怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、警察にお世話になった事がない片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。いや、それが普通なんだよ」
政実「まあね。だからこそ、これからもそれは無いようにしたいね」
元気「……まあな。さてと、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第34話をどうぞ」


第34話 警部達との再会

「あっ、上越警部に岩清水刑事だ!」

「そういえば、今日はあの怪盗クイーンがここに来てるんだっけ……」

「それの件だったらここにいるのも納得かな」

 

 三姉妹がそれぞれ別の反応を見せる中、上越警部は岩清水刑事と共に元気達の目の前で止まり、三姉妹の姿に微笑んだ後に元気達が同行している事に気づいて驚いた様子を見せた。

 

「おや、君達はさっきの……」

「警部さん達、さっきぶりです!」

「……どうも。まさか、こんなに早くまた会うとは思わなかったな」

「それはワシらも同じだよ。もちろん、亜衣ちゃん達や夢水さん、伊藤さんとも一緒だった事もだがね」

 

 上越警部が優しい笑みを浮かべる中で亜衣は不意に岩清水刑事に視線を向けた。すると、どこか不思議そうに首を傾げた。

 

「あれ……岩清水刑事、今日はなんだか静かですね。それに、スーツも少しシミがついてるような……?」

「ああ、今日は朝からそんなでな。仕事はいつも通り……いや、いつも以上に真面目でテキパキとこなしてくれるから助かっておるよ。スーツのシミもちょっとした事故でついた物なんだが、いつものようにスーツのシミについて嫌な顔をするのかと思えばしないどころか相手の怪我の心配をしていたんだよ」

「え、本当ですか?」

「こう言ったら失礼だろうけどなんだか意外……岩清水刑事の事だからすごく嫌な顔をしてそうだし、静かなのも不機嫌だからだと思ってた」

「刑事さん、なんだかだいぶ言われてるような……」

 

 アリスが苦笑いを浮かべていると、亜衣は同じように苦笑いを浮かべながら口を開いた。

 

「まあ仕方ないよ。私達にも非はあるけど、岩清水刑事は第一印象があまりよくなかったから」

「そうなのか?」

「そう。私達の町に夜光怪人っていうピカピカ光る謎の怪人が現れた事があってね、その時に私達と伊藤さんは岩清水刑事とも初めて会ったんだけど、補導しようとするのは良いとしても手錠まで出してきたんだよ」

「うわ……それは流石にどうなんだってなるな」

「その時は警部がどうにかとりなしてくれたけど、警部がいなかったら揃って手錠をかけられていたね。もっとも、私達も夜光怪人を捕まえるために色々武装してたんだけど」

「唐辛子を水に溶かした奴とか小麦粉爆弾とかね」

「……申し訳ないけど、そんなのをぶつけられたなら岩清水刑事も怒るのは当然だと思う。たしかに手錠はやりすぎだけどな」

 

 元気が呆れたように言い、真衣と美衣が揃って頭を掻く中、亜衣は苦笑いを浮かべたままで話を続ける。

 

「ただ、岩清水刑事もその後は中々だったよ。夜光怪人がある夜に大量に発生して、最後には気球を使って逃げようとしたの。そしたら、岩清水刑事は迷うことなく気球を拳銃で撃ち始めて、最終的には気球に当たって爆発しちゃったから」

「いやいや、それは大惨事だろ!」

「当然だ。だから、あの後にはしっかり始末書を書かせたとも。岩清水君は職務には真面目で、情熱も人一倍なんだが……それが暴走してしまいがちでな。因みに、夜光怪人が無事だったのは後で夢水さんから確認しているから、始末書だけで済ませておるよ。そうじゃなければ、自分が逮捕される側になっているしな」

「ですよね……」

 

 亜衣達が揃って苦笑いを浮かべ、上越警部と話を始める中、元気とアリスは岩清水刑事にこっそり近づいた。

 

「……ジョーカーさん、ですよね?」

「……そうだよ。本物の岩清水刑事についてRDから何か聞いているかい?」

「何度か脱出を試みるも失敗。後は大人しく捕らえられている事にして、RDから食事を振る舞われたりアニマルセラピーで癒されたりしてるみたいだ」

「彼にとっては良い休日になっているようだね。クイーンの変装については何かわかったかな?」

「それがまったく……でも、夢水さんが言うには、私達の動きはちゃんと把握している上に夢水さんはクイーンさんの居所はわかっているみたいなんです」

「教えてくれる気は更々無いようだけどな」

「そうか……まあ、わかったところで意味はないと思うけどね」

 

 ジョーカーの言葉に二人は不思議そうな顔をする。

 

「わかっても意味はない?」

「どういう事ですか?」

「あの人の性格上、僕達が正体に気づいたら、その瞬間にわかって、その後すぐにまた別の変装をしてしまうって事だよ。君達から見てあの人はどういう人だい?」

「……普段は怠け者で酒じゃなく自分に酔っているC調と遊び心が鉄則の快楽主義者」

「でも、ちゃんとやりたいと思えた時にはその実力をいかんなく発揮して、誰もその足取りを掴む事が出来ない赤い夢の住人の怪盗さん、です」

 

 元気とアリスがそれぞれ答えると、ジョーカーは頷いた。

 

「そうだね。それ故にあの人は仕事の時には一切妥協をしない。変装についても同じ事なんだよ」

「たしか自分に対して強い催眠をかけているんだったか。自分は変装相手であるという暗示をかけて、並大抵の事じゃそれが解けなくなるような」

「でも、それだとずっとその人のままだよね」

「そのためにあの人は催眠を解くためのキーワードを用意しているんだ。それを聞いたらすぐに催眠が解け、変装相手から怪盗クイーンへとすぐに戻れるように」

「キーワード……」

「そのキーワードって何なんですか?」

「今回のキーワード、それは“チェックメイト”だよ」

 

 それを聞いた瞬間、元気とアリスは揃って驚いた。

 

 

「その言葉って……!」

「さっきの……」

「……誰かがそれを言っていたのかい?」

「夢水さんが西園寺さんに聞いていたんだ。チェックメイトという言葉を知っているかと」

「西園寺さんは不思議そうにしてましたけどね」

「そうか……」

 

 ジョーカーが顎に手を当てる中、アリスはハッとした。

 

「もしかして……西園寺さんがクイーンさんとか!? 夢水さんはクイーンさんの居所がわかってるみたいだし、それの確認のためにチェックメイトを知ってるかって聞いたんだよ」

「僕もそう思うよ。だけど、僕達が気づいた頃にはもう違う人になっていると思った方がいい。クイーンは身長も変えられるからこの人ならなれないだろうという考え方は危険だしね」

「身長まで……そうなると、変装している相手を変えられたらますますわけがわからないな」

「だから、クイーンが誰かという事を考えずに君達は君達のやれる事をやってくれ。その様子だと、まだ例の物は見つかっていないんだろう?」

 

 ジョーカーの問いかけに二人は頷く。

 

「まだだな。ただ、夢水さんはもう見当がついているようだ」

「私達にヒントまで出してくれたしね。団長さんからもヒントは貰ってるけど……」

「ホワイトフェイスから?」

「ああ。俺とクイーンが予想している場所にはもう無くて、今はどこかを動いているけど、立ち止まる事も時には大事だと言っていたな」

「そうか……」

「ジョーカーさんはわかりますか? 夢水さんはわかったみたいなんですが、私達は全然で……」

「……僕も確証はないよ。だけど、ここだと良いなというのはあるかな」

「つまり、予想はついてるのか?」

 

 元気が驚きながら聞くと、ジョーカーは静かに頷く。

 

「うん。クイーンはいつも勿体ぶった言い方をするから、そういったわかりづらい言い方には慣れてしまったんだ。因みに、夢水清志郎は何と言っていたのかな?」

「灯台もと暗し、っていうヒントを貰いました」

「灯台もと暗し……それじゃあここまでに出会った人達は誰がいたかな?」

「ここのサーカスの人間なら催眠術師のシャモン斎藤以外の芸人達と一部のスタッフ、後はここにいる全員と警察庁の黒田だな」

「そうか……それなら、僕の予想はたぶん合っているな。その中にリンデンの薔薇を隠せる人間がいるからね」

「隠せる……あっ、それならマジシャンのプリズムプリズムさんだよ。マジシャンなら隠すのはお手のものでしょ?」

 

 アリスはぱあっと顔を輝かせるが、元気は難しい顔をしながら首を横に振る。

 

「だとしてもどこに隠すんだ? プリズムプリズムと会ったのは、ここに来てすぐで、その時の俺達の行動だって別に変なところは無かったはずだ」

「あ、たしかに……えーと、クレールと一緒にプリズムプリズムさんに入り口のところで出会って、指定されてたホワイトフェイス君人形を渡してこのパスを受け取ったくらいだったはずで、その時にちょっとしたマジックを見せてもらって……」

「マジック……」

 

 思い出しながら口にするアリスの言葉を聞いた元気が何かに気づいた様子を見せていたその時だった。

 

「元気君達は岩清水さんと仲が良いのかな?」

「え? あ、西園寺さん」

 

 近づいてきていた考太郎にアリスが気づく中、元気は警戒しながらアリスを軽く後ろに隠した。

 

「……別に。怪盗クイーンの居所について何か気づいた事がないか聞かれていただけだ」

「そっか。因みに、何か気づいた事はあるのかな?」

「……ピンと来るものはない。それに、怪盗クイーンがどこかにいたとしても俺達にわかるわけはない。話くらいしか聞いた事はないが、怪盗クイーンが簡単に正体がバレるような真似はしないと思うからな」

「僕も同感だよ。それで、“本当は”何を話していたのかな?」

「だから、怪盗クイーンの居所を──」

「居所は居所でも“リンデンの薔薇の居所”じゃないのかな?」

「なっ……!?」

「えっ……!?」

 

 考太郎の言葉に元気とアリスが驚く中、ジョーカーは何も言わずに三人の様子を見ていた。そして静かに微笑んだ考太郎が何かを言おうと口を開いたその時だった。

 

「う、うわぁーっ!!」

 

 突如聞こえてきた悲鳴に全員の視線がそちらへ集中する。

 

「今のは……」

「スタッフの大石さんです!」

「……何やら事件みたいやね。ここにゲンちゃん達だけ残すのもちょっと危険やし、とりあえずみんなで行ってみよか。上越さん、岩清水さん、子供達の安全はお任せします」

「……ええ、わかりました」

「了解です」

 

 真剣な表情の上越警部とジョーカーが答えた後、一団は揃って悲鳴が聞こえた方へと走り始めた。




政実「第34話、いかがでしたでしょうか」
元気「岩清水刑事がジョーカーで確定したのは良いとして、クイーンだと思ってる西園寺さんの行動の真意がわからないな」
政実「そこは後々わかるから、その時をお楽しみにって感じかな」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしてますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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