元気「どうも、神野元気です。そういうこだわりがある人は他にもいるだろうな」
政実「そうだね。ヒントも時には必要だけど、なしで解けた時の気持ち良さもたまらないからね」
元気「そうか。さてと、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第31話をどうぞ」
「元気……」
「……こういう形どころか元気が負けてる姿を見た事が無いから、なんだか信じられないな。けど、元気の反論は全部証明されたし、元気も負けを認めた……つまり、夢水さんは本当に名探偵なんだな」
悔しさを露にする元気をアリスが心配そうに見つめ、クレールが驚いた様子で清志郎を見つめていると、亜衣はテーブルの上に置かれたイヤホンを物珍しそうに眺めた。
「これで元気君は通信を……」
「でも、やっぱり元気君って頭が良いよね。こういうイヤホンがあればたしかにこっそり話を聞く事は出来るけど、それでも軽くでも内容がわかってないと混乱しちゃうし……」
「それでいて教授の推理を聞いても落ち着いて答えていたしね……教授も最後の質問が無かったら、流石に危なかったんじゃない?」
美衣の問い掛けに清志郎は静かに頷く。
「うん、そうだね。最後に動揺した以外はとても落ち着いて答えていたし、中々隙もなかった。僕の推理に対して語彙の面で引っ掛かる場面も無かったから、元気君は少なくとも同年代の子達の中では頭脳が優れている子だと思うよ」
「……それはどうも」
「でも、一体誰から話を聞いてたの?」
「申し訳ないけどそれは言えない。それを言ったら俺以外にも困る奴がいるからな」
「まあそういう事なら……」
「そうだね。さて……観客の皆さん、この推理ショーはどうでしたか?」
「え?」
ニヤリと笑う清志郎の言葉を聞いた元気が疑問の声を上げる中、真里達はパチパチと拍手をし始める。
「流石は夢水さん、って感じでしたよ。ゲンちゃんも度胸あるところ見せてくれとったけど、あと少しやったね」
「伊藤さん達、今のを聞いていたんですか?」
「あはは……取材はちゃんとしてたんだけど、やっぱり話し声は聞こえていたから途中から聞かせてもらってたんだよ」
「テレビなどで夢水さんの評判については聞いていましたが、まさかこれ程までとは……」
「名探偵が実際に推理を披露する場面なんて中々お目にかかれないし、良い経験になったなぁ……」
「いやぁ、どうもどうも」
真里達の言葉に清志郎が軽く手を上げながら答えていると、真衣はこそこそと元気達に話しかけた。
「教授って結構目立ちたがり屋なんだよね。遊園地で起きた五人の消失事件の時もテレビ局の知り合いにわざわざ電話をして、テレビ番組を使ってまで自分の存在を知らしめてたし」
「教授は演出を大事にしてるところがあるからねぇ……」
「……名探偵なのは認める。だけど、こんなちゃらんぽらんとした奴に負けたかと思うと、だいぶ腹が立つな」
「あはは……夢水さんも中々変わった人みたいだね」
「まったくだな……」
静かに怒りを見せる元気に対してアリスが苦笑いを浮かべ、クレールが少し呆れたような表情を浮かべていると、真里は元気とアリスの二人に視線を移した。
「それにしても、そんな高性能なイヤホンをわざわざ渡すなんて二人の保護者はだいぶすごい人なんやね。ただ……このサーカスの関係者のクーちゃんがいるとはいえ、二人の事を放っておくのは少々頂けへんなぁ……」
「たしかに……ねえ、二人の保護者さんはどんな人なのかな?」
「え? えっと、それは……」
考太郎の問い掛けにアリスが迷いを見せ、元気はすぐさまフォローに入ろうとしたが、それよりも早く清志郎は考太郎に対して制止のために手を伸ばした。
「大丈夫ですよ、西園寺さん。この子達の保護者は決して悪い人ではないと思いますから」
「夢水さん……」
「夢水さん、それも何か根拠があるんですか?」
「ありますよ。まず二人の身なりですが、二人ともしっかりと洗濯がされている衣服を着ているようですし、何かに怯えている様子もない。この事から、二人がその保護者から不当な扱いを受けていないであろうと察する事が出来ます。そもそもそういった事をするような人間が保護者だった場合、こんなに人が集まっている場所で二人きりにはさせないでしょうしね」
「逃げられて自分の行いを公表されたら困るしね」
「そういう事だね。それと、たぶんその保護者は二人の位置を常に把握していると思います。このイヤホンもつけている事自体を気づかれないような形になっていますし、最悪二人が迷子になったり良からぬ事を考える人間とのトラブルに巻き込まれたりしてもすぐに対応出来るようにGPSをつけている可能性は十分にありますよ」
「なるほど……」
「そして一番の理由は……二人自身です」
そう言いながら清志郎は元気とアリスを交互に見てからにこりと笑う。
「元気君は多少警戒心が強いようですが、それはあくまでも初対面の相手やまだあまり接点がない相手に向けた物で、同年代のアリスちゃんとクレール君に対しては少しだけ年相応な対応をしています。そんな等身大の子供らしさを持っている子だからこそ、保護者もまともな人間だと判断出来ますよ。そしてイヤホンから情報を伝えてくれていた人物も同様に」
「アンタ……」
「良い人にお世話をしてもらえているみたいだね、二人とも」
「……まあ、そうだな。結構自由人で困るところもあるし、イヤホンから情報をくれていた奴もそいつの相手には手を焼いている。だけど、少なくともアイツはまっとうな大人だ。少々子供っぽいだけのな」
「……うん、そうだね。きっと夢水さんも仲良くなれる人ですよ」
「なれる、というか僕的には“仲が良い”と思っているよ」
「そうなんで──え?」
清志郎の言葉にアリスが驚く中、清志郎を除いた全員が驚いた様子で清志郎に視線を向ける。
「夢水さん……二人の保護者と知り合いなんですか? というか、どうして知り合いだと……」
「それは内緒です。ただ、その人もこの光景は目にしてますよ。もっとも、表情には出してませんけどね」
「目に……ゲンちゃん、アーちゃん、夢水さんの話は本当なん?」
「……ああ、夢水清志郎という名前やその実績は前に聞いていたし、伊藤さんの事も以前聞いていたんだ」
「つまり、ウチの事も知っとる人なんやね。うーん、誰なんやろ……」
「まあ、それはさておき……夢水さん、いつから俺達の保護者が自分の知り合いだと気づいていたんだ? 当然だが、名前も正体のヒントになる事も話してないはずだぞ?」
元気からの問い掛けに清志郎は微笑みながら答える。
「その人の事情も考慮しないといけないから多くは話せないけれど、少なくとも君達と出会った瞬間にああそうかと思ったよ。その人なら君達の保護者を買って出てもおかしくないし、むしろ面白がりそうだしね」
「出会った瞬間って……」
「教授と一緒にいるとこういう事もよくあるんだよ。事件が起きた直後にはもうだいぶわかっている事が多いし、わかっていながらも犯人がやりたい事をやり終わるまでは基本的に謎解きをしないし。ね、伊藤さん」
「……そうやね。ウチもそうやったけど、夢水さんと出会った犯人の多くはきっと感謝しとると思うわ。ところで、二人はちゃんと後でその保護者と合流するん?」
「する。俺達も居所はわかってないけど、何かしらの形で接触はしてくるはずだ」
「……そう、それなら良いんやけどね」
元気の返答に真里が安心したような顔をしていたその時、真里は何かを思い出した様子で両手をポンと打ち鳴らした。
「そうや! 二人とも、例の件を夢水さんにも相談してみたら良いんやない?」
「例の件……?」
「伊藤さん、元気君達は何か困り事でもあるんですか?」
「困り事というかは、ここの団長さんとの勝負みたいなもんみたいよ。ウチも詳しくは知らんのやけど、何かを見つける勝負をしとるみたいなのよ」
「それもこのサーカス全体を使った、な」
「勝負……ああ、あれですか」
「あれみたいだな」
ビーストとスタイリー井上が納得顔で頷く中、元気は小さくため息をつく。
「……たしかに一度相談してみても良いか。本当は俺達自身が突き止めるべきだろうけど、貰ったヒントのせいでアリスもわけがわからなくなっているからな」
「ヒントのせいでって、それは本当にヒントなの?」
「ヒントではある。それでそのヒントというのが、色々探すのも良いが、時には立ち止まる事も大事っていう物なんだけどな」
「探さないといけないのに立ち止まる事も大事……?」
「たしかにあまりピンと来ないヒントだね……ねえ、教授はわかるの?」
「うん、今のを聞いてすぐにわかったよ」
あっけらかんとした様子で清志郎が言うと、元気とアリスは信じられないといった表情を浮かべる。
「も、もうか……!?」
「すごい……やっぱり名探偵さんなんだ……」
「ふっふっふ、まあね。因みに、元気君達はそれのありかに予想はついているのかな?」
「……それを聞くまでは一つだけアテがあった。けど、そこにはないと言っていたし、その時にさっきのヒントを貰ったんだ」
「なるほどね。どうやらここの団長さんは中々ユニークというか大胆な人のようだ。僕も仲良くなれそうだよ」
「仲良くなれるかは置いておくとして……そのありかは俺達でも気づけるところなのか?」
清志郎に元気が問いかける中、亜衣は不思議そうに首を傾げた。
「あれ? ヒントの意味は聞かないの?」
「ああ、それを聞いたら俺達の勝負の意味がなくなる。そんな結末は俺も望んでいないし、俺達の保護者もホワイトフェイスもそれを聞いたら確実にガッカリするからな。勝負を受けた以上、俺達がちゃんと突き止める必要があるんだ」
「元気……」
「元気君、私達よりも年下なのにすごくしっかりとしてるし、その考えはすごくかっこいいと思うよ。教授もそう思うよね?」
「うん。だから、そんな元気君への応援の意味を込めてこの言葉だけは伝えておくよ」
清志郎の言葉に元気は首を傾げる。
「言葉……?」
「そう。君のその決意の邪魔には決してならないちょっとしたアドバイスだよ」
「……まあ、そういう事ならとりあえず受け取っておくか。それでそのアドバイスっていうのは何なんだ?」
元気が問いかけると、清志郎はサングラスの奥で少し挑戦的な目をしながら静かに口を開いた。
「灯台もと暗し、それが僕からのアドバイスだよ」
政実「第31話、いかがでしたでしょうか」
元気「謎のアドバイスを貰ったけど、これが後々必要になるのか?」
政実「そんなところだね」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」