怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、好きなぬいぐるみは犬のぬいぐるみの片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。犬か……一般的にはぬいぐるみは熊のイメージが強いけどな」
政実「物語で出てくる時は大抵が熊な気はするよね」
元気「そうだな。さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第19話をどうぞ」


第19話 勝負への思い

「ただいまー」

 

 RDが降ろしたコンテナに元気達と共に乗ってトルバドゥールの中へ戻り、リビングへと戻ってきたアリスがにこりと笑いながら言うと、RDはアリス達をカメラで見ながらスピーカーから声を出した。

 

『おかえりなさい、皆さん。おや……皆さん、何か持っているようですが、それは何ですか?』

「えへへ、これはですね……ホワイトフェイス君人形ですよ!」

『ホワイトフェイス君人形……?』

「公演の後にホワイトフェイスから団長室まで呼ばれて、クイーンがホワイトフェイスとの勝負に乗ってきたんだ。それで帰る前にそれを貰ったんだけど、今度土産物の一つとして売る物のサンプルなんだとさ」

『ふむ……全四種で、それぞれ表情で喜怒哀楽を表しているのですね』

「私が赤いスーパーホワイトフェイス君人形は作らないのかと聞いたら、アイデアの一つとして加えると言っていたよ。これで強気に答えたい時でも安心だね」

「何の話をしているんですか、あなたは……」

 

『喜』のホワイトフェイス君人形を持ってウインクをしながら言うクイーンの言葉に『怒』のホワイトフェイス君人形を持つジョーカーがため息をつく中、『楽』のホワイトフェイス君人形を持つアリスはカメラに向かって人形を高く上げた。

 

「これはRDさんへのお土産って事にするね」

『アリス……はい、ありがとうございます。しかし……サンプル品とはいえ、ホワイトフェイスも気前が良いのですね』

「たしかにな……これ、何か細工とかされてないのか?」

「大丈夫じゃないかな。こんなぬいぐるみにする細工なんて想像もつかないし」

「そうでもないよ。例えば……この内のどれかに『リンデンの薔薇』を仕込んでいる、とかね」

 

 その瞬間、元気達の顔が強ばる。

 

「……その可能性があるのか?」

『その人形のサイズは一般的なぬいぐるみと同程度のサイズですし、ないわけではありませんが……一応、スキャンをして調べてみますか?』

「ああ、そうだな。RD、頼む」

『畏まりました。では、一度四つともお預かりしますね』

 

 天井から伸ばされたアームに元気達はホワイトフェイス君人形を渡し、それらが消えていくと、ジョーカーはクイーンに視線を向けた。

 

「クイーン、どうしてあの人形に『リンデンの薔薇』が仕込まれていると思ったのですか?」

「RDが言っていたように気前が良いと思ったからさ。ウチには元気とアリスさんがいるけど、アリスさんはともかく元気はそういう人形を貰ってもあまり嬉しいタイプではない。実際、貰った時になんだこれはみたいな顔をしていたしね」

「まあな」

「そして『リンデンの薔薇』を盗み出して、私達がセブン・リング・サーカスを訪れるまでは数日の余裕があった。それなら、事前にぬいぐるみに『リンデンの薔薇』を仕込んで、サンプル品だからと私達に渡すだけの事は出来るよ。

まあ、彼は子供達が好きなようだし、本当にプレゼントのつもりで渡してくれた可能性はあるし、まずはRDの調査待ちかな」

「そうですね」

 

 アリスが頷きながら答えていると、四人が帰宅した音を聞き付けたのかシュルツとイヴがリビングに入ってきた。

 

「わんわんっ!」

「ふふ、ただいま。二匹ともいい子にしてた?」

「わふっ!」

「にゃう」

「まあ、RDが面倒は見ててくれただろうしな。それにしても、二匹とも部屋で寝てたはずなのに、よく俺達が帰ってきたのがわかったな」

「賑やかにしてたから起きたのかもね」

「……だな」

 

 二人がそれぞれのペットを抱き上げていると、スピーカーからRDの声が聞こえ始めた。

 

『スキャンが終わりましたよ。中に不審な物は入れられていないようです』

「ありがとう、RD。それじゃあ本当にプレゼントのつもりだったのか」

「みたいだね」

『ぬいぐるみ達は順番通りにして機関室に置かせてもらいました。中々作りはしっかりとしているようでしたし、本当に商品化するなら人気は出ると思いますよ』

「そうだね。さて……ホワイトフェイスに勝負を挑まれた事だし、早速来週に向けて準備をしなくてはね」

「準備……そういえば、今回も変装はするんだよな? 一体誰に変装するんだ?」

「それは内緒さ。当日をお楽しみに」

 

 ウインクをしながらクイーンが言うと、アリスは少し不満そうに頬を膨らませる。

 

「えー、教えてくださいよー……」

「ダメ。教えてしまったら、当日に君達は私の行動が気になってしまって、それでホワイトフェイス達に気づかれてしまうかもしれないからね」

「なるほど、建前はわかった。本音はなんだ?」

「その方が面白いだろう?」

「……そんなところだと思った」

 

 クイーンの答えに元気がため息をついていると、クイーンはポケットからデフォルメされたクイーンのマスコットがついたストラップを取り出した。

 

「私が正体を明かす前に答えられたら、このストラップをプレゼントするから、頑張って当ててみてくれ」

「わあ、可愛い。これ、どうしたんですか?」

「『リンデンの薔薇』を盗みに行った日、テレビ局から視聴者プレゼントとして出してもらっていた物の余りさ。こっちも中々よく出来ているだろう?」

「そんな事をしてたのか……」

「結果的に彼らに『リンデンの薔薇』は奪われてしまったけれど、ストラップへの応募は多かったようだよ」

「そうなんですね……元気、一緒に頑張ろうね」

「別に欲しくないって……そういえば、当日にあのぬいぐるみを持ってきて欲しいって言われてるけど、あれはなんでなんだろうな?」

 

 元気が不思議そうに首を傾げると、その様子にRDはアームを腕組みをするように絡ませた。

 

『ぬいぐるみをですか……因みに、どのぬいぐるみを持ってきて欲しいと言われているのですか?』

「俺が持ってた『哀』とアリスが持ってた『楽』だ。ホワイトフェイスは当日の関係者用パスと一度引き換えるためって言ってたけど、わざわざ引き換える必要なんてないと思う」

「たしかに……あ、もしかして本当にスーパーホワイトフェイス君人形にしてくれるとか?」

「それか喋るようにしてくれるとかね」

「スーパーになる必要はないし、喋らなくてもいい。とりあえず当日はその二つを持っていくから、行く前に機関室に寄るよ」

『わかりました。時にクイーン、今回の勝負に勝算はあるのですか?』

 

 RDからの問いかけにクイーンは自信満々に答える。

 

「私を誰だと思っているんだい? 私は怪盗クイーンだ。一度はしてやられたけれど、今度は絶対に負けないさ」

『その答えを聞いて安心しました。では、そろそろ夕食にしましょうか』

 

 RDのその言葉に全員が頷いた後、元気達は揃って食堂へと向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 同時刻、セブン・リング・サーカスの団長室にはホワイトフェイスとクレールの姿があり、ホワイトフェイスが机に向かって書類仕事をする中でクレールは本棚にもたれ掛かっていた。

 

「団長、勝負なんて持ちかけて本当に良かったのか? 団長が負けるとは思ってねぇけど、向こうだってかなりの腕なんだろ?」

「そうだな。だが、この勝負に負けるつもりは一切ない。そのためにちょっとした小細工もしたのだから」

「小細工……ああ、あのホワイトフェイス君人形とかいうやつか。けど、あれが近々本当に売り出す奴のサンプル品なのは間違いないし、別に何か仕組んでるようには見えなかったぜ?」

「まあ、あれには何もしていないからな。小細工こそしたが、あのアリスという少女がぬいぐるみを好きそうに見えたから渡そうと思ったに過ぎない」

「たしかに、アリスはぬいぐるみは好きだし、変わった物まで可愛いっていう奴だからな。けど、あれに小細工したって、一体どんな小細工をしたんだ?」

 

 クレールからの問いかけにホワイトフェイスは一度ペンを動かす手を止めてから答える。

 

「クレール、人が油断をするのはどういう時だと思う?」

「油断をする時? なんだろうな……基本的には安心しきってる時じゃないのか?」

「そうだな。これなら平気だと思ったりなんとかなったと感じたりした時に人は緊張の糸がほどけ、その糸がほどけきると油断をする。本当に大丈夫であるなら、緊張感を持たなくても良いからな」

「まあ、そうだろうな。けど、それが一体──」

 

 その時、クレールはハッとすると、何か思い当たった様子を見せる。

 

「……まさかそういう事か?」

「俺が仕掛けた小細工には気づけたようだな。だが、そこまでは流石に向こうだって気づくだろう。だから、当日にもう一つ小細工を仕掛けさせてもらう事にしよう」

「もう一つ……それってなんなんだ?」

「それは当日の秘密だ。そしてその小細工が成功した時、俺の勝利は確定するだろう」

「それくらいのレベルって事か……ところで、今は“例の場所”にまだあるのか?」

 

 クレールからの問いかけにホワイトフェイスは静かに頷く。

 

「ああ。今は移動させておく必要はないからな。もっとも、“常に”移動しているようなものだが」

「たしかにな。けど、そのままそこに隠しててもバレないんじゃないのか? クイーンは隠し場所がわかってるみたいな事を言ってたけど、ハッタリの可能性もあるだろ?」

「そうだな。だが、その駆け引きを楽しむのも今回の勝負の醍醐味だ。よって、小細工については予定通り行う事にするよ」

「……団長」

「なんだね?」

「……勝負、絶対に勝てよ。アンタの願いには興味はないが、ここまで世話になってきたアンタが負ける姿は正直見たくない。アンタには他の団員達にとってカッコいい父親の姿のままでいてほしいからな」

「……ああ、そうだな。もとより負けるつもりはないが、より負けるわけにはいかないと感じたよ。ありがとう、クレール」

「……どういたしまして」

 

 そっぽを向きながら答えるクレールの姿にホワイトフェイスは一瞬目を細めた後、再び書類仕事へと戻ったが、二人の間に流れる空気はとても穏やかな物だった。




政実「第19話、いかがでしたでしょうか」
元気「次回からリンデンの薔薇を巡る勝負が始まりそうだな」
政実「そうだね。因みに、事情があって映画は観られなかったけど、映画のノベライズは買ってあるから、その辺の内容も混ぜていく予定だよ」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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