怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、好きな警部は上越警部の片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。なんだかんだで上越警部なんだな」
政実「うん。メインで出てくるのは同じ作者さんの別作品ではあるけど、少し頼りないところがあっても決めるところはちゃんと決める人だし、色々な警部キャラの中では一番かな」
元気「そっか。さてと、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第20話をどうぞ」


第20話 一時的な共同戦線

 クイーンとホワイトフェイスの対決当日、セブン・リング・サーカスが公演を行う広場に来ていた元気とアリスは辺りを見回した。

 

「やっぱり今日も人が多いね……クレールもいてくれるけど、はぐれないように気を付けなきゃ」

「そうだな。RD、カメラの調子はどうだ?」

 

 アリスに返事をした後、元気が持っているホワイトフェイス君人形に声をかけると、耳につけていたイヤホンからRDの声が聞こえ始めた。

 

『はい、バッチリですよ。しかし、元気も少しずつクイーンの助手として立派になってきましたね。回収される事をわかっていて、このぬいぐるみに監視カメラを仕込む事を考えたのですから』

「たしかに。これなら回収されてもその間の事をRDさんが見ていてくれるし、カメラが見つかってももう映像はRDさんが保存してるから問題なさそうだね」

「ああ。ただ、カメラで見られない場所も当然あるから、俺達も注意深く見る必要はある。だけど、アリスは別にサーカスの裏側見学を楽しんでてくれて良いからな」

「ありがと、元気。でも、私だって怪盗クイーンの助手見習いだし、これからのためにももっと力になりたいから」

「……わかった。けど、無理だけはするなよ?」

「うん!」

 

 アリスが返事をし、元気がふわりと微笑んでいた時、二人の元に一人の人物が近づいた。

 

「おい、お前達」

「……クレールか」

「おはよう、クレール。今日はよろしくね」

 

 アリスがにこりと笑いながら言うと、クレールは二人の様子にため息をつく。

 

「はあ……お前ら、今日はあのクイーンって奴の補佐みたいなもんなんだろ? それなら少しは緊張感みたいなのを持ったらどうだ?」

「無いわけじゃない。ただ、変に警戒したり忙しくキョロキョロ見たりしてても見つからないと思ってるだけだ」

「実際、ホワイトフェイスさんだってそう簡単には負けるつもりはないんでしょ?」

「ああ。それに、俺は団長には勝って欲しいと思ってる」

「自分を世話してくれている人だからか?」

 

 元気からの問いかけにクレールは頷く。

 

「それもある。だけど、団長は団員達やスタッフ達にとって良い団長でありカッコいい父親なんだ。そんな団長が負けている姿をあいつらに見せてほしくないんだ」

「クレール……」

「……話が長くなったな。とりあえず裏側に案内するけど、もうお前達のとこの二人は来てるのか?」

「いや、俺達が出てくる時にはまだ二人ともいたな」

「クイーンさんが言うには、私達が後に出ようとしたら自分達が何に変装してるかわかって、私達が意識しすぎてしまうからだってさ」

「つまり、お前達も二人がどんな姿になってるかはわからないのか」

 

 クレールの言葉に二人が頷くと、クレールは再びため息をつく。

 

「はあ……それじゃあ本当にお前達の反応から察するのは難しいんだな」

「アテが外れて残念だったな」

「……なら、仕方ねぇ。俺はお前達の案内に専念するぜ」

「うん、わかった。それにしても……今日も人が多いんだね。セブン・リング・サーカスの公演っていつもこうなの?」

 

 アリスが周囲を見回す中、クレールも同じように周囲を見ながら答える。

 

「ああ。この前も見たと思うが、ウチの団員達は一流揃いだから、公演するとなればすぐに噂は広まるみたいだ。ただ……今日は警察の人間みたいなのがちらほら見えるな」

「警察……そっちが何かしたんじゃないのか?」

「いや、してないはずだ。そもそも警察に通報するくらいなら、勝負なんて仕掛けないだろうしな」

「たしかに……」

 

 アリスが顎に手を当てながら軽く俯いていた時、無意識に一歩後ずさると、話しながら近づいてきていたスーツ姿の男性二人組の内の一人にアリスはぶつかってしまった。

 

「きゃっ」

「アリス、大丈夫か?」

「う、うん……」

 

 元気からの問いかけにアリスが少し驚きながら答えていると、アリスがぶつかってしまった男性が頭をポリポリと掻きながら申し訳なさそうに話しかけてきた。

 

「お嬢ちゃん、すまなかったね。話に夢中になってしまってお嬢ちゃんに気づけていなかったよ」

「い、いえ……私こそごめんなさい。考え事してるとそっちに意識が全部向いちゃうみたいで……」

「はは、それくらい真剣になっていたわけだから決して悪い事じゃないさ。けど、周りには気を付けた方がいい。お友達もいるようだけど、お嬢ちゃんのように可愛らしい子を拐おうとする悪者もこの人混みに紛れていないとも限らないからね」

「わかりました。ありがとうございます、おじさん」

「お礼なんて良いさ。おじさんは君達のような子達が犯罪に巻き込まれないようにするのが仕事だからね」

 

 小太りの中年男性が優しい笑みを浮かべる中、元気は少し警戒した様子で男性に話しかける。

 

「……それが仕事って事は、アンタ達は警察官なのか?」

「ああ、そうだ。ワシは上越(じょうえつ)、階級は警部だ。そしてこっちが部下の岩清水(いわしみず)君だよ」

「岩清水です、初めまして」

「ワシらはちょっと変わった事件を扱う係で、あまり詳しくは話せないが、今日もその関係でここに来ているんだよ」

「変わった事件……例えば、“怪盗”とかか?」

 

 元気が少し挑戦的な視線を向けながら聞くと、上越警部の顔は優しげなものから警察官らしい真剣なものに変わった。

 

「……まあ、そういう物も扱う事はあるか。実際、最近は怪盗クイーンという奴の事件を扱う事が多いしな。ただ、ワシらが扱うのはそれだけでもないから、簡単に言うなら厄介な事件の担当みたいな物か」

「でも、警部さん達も大変なんじゃないですか? 厄介な事件って事は、それだけ解決も時間がかかるわけですし……」

「そうだな。だが、ワシらにはちょっとした変わり者の知り合いがいるし、大変だからと言って投げ出したりふて腐れたりする気もないよ。今日も知り合いの子達がここに来ているようだから、そんな姿を見せるわけにもいかないしな」

「知り合いの子ですか?」

「ああ。あるテーマパークで五人の人物が姿を消した事件でさっき言った変わり者と一緒に知り合った子達なんだが、その後も何かと事件現場で出会うようになってな……この前もここに来る事を楽しそうに話していたよ」

「そうなんですね。それじゃあ私達も会ったりするのかな?」

「かもしれんな。あの子達はあまり物怖じする子達ではないし、三つ子の女の子達だから出会ったらすぐにその子達だとわかるはずだ」

 

 上越警部が両目を瞑りながら言っていると、隣で静かにしていた岩清水刑事が仏頂面で耳打ちをする。

 

「警部、そろそろ」

「おお、そうだな。だが、その前に君達にワシの名刺を渡しておこう。あまり考えたくはないが、君達も事件に巻き込まれる可能性はあるからな。もしも変わった事件に巻き込まれて困った時はかけてきてくれ」

「わかりました、ありがとうございます」

「……ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「どういたしまして。では君達、よい一日を」

「失礼します」

 

 上越警部が軽く手を上げながら言い、岩清水刑事が表情を変えずに頭を下げて去っていった後、元気は渡された上越警部の名刺を見ながらポツリと呟いた。

 

「上越警部……前にクイーンから名前は聞いてたな」

「うん、そうだったね。けど、あの反応からすると、警部さん達はやっぱりクイーンさんがここに来るのを聞いて配備されてるみたいだね」

「だけど、こっちは本当に何もしてないぞ? してるなら、団長から前もって言われそうだし……」

「そうだな。となると、他のところからその情報が漏れてるのか……?」

「他のところ……え、まさか神製教団とか!?」

「無いわけじゃないな。けど、そうなると俺達はそっちにも気を向ける必要があるな。神製教団の仕業だとしたら、何のためにそんな事をしたのか知っておかないといけないからな」

 

 真剣な表情を浮かべるクレールに対して元気も同じように真剣な様子で頷く。

 

「ああ。だけど、そうじゃない可能性も当然あるから、あまり気を張りすぎないようにしよう。因みにクレール、何か心当たりってないのか?」

「心当たりって、ここに警察がくる事についてだよな?」

「そうだ」

「心当たり……これと言ってはないが、少し前に変な男が団長を訪ねてきたのは見かけたな」

「変な男?」

「スーツを着た男で、たしか黒田って名前だったかな。警察関係者かはわからないけど、だいぶ冷たい雰囲気の奴であまり良い気分がしなかったのは覚えてる」

「黒田……」

『元気、アリス、一応調べておきますか?』

「……そうだな。念のためそうしておくか」

「RDさん、お願いします」

『畏まりました』

 

 RDが答えると、イヤホンをつけていないクレールはポカーンとする。

 

「お前達、他にも仲間がいるのか?」

「ああ、世界最高の人工知能を自称する奴がな」

「本人は歌って踊れる人工知能でもあるって言ってたよ。RDさんが歌って踊ってるところ、見てみたいなぁ……その時のRDさん、白衣の似合うメガネをかけたクールな黒い髪の男の人みたいな姿だったりして」

「いやに具体的だな。まあ、そんなわけでウチにはそういう仲間もいる。黒田っていう男の件や神製教団の件についてはRDにも調べてもらうから、対決の事も忘れずに俺達もそれについては調べてみよう。お互いに保護者同士の勝負に水を差されたくはないしな」

「ああ、わかった。現段階でお前達と協力する事になるのはあまり気が進まないが、これも団長達のためだと思えば良いからな」

「うん、それじゃあ改めて案内よろしくね、クレール」

「ああ」

 

 アリスの言葉にクレールが頷きながら答えた後、サーカスの公演を前に賑わう人混みのなかを三人はゆっくりと歩き始めた。




政実「第20話、いかがでしたでしょうか」
元気「上越警部達と知り合って、名刺まで手に入れたけど、後々必要になってくるのか?」
政実「そのつもりだけど、どうして行くかはまだ未定かな」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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