元気「どうも、神野元気です。今回も前書きは簡潔に終わらせる感じか」
政実「うん。というわけで、早速始めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、第43話をどうぞ」
翌日の夜、観客達が帰っていった後でセブン・リング・サーカスの敷地内に四つの人影が現れた。その人影は設営されたままの大テントの中へと入っていき、夕方から様々な演目が行われていたリングまで到着すると、消えていた照明が一斉に点灯し、四つの人影を照らし始めた。
「わっ、眩しい……!」
「ふふっ、これは中々の出迎えだね」
「貴方が今夜訪れると事前に言っていたのですから当然だと思います」
「おまけに何人か呼んでたみたいだしな」
「まあ良いじゃないか。さて、そろそろ話をしようじゃないか、ホワイトフェイス」
その声に応えるようにカーテンの向こうからは団長であるホワイトフェイスとクレールが現れたが、その後ろからは清志郎や真里、そして岩崎三姉妹と上越警部が姿を見せた。
「あ、亜衣さん達だ!」
「アリスちゃん! それに、元気君も!」
「……夢水清志郎や伊藤さんはわかります。ですが、上越警部まで呼んでいたんですか?」
「そうだよ。彼らにはウチの子達が世話になったからね。最後まで見届けるだけの権利はあるんだよ」
クイーンが笑いながら言う中、RDは呆れたような声を出す。
『貴方からの招待状を受け取った上越警部がそれを利用して貴方やジョーカーを捕まえようとする可能性は考えなかったんですか?』
「まったく考えなかったよ。上越警部、今から私達を捕まえますか?」
「……いや、止めておこう。最初こそ考えたが、ワシ達が動けばきっと黒田さん達もそれを嗅ぎ付けてくるだろうし、今度こそ問答無用で元気君達も捕まえようとするだろう。だが、ワシはそれを求めていない。だから、岩清水君にも何も言わずにここへ来たんだ」
「お心遣いありがとうございます。さてここへお集まりの皆さん、皆さんは『リンデンの薔薇』という宝石をご存じでしょうか?」
周りを見回しながら問いかけるクイーンに対して岩崎三姉妹は首を傾げる。
「『リンデンの薔薇』?」
「たしか星菱っていう人の家から盗まれた宝石だけど……でも、それはクイーンが盗み出したんじゃ……?」
「いや、盗んだのは怪盗クイーンじゃないよ、三人とも。盗み出したのは……あなた方なんですよね? セブン・リング・サーカスの団長、ホワイトフェイスさん」
「……え?」
「ほ、ホンマ!?」
「このセブン・リング・サーカスがそんな事を……!?」
岩崎三姉妹や真里が驚く中でホワイトフェイスはクックッと笑う。
「ああ、そうだとも。ウチの団員達の力を結集させて星菱邸から『リンデンの薔薇』を盗み出し、偽のカードまで作って怪盗クイーンの仕業に見せかけた。それは間違いない」
「でも、たしかにあんなにスゴい事が出来る人達なら、宝石を盗み出すくらい出来ちゃうのかも……」
「……あれ? それじゃあ元気君達が探してた宝石ってまさか……」
「ああ、その『リンデンの薔薇』だ。本当は『ネフェルティティの微笑み』という名前みたいだけどな」
「『ネフェルティティの微笑み』……エジプトの博物館から盗み出されたとは聞いていたが、まさかあの日にワシらが守ろうとしていたのがそれだったとはな」
「でも、結局見つからなかったんだよね? だから、まだ団長さん達が持ってるんじゃないの?」
美衣が首を傾げる中、ホワイトフェイスは首を横に振る。
「いいや、今は持っていない。持っているのは偽物の『リンデンの薔薇』だ」
「え?」
「それじゃあもしかして……!?」
「……ああ。本物の『リンデンの薔薇』はここにある」
そう言いながら元気がポケットから取り出すと、『リンデンの薔薇』は照明の光を反射しながらキラリと輝いた。
「それが『リンデンの薔薇』……」
「でも、いつ見つけたの?」
「なんでも本当にポケットの中に入ってたみたいで、私達にすら気付かれないようにするために黙ってたみたいです」
「そうだったんだ……」
「だから、この勝負は俺達の勝ちだ、ホワイトフェイス。『リンデンの薔薇』は頂いていくぞ」
元気の静かな声に対してホワイトフェイスは頷く。
「……ああ。好きに持っていくと良い」
「でも、いつポケットの中に入ってたの?」
「最初から、正確には俺達が関係者用のパスを受け取った時からだ。あの時、マジシャンのプリズムプリズムがこっそり俺のポケットに『リンデンの薔薇』を入れていたんだよ。プリズムプリズムレベルのマジシャンならそのくらいの事は朝飯前だし、挨拶代わりのマジックを見せてきたからその時に入れてきたんだろう」
「あ、なるほど……」
「ご名答。本当は君達に渡したホワイトフェイス君人形に入れても良かったんだが、そのくらいだと流石にバレると思ったのでね」
「そうして俺達は気付かない内に『リンデンの薔薇』を肌身離さず持つ事になり、最終的にはまたプリズムプリズムが回収する手筈になっていたんだろう。返しそびれてたが、関係者パスとホワイトフェイス君人形をまた交換する事になってたからな」
「その通りだ。だが、その関係者用パスはまだ持っていて構わんさ。しっかりと俺から勝利をもぎ取った賞品として渡そう。クレール、二人にホワイトフェイス君人形を」
「はいはい」
クレールは近くにあった箱から『哀』と『楽』のホワイトフェイス君人形を取り出すと、それぞれ元気とアリスに渡した。
「ほらよ、二人とも」
「ああ」
「ありがとう、クレール」
「因みに、赤いスーパーホワイトフェイス君人形の他にも色々商品展開をするつもりだから楽しみにしていてくれ。それにしても……まさかここまでこてんぱんにされるとは思わなかったから少し悔しいな」
「負けるつもりはなかっただろうからな。それで、俺達に勝ったら何をさせるつもりだったんだ? 俺達の予想はお前達を盗み出させる事だったんだが……」
「盗み出させるって……セブン・リング・サーカスを?」
真衣の問いかけに元気は静かに頷く。
「ああ。これは公にしてほしくないんだが、セブン・リング・サーカスは政府と関係があって、団員達が使う道具を黒田達が提供する事やセブン・リング・サーカスがサーカス団としてやっていける事の見返りとして黒田が命令した時には団員達の特殊技能を提供する。そういう関係性みたいだ」
「それじゃあ『リンデンの薔薇』の件も?」
「いや、あれは俺達の独断だ。怪盗クイーンに勝負を仕掛けるためのな」
「そして貴方は団員達の力を使って『リンデンの薔薇』を盗み出し、自分達の自由を勝ち取るために怪盗クイーンに勝負を持ちかけた。そういう事ですね?」
「その通りだ。今の生活だって本当は満足しないといけない。だが、今のままでは出来ない事がある。だから、怪盗クイーンに盗み出してもらい、それを叶えようとしたんだ」
「そこまでして叶えたい事って何なんですか?」
亜衣からの問いかけに真里が代わりに答えた。
「外国での公演、それが団長さんのやりたかった事みたいよ。でも、団長さんが公演したい国は今も紛争をしていて、黒田さんからすればそんなところにセブン・リング・サーカスを向かわせるわけにはいかなかった。だから、海外公演をさせてくれって頼まれても断ってたみたいや」
「どうやらそこでまたサーカスの公演を見せる指切りをしていたようだからね。そのためなら、ホワイトフェイスは命を賭けてでも行くつもりだったみたいだ」
「……そう、だったんだ」
「たしかにそれを実現するためには怪盗クイーンの力を借りないと無理だよね」
「負けた事で結果的にそれも無理になったがな。それで、『リンデンの薔薇』は元の場所に返しに行くのか?」
「ええ、もちろん。私は十分楽しませてもらいましたし、エジプトの王妃様もそろそろお家に帰さないといけませんから」
「そうか」
ホワイトフェイスがフッと笑うと、クイーンはホワイトフェイスに近づき、覗き込むようにしながら微笑んだ。
「因みに、急ぐ旅でもないので途中でどこかに寄るくらいは出来ますよ」
「え?」
「私だけでも十分ですが、あなた方は本当に素晴らしい技術を持っているようなので是非力を貸してもらいたい。もちろん、その見返りはしっかりと用意しますよ」
「怪盗クイーン……」
「ウチの子達もそうですが、私も十分に楽しませてもらいましたからね。このくらいどうという事はないですよ」
「……そうか。恩に着るぞ、怪盗クイーン」
「どういたしまして。ただ、もう一つお願いがありまして」
そう言うと、クイーンはクレールに視線を向けた。
「彼を、クレール君をしばらく預からせてもらえませんか?」
「……え?」
「ああ、良いだろう」
「良いだろうって、団長! なに勝手な事を言ってんだよ!」
「お前はウチの大切な団員見習いだが、お前にだって事情はあるだろう? 大切な人達を探さないといけないという大事な事情が」
「そ、それは……」
「それに……」
ホワイトフェイスは元気とアリスを見た後、クレールに視線を戻した。
「お前も今回の件で元気君の実力は認めただろうし、元気君達についていって、力になってやると良い。お前ももう元気君の事は嫌いというわけではないだろう?」
「まあ、それはそうだけど……でも、いきなりいなくなって団長達は困らないのか?」
「困るが、お前が一回り成長して戻ってきてくれたらそれで良い。まあ寂しくなって帰ってくるならそれでも良いがな。お前には本当に家族だと思っている人達がいるだろうが、俺達だってお前の事は家族のように思ってる。だから、俺達の事は気にせずに行ってくると良い」
「団長……」
クレールは元気に視線を向けると、そのままゆっくりと近づき、目の前で止まってから元気の胸に拳を軽くぶつけた。
「仕方ないから手を貸してやる。俺だってお前に負けっぱなしなのは腹が立つし、みんなにまた会いたいからな」
「ああ、一緒にみんなを探そう、クレール」
「クレール、これからよろしくね」
「おう。とりあえず俺達の中のリーダーはお前に譲る、元気。悔しいが、俺達の中ではお前が一番頭が良くて落ち着いて物事を見られるからな」
「ああ、任された。お前の力も頼りにしてるぞ、クレール」
「ああ」
元気とクレールが笑い合い、それを見ていたアリスが安心したように微笑む中、清志郎は静かに手を上げた。
「クイーン、僕達を呼んだ理由は他にもありますよね?」
「他にもって……さっき言ってたように最後まで見届けるだけの権利があるからとかじゃないの?」
「いや、それだけだったら後で幾らでも方法はあるよ。それに、わざわざ伊藤さんや上越警部まで呼んだ辺り、二人の力も借りたい理由があるんじゃないんですか?」
「流石だね、夢水君。さて、それではお話ししましょうか。元気達が私達の元へ来たその経緯を」
その場に緊張が走る中、クイーンは静かに話を始めた。
政実「第43話、いかがでしたでしょうか」
元気「クレールが仲間になったけど、伊藤さん達にも俺達の過去が伝わるみたいだな」
政実「うん。教授が言っていた力を借りたい理由などについては次回をお楽しみにという事で」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価もお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さて……それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」