怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、指切りの意味を知って怖いと感じた片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。指切りか……その後のげんまんや嘘ついたら~の下りも意味を知ったら中々怖いよな」
政実「うん。意味を知ったら約束を破るという事がどれだけ罪深いかってわかるからね」
元気「そうだな。さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第27話をどうぞ」


第27話 遠き過去の指切り

 ホワイトフェイスがお辞儀をする中、アリスはキョロキョロと室内を見回した。

 

「談話室……でも、なんだか少し団長室に似てるような気がする」

「内装は似せているんでな。そして、団員達が五人一組で寝泊まりをするトレーラーを八台所有しているが、俺は団長特権という事で丸々一台を使っていて、そっちはもっと気軽に会える客を招くつもりだ」

「部屋が三つ……サーカス団の団長ってすごいんだね……」

「いや、談話室は別に個人の部屋ってわけではないだろ」

「というか、そんな事はどうでも良い! 団長、さっきの黒田との話は本当なのか!?」

 

 クレールからの問いかけにホワイトフェイスは真里と考太郎の二人をチラリと見てから頷く。

 

「隠しても仕方ないからな。どうせ俺に話を聞きに来ようとしたら、偶然聞いてしまったんだろう?」

「そうだけど……よくわかったな」

「黒田は気づいていなかったようだが、カーテンの向こうにクレールの気配を感じたんでな。さて、隠さないと言った以上は話すが……」

「……あ、もしかしてウチらは席を外した方がええです?」

「いや、聞く分には構わない。だが、世間には公表しないで欲しいだけだ。黒田達を道連れに俺だけが非難されるなら良いが、団員達は俺の指示の通りに動いてくれただけだからな。あいつらが辛い目に遭うのだけはやはり耐えられないんだ」

 

 ピエロのメイクで隠れてはいたが、ホワイトフェイスの声は明らかに団員達を心配している物であり、真里はふぅと息をついてから持っていたメモとペンをポケットにしまった。

 

「……そういう事なら、その件はオフレコにします。さいちゃんもそれでええ?」

「はい、僕だって自分のスクープのために誰かが悲しい思いをするのは耐えられませんから」

「助かる。では話すが……聞いていたようにこのセブン・リング・サーカスは政府と関係があり、その見返りとして黒田達から命令があった際は、団員達の特殊技能を利用してそれを遂行している」

「関係があるとは言うけど、セブン・リング・サーカス側にメリットはあるのか?」

「ある。団員達が芸を披露する時に使っている道具の中には政府が開発した物があり、竹馬男のスタイリー井上の靴が良い例だ」

「靴……ですか?」

「ああ。普段は普通に竹馬に乗ってはいるが、あの靴にはスイッチを押す事で靴底から竹馬が伸びる機能がついていて、それを操作する事でアイツは高所にも楽々入り込む事が出来るんだ。もちろん、芸にも活用しているがな」

「それがセブン・リング・サーカス側のメリットか」

「俺達がこうしてサーカス団としてやっていけているというのも俺達にとってのメリットではある。だが、聞いていたように約束を果たすために海外公演をしたい俺に対して黒田は許可出来ないと言う。何度頼んでも結果は同じで、俺は黒田の奴に目に物を見せてやろうと少しずつ思い始めたんだ」

「そこで、『リンデンの薔薇』に目をつけたんですね?」

 

 考太郎の問いかけにホワイトフェイスは静かに頷いた。

 

「その計画を立てたのは、怪盗クイーンが『リンデンの薔薇』を盗み出そうとしていると聞いてからだが、星菱という男の悪評、そして『リンデンの薔薇』を所有している件は前々から聞いていたからな。

怪盗クイーンを出し抜いた上で『リンデンの薔薇』を盗み出せば、怪盗クイーンは『リンデンの薔薇』を奪うために間違いなくここへ来る。そう確信して俺は団員達に指示を出して、見事に怪盗クイーンを出し抜いた。

予告状も精巧な偽物を用意したから、世間的には怪盗クイーンが盗み出した事になっていて、俺達に捜査の目が向く事はなく、後は怪盗クイーンが『リンデンの薔薇』を奪うためにここへ来るのを待つだけとなった」

「ふむふむ……」

「もっとも、サーカス見物というのも本音だろうけどな。一度話してわかったが、奴は中々愉快な奴で、常に遊び心を求めているようだったからな」

「人生に大切なのはC調と遊び心。これはウチの新聞社のデータベースにも載っていた怪盗クイーンの信条ですね」

「さいちゃんのとこは優秀やね。それで、怪盗クイーンに会って、『リンデンの薔薇』は怪盗クイーンの手に渡ったんですか?」

「そこまでは教えられん。だが、一つだけ言うとすれば、俺は怪盗クイーンとのゲームの最中なんだ。お互いにいたってシンプルな勝利条件のな」

 

 ホワイトフェイスはクックッと笑い始め、静かに話の流れを聞いていたクレールはホワイトフェイスの目を真っ直ぐに見ながら問いかけた。

 

「団長、そんな事をしてまで行きたいところってどこなんだ? 約束があるって言っていたけど……」

「……争いの絶えない国だ。そこでは昔から争いが何度も起きていて、ピエロだった頃の俺が当時の仲間達と訪れた時も一切平和ではなかった。大人達は自分達の主張のために争い、子供達の目からは光が失われ、未来への希望すら無くなっていた。

だが、俺達の公演を観たらそれも変わった。サーカスが来たという噂は瞬く間に広がり、多くの観客の前で披露した団員達の芸は楽しさと興奮を与え、俺もピエロとして満足感を感じていた。

そんな中、俺のところに一人の少女がやってきた。その子は俺にサーカスが楽しかったという事を精一杯伝えてくれ、また来てくれるかと不安を感じながらも聞いてきてくれた。だから、俺はその時だけ教えに背いたんだ」

「教え……ですか?」

「ああ。俺にピエロの演技を教えてくれた人はピエロとは声を発する事なく、動きだけで笑わせる物だと言っていて、俺もその教えを守っていた。

だがその時だけは、手袋も外して俺はその子に指切りをしようと言った。指切りが何かを知らない様子だったが、俺は説明をした上で必ずまた公演をしに来ると約束し、その国を後にした」

「それが団長さんの約束……」

「そうだ。黒田からすればなんだそんな事と思う事だろうが、俺にとっては違う。ウチの団員達と共にまたあの場で公演をし、約束を果たして一時の夢と希望を届けたい。ただそれだけなんだ」

 

 ホワイトフェイスはメイクの下で沈痛そうな表情を浮かべており、元気達も何を言ったら良いか迷っている様子だったが、クレールは腕を組んだままでため息をつくと、静かに口を開いた。

 

「……正直、俺にはまだ団長の気持ちはわからねぇ。自分の人生を懸けてまで昔の約束を果たしに行くなんて俺には出来ないし、相手の現在もわからない中でその約束を果たそうとするなんて変だと思う」

「クレール……」

「……だけど、団長がその約束を果たしたいなら、俺もそのために力を貸す。俺だって団長や団員達が迎え入れてくれて、色々世話を焼いてくれたから今もここにいるんだ。それならそのための恩返しくらいするのが礼儀ってもんだろ」

「……そうか。それなら、その時にはお前にも舞台に上がってもらうとしよう。まだ年齢的に幼いクレールが舞台の上で見事な芸を披露すれば、子供達もまた目を輝かせ、大きな歓声を上げてくれる事だろう」

「たしかに私達に近い年齢の子達なら、クレールのそういう姿に憧れたり喜んだりしてくれそうかも」

「そうだな。クレールもそこそこ単純だから、同じ立場だったら俺もサーカスに入るって言ってもおかしくはないからな」

「元気、お前なぁ!」

 

 元気の発言にクレールが声を上げると、ホワイトフェイスはその様子を見ながらフッと笑う。

 

「やはり、子供達はそうやって元気にしているのが一番だ。俺達大人の勝手な事情には巻き込まれず、同じくらいの年齢の子供とふれ合いながら様々な事を学び、自分の中に眠る無限の可能性の中から進む道を選び抜く。それこそがあるべき姿だ」

「団長さんは子供が好きなんですね。それなら、さっきのお話は約束したように口外はしませんけど、その事はしっかりと書かせてもらいます。人々、特に子供達に夢や希望を届けるために団員達と日々頑張っている団長として」

「……ああ、それなら是非書いてくれ。ところで……二人とも、例の件は順調かね?」

「例の件……いや、まだそんなに進んでいない」

「ん、なんやゲンちゃんも団長さんとなんか勝負してるん?」

「まあな。けど、どうしてそれを聞いてきたんだ?」

 

 元気が不思議そうにする中、ホワイトフェイスはニヤリと笑いながら答えた。

 

「なに、こうして来てくれたから、一つだけ忠告をしようと思ってな」

「忠告……」

「ああ、そうだ。色々探すのももちろん構わないが、一度立ち止まるのも時には必要だ。探す事ばかり考えていると、身近な物に気づけなくなってしまうからな」

「一度立ち止まる……? でも、どこで立ち止まれば良いんだろ?」

「それは君達が考える事だ。それと、元気君が予想している場所にもうあれはない。今頃はどこかをほっつき歩いている事だろう」

 

 天井を見上げながら言うホワイトフェイスの言葉にアリスは頭を抱えた。

 

「えーと、立ち止まる事も必要だけど、探してる物はどこかを歩いていて……うー、頭が洗濯機だよー……」

「ぐるぐるする気持ちはわかるな。だけど、そこまで話しても良いのか? あまりにもヒントを出しすぎているんじゃないか?」

「問題はない。クレールが世話になっている事、それとシルバーキャット瞳の件の礼だとでも思ってくれ。クレール、引き続き案内は頼んだぞ?」

「わかってる。それが俺の役目だからな、団長は安心していてくれ」

「ああ、そうさせてもらおう。それでは、また公演の時にお会いしましょう」

 

 そう言ってホワイトフェイスはカーテンを開けて談話室を出ていき、その姿を見送ってから真里は元気に話しかけた。

 

「ゲンちゃん、その探し物って何なのか言えたりするん?」

「……いや、言えないな」

「そうか……まあ、見つかるようにウチも祈っとるよ。ゲンちゃん達にとって大切なもんみたいやしね」

「……ああ、ありがとう」

「どういたしまして。それじゃあウチらもそろそろ行こか。そろそろお昼近いし、約束通りさいちゃんの奢りで何か食べさせてもらお」

「……約束はしてましたからね。けど、さっきもいっぱい食べていたのに、もうお昼の話なんて……食べたものはどこに行っているんですか?」

「ふふ、女はいつだって秘密を持っていて、ミステリアスなんよ。ほら、さっさと行こ」

 

 真里の言葉に四人は頷いた後、大テント内へ戻るために談話室を後にした。




政実「第27話、いかがでしたでしょうか」
元気「最後の方でホワイトフェイスが何かをヒントを言ってたし、リンデンの薔薇の件は原作通りにはやっぱり行かなそうだな」
政実「そうだね。まあ、これまでにもヒントはあるから、それらを考えながらこれからも読んでもらえたら嬉しいよね」
元気「そうだな。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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