元気「どうも、神野元気です。猛獣使いか……だいぶ難しいだろうし、動物達とも息を合わせないと無理だろうな」
政実「そうだね。ただ、息が合った瞬間はとても気持ちがいいと思うよ」
元気「そうだな。さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第17話を投稿しました」
大テントに入ると、中は他の観客達の声がちらほらと聞こえ、これから始まる夢のような時間への期待に満ちた声を聞きながら元気達は客席に座った。
「さて……どんな風に私達を楽しませてくれるのかな」
「どんな風にって……サーカスを楽しむのも良いけど、『リンデンの薔薇』のありかについても考えないといけないぞ?」
「元気君の言う通りですよ、クイーン。ですが、あそこまで隙の無い男が団長であれば、すぐにわかる場所にはないと思います。果たしてどこにあるのか……」
「うーん……誰かに預けてるのはないですよね?」
「無くは無いだろうけど、そうなると誰に預けてるかを特定しないといけないしな……クイーン、隠し場所は部屋と人物だったらどっちが見つけやすい?」
「そうだね……個人的にはどっちもどっちかな。ただ、私はここかなという場所をもう一つ見つけているよ」
そのなんでもない様子で言ったクイーンの言葉に元気とアリスは驚く。
「え……み、見つけた?」
「ほ、ほんとですか……?」
「ああ、ほんとさ」
「流石は怪盗クイーンですね。それで、どこにあるんですか?」
ジョーカーが問いかけるが、クイーンは三人を見回してから笑みを浮かべながらウインクをした。
「内緒さ。私でも気づけたのだから、君達もすぐに気づけるよ」
「内緒って……」
「えー、教えてくださいよー」
「……そう言うとは思ってました。けれど、さっきの会話の中で気づけるだけのヒントがあったという事ですか?」
「そんなところさ。だけど、それはあくまでも可能性の一つだ。かつてピエロとして舞台に立っていた彼だからこそ、私達の予想もつかない場所に隠している可能性はある。だから、それ以外にも何かをないか考えてみても良いと思うよ」
「可能性の一つ……」
「後、一つだけヒントを出すなら、RDが教えてくれた彼の情報を思い出してごらん。一つ気になるところがあったはずさ」
それを聞いた元気が静かに考え、それとは逆にアリスが小さく唸りながら考える中、大テント内の照明が一斉に消え、続いてステージ上がスポットライトで照らされた。
そこにはホワイトフェイスの姿があり、元気達を含めた観客達の視線を集めながらもホワイトフェイスは落ち着き払った様子で丁寧に一礼をした。
「ようこそ、皆様。我らがセブン・リング・サーカスへ。皆様を待っているのは、セブン・リング・サーカスが誇る一流の団員達と夢のような時間です。え? お前は芸をしないのかと? 私には進行という仕事があるので良いのです!」
そのホワイトフェイスのおどけたような声に観客達からはクスクスと笑う声が聞こえる中、ホワイトフェイスは一度元気達に挑戦的な視線を向ける。
それに気づいたクイーンはお手並み拝見といった様子でウインクをすると、ホワイトフェイスは視線を外してから再び観客達の方へ向いた。
「では、早速皆様と共に夢のような世界へ参りましょう。セブン・リング・サーカス、これより開幕です!」
その言葉と同時に照明が再び消え、ステージが再び照らされた後、ステージ上では次々に芸人達による芸が披露された。竹馬男のスタイリー井上は自身の身長の二倍以上ある竹馬に乗りながらバランスを崩す事なくジャグリングをし、怪力男のジャン・ポールがその巨体に観客達が驚く中で自身の力だけで金属の棒をいとも簡単に折り曲げたかと思えば、次に登場した飛行帽を被ったゴーグル姿のロケットマンはコミックの中のマントをつけたヒーローのようにポーズを決めながら大砲から打ち出されていった。
「わあ……団長さんが一流の団員だって言うだけあってみんなすごいね!」
「たしかにな。だけど、それだけ全員が血の滲むような努力を重ねて、何度も試行錯誤をした結果なんだろうな」
「そうだね。ただ、私だったらもっと華麗に観客達を魅了出来るよ」
「……クイーン、無駄に張り合おうとしないでくださいよ」
クイーンの言葉にジョーカーがため息をつく中、ステージ上では尚も芸人達による芸が披露されていた。
ポニーテールを長い三つ編みにした浅黒い肌の猛獣使い、ビーストがムチを鳴らすと、ライオンやトラといった猛獣やゾウやタカのような動物達すらも立派に芸を披露し、その光景にアリスは目を輝かせる。
「すごい……イヴとシュルツも何か出来るように教えてみようかな?」
「イヴはまだしもシュルツはどうだろうな」
「シュルツは元気に似て物静かだからね。ジョーカー君、試しにあのライオンに殺気を飛ばしてみてくれないかい?」
「それはやる意味があるんですか?」
「良いから良いから」
「……一瞬だけですからね」
根負けした様子で言った後、ジョーカーは静かに息を吸ってからステージ上のライオンに殺気を飛ばす。その瞬間、ライオンは落ち着かない様子でグルルと唸り声を上げ、その様子にビーストは一瞬動揺していたが、声をかけながらムチを再び鳴らすと、ライオンは落ち着きを取り戻してメラメラと燃える火の輪を見事にくぐってみせた。
そして次にステージに現れたのは、妖しげな衣服に身を包んだ黄色いサングラスをかけた男であり、その姿にクイーンはニヤリと笑う。
「彼だよ。警部達に催眠術をかけて、自分達がやった事を私の仕業だと思い込ませたのは」
「催眠術……でも、そんな簡単にかけられる物なのか?」
「たしかに……なんだか難しそうな感じがするよね?」
「ふふ、では見てみようか」
元気達の反応にクイーンが微笑む中、催眠術師のシャモン斎藤はステージ上に観客の一人を呼び、サングラス越しに観客を見つめながら右手を観客の前に翳した。
「次に目を覚ました後、最初に握手をした人間に財布を渡してください」
その言葉を聞きながらシャモン斎藤の目を見ていた観客は少しふらついたが、シャモン斎藤が指を鳴らすと同時にハッとし、シャモン斎藤が握手を求めると、観客は握手を交わした後にシャモン斎藤へ迷う事なく財布を渡した。
「あんな簡単に催眠術を……」
「そんな事が出来るなら、瞬時に催眠術をかけて『リンデンの薔薇』も盗み出せるよね……」
「そうだね。ふふ……けれど、彼はすぐに知る事になるよ。自分よりもうまく催眠術をかけられる存在が近くにいる事をね」
「……よほど『リンデンの薔薇』を盗まれたのが悔しかったんですね」
笑みを浮かべるクイーンを見ながらジョーカーが呆れた様子で言う中、ステージ上にはピエロの扮装をした二人の人物が登場した。マジシャンのプリズムプリズムと鍵師のジョー・セサミが観客達に一礼をした後、ステージ上には檻が運び込まれ、ジョー・セサミは檻に入れられると同時に鉄格子を掴みながら出してくれと言わんばかりに揺らし、プリズムプリズムは看守役としてそれを出来ないと身振りで伝えた。
しかし、ジョー・セサミはどこからか取り出した針金を鍵穴に差し込み、いとも簡単に檻を開けてしまい、それに驚きながらも捕まえようとするプリズムプリズムに追われる形でジョー・セサミはステージ上からはけていき、その光景に観客達からは大きな笑い声が上がる。
その後、司会がマジックショーの始まりを告げると、ステージ上には先程の二人と共に団長のホワイトフェイスが現れた。
「それではこれからマジシャンのプリズムプリズムによるマジックショーを皆様にお見せしましょう。どなたか手伝って頂ける方は……」
そう言いながらホワイトフェイスが観客席を見回していた時、ジョー・セサミはニコニコと笑いながらホワイトフェイスの肩を掴み、ホワイトフェイスはそれに驚きながらオーバーなリアクションを見せる。
それに観客達からクスクス笑う声が漏れる中でホワイトフェイスはキャスターのついた担架に載せられて、その上から細長い箱が被せられると、ホワイトフェイスは頭と足だけが出た状態になった。
「あれは……人体切断マジックって奴か?」
「人体切断……言葉だけ聞くとだいぶ怖いかも……」
「まあ、マジックだからタネも仕掛けも……クイーン、何をクスクスと笑っているんですか?」
「……何でもないさ。さあ、マジックショーを楽しもうじゃないか」
クイーンの言葉に元気達が不思議そうにする中でステージ上ではプリズムプリズムが運ばれてきた様々な剣を手に持ってはそれをホワイトフェイスの体を覆う箱へと突き刺す。
しかし、どれも曲がったり欠けてしまったりしてしまい、その様子を見ていたホワイトフェイスがバカにするようにニヤニヤ笑うと、プリズムプリズムはイライラした様子で日本刀を手にした。
本物の日本刀である事を証明するためにプリズムプリズムが野菜などを斬って見せると、観客達からもざわめく声が漏れだし、プリズムプリズムはニヤリと笑ってから日本刀を振り上げ、ホワイトフェイスの腰辺りを目掛けて勢いよく振り下ろした。
日本刀は箱をそのまま一刀両断し、ホワイトフェイスが呻き声を上げる中、足を覆う箱がゴトリとステージ上に落ち、観客達から悲鳴や息を飲む声が聞こえ始めた。
箱からは赤い液体が溢れだしており、ジョー・セサミは慌てた様子で箱を手に取ると、何とか戻そうと体を覆う箱へと押し込んだ。
そしてドラムロールが鳴った後、箱の上部の蓋が開くと、ホワイトフェイスは何事も無かったかのように起き上がって見せ、おどけた様子で下を出して見せるプリズムプリズムを笑いながら小突いてから観客へ向けて両手を広げた。
「皆様、私はこの通り無傷なのでご安心を。見事なマジックを披露してくれた二人に大きな拍手をお願いします」
その声の後に観客達から割れんばかりの拍手が送られる中、アリスは本当にホッとした様子で胸を撫で下ろした。
「ふう……マジックだってわかってるのに斬れちゃった時は本当にドキドキしちゃった……」
「……日本刀は確実に箱を切断していたはず。あのマジックは一体どうやって……」
「ふふ、どうやったんだろうね。元気、君は何か気づいた事はあるかな?」
「……一応な」
「ほんと!? 流石元気だね!」
「褒められるような事じゃない。クイーン、ちょっと耳を貸してくれ」
「ああ、良いとも」
クイーンが頷いた後、元気はクイーンの耳元で何事か言い、クイーンはそれを聞いた後にニヤリと笑いながら頷いた。
「元気も辿り着いたようだね。実に見事な隠し場所だろう?」
「それが本当ならな」
「隠し場所って……え、それじゃあ今のも『リンデンの薔薇』の隠し場所を見つけるためのヒントになってたの!?」
「そして、元気君はもうその場所に気づいた。つまり、外で会った時と今のマジックショーだけで予想出来るような場所にあるわけですね」
「そういう事だね。でも、まだ教えてあげないよ。教えても良いんだけど、気づいている事を彼に悟られたら隠し場所を変えられてしまうからね」
「う、たしかに……」
「さあ、それを考えるのは後にして、残りの公演を楽しもうじゃないか」
それに元気達が頷いていると、ステージ上には軽業師のシルバーキャット瞳が現れ、天井から吊るされた一本のロープにぶら下がってまるで重力がないかのように自由自在にダンスを踊ってみせた。
その後、再びステージ上にはホワイトフェイスが現れ、観客達がそろそろ終わりかと考える中、ホワイトフェイスは観客達に一礼をした。
「皆様、お楽しみ頂けたでしょうか。しかし、夢のような時間はまだ終わりません。今からは更なる夢の世界へと皆さんをご招待致します!」
その言葉と同時に照明が一斉に点灯した。すると、ホワイトフェイスが立つステージの周囲を囲むようにして芸人達が立つステージが出現しており、その光景に観客達が驚く中で芸人達は一斉に自分達の芸を始めた。
軽業師がその身軽さを披露し、怪力男が見るからに頑丈な鉄柱をいとも簡単に折り曲げる中、猛獣使いの指示で猛獣達はテントに響き渡る程の雄叫びを上げる。
マジシャンがまるで魔法のようにあらゆる物を出したり消したりする中で催眠術師は観客をステージに上げてみるみる内に催眠状態へと誘い、竹馬男が体勢を崩す事なく宙返りして見せると、大砲男は大きな音を立てて宙へと飛び出していった。
「す、すごい……もうすごいっていう言葉しか出てこないよ……!」
「……七つのリングで同時に披露される演目、セブン・リング・サーカスの由来はこれか。アリスの言う通り、これは本当にすごいな」
「たしかにフィナーレに相応しい演目だね」
「ああ、実に素晴らしいよ。しかし、こうなると残念だな……」
「残念ってどうしたんですか?」
「今日の内に『リンデンの薔薇』を見つけ出してしまおうと思ったんだけれど、ここまで見事なショーを見せられてしまったからね。今日のところはそれを断念せざるを得ないよ」
「別に断念する必要はないと思うけど……まあ、今回ばかりはクイーンに賛成しておくか」
「私も賛成!」
「……仕方ないですね。ですが、盗むと決めた時にはしっかりとやってくださいよ?」
ジョーカーの言葉にクイーンは頷く。
「もちろんだとも。この怪盗クイーンに不可能はないからね」
そう言った後、クイーンはまるで子供のようにステージ上で繰り広げられる夢の世界に目を輝かせていたが、その顔は好敵手を見つけたといった様子で不敵な笑みを浮かべていた。
政実「第17話、いかがでしたでしょうか」
元気「今回の話で俺もリンデンの薔薇の隠し場所が思い当たったわけだけど、それに関しては後々明らかになるんだよな?」
政実「そうだね。だけど、オリジナルの隠し場所もありかなとは思ってるよ」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」