんでおり、その船内ではクイーンが星菱邸に忍び込むためにワイヤーを体につけており、その様子を元気達が見守っていた。

 

「これでよし。それじゃあ行ってくるよ、みんな」

「はい、気をつけて行ってきてください、クイーン」

「それにしても……警察や星菱大造も六十二日後っていう微妙な指定には戸惑ったろうな」

「あはは……だね。それに、その間に何匹もの犬猫の里親探しをしたり広告を出したり、その人達に渡してきたりしたのも知ったら、だいぶ頭を抱えそう」

「実際は里親探しは俺とアリスとRD、引き渡しはジョーカーがやって、クイーンは蚤取りしかやってなかったけどな」

 

 そう言いながら元気がシュルツを抱き抱えた状態でジトッとした目で見るが、クイーンは引き裂かれそうな程の風が下で吹く中でワイヤーに吊り下げられながらニヤリと笑う。

 

「分業だよ、分業。それに、里親の最終決定は私がやったんだから、私だって参加しているんだよ?」

「……結果的に里親が全員適正だったのがより腹立つんだよな」

『クイーンは人を見る目はたしかですから。ですが、また連れてこないようにしてくださいよ? ようやくいなくなってこちらとしてはホッとしているんですからね』

「うーん……けど、なかなか賑やかだったし、私の魅力に惹かれてついてきてしまう子も──」

『降下します』

 

 遮る形でRDの非情な声がスピーカーから聞こえると同時にクイーンは目にも止まらぬ速さで降下されていった。

 

「じょーうだんじゃーあないかーあ……」

 

 トルバドゥールとの距離が遠くなる度にクイーンの声が徐々に小さく低くなっていく中、ジョーカーは額を手で押さえた。

 

「……あなたの場合は冗談にならないんですよ」

「……たしかにな」

「あはは……それにしても、今のクイーンさんの声の変化は面白かったなぁ」

『今のはドップラー効果という物ですよ』

「ドップラー降下? そういう降り方があるんですか?」

「いや、違うだろ」

 

 イヴを抱き抱えながら首を傾げるアリスの言葉に元気が冷静にツッコミを入れる中、RDは静かに言葉を続ける。

 

『ドップラー効果というのは、音の波の発生源または観測者が移動する事で観測される音の周波数が変化する現象ですよ。日常生活で一番身近な例は救急車のサイレンでしょうか』

「ああ、たしかにサイレンって近くなると音が大きく高くなって、遠くなると小さく低くなる感じがするな」

『元気の言う通りです。因みに、ドップラーというのはこの現象を発見したC.J.ドップラーから取られていて、ドップラーはオーストリアの物理学者ですよ』

「へー、そうなんだ。RDさんは本当に物知りだね」

『恐れ入ります』

 

 アリスの感心した声にRDが答えていると、それを聞いた元気はため息をつく。

 

「アリス……お前、RDから何か教えてもらったらいつもそれ言ってないか?」

「いわゆる、お決まりのセリフって奴だよ。まあ、本当にそう思ってるから言ってはいるけどね。それに、ジョーカーさんだっていつも東洋の神秘ですねって言ってるし、元気も何か考えようよ」

「……仕方ないから考えとく」

「うん、楽しみにしてるね」

 

 呆れ気味に言う元気の言葉にアリスが嬉しそうにする中、ジョーカーは二人を見ながら小声でRDに話しかける。

 

「……やはり元気君はアリスさんに甘いところがあるな」

『微笑ましいので私は構いませんよ。それに、クイーンからも例のフォルダ用に録画を頼まれてますしね』

「……バレたら怒られそうだな。さてと、クイーンは今どんな状況なんだ?」

『少し待ってくださいね。今、星菱邸の映像を出しますから、リビングまで来ておいてください』

 

 その言葉を聞いて三人が動き出そうとしたその時、イヴはアリスの腕から飛び出すと、床に着地してからクイーンが降下していった出入り口を見つめ始めた。

 

「イヴ、どうしたの?」

「ワンッ!」

「……もしかして、自分も降りたいんじゃないのか?」

「そうなの?」

「ワウンッ!」

 

 返事をするようにイヴがアリスを振り返りながら鳴くと、アリスはRDが見ているカメラに視線を向けた。

 

「……RDさん、私達も外で見てくるのって良いですか?」

『そうですね……今、星菱邸付近には大人数の野次馬や警察官、テレビ局のスタッフなどがいますから、一人で行かせる事は出来ませんね。なので、元気とジョーカーもついていくなら良いですよ』

「俺達もか……」

「まあ、アリスさん達だけ行かせるのはたしかによくないし、少し見てくるくらいなら良いと思う。RD、クイーンに連絡を頼めるか?」

『既にしていますよ。クイーンからも観客が多いのは喜ばしいから、安全にだけ気をつけて行ってくるように返事が来ました』

「クイーンが良いって言ったなら良いか。だけど、俺達から離れないようにだけはしろよ。神製教団も危険だけど、アリスみたいな子供を拐って悪さをしようとする奴も世の中にはいるからな」

「うん!」

 

 アリスが嬉しそうに返事をした後、三人は降下をするためにコンテナ内に入り、そのまま近辺の広場へと降下した。降下後、ジョーカーとアリスが何ともない様子で出てくる中、元気はまだ慣れない様子でため息をつきながら出てくる。

 

「……やっぱりこの感覚には慣れないな」

「うーん……元気だけこうなるし、何か理由でもあるのかな?」

「恐らくね。さて……RD、ここから星菱邸まではどのくらいかかる?」

『数分程度ですよ。ただ、夜道なので気をつけて歩いてくださいね』

「わかった。それにしても……だいぶ星菱邸付近は賑わっているな。ここまで声が聞こえてきているよ」

「そうだな……」

 

 ジョーカーが周囲の物音に耳を澄まし、元気が気配に気を向け、アリスがイヴを抱き直すために少し足を後ろへ引いたその時、その足が何かにぶつかり、アリスはビクッと体を震わせてからそちらに視線を向け、それに気づいた二人もそちらに視線を向けた。

すると、そこには綺麗なドレスを着た女性と少し窮屈そうにタキシードを着たとても大柄な男性がおり、アリスはその大きさに驚いていたが、ハッとしてから慌てて頭を下げた。

 

「ご、ごめんなさい。足をぶつけちゃって……」

「……いや、謝らなくてもいい。この程度なら痛くはない」

「そうよ、可愛らしいお嬢さん。この人は頑丈だから」

「……だいぶ大きな方ですが、何かなされているんですか?」

「ええ、ちょっとこの肉体を活かす仕事をね。あなた達は兄妹?」

「はい、そうです。ちょっと用事があって、帰っているところでした」

 

 ジョーカーの返答に男性は納得顔で頷く。

 

「そうか。今夜はこの辺りに怪盗が出ると聞く。野次馬やそれに乗じた悪人に目をつけられない内に早く帰った方がいい」

「ご忠告、ありがとうございます。二人とも、行こうか」

「うん、お兄ちゃん。お兄さん、お姉さん、さようなら」

「……さようなら」

「ええ、さようなら」

「……ではな」

 

 男女に見送られながら三人は歩き始め、アリスはイヴを抱き抱えながら少し安心したように息をついた。

 

「ふう、ビックリした。でも、優しい人達でよかったぁ」

「ああ。けど、だいぶ対格差のある二人だったな」

「そうだね。それに、二人ともなんだかただ者ではない雰囲気だった。あの肉体を活かす仕事をしていると言っていたけど、ただの仕事ではないのかもしれないね」

「たしかに……でも、悪い人達じゃなさそうでしたよ」

「正体を隠してるだけっていう可能性もあるけどな──と、着いたみたいだな」

 

 元気の言葉通り、三人は星菱邸の前に着いており、門前では警備をしている警察官が野次馬が入り込まないように目を光らせ、門の奥にも鋭い目付きで周囲を見回す警官が数名歩き回っていた。

 

「警備はかなり厳重みたいだな。それに、野次馬やテレビのスタッフみたいな奴も多い」

「そうだね。ただ、クイーンはまだ『リンデンの薔薇』を盗んではいないようだ」

「こんなに人が多いですしね……イヴ、吠えちゃダメだからね?」

「ワン」

「シュルツは……まあ、心配いらないか」

「ニャオン」

 

 二匹が返事をするように鳴き、アリスがイヴに微笑みかけてから辺りを見回していたその時だった。

 

「……え?」

 

 アリスは信じられないといった表情を浮かべると、そのままゆっくりと歩きだし、それに気づいた元気が慌てたようにその後を追うと、アリスは信じられないといった表情で自分を見つめる人物の目の前で立ち止まっており、その人物が誰かわかると、元気も驚きから体を震わせた。

 

「く、クレール……」

「……元気」

 

 アリスから元気へ視線を移すと、クレールの目は驚きの色から敵意の色へと変化した。




政実「第13話、いかがでしたでしょうか」
元気「俺達がクレールと再会したな」
政実「だね。オリキャラであるクレールを交えての話になるし、原作との兼ね合いも考えながら話は進めていくよ」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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