元気「どうも、神野元気です。謎解きか……まあ推理小説だと大人数の前で推理を始めるとかはよくあるよな」
政実「普段はあまり目立つのは好きじゃないけど、謎解きの時にはそうしてみたいなと思うよ」
元気「そうか。さてと、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第41話をどうぞ」
黒田の後に続いて満員になっているすり鉢状の観客席を歩き、元気達は楽屋とリングを結ぶ通路の前に立った。
「え……ここ、たしか楽屋があるところじゃないですか? 良いんですか、許可無しで入っても……」
「ええ、構いませんよ。それに……」
「それに?」
「……いえ、それは後にしましょう。とりあえず行きますよ、皆さん」
黒田が考太郎に細い目を向けながら答える中、アリスと岩崎三姉妹は少し怖がる様子を見せた。
「ついてくって決めたは良いけど……」
「なんか私達……いけない領域まで入り込もうとしてる?」
「そんな気がしてきたかも……」
「げ、元気……」
「……大丈夫だ。恐らくこの先には上越警部やジョーカーだっている。少なくとも、黒田が俺達に何かしてこようとしても止めるだろ」
「そ、そうだよね……」
通路に入りながらアリスが不安そうに答える中、元気はRDに話しかけた。
「RD、黒田の考えは予想つくか?」
『そうですね……クイーンの事を捕まえようとしている事、シャモン斎藤を変装させたと私達が予想している西園寺考太郎を連れていこうとした事から察するにクイーンが誰に変装しているかかがわかったためにその正体を明かそうとしているのだと私は考えています』
「因みにその可能性は何%だ?」
「
「ほぼ確実にそうなるんですね……でも、クイーンさん達なら華麗に逃げ切るはずだよね……!」
「……そうでなきゃ困るからな」
元気とアリスが話す中、通路には出番を待っているシルバーキャット瞳やクレールを始めとした団員達がおり、岩清水刑事に変装をしたジョーカーと上越警部の姿もあった。
そして上越警部が岩崎三姉妹の姿に、クレールが元気達の姿に驚く中、右手に上越警部の上着を掛けられているジョーカーは上越警部と共に元気達に近づいた。
「二人とも、どうしてここに?」
「黒田さんが西園寺さんと夢水さんを呼んでて、それで私達もついてきたんです」
「黒田さんが?」
「やっぱりクイーンの正体がわかったからなのかな?」
「だとしたら、元気君達もマズイんじゃ……」
岩崎三姉妹が元気達に心配そうな視線を向けると、上越警部は元気達に微笑みかけた。
「安心してくれ、二人とも。二人がクイーンの仲間なのはわかっているが、ワシは二人に何かあればしっかりと守るつもりだ」
「警部さん……ありがとうございます」
「どういたしまして」
上越警部がウインクのつもりで両目をきゅっと瞑る中、勝手に入ってきた黒田に対してホワイトフェイスが詰め寄る。
「黒田さん、勝手に入ってきてどういうつもりですかな?」
「そう怒らないでくださいよ。皆さんに紹介したい人がいるだけですから」
「紹介したい人?」
黒田の言葉にシャモン斎藤が軽く首を傾げる中でリングへのカーテンが開き、大砲男のロケットマンと巨大な大砲が戻ってくる。そしてホワイトフェイスは仕方ないといった様子でため息をつくと、シルバーキャット瞳と一緒にカーテンを開けてリングへと向かった。
「続きましては軽業師のシルバーキャット瞳! 華麗なる軽技をお楽しみ下さい!」
ホワイトフェイスの声がカーテンの向こうから聞こえ、観客の拍手に押されるようにホワイトフェイスが帰ってくると、黒田は不敵な笑みを浮かべた。
「さて、それではご紹介しましょうか」
「それで、誰を紹介すると言うんです?」
「怪盗クイーンですよ」
「クイーン!?」
その瞬間、団員達の間に衝撃が走り、黒田は周囲を見回す。
「そう、クイーンです。そしてクイーンは……この中にいるのです!」
しゃがみこんでいたスタイリー井上と鞭を持ったビーストが顔を見合わせてから元気達を心配そうに見る中で腕組みをしているジャン・ポールと壁際にもたれたシャモン斎藤は何も言わずに事の流れを見守っていた。
「RDさんが言ってた通りになったね」
「そうだな。そしてこの後の展開は……」
元気達が黒田の様子を伺う中、黒田は“ある一人”を指差した。
「貴方が怪盗クイーンです!」
その先にいたのは考太郎であり、考太郎が驚く中で黒田は静かに口を開いた。
「東亜新聞社会部の西園寺考太郎さん、貴方が怪盗クイーンです」
「……冗談、ですよね?」
「私の目が冗談を言っているような目に見えますか?」
「……見えないです。でも、でも……」
考太郎が信じられないといった様子で言っていると、黒田は考太郎に話しかけた。
「西園寺さん、二つ質問をします。まず一つ目、中学二年生の時の担任の先生は?」
「志賀先生です」
「その時の出席番号は?」
「十八番です。そういえば、入り口でも同じような質問をされましたけど、本当に何の意味があるんですか?」
即答した考太郎が不思議そうに聞くと、黒田は満足げに頷いてから上越警部から手錠を受け取り、考太郎の両手首に掛けた。
「午後七時四十五分──
「……え?」
考太郎は青ざめながら手錠をガチャガチャ鳴らす。
「黒田さん! 冗談にしては酷すぎますよ! 早く外して下さい!」
「冗談……ですか。名探偵だという夢水さん、これは冗談だと思いますか?」
「いえ、思いませんよ」
「夢水さんまで……」
考太郎の表情は絶望の色に染まり、目には恐怖から軽く涙が浮かんでいた。
「もっと早く彼の正体に、そして彼の不思議な点に気付くべきでした」
「不思議な点……?」
「夢水さん、貴方はわかっていますよね?」
「ええ、わかってますよ。西園寺さんが黒田さんからの質問にすぐに答えられた事、これが不思議な点ですね」
「その通りです」
「そんなの当然ですよ! 僕が本物の西園寺考太郎だと証明しないといけませんから!」
考太郎が必死な様子で言うと、黒田は再び静かに口を開いた。
「伊藤さんも含めて、私は数人の記者に同じ質問をしました。学校名や担任の先生はについてはみんな答える事は出来ました。けれど、出席番号まで答えられたのは……西園寺さん、貴方しかいないんですよ!」
「答えられたからクイーン? そんなのおかしいじゃないですか!答えられない方が怪しいでしょう!?」
「いえ、答えられるからこそ怪しいんですよ。中学二年生の時の出席番号もそうですが、小学生の頃の出席番号なんて覚えているはずがない!」
「……ぼ、僕は記憶力が良いんです」
「そうですか。それなら、昨日の夜に食べたもの、答えられますよね?」
「昨日の夜……」
考太郎は悔しそうな顔で俯き、黒田はやはりといった様子でため息をついた。
「怪盗クイーン、貴方は西園寺考太郎に変装するにあたって、あらゆる個人情報を収集してそれを完璧に記憶した。けれど、その中に昨夜何を食べたかまでは入っていなかった。だから、貴方は答えられないんですよ」
「…………」
「夢水さん、名探偵の目から見ておかしな点はありますか?」
「いえ、見事な推理だと思いますよ」
「夢水さんもそう言っています。観念したらどうですか、怪盗クイーン」
黒田が考太郎を睨んでいたその時だった。
「団長! 大変です!」
髪をバンダナでまとめた大石がカーテンを開けて入ってきたが、その顔は青くなっていた。
「大石、どうした?」
「瞳さんが……瞳さんが大変なんです!」
それを聞いた全員がカーテンを開けてリングへと出る。観客はシルバーキャット瞳の芸を見ていて元気達が出てきた事に気付いておらず、元気達は同じように上を見上げた。
一本の細い棒がテントの上から吊られ、その棒は両端を計四本のワイヤーで支えられていたが、その内の一本が切れ、もう一本が切れかけていた事で棒は大きく傾いていた。
「大石、観客は事故に気付いているか?」
「まだです。ワイヤーが切れたのも演出だと思っているようですから。でも、このままじゃ瞳さんが落ちて、瞳さんが……!」
「そうだよ……このままじゃ瞳さんが死んじゃう……!」
傾いた棒の上でバランスビームを演じるシルバーキャット瞳はどうにか笑顔を見せていたが、その顔は青ざめており、精神状態がギリギリなのは火を見るより明らかだった。
「急いで防護ネットを張るんだ! 早く!」
「は、はい!」
大石を始めとした機材担当が走り出し、ホワイトフェイスは悔しそうな顔で再び上を見上げた。
「ネットを今から張ろうとしても二十分はかかる……それまで集中力が持つかどうか……」
「それなら俺が……」
「無理だ、ジャン・ポール! お前はいつも10メートルの高さから飛び降りているシルバーキャット瞳を受け止めてるが、今はその三倍の30メートルだ! いくらお前でも受け止められずにお前も彼女も怪我では済まなくなる!」
「それなら空中ブランコはどうだ? あれならバランスビームの高さまで行けるし、スタイリー井上は空中ブランコが……」
「無茶言うなよ! 僕は普通の空中ブランコですら精一杯なんだぞ! 助けるなんて無理だ!」
「それじゃあどうしたら……」
誰もがなす術もなくシルバーキャット瞳を見上げる中、一人だけ落ち着いた様子で口を開いた。
「上越警部、岩清水刑事の手錠を外してもらえませんか?」
「夢水さん、一体何を……」
「助けられるのはジョーカーとクイーンだけですし、岩清水刑事がジョーカーなのは確定していますからね」
「それはそうだが……」
上越警部が迷う中、鍵師のジョー・セサミが静かに動いた。
「迷ってる時間はないよ、警部さん。俺達が手を出せない中でクイーンとジョーカーなら助けられるって言うならそれにかけるしかない。悔しいが、二人に任せよう」
「……わかりました。では、お願いします」
「ああ、任せてくれ」
ジョー・セサミがピアノ線を鍵穴に差し込むと、ピンが音を立て、岩清水刑事と考太郎の手錠が外れた。そしてジョーカーが変装を解く中、ジャン・ポールはジョーカーと考太郎に頭を下げた。
「お前達に頭を下げたくはないが……よろしく頼むぞ」
「わかった。さて、そろそろクイーンの変装を解かないと……」
「ああ、そうですね。それじゃあそろそろ解きましょうか」
「解きましょうかって……え!? 教授、クイーンの変装の解き方わかるの!?」
「わかるよ。でもその前に……ジョーカー君、クイーンはいつもどんな風に変装をしているかな?」
「……いつも強い自己暗示をかけてまったく違う人物になりきっている。本人ですら自分がクイーンである事をよく覚えていない、強い暗示だ。
そしてその暗示を解く方法は二つ。一つは『貴方は怪盗クイーンだ』という暗示をかけて、クイーンに自分の正体を思い出させる事です。けれど、シャモン斎藤さんのように一流の催眠術師でも三十分はかかります」
「そんな時間はないぞ!」
スタイリー井上が叫ぶ中、清志郎はジョーカーの肩に手を置いた。
「だから、緊急事態に備えてクイーンは一瞬で暗示を解くキーワードを決めているんですよね。そしてそのキーワードは亜衣ちゃん達も知ってるはずだよ」
「私達が知ってる物……」
「あっ!」
「もしかして……!」
『チェックメイト!』
岩崎三姉妹が声を揃えて言った瞬間、ある一人が声を上げた。
「ようやく私の出番のようだね」
そう言いながら変装を解いたのは、静かに壁にもたれていたシャモン斎藤だった。
政実「第41話、いかがでしたでしょうか」
元気「遂にクイーンの正体が明かされて、ここからクライマックスへ向けて後は走るだけだな」
政実「そうだね。出来れば50話までにはこの章を終わらせるつもりだよ」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしているので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」