元気「どうも、神野元気です。ハッピーエンドか……一番スッキリはするだろうけど、それはあくまでもそいつらにとってのハッピーエンドで、他の奴からすればバッドエンドかもしれないってよく言われてるよな」
政実「そうだね。だから、目指すなら全員にとってのハッピーエンドだけど、やっぱり難しいよね」
元気「そうだな。さてと、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第33話をどうぞ」
大所帯となった中で元気達が歩いていた時、元気とアリスがつけているイヤホンからはRDの声が聞こえ始めた。
『二人とも、お疲れ様です』
「……RD」
「RDさん、お疲れ様です。どうかしたんですか?」
『現在、元気達が大人数で移動している件についてクイーンからのメッセージがあったのでお知らせしようかと思いまして』
「クイーンから……!?」
「って事は……クイーンさんは私達の様子を見てたって事ですよね?」
元気達が驚く中でRDは静かに答える。
『そういう事ですね。それで、クイーンからのメッセージですが……“二人はそのまま夢水君や伊藤さん達と行動をしてくれ。夢水君は私の正体に気づいているけれど、バラすつもりはないようだから安心するように”と』
「行動をするのは良いが……」
「夢水さんがクイーンさんの正体を……でも、いつの間に正体に気づいたんだろう? RDさんは心当たりってありますか?」
『……いつ気づいたかはわかっています。ただ、何故気づけたまではまったく……』
「いつ気づいたかはわかっているのか……!?」
RDの言葉に元気が更に驚いたが、RDは対照的に落ち着いた様子で答えた。
『はい。突然ではあったので私も驚いてしまいましたが、流石はクイーンが認める程の名探偵だと感じました。あそこまでの短時間でクイーンの正体を見抜ける人物は彼とクイーンの師匠だという
「……やっぱり夢水さんはただ者ではないんだな」
元気が真剣な表情で清志郎を見ていると、それに気づいた亜衣が元気に話しかけた。
「元気君、教授がどうかした?」
「……いや、優れた能力があるのはわかったが、それでもそうは見えないと思っていただけだ」
「うん、それは正しい感覚だよ。今回みたいに保護者としてついてきてもらってる私達が言うのもあれだけど、教授は面白い事件や本があったら寝食を忘れて熱中しちゃうし、普段から興味ない事にはあまり見向きもせず覚える事すらしないような社会不適合者の食欲魔神だから」
「け、結構な言い方ですね……たしかにさっきの食欲旺盛さは見ていて驚いちゃったし、大人の男の人が食べてるというよりはお腹ペコペコの動物の餌やりを観てるような感じだったし……」
「そういう見方でも良いと思うよ。同じものを何着も持ってるって言って、何か機会がなかったらいつも同じ格好をするし」
「いつもウチのお母さんにご飯を食べさせてもらう代わりに色々お手伝いさせられてるみたいだし」
「そうそう。でも……教授のお陰ではあるんだよね。私達がこうして安心して三姉妹の中の一人じゃなくて自分は岩崎三姉妹の誰某だって言えるのは」
「……どういう事だ?」
元気が不思議がる中、亜衣は懐かしそうな表情を浮かべる。
「私達ね、生まれた時から同じ顔をしてるから、周りからそっくりだねとかお母さん達も見分けるのは大変そうだとか色々言われてきたの」
「正直、私達はそんな周りをバカにしてたところがあるよね。そっくりで見分けられないでしょって感じに」
「でも、やっぱり見分けてはほしかったの。岩崎三姉妹の中の一人って言うんじゃなく、亜衣は亜衣で真衣は真衣、私は私って感じにね。そしてそれは亜衣も真衣も同じだったみたいで、流石は三つ子だなって思ってた」
「そんな中だったんだ。教授がウチの隣にある洋館に去年の春に引っ越してきたのは」
「それじゃあ亜衣さん達と夢水さんが出会ったのは結構最近だったんですね」
アリスの言葉に真衣が微笑みながら頷く。
「そうだね。初めは珍しい事もあるなぁって感じで三人で見てて、どんな人が来たのかなって思ってたら教授が名探偵を自称している事がわかって、三人である作戦を立てたの」
「……夢水さんが本当に名探偵なのかを確かめたのか」
「大正解。私達は三人いるから一人ずつ教授のところに挨拶だったり話をしたりしに行って、何気ない会話とか手土産をもらった様子の中でも気になった物をメモして、それを帰った後に発表する事で共有してたの。前日にあった事を知らないなんて事態になったら、作戦も台無しになっちゃうからね」
「初日は亜衣で二日目が真衣、三日目が私で四日目にはまた亜衣が行って、四日目時点で教授は名探偵ではないと結論づけたから、五日目に亜衣が教授のところへ実は名探偵じゃないんでしょって言いに行ったの」
「それでそれで?」
「結果、私達が負けたよ。私達のクセや特徴で見分けられたからね。それに加えて、利き腕や視力の強弱、靴の脱ぎ方や教授の家のリビングにあった物への興味の有り無しみたいな様々な部分を見られていたのもあって」
そう語る亜衣は悔しそうではあったが、それでもどこか嬉しそうな様子だった。
「それで、私達三人を集めて、三人が目の前にいる状態で教授は推理を披露してくれて、しっかりと“それぞれ”を認識した上で改めて自己紹介をしてくれたの。それからも私達の事はしっかりと見分けてくれてるし、なんだかんだで保護者の役割はしてくれてる。
だから、私達は教授の事やその推理力は信頼してるんだ。もちろん、理由とか気になった点とかは聞くけど、教授が最後にはハッピーエンドにしてくれるって思ってる。教授はいつだってただ事件を解くんじゃなくてみんなが幸せになれるような結末にしてくれるからね」
「みんなが幸せに……そういえば、さっきも必要以上に追及してこなかったような……」
「別に俺達の事を追及してその後ろにいる人物について突き詰めても良い中で教えてくれるならという言い方で止めていた。それが夢水さんなりの流儀、名探偵としての美学って奴なのかもな」
「そうなんだと思う。教授にはいつも苦労させられてるけど、そういうところはしっかりとしてるからね」
清志郎を見ながら亜衣は微笑んでいたが、そのまま不意にアリスに視線を移した。
「でも、なんだか不思議だなぁ。ここまで話すつもりは無かったのに、二人、特にアリスちゃんの前だと色々な事を話しても良いかなって思っちゃうもん」
「あ、やっぱりそうだよね。さっきみたいにうんうんって聞いてくれるから話したくなるのもあると思うけど、そういう雰囲気にさせてくれる感じがするっていうかもっと話したいもっと聞いて欲しいみたいなきもちになるんだよね」
「アリスちゃんは聞き上手さんなのかもしれないね。こんなに可愛い上に聞き上手さんなのは羨ましいし、色々な人から好かれるんじゃないかな?」
「え、えへへ……そんな事ないですよ。でも、そう言ってもらえるのは嬉しいなぁ……」
アリスが言葉通りに嬉しそうな顔をし、それを見ていた岩崎三姉妹がアリスを愛おしそうに見ている中、その様子を見ていた元気にRDが話しかけた。
『元気、貴方の考えはわかりますよ。それがアリスの特技なのかもしれないと思っているんですよね?』
「……ああ。自分で言うのもあれだけど、他の奴の前だと緊張感を持ったりあまり心を許したりするのは良くないって感じたりするのに、アリスの前だと不思議と少しは肩の力を抜いても良いかなと思えるし、警戒心が強い動物達だってアリスを前にしたらすぐに心を許していた。
つまり、アリスの前では色々な生き物が心を許しても良いと思わされ、その結果として話すつもりもなかった出来事をポロッと話す事になる。言ってみれば、アリスの前では様々な秘密も意味を成さない事になるんだ」
『軽業師のシルバーキャット瞳もアリスが来て話をした結果、考え直してみると言いましたし、その考えは合っているかもしれません。しかし、そうなるとやはり不思議ですね……そういう雰囲気を漂わせている人物だという結論を出せばそこまでですが、アリスの場合はそれで片付けられる範囲を明らかに超えています』
「……参考までに聞いておきたいんだが、RDはアリスのその特技らしき物の影響は受けているのか?」
元気からの問いかけに対してRDは数秒黙った後に答えた。
『影響は受けていないと思います。いえ、受けていないと“信じたい”というのが正確でしょうか』
「RDの口からそんな言葉が出るのは意外だな」
『私もそう思います。ここまでの私の言動をすべて見返し、その上で何回も計算をすれば正確な答えは出せると思います。ただ、アリスの特技らしき物はまだまだ未知数であり、正確な答えを出すだけのデータが揃っていません。なので、世界最高の人工知能である私にしては珍しく信じたいという言葉を使うのが正確だと判断しました』
「……クイーンもそうだけど、お前達は一々自分の自慢をしたいんだな」
元気がやれやれといった様子で言っていたその時、その肩をアリスが笑顔で叩いた。
「ねえ、元気! 私も部活動がやりたいな!」
「……突然だな。なんで部活動の話になったんだ?」
「あのね、亜衣さん達と話してた時、真衣さんと美衣さんも他の部活動に入ってるって話になったの。真衣さんが陸上部で美衣さんは星占い同好会なんだって」
「三姉妹揃ってジャンルがまったく違うな。それで、それを聞いてお前もやりたくなったのか」
「うん! どうかな、私も部活動をやるのって」
「……別に構わないが、何が出来そうで何なら向いてそうかは考えとく。すぐにどうこう出来る事でもないからな」
「うん、わかった! 元気、ありがとうね」
「……どういたしまして」
アリスの嬉しそうな顔を前にして元気も少し嬉しそうに微笑んでいると、それを見ていた真衣がニヤニヤ笑う。
「元気君ってやっぱりアリスちゃんには甘いよね」
「……そのつもりはないが、それは否定出来ないのかもな」
元気がため息混じりに答えていたその時、前を歩いていた大人組の足が止まった。一行はいつの間にか大テント内に入っており、大人組の目の前にはビーストが世話をしているであろう雄のライオンが檻の中に入っていた。
「皆さん、紹介します。この子は私がお世話をしている子でサーカスの演目でも見事な曲芸を披露してくれているんです」
「あ、この子ってたしか火の輪くぐりをしてる子ですよね?」
「その通りです。流石に今はこうして檻の中にいてもらっていますが、演目の際にはとてもカッコ良い──」
「……おや、そこにいるのは夢水さん達じゃないか」
「え?」
突然聞こえてきた嬉しそうな声に元気達はそちらへ視線を向けた。すると、そこには軽く手を振りながら歩いてくる上越警部とただ者ではない雰囲気を出しながらその後ろを歩く岩清水刑事の姿があった。
政実「第33話、いかがでしたでしょうか」
元気「原作だとちょっとした出来事が起こる場面だけど、こっちだと色々な人が集合してるな」
政実「そうだね。そしてこの集合の結果がどうなるか、それは次回のお楽しみということで」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」