元気「どうも、主人公の神野元気です。今回から投稿し始めるって言ってたけど、どうしてこれを書こうと思ったんだ?」
政実「一応、前々から書きたいなと思って少しずつ書いてみたり設定を考えたりはしてたんだけど、この作品の原作と同じ作者さんのまた別の作品は自分にとってすごく影響を受けた作品だったから、今の実力で二次創作なんて恐れ多くて中々出せなかったんだよ。
けど、映画をやるっていう話を聞いたりこういう話だったなぁと思い返したりする内に挑戦したくなって、今回思いきって書いてみた感じだね」
元気「なるほどな。さて、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第1話をどうぞ」
第1話 神野元気
「…………」
空には青白い月が輝き、静けさが街を支配する夜、一人の少年が暗がりの中で両腕で足を抱き抱えるようにしながら座っていた。少年は一言も喋らずに一人ぼっちで座っていたが、その目には静かな怒りが宿っており、その雰囲気も鋭く研ぎ澄まされた名刀を思わせた。
そうして少年が暗闇を見つめながら小さく息を吐いていたその時、首から銀色のロザリオを掛けた祭服姿の老齢の男性はその目の前で足を止めた。男性は不思議そうに少年に視線を向けた後、暗がりの中に本当に誰かがいるとは思ってなかった様子を見せる。
「……まさかこんな夜中に子供が一人でいるとは思わなかったな」
「…………」
「少年、君はどうしてここにいるんだ? 夜に一人でいるのは危ない。早く家に帰った方が良い」
「……帰る価値の無い家にどうして帰らないといけないんだ?」
「……なに?」
男性が疑問の声を上げる中、少年は男性に視線を向ける事無くポツリと呟く。
「……あんな家、帰る価値なんて無い」
「……君、家族とうまくいっていないのか?」
「うまくいってないなんていう問題じゃない。あんな奴ら、親なんて呼べない」
「そうか……だが、このままここにいても意味はないだろう? 風邪をひいてしまっては元も子も無いしな」
「むしろひいた方が良い。そして、そのまま死んでしまった方が楽だ。こんな腐りきった世界で生きていくくらいなら、俺は自分から死を選ぶ」
「そうか……」
「あんたもさっさとどっかに行ってくれ。俺は一人でいたいんだ」
少年がそっぽを向きながら言うと、男性は目を軽く瞑りながら深く息をつく。少年がそれを聞いて少しだけ安心感を覚えていた時、男性は少年の頭にそっと手を置き、少年はゆっくりと顔を上げてから警戒と敵意のこもった視線を男性へ向けた。
「……何のつもりだ?」
「なに、君を放っておけないと思っただけだよ。私は神父だからね。悩める者を放っておくのは性に合わないんだ」
「神父……はっ、そうやって自分達の教えを強制するんだろ? そんなのお断りだ」
「ははっ、たしかに同じ神を信仰する者が増えれば嬉しいが、強制するつもりはないよ。神もそんな事は望んでいないだろうからね」
「ふん……どうだかな。神様なんてのがいるなら、どうして俺はこんなに悲惨な目に遭ってるんだ? こんなの不公平だろ」
「……たしかに君はだいぶ酷い目に遭い、心に深い傷を負っているようだ。だが、神は決して無意味に過酷な思いはさせない。君が今辛い目に遭っているというなら、それは神からの試練の最中だからだよ」
「試練……それじゃあその試練を乗り越えたら、俺には何か与えられるのか?」
少年の目に怒りと憎しみが入り交じった光が宿り、その場にピリついた空気が流れる中、男性は優しく笑みを浮かべながら頷いた。
「ああ、きっと神はお与えくださるさ。だが、それが何かは私にわからない。莫大な富かもしれないし名声かもしれないし掛け替えの無い出会いかもしれない」
「どれだとしても俺には必要ない。そんなの手に入れても嬉しくもなんともない」
「ほう、それじゃあ何が欲しいのかな?」
その男性からの問いかけに対して少年は妖しい輝きを宿した目で男性を見ながら答える。
「……力だ。誰にも左右されず、誰にも邪魔をされない力。それ以外には何もいらない。これ以上、他人に自分の人生を邪魔されるなんてたくさんなんだ」
「力……」
「なんだ、力なんて持っても虚しいだけなんて言うのか?」
「いや、そうは言わないさ。力は持っていて損は無いと私も思うからね。だが、その持ち方によると思っているだけだ」
「持ち方……?」
「ああ。ただ誰かを圧倒する力を持つのではなく、自分の大切な人を守れる力を持つのが大事だと私は思っているんだ」
それを聞いた少年の目には更に怒りが宿る。
「……守るための力なんて必要ない。俺には守るものなんてないからな」
「今はそうだろうね。だが、君の人生はまだまだ長い。その人生の中で出会う人々が君にとって守りたいと思える人物にならないとは言いきれないだろう?」
「あり得ないな。そもそもこんな世界で生きていたくないって思ってる奴が生きていこうだなんて思うわけがない」
「いや、君はこれからも生きていく」
「……なんでそう思うんだ?」
少年からの問いかけに男性は微笑みながら答える。
「勘、だよ。私の勘はよく当たると教会では評判なんだよ」
「……それでよく神父だなんて言えるな」
「神父でも勘に頼る事くらいあるさ」
「……そうか」
「ところで、自己紹介がまだだったね。私はミック・エルマン。さっきも言ったが、この近くにある教会で神父をしている。君の名前は?」
「……言いたくない。あんな奴らがつけた名前なんて口にも出したくない」
「そうか……それならば、私が代わりの名前でもつけようか?」
ミック神父からの問いかけに少年は驚いたような表情を浮かべた。
「え……」
「両親からつけられた名前が嫌だといっても、名無しの権兵衛のままでは流石に不便だろうからね。もちろん、君がこの世に生きていたくないと思っているのはわかっているが、そうやって世の中を憎むだけの哀しい子供は放っておけないのだよ」
「……それは、神父だからか?」
「それもあるが、君という少年が気に入ったからだよ。君はまだ幼いが、話し方や語彙から考えるにとても賢い。打算的な言い方になるが、君がウチの教会に遊びに来てくれたら、ウチの子達も読み書きがもっと好きになってくれるはずだ」
「行くなんて一言も言ってない」
「そうだね。だけど、君は少なくとも私に興味を持ってくれている。興味がなければ私のような変な人間は放っていなくなっても構わないのだからね」
「…………」
「それで、どうだろう? 君の名前を私につけさせてもらえるかな?」
優しく微笑むミック神父を少年はジッと見つめた後、ふいっとそっぽを向いた。
「……勝手にしろ」
「わかった、ありがとう。では、どうしようかな……」
ミック神父が楽しそうにしながら考え、少年は何も言わずにミック神父を見ていたその時、ミック神父は名案を思いついたという表情で両手をポンと打ち鳴らした。
「よし……これから君の名前は“
「神野元気……」
「ああ、“神”と名字につけるのは少し恐れ多かったが、そうした方が神からの恵みを受け取れると思ったからね。それに、元気という名前なら君はいつでも元気にいられるだろう。言霊という言葉もある通り、言葉というのは非常に強い力を持っているからね」
「……そうなる気はしないけどな」
「ふふ、そうか。それで、その名前は気に入ってくれたかな?」
「……悪い気はしない。あの名前と違って、これはミック神父が思いを込めてつけた名前だからな。“アー”なんて言われるよりはずっとマシだ」
すると、元気の言葉にミック神父は眉を潜めた。
「アー……それが君が両親からつけられた名前なのかね?」
「ああ。まあ、あいつらはいないところでは俺の事をフィーアって呼んでたけど、それを縮めてアーって呼んでるみたいだ」
「フィーア……ドイツ語で4を意味する言葉だな。だが、君は日本人だろう? どうしてそう呼ばれているのかね?」
「……わからない。そもそもあいつらは本当の両親じゃないみたいだし、別に興味もないからな」
「そうか……まあ、それならば仕方ない」
ミック神父は微笑みながら言っていたが、その目には哀しみが宿っていた。しかし、元気はそれには気づかずにミック神父をジロリと見る。
「というか、ミック神父は帰らなくていいのか? 俺は帰る気はないけど、ミック神父は帰るとこがあるだろ?」
「まあ、そうだね。だが、君を放って帰るのもなんだか良くない気がするんだ。君の話を聞く限り、両親はこんな夜中に出歩いた君に対して惨い仕打ちをしそうだからね」
「……そんなのいつもの事だ。今だって学校にも行けずに家で召し使いみたいに働かされてるし、飯も小さい頃から自分で作ってたしな」
「なるほどな……では、こうしよう。元気、とりあえず今日のところはウチに来ないかね?」
ミック神父の提案に元気は驚いた後、警戒した様子で睨み付ける。
「……何のつもりだ?」
「なに、未成年である君を保護者の許可無しに連れ込んだら、私は様々な罪に問われるかもしれないが、そのリスクを負ってでも私は君を助けたいと思ったし、君を虐げたり犯罪を犯させたりしないと約束出来る。
それに、もしそうなっても今度は君の両親が警察の厄介になって、君はその苦痛の日々から解放される。悪い話ではないだろう?」
「……本当にそう言えるか?」
「言えるとも。だが、口だけならどうとでも言えるからね。その証拠として君にはこれを預けるとしよう」
そう言いながらミック神父は首にかけていた銀色のロザリオを外し、そのまま元気に手渡した。
「……これは?」
「これは私達が聖母マリアに祈りを捧げる際に使っている物でロザリオというんだ。これを証拠として君に預けよう」
「……ミック神父が使ってる物なのに良いのか?」
「構わないさ。ロザリオは他にもあるし、私の言葉が嘘だった時には私を警察に引き渡した上でこのロザリオを君の自由にしても良い。まあ、プラチナや金よりは売ってもあまりお金にはならないかもしれないがね」
「……それじゃあ、ミック神父の言葉が本当だった時は?」
「その時は……君には私達の家族になってもらうとしよう。家族と言っても、さっきも言ったように別に君を虐げたり自由を奪ったりするつもりはない。一緒に食事をしたりなんて事ない話をしたりして過ごす、そんなごく一般的な家族と同じような事をしたいと思っているよ」
「……そんなのただの家族ごっこでミック神父にとって都合の良い人形遊びじゃないか」
吐き捨てるように言う元気の言葉にミック神父はクスリと笑う。そして元気の頭を撫でると、微笑みながらその言葉に返事をした。
「たしかに家族ごっこと言われても仕方ないな。だが、その家族ごっこで幸せになれる人もいる。君もそうなるように私も努力していくつもりだ」
「……どうだかな。けど、ここまで話してミック神父が悪人ではないってなんとなく感じた。だから、しばらく厄介になる。人質ならぬ“
「はっはっは、たしかにな。それでは、行こうか」
「……ああ」
返事をしてから元気は立ち上がり、受け取ったロザリオを首に掛けた。
「よく似合っているよ、元気。どうだろう、ウチで神父見習いになるつもりは……」
「ない。そもそも神を信じてない奴が神父になんてなれないだろ」
「なれないわけではないさ。だが……そうだね、君には神ではなく、君の事をさらっていってくれるような存在の方が必要そうだ」
「俺をさらうような奴……あんたの事か?」
「いや、私ではない。もっと自由で華麗で、その心の檻から君自身を連れ出してくれるような存在。物語の中に出てくるような怪盗が必要なのかもしれないよ」
「怪盗……そんなのいるわけないだろ」
冷たく言い放つ元気の言葉を聞き、ミック神父はクスリと笑ってから夜空を見上げる。
「それはどうだろうね。この夜の闇のように暗い世界を駆け、誰にも縛られずに自分の好きなように生き、どんなに厳しい監視もすり抜けて目当ての物を盗み出す大胆不敵な怪盗。ロマンがあると思わないか?」
「……わからない。けど、いないと思う」
「そうか。まあ、もしも出会えたらその時には本当の君の物語が始まるのかもしれないね。現実に生きながらも夢の中のようなそんな不思議な物語が」
「…………」
「さて、それではそろそろ行くとしよう。元気、改めてよろしく頼むよ」
「……こちらこそ」
返事をしてから元気は差し出された手を取り、二人は静かな夜を歩き始めたが、その雰囲気は決して悪いものではなく、距離を少し空けながらも手を繋いで歩く姿はまるで本当の親子のようだった。
政実「第1話、いかがでしたでしょうか」
元気「まだ俺はクイーン達とは出会ってないんだな」
政実「そうだね。けど、出会いまではそんなに話数も空けないし、次回かその次くらいはその話にする予定だよ。まあ、それまでにはまた原作を集め直して読み込んだり設定の食い違いが起きないように頑張らないといけないけどね」
元気「そうだな。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと……それじゃあそろそろ締めようか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」