怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、推理小説は推理しながら読む派の片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。普通に読むのも良いけど、自分なりに推理しながら読むのもまた一興だからな」
政実「そうだね。中々当たらないけど、自分もしっかり物語の中に入り込んだように感じられてすごく楽しいんだよね」
元気「たしかにな。さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第32話をどうぞ」


第32話 新たな絆

「灯台もと暗し、って……どんな意味だっけ?」

「身近な事はかえってわかりづらいって言葉だな。由来は灯台の真下は明かりが届きにくくて暗いって事らしいが……つまり、探し物は俺達の身近なところにあるのか?」

「僕の推理だとそうなるね。だけど、ここの団長さんも中々大胆で意地悪な事をするもんだ。推理が合っているなら気づける人もだいぶ少ないんじゃないかな?」

「それくらい難しいって事だよね……」

「そもそも団長さんのヒント自体がピンと来ないし……」

 

 真衣と美衣の二人が揃った動きで首を傾げる中、亜衣だけはどこか不思議そうな顔で首を傾げていた。

 

「あれ……それじゃあアテが外れたかな……?」

「アテが外れたって事は……亜衣さんは思い当たるところがあったんですか?」

「あ、うん。教授、話してみても良い?」

「うん、良いよ。亜衣ちゃんは僕と同じで推理小説を読むのが好きで、学校でも文芸部員として書く側にもまわっているから是非聞いてみたいな」

「うん、わかった」

 

 清志郎の返事を聞いた亜衣は頷くと、コホンと咳払いをしてから静かに口を開いた。

 

「さて……まず前提としてハッキリとさせておきたいんだけど、団長さんが言っていた言葉をもう一度しっかり聞かせてもらって良い?」

「……わかった。色々探すのも構わないが、一度立ち止まる事も時には必要だ。探す事ばかり考えていると、身近な物に気づけなくなってしまうから。

 そして俺が予想している場所にはもう無く、今ごろはどこかをほっつき歩いている。これがホワイトフェイスが言っていた言葉をもう少し詳しくした物だ」

「……あ、よく考えたら団長さんも夢水さんが言ってる事と同じような事を言ってる!」

「たしかにそうだけど……」

「詳しく聞いてもまだピンと来ないよ? 亜衣、どういう事なの?」

 

 美衣が促すと、亜衣は頷いてから答える。

 

「えっとね、要点を纏めると……探し物は色々動きまわっているけれど、立ち止まる事も必要って感じかな。教授も言っていた身近っていう部分と元気君の思い当たる場所にはもう無いっていう部分はちょっと省くけどね。そこは私の推理の中には無かったから」

「ふむふむ……けれど、やっぱりちんぷんかんぷんやね。立ち止まる事も必要って言うとるのに、探すべき物は今もどこかをほっつき歩いているわけやからね」

「そうですね。でも、私達、特に美衣ならピンと来る物があるんですよ。私達が立ち止まっていても見つけられる移動するものが」

「私ならピンと来る……? そんなのあったかな……?」

「ほら、私達と教授が初めて遭遇した事件、伯爵が五人の人間を消した事件があったでしょ? あの時、話してくれたじゃない」

 

 亜衣の言葉に真衣と美衣は揃って合点がいったような表情を浮かべる。

 

「あっ、それか!」

「亜衣が言いたいのは、移動式の販売機の事でしょ?」

「うん、その通り。あの時、オムラ・アミューズメント・パークで私達は何組かに分かれて見廻りをしていて、美衣はその時に移動式の販売機を見ている。

ここにそういうのがあるかはわからないけど、他にも色々なところを歩きながら食べ物や飲み物を売っている人がいれば、そういった物や人に忍ばせておけば色々なところを歩き回るし、それに気づければ立ち止まっていてもいつかは見つけられて話を聞く事だって出来る。私はそう考えたんだけど……教授のアドバイスを聞く感じだと違うみたいだね」

「そうみたいだが、それは盲点だったな……」

「うん、そうだね。クレール、ここにはそんな感じのってある?」

 

 アリスの問いかけにクレールは首を横に振る。

 

「いや、無いな。だから、残念ながらその推理は間違ってるわけだけど、俺もなるほどなとは思った。団長は身近な物に気づけなくなるとは言っていたけど、俺達の内の誰の身近な物とは言ってなかったから、俺にとって身近な物の可能性もあったからな」

「そうだな……夢水さん、この推理はどうなんだ?」

「うん、流石は亜衣ちゃんだなと思ったよ。推理自体は僕が考えている物とは違うけど、しっかりと考えられている物だし、その可能性だってあったかもしれないね」

「夢水さんがかなり誉める辺り、本当に良い着眼点やったみたいね。けど、そうじゃない場所なんて本当にあるんやろか……」

「ありますよ。因みに元気君、差し支えなければその探し物の大きさを教えてもらえるかな?」

「大きさ……?」

「そうだよ。その大きさを一応聞いておきたくてね」

「大きさか……実は俺達も実物を見た事が無いんだ」

 

 元気のその言葉に岩崎三姉妹と真里は驚く。

 

「え、そうなの!?」

「ああ。どんな形をしているかや大体の大きさはわかるんだが、実物にはまだお目にかかった事がない。写真では見た事があるんだけどな」

「それなのに探さないといけないなんて……」

「たしかに大変ですけど、見つけられないと困った事になるので探しているんです。そういえば、大きさはどのくらいなんだっけ?」

「少なくとも、手の中に隠せる程度の大きさではあるな。だから、小型な物ではあるか」

「手の中に隠せる程度の大きさ……教授、予想は合ってるの?」

「ああ、バッチリだね。たしかにそれなら隠されていても中々気づけないはずだ。そして団長さんがそこを隠し場所にしたのも納得だよ。他の場所と違って、そこならだいぶ安心出来るからね」

「ホワイトフェイスが安心出来る場所……それなら団長室だと思うが、たぶんそこでもないよな……」

「うん……後はトレーラーも一つ自分の部屋として使ってるみたいだし、動かせる物だけど、動いていたら気づくはずだし、だいぶ目立つもんね」

 

 元気とアリスが頭を悩ませる中、清志郎は二人を見ながらふんわりと笑う。

 

「とりあえずじっくりと考えてごらんよ。ただ、早く気づかないと“ある人”に先を越されて、悔しい思いをするだろうけどね」

「ある人……?」

「具体的な名前は挙げないけど、元気君とアリスさんは覚えがあるんじゃないかな? 頼りになる友達と一緒に行動をしていて、華麗にこの世を駆け回る赤い夢の住人に」

 

 その瞬間、元気とアリスの表情は強ばり、元気は警戒心を強める。

 

「……夢水さん、アンタはどこまでわかってるんだ?」

「……さあね。さて、このまま話していても良いけど、みんなもやる事があるわけだし、そろそろ行動を再開するべきじゃないかな?」

「そうですね。私達ももう少しで公演がありますし、まだ皆さんの案内も終わっていませんから」

「たしかにそうですね……あ、それならウチらもビーストさん達についていってもええです? ウチらもクーちゃんに案内をしてもらっとる身ですし、お客さんをバックステージに案内しているところも出来れば取材させてほしいんです。ゲンちゃん達はそれでもかまへん?」

「……ああ、構わないどころか俺からもお願いしたいところだ。夢水さんと亜衣さんがいる分、俺も助かるからな」

「え、私も?」

 

 亜衣が不思議そうに言う中、元気は静かに頷く。

 

「ああ。推理自体は間違っていたかもしれないが、夢水さんも誉めてはいたし、俺もそんな考え方があったのかと驚かされた。だから、同行しているだけでもその洞察力や発想力に頼りたいんだ。推理小説を好むなら、俺も話をしやすいしな」

「あれ、それじゃあ元気君も推理小説が好きなの?」

「話の内容自体も楽しんでいるが、推理小説を読みながら犯人やトリックを推理するのは良い頭の特訓になるからな。特に好きな作家がいるわけじゃないが、色々な物を読み漁っている」

「そうなんだ……! わあ、それは嬉しいなぁ。それじゃあどんな物を読んできたか色々聞いても良いかな?」

「もちろんだ」

 

 嬉しそうにする亜衣に対して元気が答える中、アリスは表情を曇らせながら元気を上目遣いで見始め、その様子に美衣はクスクス笑った。

 

「アリスちゃん、大丈夫だよ。元気君が亜衣になびく事は無いし、亜衣にはもう大事なボーイフレンドがいるんだから。ね、元気君、亜衣?」

「……まあな。あくまでも推理小説仲間が出来る事自体が良い事だと思っていて、話せる相手が近くには中々いなかったから少しでも話してみたいと思っただけだ」

「そうそ──って、別にアイツとはそういう関係じゃないから! クラスメートで同じ部活動の仲間ってだけだよ!?」

「けど、仲が良い男の子がいるんですね」

「仲が良いというか……まあ、それはさておき美衣が言うように元気君とどうこうなりたいってわけじゃないから安心して」

「……わかりました」

 

 アリスが少しだけ表情を柔らかくしながら答えると、真衣は我慢出来ない様子でアリスに抱きついた。

 

「わわっ!?」

「あー……やっぱりアリスちゃん、スッゴく可愛い! 嬉しそうに話す姿も可愛いけど、元気君を取られるかもって考えてちょっと嫉妬してるところもたまらなく可愛い。もう一人妹が出来たみたいでなんだか嬉しいな」

「妹……私が真衣さん達の妹で良いんですか?」

「もっちろん! 亜衣と美衣はどう?」

「私ももちろん良いよ」

「私も。特に私は三つ子の末っ子だし、妹が出来るなら本当に嬉しいもん」

「私が亜衣さん達の妹……えへへ、同い年の子ばかりでお兄ちゃんやお姉ちゃんはいなかったし、私もなんだか嬉しいなぁ……」

 

 アリスが嬉しそうに笑う中、真里は微笑ましそうに見てからうんうんと頷く。

 

「仲よき事は美しき(なり)、やね。さて……みんなでの行動に反対の人はおらんようやし、そろそろいきましょか。夢水さんが言っとったようにやるべき事があるわけやしね」

 

 真里のその言葉に全員が頷いた後、元気は外していたイヤホンを再びつけた。

 

「……RD、聞こえるか?」

『はい、聞こえていますよ。まさかの同行者ですが、これは良い出会いになりましたね』

「たしかにそうですね。あ、元気……さっきはごめんね」

「……別に良い。それだけアリスが俺に心を許してるわけだからな。それに、俺こそ謝らないといけないし、ここはお互い様という事にして、この件は後で話すとしよう」

「元気……うん!」

 

 元気の言葉にアリスが嬉しそうに答え、その様子にRDが安心したように息をついた後、元気達は大所帯でサーカス内の探索を再開した。




政実「第32話、いかがでしたでしょうか」
元気「本当に大所帯になったが、またストーリーが進みそうだな」
政実「うん、そうだね。因みに、次回はまたちょっと驚く展開があるかもしれないよ」
元気「そうか。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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