怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、やりがいを感じられる仕事をしたい片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。やりがいか……それに関しては自分で見つけるしかないんじゃないか?」
政実「まあ、たしかにね。ただ、最後まで勤めあげたいと思えるような仕事に就けたら良いなとは思ってるよ」
元気「そうか。さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第25話をどうぞ」


第25話 仕事へのプライド

 休憩後、元気達は再び団員達の休憩用テントなどがある大テントの裏側へと来ていた。公演の時間が迫っていたからか、先程よりも人の出入りは激しく、大テント内からも様々な声が聞こえていた。

 

「お祭りの時間へ向けて盛り上がり始めとるね。ウチはこういう雰囲気は結構好きよ」

「なんだかイメージ通りですね。お祭りの取材に来たのに、いつの間にか準備まで手伝って、御輿を担いだりやぐらの上で和太鼓を叩いたりしている伊藤さんの姿が要員に想像出来ます」

「たしかに……半被(はっぴ)を着て、お祭りを楽しむ伊藤さんはちょっと見てみたいかも」

「ふふ、そう言ってもらえるのは嬉しいもんやね。さてと、それじゃあそろそろ取材をさせてもらおか。クーちゃん、案内お願いするわ」

「ああ」

 

 クレールが返事をした後、元気達は休憩テントの内の一つに入る。そこには椅子に座りながら談笑する三人の男性の姿があり、クレールは軽く右手を挙げながら男性達に話しかけた。

 

「ロケットマン、ジャン・ポール、ジョー・セサミ、ちょっと良いか?」

「お、クレールじゃないか」

「……そこの二人は、あの夜に出会った二人か」

「あ、あの時のお兄さんだ。お久しぶりです」

「久しぶりって言う程でも無い気はするけど……まあ良いか」

「ははっ、クレールの友達なだけあって中々面白そうな子達じゃないか」

「別に友達ってわけじゃないっての、まったく……」

 

 丸顔の若い男性の言葉にクレールがため息をつく中、黒い肌の巨体の男が静かに口を開く。

 

「改めて自己紹介をしよう。俺はジャン・ポール、怪力男だ」

「俺はロケットマン、大砲男をやっているよ」

「そして俺はジョー・セサミ、鍵師をやっているんだけど、どうしてこんな名前かわかるかな?」

「鍵師のジョー・セサミさん……うーん、何だろう? 元気はわかる?」

「……何となく察したけど、アリスも少し考えればわかると思う」

「考えればわかる事……」

 

 元気の言葉を聞いたアリスは腕を組みながら首を傾げたが、すぐに納得した顔をしながら軽く握った右手で左手の手のひらを叩いた。

 

「あっ、もしかして“開け、ゴマ!”って事ですか!」

「大正解。まあ、そう言ったからといってあの童話の洞窟みたいに開くわけじゃないけどさ」

「でも、私はその名前は面白いなって思いました。イヴ以外にも動物が増えたらそういう考え方で名前をつけてあげようかな……」

「イヴって?」

「私がお世話をしてる白い犬の女の子です。それで、元気は黒猫の男の子のシュルツをお世話していて、それぞれドイツ語のヴァイスとシュヴァルツからとってるんですよ」

「白と黒、やね。さて……ウチは旅と料理の情報誌であるセ・シーマの編集者の伊藤真里といいます。今、この子達に同行して色々と取材をさせてもろてるんですけど、皆さんにも取材を受けてもらうのは大丈夫ですか?」

 

 孝太郎が慌てて名刺を探す中、流れるような動きで名刺を出しながら真里が問うと、ジョー・セサミ達は微笑みながら頷く。

 

「別に良いですよ。これといって取材を断る理由も無いですから」

「ありがとうございます。それではまず皆さんがこのサーカス団に入団した経緯なんですが、こちらのクレール君のように小さい頃から訓練をしていたんですか?」

「いや、みんな大人になってからの入団です。俺は小さい頃から鍵を開ける事が好きで、その好きが高じて鍵師を生業にしたんですが、ある時に近所に泥棒が入って、真っ先に俺が疑われたんですよ。鍵師なら簡単に鍵を開けて入れるだろうって」

「でも、そんな事はしてないんですよね?」

「当然。俺は鍵を開けるのは好きだけど、鍵師としての仕事にはプライドを持ってるんだ。だけど、世間は普段は胡散臭い目で見てくるくせに、鍵を無くして開けられなくなったらそんな事を考えたりしてないって顔で開けてくれと言ってくる。

そんな世間に嫌気が差して、鍵師を廃業しようと思っていた時に団長が俺に声をかけてくれたんだよ。ウチで鍵師としての技術を芸として活かさないかって。結果として、俺はここに来て良かったと思ったよ。今まで胡散臭く見られたり何かと疑われたりしてきた技術を純粋に芸として評価してくれるからな」

「なるほど……お二人はどんな経緯でここに入団を?」

 

 真里からの問いかけにジャン・ポールとロケットマンも口を開く。

 

「……俺は大道芸をしていた時に声をかけられた」

「俺もジャン・ポールとは似た感じですよ。そして、ジョー・セサミが言うようにここへ来て良かったと思っています。俺達は同じように自分の芸にプライドを持っている団員達と共に高め合いながらお客さんに芸を披露出来ている。これは望んでも中々叶わない事です」

「こう言ったらなんですけど、俺は怪盗クイーンだって別に敵視をしてなくて、同じように自分の仕事にプライドを持っている者としてカッコいい存在だと思ってるんです。どんな仕事だとしてもプライドを持って頑張ろうとする奴は特有の輝きを放ってますから」

 

 自分の技術に誇りを持つ者のみが見せる笑顔をジョー・セサミが見せ、ジャン・ポールとロケットマンも肯定するように頷く中、それを見ていたアリスは羨ましそうな顔をする。

 

「なんだかそういうのって良いなぁ。私もいつかはそうなれるのかな?」

「きっとなれるさ。これだと思う物に出会って、そのためなら全力になれると断言出来るなら、その仕事をプライドを持って行えるはずだからな」

 

 ジョー・セサミがにこりと笑いながら言っていたその時、テントにマジシャンのプリズムプリズムが入ってきた。

 

「みんな、お疲れ……って、クレールとさっき会った子達じゃないか」

「プリズムプリズムか。さっき預かったホワイトフェイス君人形は団長に渡してきたのか?」

「ホワイトフェイス君人形?」

「このサーカスの売店で近々売り出す予定の団長をデフォルメしたぬいぐるみの土産物ですよ。喜怒哀楽の四つを表した四種類があって、結構出来も良いんですけど、団長が売り上げ次第では赤いスーパーホワイトフェイス君人形の生産も考えるって言ってたっけ……」

「そうそう。それで、そちらは?」

 

 プリズムプリズムの問いかけに対して真里と孝太郎がそれぞれ名刺を渡しながら自己紹介をすると、プリズムプリズムは納得顔で頷く。

 

「なるほど、そういう事ですか。俺はマジシャンのプリズムプリズム、自分だけでも芸はしますが、ここにいるジョー・セサミと一緒にピエロとして簡単なショーやマジックショーをする事もあるんですよ」

「あ、それって団長さんも出てきてた人体切断マジックの奴ですよね?」

「そうだよ。あれも中々人気はあるんだけど、リアリティのために切ったところから血に見せ掛けた物を出してるからかいつも悲鳴が上がるんだよね」

「あれは初めて見たら怖いですもん……でも、あれって本当にどうやってるんだろう? 元気はわかってるようなんですけど、教えてくれなくて……」

「ほう、本当なのかい?」

「これだと思える何かは思いついてる。だけど、簡単に教えたらつまらないからな」

 

 元気がプリズムプリズムに対して挑戦するような視線を向けると、プリズムプリズムは一瞬気圧された様子を見せたが、すぐにニッと笑った。

 

「……中々良い目をしてるようだね」

「それはどうも。そういえば、このパスと交換したホワイトフェイス君人形を団長はどうするつもりなんだ?」

「一応どうするかは聞いているよ。でも……」

「簡単に教えたらつまらない、か」

「そういう事だね。あのタネに気づけたその目でそれも探り当ててごらんよ。もしもそれに気づけたら、団長も感心するだろうからさ」

 

 そう言いながらプリズムプリズムが元気の肩を叩いていると、クレールは何かを思い出した様子でプリズムプリズムに話しかけた。

 

「そういえば、みんなに聞いておきたい事があるんだけど良いか?」

「お、クレールからの質問なんて珍しいじゃないか」

「クイーンを捕まえるために警察庁から黒田っていう男が来ていて、少し前にも団長を訪ねて来たのを見かけてる。みんなはその理由って知ってるか?」

「黒田……ああ、あの人か」

「そういえば、たしかに見かけたな……」

「うむ……」

 

 その瞬間、四人の表情は険しくなり、その様子にクレールは不思議そうな顔をする。

 

「ど、どうかしたのか?」

「……まあ、記者さん達がいる中で話す内容じゃないんだけどさ。あの黒田って男とはちょっとした関係があるんだけど、正直俺達もそんなにあの人は得意じゃないんだ」

「基本的に団長と話すために来るだけだから良いけど、あまりあの場にはいたくないな」

「同感だ」

「そうだな……だから申し訳ないけど、その質問には答えられない。さっき言った事情もあるけど、あまりあの人の事を口にしたくないからな」

「そうか……」

「どうしても知りたいなら団長本人に聞くのが良いと思う。ただ、団長も素直に話すとは思えない。だから、あまり期待はしない方が良いだろうな」

「わかった。そんな中でもそこまで話してくれてありがとうな」

「どういたしまして。さて、記者さん達はこれ以外に聞きたい事はありますか?」

 

 ロケットマンが問いかける中、真里と孝太郎は静かに首を横に振り、四人に対して公演についての激励をした後に元気達はテントを出た。

 

「……団員達もあの黒田って男はそんなに好きじゃないんだな」

「そうみたいだね……でも、その気持ちは本当によくわかるよ」

「アーちゃん達も良い顔はしとらんかったからね。さて……そうなれば、次は団長のとこに行ってみよか。クーちゃん、案内をお願いしてもええ?」

「構わないけど、さっきの件を聞きに行くのか? 俺も素直に話すとは思ってないし、あまりおすすめはしないけど……」

「それも気になるけど、今は団長からサーカスについてや今日の公演についての意気込み、クイーンが来る事についての話を聞きたいんや。気になる情報が手に入ったとしても、ここに来た本来の目的は忘れたらあかんからね」

 

 そう言う真里は先程のジョー・セサミ達と同じ自分の仕事にプライドを持っている者の姿をしており、それを見たクレールは小さく息をついた。

 

「……そういう事ならちゃんと案内する。今の伊藤さんの姿を見て、そうしたいと思えたからな」

「ありがとな、クーちゃん。ほな、行こか」

 

 真里のその言葉に全員が頷いた後、クレールの案内に従って元気達は再び歩き始めた。




政実「第25話、いかがでしたでしょうか」
元気「今回も出会いはあったけど、少し不穏なところもある回だったな」
政実「そうだね。原作を買い直した事で原作と映画の内容を少し織り混ぜた感じにはなっていくけど、雰囲気とかを大切にしながら次回からも書いていくよ」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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