怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、探し物はそれなりに得意な片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。得意なのは良いとして、そもそも探さなくてすむのが一番だけどな」
政実「たしかにね。そのためにも失くし物をしないように気を付けないとだね」
元気「そうだな。さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第36話をどうぞ」


第36話 見つけたもの

「元気君達が……」

「教授、どうなの?」

 

 亜衣が問いかける中、清志郎は静かに頷いた。

 

「そうだよ。彼らの保護者は怪盗クイーン達さ。僕的にはまだ言う必要はないと思っていたけど、ここまで辿り着いた警部の功績は讃えるべきだからね」

「それじゃあ本当なんだ……」

「でも、どうして警部はそう思ったんですか? 関連なんてまったく無いように見えるのに……」

 

 美衣が不思議そうに聞くと、上越警部は俯く元気達に視線を向ける。

 

「さっきから岩清水君がこの子達の近くにいるのが理由の一つだ。岩清水君はさっきまでワシと常に行動を共にしていて、この子達と話したのもテントの外で今朝会った時のみで、三人が知り合いだという様子も見られなかった。

なのに、何故か合流した後は三人は一緒にいる。これは岩清水君がクイーンまたはジョーカーが変装をしていて、二人の様子を見ながら小声で相談をするためだと考えたんだよ」

「……岩清水刑事も警察官だ。怪盗クイーンがいる場所なら警戒をするために子供のそばにいてもおかしくないんじゃないのか?」

「たしかにそうだ。だが、それなら同じく未成年の亜衣ちゃん達にも注意を促すと思わんかね?」

「た、たしかに……」

「だが、話を聞いてると岩清水刑事も亜衣さん達とは顔見知りのはずで、亜衣さん達もそれなりに気がつく方だ。それなら、それを知っているからこそ……」

「いや、岩清水君は亜衣ちゃん達の勘の良さや推理力はあまり評価しておらんよ。それに、評価しているワシでもやはり三人には注意喚起をする。装備があるワシ達でも対応出来ない事態というのは起きる可能性があるからね」

 

 上越警部が優しい目を向けるのに対して元気が黙り込むと、アリスは元気に心配そうな視線を向けてから上越警部に視線を移した。

 

「で、でも……岩清水刑事が怪盗クイーンだったとしても私達を拐うために近くにいた可能性があるんじゃ……」

「……いや、それは無いだろうね」

「ど、どうして……」

「前提として怪盗クイーンは間違いなく世間的に見れば犯罪者であり、警察が逮捕をするべき存在だ。けれど、悔しい事に怪盗クイーンの事について理解している事があるんだよ」

「理解している事……」

「うむ。怪盗クイーンは犯罪者だが、他の犯罪者のような私利私欲のための盗みはせず、自分の美学のために動く奴だ。そして、いらなく誰かを傷つける事も命を奪う事だってしない。そんな奴が君達の事を拐おうとしてるとは思えんのだよ」

 

 アリスを見つめる上越警部の表情には迷いがなく、その様子にアリスと元気が驚いていると、清志郎は静かに頷いた。

 

「僕も同意見ですね。あの人は誰かを拐ったと声明を出したとしてもそれはその人の今後のために必要だったからとかですし、悪意を持って拐うような真似は絶対にしませんよ」

「教授まで……」

「それと、少しだけ口を出させてもらうと、元気君達はとても高性能なイヤホンを持っているようで、それを使って色々な情報を伝えられているみたいですから、本物の岩清水刑事はたぶんアジトにいますよ」

「アジト……元気君、どうなのかね?」

「……いる。それも、捕まってるとは思えない程にのんびりとしてるみたいだ」

「元気……」

「流石にこれ以上粘ろうとしても仕方ないし、難癖をつける形になるのは嫌だからな」

 

 悔しそうに言う元気に対してアリスが優しい笑みを浮かべながら頷いていると、上越警部は安心したように息をついた。

 

「そうか……まあ、彼にとっては良い休暇だったと思ってもらう事にしよう。それで、君達が怪盗クイーンの保護下にあるというのは間違いないんだね?」

「ああ。衣食住全てを提供されているし、必要な物があったらそれも与えられていて、しっかりと学習の機会もある」

「そういえば、お世話してるペットもいるんだっけ?」

「はい、その子達ものびのびと過ごしてますし、何一つ不自由ない生活をしてます」

「うむ、そうか……」

 

 上越警部が軽く唸る中、元気は警戒した様子で話しかけた。

 

「それで、俺達をクイーンから保護でもするのか? 警察からすれば犯罪者のところに子供がいるのは良くないだろうからな」

「……本来はそうだ。しかし、今すぐにそうしようとは思わんよ」

「え……」

「何故だ?」

「警察官としてこの判断はどうかと思うが、それが最善だと思うからだよ。夢水さん、アンタはどう思う?」

 

 上越警部からの問いかけに清志郎は微笑みながら頷いた。

 

「僕も同意見です。警部がその判断をしてくれて僕は安心してますよ」

「夢水さんも……それじゃあどうしてそれが最善だと思ったんだ?」

「しっかりとした保護下に置かれている事や怪盗クイーンのアジトよりも安全性に優れたところをワシらでは用意出来ない事が挙げられるが、何より君達が怪盗クイーンの事を信頼しているからだよ」

「クイーンの事を……」

「まあこの件が済んだら色々考えさせてもらうが、現時点では君達を警察で無理に保護しようとはせんよ。さて、もう一度聞かせてもらうが、君はクイーンとジョーカーのどちらなのかね?」

 

 上越警部が問いかけると、ジョーカーは諦めたようにため息をついた。

 

「……ジョーカーですよ、上越警部」

「そうか。それで、クイーンはどこにいるのかね?」

「それは僕達にもわかりません」

「わからない?」

「え、でもクイーンはここにいるんだよね?」

「いるのはたしかみたいだ。俺達の様子はどこかで見てるようだしな」

「でも、クイーンさんは誰になってるかは教えてくれてないんです。ただ、正体を明かす前にわかったら賞品をくれるとは言ってましたよ」

「賞品?」

「この前星菱邸に『リンデンの薔薇』を盗みに行った時にテレビ局の視聴者プレゼントになっていたクイーンさんのマスコットがついたストラップです。中々可愛かったので実は欲しかったりして……」

 

 アリスが少し照れながら言うと、上越警部は小さくため息をついた。

 

「クイーンという奴は本当に得体が知れないというか掴めないというか……」

「それがクイーンという人なんですよ。相手の本質にはよく気づくくせに自分の事は中々掴ませないという人なんです」

「そういうとこ、やっぱり教授と合うのかもね」

「あの人とはこれからも良い関係でいたいと思ってるよ。ところで警部、保護はしないと仰いましたけど、二人も言うなれば怪盗クイーンの仲間ですが、保護じゃなく逮捕という形も取らないんですか?」

 

 その清志郎の言葉に空気が凍りつく中、上越警部は静かに頷く。

 

「ああ、取らんよ」

「……何故だ? たとえ子供でも逮捕は出来るはずだぞ?」

「それだけの犯罪を犯せばそうだ。だが、君達は怪盗クイーンの仲間ではあっても、まだ犯罪を犯してはいないし、たとえ犯していたとしてもその証拠はない。だから、逮捕は出来ないしワシはせんよ」

「だが、岩清水刑事は誘拐されていて、それを知っていて俺達は黙っていた。そして実行犯は恐らくクイーンでジョーカーは関与してない可能性だってある。だったら、ジョーカーも俺達と同じでまだ逮捕をするだけの証拠はないと言えるんじゃないのか?」

「元気……」

 

 アリスが元気を不安そうに見つめる中、上越警部は小さくため息をつく。

 

「君はやはり侮れんな。たしかに今のところはジョーカーが岩清水君を拐った実行犯であるとは言えんし、岩清水君に変装をしていただけで他の犯罪を犯してもいない」

「だったら……!」

「だが、それまでにクイーンの仲間として犯してきた罪はある。それだけで十分なんだよ」

「く……」

「ワシもあのライオン相手に立ち向かってここのスタッフを助けようとした姿勢は評価しておるさ。だが、それとこれとは話が別だ。助けようとするのは諦めてくれ」

「くそ……」

 

 元気が悔しそうな様子を見せる中、ジョーカーは上越警部に話しかけた。

 

「上越警部、元気君達に少しだけ話をしても良いですか?」

「……仕方ない。だが、逃げようとはするんじゃないぞ?」

「しませんよ」

 

 ジョーカーは静かに答えた後、俯く元気と元気を心配そうに見るアリスに近づき、顔を近づけてから小声で話しかけた。

 

「二人とも、後は任せたよ」

「ジョーカーさん……」

「とりあえず、RDがいれば色々調べられるはずだ。後はクイーンだけど……」

「……クイーンは西園寺さんという考えで良いのか?」

「今のところはね。だけど、少しでも目を離した後はもう違うと考えて良いと思う。クイーンも僕達が正体に勘づいているのはわかっているはずだから、また別の誰かになろうとはしてるだろうしね」

「別の誰か……ジョーカーさんは予想はついているんですか?」

 

 アリスの問いかけにジョーカーは軽く頷く。

 

「恐らく、サーカスの関係者だと思う。伊藤さんよりはサーカスの関係者になった方が色々動きやすいし、何よりクイーンの事だから面白いと言いそうだ」

「それは容易に想像がつくな」

「夢水さんの可能性は無いんですか?」

「彼自身も面白いと言うだろうけど、クイーンの思考を考えるなら夢水清志郎にはならずに彼自身の考えで動いてもらいたいと思っていそうだ。それと、リンデンの薔薇だけど……」

「……それならたぶんわかった気がする」

 

 その元気の言葉にアリスは驚いた様子を見せた。

 

「え、ほんと!?」

「ここまで気づけなかった自分自身の勘の悪さが恥ずかしいけど、可能性があるのはここだって思ってる。だけど、それをただ見つけたってクイーンは何となく満足しない気がする」

「そうだね、僕もそう思うよ。だったら、君はどうする?」

「決まってる。遊び心があるやり方で見つけた事を証明し、クイーンだけじゃなくホワイトフェイスにも一泡吹かせる。ジョーカーもそれが良いと思っているんだろ?」

「ああ、思ってるよ。では二人とも、また後で会おう」

「後でって……ジョーカーさんは大丈夫なんですか?」

 

 アリスが不安そうに言う中、ジョーカーは静かに頷いた。

 

「大丈夫だよ。それに、クイーンならこう言うはずだ。私のパートナーなんだから私が助けなくても自分でなんとかするはずだ、とね」

「ジョーカーさん……」

「二人も気をつけて。それじゃあ」

 

 そう言いながら二人から離れると、ジョーカーは上越警部に話しかけた。

 

「それでは行きましょうか」

「ああ」

 

 上越警部が頷いた後、二人は元気達が見つめる中で静かに歩いていった。




政実「第36話、いかがでしたでしょうか」
元気「今回の話で俺がリンデンの薔薇のありかに気づいたわけだけど、それはもう少し後で明らかになるのか?」
政実「そうだね。色々考えてはいるし、読者の皆さんを驚かせられるような方法に出来るように頑張るよ」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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