怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

32 / 52
政実「どうも、好きな名探偵は数多くいる片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。一番好きな名探偵は中々決められない感じか?」
政実「そうだね。どの名探偵もそれぞれ個性豊かで魅力的だから」
元気「なるほどな。さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第29話をどうぞ」


第29話 三姉妹と名探偵

「同じ顔が……三人……?」

「伊藤さんの事を呼んでますけど、お知り合いですか?」

「そうよ。おーい、亜衣(あい)ちゃん達ー!」

 

 真里が手を振りながら呼び掛けると、五人はゆっくりと近づき、髪を二つに結んだ少女は嬉しそうに真里に抱きついた。

 

「えへへ……伊藤さん、こんにちはー」

「こんにちは、美衣(みい)ちゃん。亜衣ちゃんも真衣(まい)ちゃんもこんにちはやね」

「こんにちは、伊藤さん」

「今日も取材ですか?」

「ええ、そうよ。怪盗クイーンがここの見物をするって言うから、スクープを狙いに来たんよ」

 

 真里が髪をポニーテールにしている真衣の問いかけに答える中、クレールは一緒にいる東南アジア系の浅黒いの肌の少女に話しかける。

 

「ビーストじゃないか。そっちもお客の案内中か?」

「そうよ。ほら、入場者の中で抽選が当たった人のバックステージの案内をするでしょ? だけど、大石さんや他のスタッフが少し忙しそうだったから、通りかかった私が代役を引き受けたの。もっとも、その代役はもう一人いるけど……」

 

 そう言うと、ビーストは後ろを振り向く。後ろからは子猫を抱き抱えるボーダーのシャツを着た男性が近づいてきており、男性はビースト達の目の前で足を止めると、猫から威嚇をされながら小さくため息をついた。

 

「ビースト、捕まえてきたよ」

「お疲れ様です。まったく……ウチの子に変にちょっかいをかけるからですよ?」

「少し撫でさせてもらおうと思っただけだろ? なのに威嚇された上に逃げ出されるし……」

「この子はあまり他の人に触られるのが好きじゃないんで……って、あら……?」

 

 ビーストが子猫を受け取っていると、子猫はアリスの事をジッと見ており、アリスが微笑んだ瞬間に子猫は甘えたような鳴き声を上げた。

 

「珍しいですね……この子が初めての人にここまで親しみを持つなんて」

「あはは……私、結構動物から好かれやすいみたいなんです。ウチでもこの子と同じくらいの猫と犬がいるんですよ」

「そうでしたか。私はこのセブン・リング・サーカスで猛獣使いをしているビーストといいます。そしてこちらは竹馬男のスタイリー井上です」

「よろしくな、クレールの友達たち」

「アリス・タナーです、よろしくお願いします」

「……神野元気だ、よろしく」

 

 アリスと元気がそれぞれ自己紹介をしていると、同じ顔をした少女達は興味津々な様子で元気達を見始め、その視線に気づいた元気は少し警戒しながら真里に話しかけた。

 

「……伊藤さん、こっちの四人は?」

「ああ、そういえばまだ紹介しとらんかったね。まずこの子らは順番に岩崎亜衣ちゃん、岩崎真衣ちゃん、岩崎美衣ちゃんで三つ子の中学生なんよ」

「三つ子……双子なら友達にいるけど、三つ子さんは初めてかも」

「あ、そうなんだ。それじゃあ意外と双子や三つ子って珍しくないのかな?」

 

 短髪の亜衣が疑問を口にすると、元気のイヤホンにRDが耳打ちをし、ため息をついてから元気が亜衣の疑問に答えた。

 

「……双生児の出生確率が1%で、その内同じ顔で生まれてくる一卵性双生児の確率は0.4%、違う顔で生まれてくる二卵性双生児の確率は0.6%になる。

そして一卵性の三つ子の場合は更に確率が下がって3.2/100000で、男女の双子は基本的に二卵性になるから一卵性の男女の双子は奇跡的な確率みたいだ」

「へー、そうなんだ。元気君だっけ? 君って物知りなんだね」

「……ウチには色々な事に興味を持っては質問してくる奴がいるから、色々な事を知っておく必要があるんだ」

「えへへー」

「……アリス、別に褒めてないからな」

 

 照れたように笑うアリスに対して元気がため息をつく中、真里は二人を見ながら優しく微笑む。

 

「ゲンちゃんこと神野元気君とアーちゃんことアリス・タナーちゃん、そしてこっちのクーちゃんことクレール・カルヴェ君は仲良し三人組なんよ。そして四人とも、こっちの黒背広でサングラスをかけてる長身の男の人は夢水(ゆめみず)清志郎(きよしろう)さん。夢水さん、こちらは東亜新聞の西園寺考太郎さんで、こっちの子達は今紹介した通りの子達です」

 

 真里が手で指し示す中、清志郎は何も言わずに四人を見ており、その様子にアリスは不思議そうに首を傾げた。

 

「あ、あれ……? 伊藤さん、夢水さんどうしたんですか?」

「……うーん、この感じは……」

 

 真里が腕を組みながら苦笑いを浮かべる中、清志郎の腹から大きな音が鳴る。

 

「……お腹空いた」

「……え?」

「夢水さんはこんなに痩せとるのにとても大ぐらいでお腹空かせとる事が多いのよ。それで、この人が例の記事をお願いしとる人で、亜衣ちゃん達とは夢水さんに記事のお話を持ち込んだ時からの付き合いなんよ」

「……ああ、いつも同じ格好をしてて自分の名前を忘れる上に底無しの胃袋を持っているっていう」

「伊藤さん……たしかにその通りですけど、そんな紹介の仕方をしてたんですね」

 

 亜衣が苦笑いを浮かべる中、真里はウインクをする。

 

「ちゃんとフォローもしてるから大丈夫よ。けど、夢水さんを腹ペコのままにしとくとちょっと困るし、良かったらみんなでお昼ご飯にしよか? もちろん、団員のお二人も一緒に」

「良いんですか?」

「他の団員の方にもお話を伺ってたので、お二人からもお話を伺いたいんです。先程も団長さんからお話をして頂きましたし」

「……わかりました。そういう事なら私もお答えさせて頂きます」

「俺も大丈夫ですよ、記者さん」

「決まりやね。それじゃあ行こか、みんな」

 

 その言葉に清志郎以外が頷いた後、一行はフードコートへと向かった。そして亜衣達が協力してフラフラとしている清志郎を席に座らせると、清志郎は亜衣達を静かに見上げた。

 

「いーつもすまないねぇ」

「教授、そう思うなら自分で歩いたり座ったりしてよ」

「ダメだよ、亜衣ちゃん。僕がこう言ったら『それは言わない約束でしょ』って言わないとっていつも言っているじゃないか」

「それに付き合ってられないって……」

「と言うか、それを言う意味はあるの?」

「そういう掛け合いをするのが面白いんじゃないか」

 

 清志郎の言葉に三姉妹はため息をつき、その光景を見た元気は呆れたような顔をする。

 

「……なんだかクイーン達を見てる気分だな」

「もしかしなくてもクイーンさんのお友達の名探偵さんが夢水さんなんだろうね。ただ、名探偵にはちょっと見えないけど……」

「例えるなら人間サイズの怠け者の黒猫だな。元気、もう一匹黒猫を飼う気はないのか?」

「……世話するのはシュルツだけで良い。それで伊藤さん、席分けはどうする?」

「そうやね……ウチとさいちゃんはビーストさんとスタイリー井上さんに取材したいし、ゲンちゃん達は亜衣ちゃん達と一緒に頼むわ。亜衣ちゃん達はべっぴんさんやし、一緒にお話出来るのは嬉しいんやない?」

「別にそんな事はない」

「ふふ、ゲンちゃんにはアーちゃんもおるしな。それじゃあ席分けはそれでお願いね」

 

 その言葉に元気達が頷いた後、真里と考太郎はビーストとスタイリー井上の二人と共に別の席へ向かい、元気達は二つの机を使ってそれぞれ席に座った。

 その後、元気達の席には人数分の飲み物や多くの食べ物が真里と考太郎の手によって運ばれてきた。

 

「ほい、ゲンちゃん達の分」

「すみません、伊藤さん、西園寺さん」

「良いのよ。こういう時は大人が払ったげるもんやからね」

「多くは僕が払ったんですけどね……でも、この分も経費で落とすから遠慮なく食べてね」

 

 考太郎が微笑みながら言うと、背もたれに力なく体重を預けていた清志郎が突然立ち上がり、二人に丁寧に頭を下げた。

 

「伊藤さん、西園寺さん、本当にありがとうございます」

「あ……い、いえ……」

「夢水さんがこんな素直にお礼を……いや、大人としては当たり前やし、夢水さんがちゃんとお礼を言う場面もそんな珍しくもなかったわ。それじゃあさいちゃん、そろそろ……」

「その前に西園寺さん、ちょっと耳を……」

「はい……?」

 

 考太郎が不思議そうに耳を近づけると、清志郎はボソボソと何かを耳打ちした。その言葉に考太郎は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに不思議そうな顔をし、そんな考太郎を見ながら清志郎は満足げな顔をした。

 

「お時間を取らせてしまいすみませんでした。それではどうぞ、取材の方へ」

「は、はい……」

「夢水さんの件も気にはなるけど……まずは取材やね。行くで、さいちゃん」

「は、はい……!」

 

 真里の気合いの入った声に考太郎が答えて二人が離れていった後、再び席に座った清志郎にアリスが首を傾げながら話しかけた。

 

「夢水さん、西園寺さんに何を耳打ちしたんですか?」

「“チェックメイト”という言葉を知ってるか聞いたんだよ」

「チェックメイト……?」

「もう、教授……西園寺さんは新聞記者さんなんだよ? そんなの知ってるに決まってるじゃない」

「そうだよ。まったく……教授っていつも変わった事を言うんだから」

 

 三姉妹が呆れたような顔をし、元気達が不思議そうな顔をする中、元気達のイヤホンからはRDの声が聞こえてきた。

 

『……なるほど』

「なるほどって……RDはさっきの言葉の真意がわかってるのか?」

『はい、一応は。詳しくはまだ話せませんが、流石はクイーンが認めた名探偵だと思っています』

「RDさんがそこまで言うなんて……それじゃあ夢水さんは本当に名探偵さんなんだね」

「たしかに実力はあるようだけどな……」

 

 そう言いながらクレールは清志郎に視線を向ける。その視線の先では清志郎が運ばれてきた食べ物を一心不乱にガフガフと食べており、みるみる内に食べ物がなくなっていくその光景にアリスは目を丸くした。

 

「すごい……大食い大会の選手みたいにどんどん食べちゃってる」

「この姿からは名探偵らしさはまったく感じられないな……」

「まったくだな……」

 

 元気とクレールが揃って呆れ顔をする中、亜衣は清志郎を見ながら腰に手を当てる。

 

「もう、教授! 自分だけで食べないの!」

「お腹が減ってるんだから仕方ないじゃないか」

「まずは自己紹介でしょ。ほら、教授の後に私達も改めてするから」

「後、これで手も拭いてね」

 

 真衣の言葉にガクガクと頷きながら美衣が差し出したおしぼりで軽く油がついた手を拭くと、清志郎は一枚の名刺を取りだし、元気達にそれを差し出した。

 

「それじゃあ改めて……僕は夢水清志郎、名探偵だよ」




政実「第29話、いかがでしたでしょうか」
元気「同じ作者さんの別作品の主人公達と出会った回だったな。西園寺さんに耳打ちしてた件もあるし、オリジナル要素として何かありそうだな」
政実「そんなところだね。当然、元々の雰囲気や原作の流れを変えすぎない程度にはするけど」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。