怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。」
政実「今回は前書きもここまでにして早速始めていきます」
元気「わかった」
政実・元気「それでは、第42話をどうぞ」


第42話 大団円

Bonsoir(ボンソワール)、皆さん。実に良い夜ですね」

「どういう事だ……お前が、シャモン斎藤が怪盗クイーンなわけが……!」

「途中で変装相手を変えるくらい怪盗クイーンならわけないですよ。知らないんですか?」

 

 

 清志郎が不思議そうに聞くと、黒田は怒りを目に宿しながら清志郎を睨み付けた。

 

 

「貴方も見事な推理だと言っていたじゃないですか!」

「言いましたよ。言いましたけど、正解だとは一言も言ってませんよ?」

「あ、言われてみればたしかに」

「というかそれ、上越警部に対してもやったよね、教授」

「オムラ・アミューズメント・パークで上越警部が蝋人形の中に人がいるって言った時にね。あの時もそうだけど、教授ってそういうとこあるから実際にやられたら怒りたくもなるかも」

「まったくだ……」

 

 

 当時の事を思い出したのか渋い顔で上越警部が腕を組みながら頷く中、クイーンは考太郎の目の前に立った。

 

 

「身代わりご苦労様、“黄色いサングラス”」

「きいろい……サングラス……」

「さいちゃん……?」

「そうだ……僕、いや俺はシャモン斎藤だ……」

「ウチの元気に催眠術をかけてでも私の事を探ろうしてたのでね。理由をつけて抜け出して、シャモン斎藤を気絶させ、誰にも見られないところで入れ替わったんですよ」

 

 

 クイーンはウインクをしながら言うと、シャモン斎藤が被らされている西園寺考太郎のマスクを軽くつついた。

 

 

「その西園寺君のマスクは記念に差し上げますよ。中々よく出来ているでしょう?」

「……悔しいが、アンタの方が催眠術は優れてるようだ。このマスクはそれを認めた証として大事にさせてもらうさ」

「それはどうも。ではジョーカー君、そろそろ彼女を助けに行こうか」

「はい。元気君とアリスさんはここに残っていてくれ」

「それは良いけど……ジョーカー、どうしておとなしく捕まったままでいたんだ?」

「え、どういう事?」

 

 

 亜衣が驚くと、アリスは亜衣を見ながらそれに答えた。

 

 

「ジョーカーさんは関節を外せるんです」

「か、関節を……!?」

「それで手錠から手を抜く事も出来るんだ。文字通り、手を抜いてたのか?」

「奥の手は最後まで見せないものだよ。それじゃあ行ってくるから、後で合流しよう」

「ああ」

「わかりました」

 

 

 元気とアリスが答え、クイーンとジョーカーが走り出すと、イヤホンからRDの声が聞こえ始めた。

 

 

『元気、アリス、聞こえますか?』

「RDか」

「聞こえますよ」

『クイーンにも伝えましたが、今夜はおでんにします。よい子はそろそろ家に帰る時間なのでクイーン達がシルバーキャット瞳を助けたらまっすぐ帰ってきて下さいね』

「わあ……おでんなんだぁ。楽しみだね、元気」

「それは良いとして、どうやって俺達は帰れば良いんだろうな」

 

 

 元気が傍をチラリと見ると、怒りに震える黒田がおり、その手には外された手錠が握られていた。

 

 

「……俺達を捕まえて、クイーン達を誘き出すのか?」

「それ以外にありますか?」

「強行手段に出たわけだな。けど、それは叶わないぞ?」

「なに?」

 

 

 黒田が周りを見回すと、周囲にいた誰もが黒田に対して敵意を漂わせており、元気の腕をぎゅっと掴んでいたアリスは小さく呟いた。

 

 

「……私、やっぱりこの人の事が嫌い」

「それはここにいる全員の総意のようだ。そんな中でも捕まえようとするか?」

「ぐ……」

 

 

 クイーンとジョーカーが左右に分かれた空中ブランコのポールに登り、シルバーキャット瞳がバランスを崩した事で観客から悲鳴とも歓声ともつかない声が起こる中、黒田は怒りのこもった視線を元気に向けた。

 

 

「……貴方は何者ですか」

「神野元気。怪盗クイーンの助手だ」

「……覚えておきますよ。今は捕まえませんが、次に貴方の姿を見かけた時には容赦はしませんので」

「望むところだ」

 

 

 クイーンがブランコの棒を掴み、ジョーカーがもう一つのブランコに乗り、シルバーキャット瞳の救助が今にも終わりを迎えようとする中で元気は服のポケットに手を入れてから視線を黒田からアリスに移した。

 

 

「アリス、帰るぞ。そろそろクイーン達もシルバーキャット瞳を助け終わりそうだからな」

「うん! 皆さん、最後忙しなくて本当にすみませんでした。今日は本当に楽しかったです」

「ええよ、アーちゃん。うちらも楽しかったからね」

「伊藤さんの言う通りだよ、アリスちゃん。気をつけて帰ってね」

「もちろん元気君も」

「ああ。だが、その前に……」

 

 

 バランスビームの棒から手を離したシルバーキャット瞳をクイーンがキャッチする中、元気はポケットから手を出すと、そのままクレールの手を掴んだ。

 

 

「……何の真似だ、元気」

「別に俺達は仲良しじゃないが、別れの握手くらいは良いだろ。お前のショーも悪くなかったからな」

「ふん……まあそういう事なら良いか」

「と言っても、またすぐに会うけどな」

「そうだな。結局、お前は団長からのヒントがあっても探し物は見つけられなかった。悔しそうにするお前の顔を見るのが楽しみだ」

「そうか。まあ楽しみにしてろよ、クレール」

 

 

 シルバーキャット瞳を助け終えたクイーンとジョーカーがスポットライトを浴びながらポールの上に立つ中、元気はクレールから手を離すと、悔しそうにする黒田の視線を背にアリスと一緒に歩き始めた。

 

 

「さて、俺達はこのまま入り口まで行って帰るか」

「うん! でも、クレールが言ってたように結局見つけられずじまいになっちゃったね。クイーンさん、見つけてると良いなぁ……」

「そうだな」

「そうだな、って……元気は悔しくないの? 別に見つけられなかったからといって何かあるわけじゃないけど」

「問題が一切ないからな」

「え、どういう事?」

 

 

 アリスが疑問を抱いた様子で首を傾げる中、RDは静かな声で元気に話しかけた。

 

 

『元気、ミッションコンプリートですね。忘れていなかったようで安心しましたよ』

「当然だ。忘れていたらクイーンに笑われるからな」

「え? RDさん、どういう事ですか?」

『アリス、貴女は気づいていなかったようですが、元気はさっき『リンデンの薔薇』を“手にしていた”んですよ』

「……えっ!?」

 

 

 アリスは驚きながら立ち止まると、同じように立ち止まった元気に驚いた様子で視線を向けた。

 

 

「だって元気、『リンデンの薔薇』のありかがわからないって!」

「敵を欺くにはまずは味方から。敵を嘘で欺こうとするなら、自分の味方にも真実は伝えないでおこうという諺だ。お前も知ってるだろ?」

「知ってるけど……でも、いつ『リンデンの薔薇』のありかがわかったの? 思い当たる場所には無かったって……」

 

 

 その時、アリスはハッとした。

 

 

「まさか、その時から嘘をついてたの?」

「そういう事だ。『リンデンの薔薇』は俺の服のポケットの中にあった。だけど、それに気づいた事がバレるわけにもいかなかった。だから、無かったと言ってアリス達を含めて全員を欺き、さっきまでずっと黙っていたんだ」

「私にだけは教えてくれても良かったのに……」

「アリスにバラしたらそれをクレールに気づかれる可能性があったからな。アリスの正直者なところは良いところだけど、今回ばかりはそれもちょっと短所みたいになるからな」

「うー……」

「とりあえず帰るぞ。この件もクイーンに言わないといけないからな」

「それは良いけど……クレールとはなんで握手してたの? 元気にしては珍しい事を言うなと思ってたけど、たぶん違う理由があるんだよね?」

 

 

 アリスからの問いかけに対して元気は静かに頷く。

 

 

「ああ。これを忍ばせるためにやっただけだからな」

「これをって……えっ!? それ、『リンデンの薔薇』!?」

 

 

 元気の手の中にある『リンデンの薔薇』を見ながらアリスが驚いていると、元気は『リンデンの薔』をハンカチに包んでポケットにしまいながら答えた。

 

 

「これは本物の『リンデンの薔薇』だ」

「え、それじゃあ忍ばせたのって?」

「クイーンから渡された偽物だ。当初の予定はマジックショーの時にホワイトフェイスの義足の中にあった本物とすり替える感じだったようだけど、ホワイトフェイスが本物を義足の中に入れないと踏んで朝こっそり俺に渡してきたんだ」

「そうだったんだ……でも、いつ『リンデンの薔薇』の本物が元気の服のポケットの中に入ってたの? 『リンデンの薔薇』が勝手に入ってくるわけはないよね? それに、どうやってクレールに偽物を忍ばせたの?」

「……その種明かしはまた後でだ。まずはクイーン達と合流しないといけないからな」

「わかった。でも、後で絶対に教えてよ? 約束だからね?」

「ああ」

 

 

 答えた元気が頷き、二人は大テントの入り口へ向けて再び歩き始めた。そして入り口から外に出ると、そこにはいつの間にか外へと出てきていたクイーンとジョーカーの姿があった。

 

 

「二人とも、お疲れ様。今日は楽しめたかい?」

「少しはな。クイーン、例の件は──」

「RDから聞いたよ。しっかり任務は遂行したみたいだね。流石は私の友達だ」

「俺は友達じゃない、仕事上の助手だ」

「因みに、僕も仕事上のパートナーに過ぎませんからね」

『言われる前に言っておきますが、私も貴方の友達ではなく世界最高の人工知能に過ぎません』

「私は友達でも良いですけど、今は仕事上の助手見習いですね」

 

 

 それぞれの言葉を聞き、クイーンは安心したように笑った。

 

 

「普段ならいじけるところだけど、今はそれを聞けて安心してるよ。では諸君、そろそろ帰るとしよう。帰ったら熱々のおでんが待っているようだからね」

「おでん……そういえば、さっきもそんな事を言っていましたが、どんな料理なんですか?」

「冬の風物詩ではあるけど、日本ではコメディアン達が食べさせる振りをして顔にくっつけて笑いを取る道具にもなっているようだよ」

「東洋の神秘ですね」

 

 

 ジョーカーが驚きながら言い、元気とRDがため息をつく中、大テントの中からは走ってくる足音が聞こえ始めた。

 

 

「もう来たようだ。では行こうか」

 

 

 その言葉に全員が頷いた後、クイーンとジョーカーは元気とアリスをそれぞれ抱き抱えた。そして、警察官達や黒田、そしてクイーンを一目見ようとする観客達が大テントから出てくる頃にはその姿はなく、同じようにクレールと一緒に大テントから出てきたホワイトフェイスは空を見上げた。

 

 

「やってくれたな、怪盗クイーン。おかげで観客の注目はすべて持っていかれた」

「おまけに『リンデンの薔薇』の偽物まで忍ばせていったしな……くそ、さっきまで勝ち誇ってた間、アイツは心の中でずっとほくそえんでいたのか」

「そういう事になるな。本物も見つけられたようだし、これは俺達の負けだ。後で改めて言わせてもらうが、おめでとう、怪盗クイーン」

 

 

 そう言うと、ホワイトフェイスは空に向かって静かに拍手を送り始めた。




政実「第42話、いかがでしたでしょうか」
元気「シルバーキャット瞳の救出に俺達の企み、と色々あった回だけど、本当にあと数話で終わりそうだな」
政実「そうだね。最後までしっかりと走り抜けるつもりだよ」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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