怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、コンタクトレンズにも挑戦したい片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。コンタクトレンズ……ああ、そういえば目が悪いんだったか」
政実「うん、普段はメガネだけど、コンタクトレンズにもしたいなとは思ってるよ」
元気「なるほどな。さてと、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第21話をどうぞ」


第21話 作戦と新たな出会い

 大テントに着いた後、元気達は公演を観るために入っていく観客達とは逆にテントの裏へとまわった。そこではスタッフ達が公演の準備のためにあくせく働いていたが、クレールの姿を見ると、誰もが朗らかな笑みを浮かべながら話しかけ始めた。

 

「おっ、クレール。そちらが団長が言っていたお客様か?」

「そうです」

「案内、しっかりとやれよ?」

「同い年の子達みたいだし、変に緊張はしないと思うけどね」

「任された仕事はしっかりとこなしますから、心配はいりませんよ」

 

 元気達と接する時とは違うクレールの姿にアリスはクスクスと笑う。

 

「クレールが敬語使って話してるのってなんだか新鮮だね」

「たしかにな」

「元気もクイーンさんやRDさんにお試しで敬語を使ってみたら?」

「……使おうとするとなんだかむず痒くなるんだ。俺の場合、性に合わないのかもしれないな」

「そっか。それなら仕方ないけど、必要な時は我慢してでも使わないといけないよ?」

「……善処する」

 

 ため息をつきながら元気が答えていると、その姿にクレールは呆れたような顔をする。

 

「お前って本当にアリスにだけは甘いよな。俺達に対しては超激辛のくせして」

「それならお前に対しても激甘にしてやろうか? お前がそんな俺を見たいならだけどな」

「俺に対して甘い元気……うえ、なんだか気持ち悪いな……」

「それに、別にアリスに対して甘くしてるつもりはない。アリスの言葉には自然と従っておこうと思えるだけだ」

「たしかに元気って私のお願いはいつも聞いてくれるよね」

『そうですね……私はこれまで元気は信頼がおけるアリスの言葉には自分から従っていると考えていましたが、そこには何か秘密があるのかもしれませんね』

「秘密、か……それはそれで気になるけど、今は『リンデンの薔薇』の方が優先だ」

『はい。それについては後で──』

 

 元気の言葉にRDが答えていた時、それを遮る形で元気達のイヤホンに男性の大声が響いた。

 

『こ、ここはどこだ……!?』

「う、うるさ……」

「み、耳が……キーンって……」

「おい、大丈夫か?」

「だ、大丈夫だ……というか、今の声ってたしか……」

「うん……さっき会った岩清水さんの声だったような……」

『ご名答です。現在、本物の岩清水刑事の身柄はこちらでお預かりしています』

「本物の……それじゃあさっき会ったのが、クイーンかジョーカーの変装なわけか」

Exactly(その通りでございます)

「って事は、話し方からすると、あれがジョーカーさ──」

 

 その瞬間、アリスはハッとしながら口を押さえたが、クレールはため息をついてから静かに首を横に振る。

 

「……誰にも言わないから安心しろ。まったく……お前達もちょっと抜けてるところがあるよな」

「お前が加わったら貴重なツッコミ要員が増えそうだな」

「遠慮しておく。ほら、早くそのぬいぐるみと関係者用パスを交換するぞ」

「ああ」

「はーい」

 

 二人が返事をした後、三人は大テント内に裏口から入った。すると、そこにはマジシャンのプリズムプリズムの姿があった。

 

「おっ、クレール。お客様をお連れしてきたのか?」

「ああ、団長からの指示だからな」

「あれ? プリズムプリズムさん達に対してはいつも通りなんだね?」

「どうやら俺達はクレールからしたら少し特別な扱いみたいだからさ。という事で、小さなお客様達に自己紹介をしよう。俺はプリズムプリズム、このセブン・リング・サーカスでマジシャンをしているんだ」

「……神野元気だ」

「アリス・タナーです。よろしくお願いします」

「よろしく。自己紹介記念にちょっと面白い物をお見せしよう」

 

 そう言うと、プリズムプリズムはポケットから三枚のコインを取り出し、手のひらに載せて元気とアリスに見せた。そして一度コインを握り込み、手を再び開くと、コインは全て消えていた。

 

「えっ、コインがない!」

「ふふ、良い反応だ」

 

 アリスがその光景に驚く中でプリズムプリズムは満足げに再び手を握り込み、もう片方の手で三回手を叩いてから手を開くと、そこには消えたはずのコインが出現していた。

 

「コインが戻ってきてる! え、どうやったんだろ……!」

「これはまだ初歩のマジックだよ。けれど、楽しんでもらえたようでよかった」

「俺達はそういう物とは無縁の生活をしてきてたからな。それで、どうしてアンタがここにいるんだ?」

「親父から君達のホワイトフェイス君人形と関係者用パスを交換してくるように仰せつかったんだ。という事で、まずはホワイトフェイス君人形を預からせてもらうよ」

 

 その言葉に元気達が頷き、プリズムプリズムは『哀』と『楽』のホワイトフェイス君人形を受け取ると、二人にポケットから取り出した首から下げるヒモがついた関係者用パスを渡した。

 

「これが関係者用パスだ。これを見せれば、どのテントでも好きなように入ってこられる。もちろん、団長室もね」

「団長室も良いんですか?」

「親父からは良いと言われてる。それだけ君達の捜索を邪魔したくないんだろう」

「悪い言い方をすれば、そこまで余裕を持てる程に俺達に勝てる気しかしないって事なんだろうな」

「ははっ、かもしれないな。それでは、そろそろ俺は行くよ。元気君、アリスさん、よい一日を。クレール、二人の事をしっかりと案内するんだよ」

「言われなくてもわかってる」

「よろしい。では」

 

 二つのホワイトフェイス君人形を持ったプリズムプリズムが去っていくと、元気は小さく息をついてから右手の人差し指を右目に近づけた。その瞬間、元気の右目にはめられたレンズは青く光り、それを見たクレールは目を丸くした。

 

「え……なんだよ、それ……」

「RDのカメラと連動してるコンタクトレンズだよ。RD、カメラの調子は大丈夫か?」

『はい。レンズもぬいぐるみ内のカメラもバッチリです』

「よし……俺の自前のカメラアイもあるし、後は色々見てまわるだけだな」

「カメラアイ……もしかして、お前の見た物は忘れないっていうあれか?」

「うん、そうだよ。元気のカメラアイとRDさんのカメラと連動してるコンタクトレンズ、そして人形に仕掛けてあるカメラと私の黙視。怪盗助手としてはまだまだだけど、私達は能力とテクノロジーの力で頑張るんだ」

「そうだな。ところで、岩清水刑事の様子はどうだ?」

 

 元気の問いかけにRDは静かに答える。

 

『はい、警戒こそしていますが、少しは落ち着いたようです。現在地が私達のアジトであるトルバドゥールだという事、自身に変装している人物がいる事などは話してありますし、イヴとシュルツも特別警戒しては──』

『おい、誰と話をしているんだ! まさか……怪盗クイーンとか!?』

「……この刑事、すごくうるさいな」

「あはは……でも、職務にはすごく真剣な人なんだろうなって思うよ。何となくだけどね」

「真剣すぎても良くない時はあるけどな。RD、別に俺達の事も話して良いぞ。どうせその刑事が俺達の部屋まで探索しに行くだろうしな」

『畏まりました。それで、まずはどこから見ますか?』

「そうだな……色々見てまわりたいけど、アテもなく探すのは明らかに効率が悪いからな。クレール、因みになんだが、お前は『リンデンの薔薇』の隠し場所は知ってるのか?」

 

 顎に手を当てながら元気が問いかけると、クレールはコクリと頷く。

 

「一応な。ただ、俺から場所を聞き出そうしても教えるわけはないし、俺が知ってるのはあくまでも昨夜までの場所だ。団長が場所を変えてたら探しようはねぇよ」

「それもそうだね……うーん、ホワイトフェイスさんが隠してそうな場所ってどこなんだろ……」

「元気、お前は見当がついてるのか? あのクイーンって奴は場所に心当たりがあるようだったけど……」

「俺も一つだけ見当がついてるし、クイーンが心当たりがあるのも同じ場所だ。だけど、あのホワイトフェイス人形を渡してきた辺り、思い当たった場所にはもうないだろうけどな」

「どういう事?」

 

 不思議そうなアリスに対して元気はクレールを見ながら話しかけた。

 

「クレール、あの人形には隠されてなかった。だけど、あれも撹乱するための作戦なのは間違いないよな?」

「……嘘を言っても仕方ないか。ああ、アリスがぬいぐるみを好きそうだからっていうのもあったようだけど、あのホワイトフェイス君人形を使ったのも小細工の一つだと言ってたな」

「でも、何もないってRDさんは言ってたよ?」

「その“何もない”っていうのが罠なんだ。俺達が中に入ってるかもしれないと疑うのは想定内だったから、ホワイトフェイスは当然中には入れておかない。

そして中には無いから、これはただのぬいぐるみなんだろうと俺達が考えるのを見越していて、後からぬいぐるみに関連した何かを仕掛けてくる。わざわざぬいぐるみを回収したのはたぶんそれが理由だ」

「そっか……たしかにどうしてホワイトフェイス君人形と関係者用パスを交換するんだろうって話してたもんね」

「ああ。だから、この探索時間中もしっかりと探すけど、後でぬいぐるみが戻ってきたら念入りに探すぞ。可能性があるならとことん追求するべきだからな」

「了解しました、元気隊長!」

 

 元気の言葉にアリスが敬礼をしながら答え、その様子を見ていたクレールが少し安心したようにニヤリと笑っていると、そこに一組の男女が近づいた。

 

「ねえ、もしかしてなんやけど、君達はここの関係者だったりするん?」

「え?」

 

 女性からの問いかけに元気が不思議そうな顔をしながら視線を向けると、スーツをピシッと着こなしたメガネの若い女性とスーツ姿の大人しそうな男性がそこにはおり、アリスが少し驚いた様子を見せる中で元気はアリスを背で軽く隠しながら答えた。

 

「……正確に言えば、関係者はこっちのクレールだけで、俺達はここの団長から今日一日だけ関係者用パスを渡されているだけだ」

「あ、そうなんやね。お子さんやのに首から何か下げてここにおるから、てっきりそうやと思ったわ」

「ですね。でも、どうして団長さんからそんな許可を貰っているの?」

「えっと、それは……」

「それはさておき、アンタ達こそ何者だ? 見たところ、アンタ達も何か理由があってここまで来てるみたいだけど……」

「おっと、たしかに自己紹介がまだやったね」

 

 そう言うと、スーツ姿の女性は微笑むと、名刺を取り出し、それを元気達の前に出した。

 

「うちの名前は伊藤真里、旅と料理の情報紙、『セ・シーマ』の編集者よ」




政実「第21話、いかがでしたでしょうか」
元気「前にクイーン達との話題に出てきた伊藤さんとも出会ったな。こうなると、俺達はこの先も色々な人との出会いを果たしそうだな」
政実「一応その予定だけど、色々考え中かな」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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