怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、友達とどこかに泊まった事があまり無い片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。まあ機会がなかったら仕方ないしな」
政実「だね。でも、旅行とかでいつかはそういう事もしてみたいなと思ってるよ」
元気「わかった。さて、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第45話をどうぞ」


第45話 新たな仲間との夜

 セブン・リング・サーカスを後にしてから数分後、元気達はRDが下ろしたコンテナに乗って上昇していた。

 

 

「……はあ、やっぱりこの感じには慣れないな」

「元気、本当に苦手だよね。なんでだろ?」

「なんだ。お前、こういうフワッとした感じが苦手なのか? それじゃあトランポリンも無理そうだな」

「そうだろうし、トランポリンに乗る予定もない。けど、本当にどうしてこういうのが苦手なんだろう……」

 

 

 元気がため息をついていると、コンテナ内のスピーカーからRDの声が聞こえ始めた。

 

 

『完全にそうというわけではないですが、元気は浮遊感恐怖症の可能性が多少あるのかもしれませんね』

「浮遊感恐怖症?」

『その名の通り、身体がふわりと浮くような感覚が苦手な人がなっている物です。浮遊感恐怖症はテーマパークにあるようなジェットコースターやデパートなどにあるエレベーターといった物が苦手であり、飛行機や船舶といった乗り物も苦手という人は少なくないです』

「けど、元気はトルバドゥールに乗っていても具合が悪くなったりしませんよね?」

『はい。なので、ただの浮遊感恐怖症とは違うなにか別の理由があるのかもしれません。今のところはわかりませんが、少しずつ調べてはみますね』

「ああ、頼んだ」

『畏まりました』

 

 

 RDが答えると、クレールは驚いた様子でスピーカーを見た。

 

 

「こいつが元気達が言ってたRDなのか……」

『そうですよ、クレール・カルヴェ。私はRD、この超弩級巨大飛行船であるトルバドゥールの航行などを担当している元国防用の人工知能です』

「それと、私の大切な友人だよ」

『何度も言っていますが、私は世界最高の人工知能に過ぎず、あなたの友達ではありません』

「本当に照れ屋だね、君は。さて、新たな友人であるクレール君も加わった事だし、明日の朝は小規模な物にはなるけど歓迎パーティーをしようか」

「パーティーなんて別に良いって。それに、俺だって別にあんたの友達じゃ──」

「パーティーですか!? うわぁ、楽しみだなぁ!」

 

 

 自分の声を遮る形で発せられたアリスの嬉しそうな声にクレールが驚いていると、クイーンは満足そうに頷いた。

 

 

「そうだろう? “仲間は一日にして成らず”という言葉もあるけれど、私からすればもうクレール君は大切な友人で仲間だ。だからこそ、その歓迎のためのパーティーを開き、この喜ばしい出来事を盛大に祝いたいんだよ」

「クイーン、間違っていませんか? 僕が知っているのはローマは一日にして成らずなのですが」

「それは大事業を達成するためには不断の努力が必要という意味の言葉だけど、日本のみならず世界では何かの仲間として認められるには時間がかかる事もある。だから、私の言葉でも間違いではないんだよ」

「……世界の神秘ですね」

 

 

 真剣な顔でジョーカーが頷いていると、クレールは額に手を当てながら大きくため息をついた。

 

 

「なんだこのボケの渋滞は……」

「ウチだとこれが日常茶飯事だぞ、クレール。クイーンはよくわからない理屈をこねては変な言葉を言うしアリスは素で変わったことを言う。その上、ジョーカーもジョーカーで今のようにボケ抜きでクイーンの言葉に納得させられる。これでツッコミ要員が増えたから俺とRDも大助かりだ」

「……なるほど、元気が前よりも接しやすくなるわけだ。ツッコミ要員扱いされるのは気に食わないが、この先もアイツらと上手く合流出来た時の事を考えると、今の内に受け流す技術とかちゃんとつっこむ技術を磨いておかないとまずいのだけはわかった。仕方ないから、俺もお前達側に回ってやるよ」

「すまないな。それと、明日の朝のパーティーは何を言おうと開催されるぞ。クイーンは人生はC調と遊び心を信条に生きてるような奴だから、断ったところで朝起きた時には既に主役の席に座ってる可能性だって十分にあるしな」

 

 

 元気がため息をつきながら言う中、クレールは何かを思い付いたように息をつくと、元気の肩に手を置いた。

 

 

「……元気」

「……わかってる。アリスがクイーンのようにならないように俺も気を付ける。アリスのクイーンへの懐きようもクイーンのアリスへの気に入りようも結構なものだから、純粋なアリスはすぐに影響されるしな」

「俺も気を付けとく。アリスがあんな風に変な言い回しをし始めたり突拍子もない事を考え始めたりしたらミック神父やクリスティーナだってひっくりかえ……いや、ミック神父なら面白がるか……?」

「あの神父なら面白がるだろうな。出会ったばかりの俺に対して自分のロザリオを賭けるような奴だったからな」

「ロザリオ……そういえば、それはミック神父の物だったな。しっかりと磨かれてるし、お前もなんだかんだで大切にしてるんだな」

 

 

 元気はロザリオを軽く摘まみながら頷く。

 

 

「……あの教会での毎日は騒がしかったけど、これまでのどの時間よりも充実してたからな。それに、預かってる以上は大切にしないといけない。それが預かってる俺が果たすべき責任だからな」

「そうか。だったら、そのロザリオを失くしたり取られたりすんなよ?」

「わかってる。さて、そろそろ着くはずだけど……」

 

 

 元気が見回していたその時、コンテナの浮遊感は無くなり、扉が開いていくと同時にクイーン達は中から外へと出始めた。

 

 

「ただいま、RD」

『おかえりなさい。クレールの部屋も含め、全員の部屋はしっかり掃除してあるのでシャワーを浴びたらすぐに眠る事も出来ますよ』

「俺の部屋ももうあるのか? ついてく事になったのはついさっきなのに」

『アリスが前々から言っていたんです、クレールも仲間になったら楽しそうだと。なので、アリスからわかる限りのクレールの身体のデータや好みなどについて聞いており、それを元に部屋の模様替えや服などの準備をクイーンと進めていたのです』

「もう仲間にする気しかなかったんだな。ところで、あの辞書も渡すのか?」

「あの辞書?」

 

 

 クレールが首を傾げると、クイーンはクレールに対してウインクをした。

 

 

「私特製の辞書だよ。元気もアリスさんも持っていて、アリスさんは特に気に入ってくれているようだ」

「一般的な意味は勉強用で元気が貰ってる辞書で済むけど、クイーンさんの独特な表現は読んでて楽しいし、その辞書でしか読めないからね」

『まあ、あの辞書が世間に出回っていたら欲しがる人間は多いと思いますよ。内容まで楽しむかは別ですが』

「そうか……まあ、貰えるなら貰っとくか。そこまで言われたらどんな物か気になるしな」

「了解したよ。後で部屋まで持っていこう」

 

 

 クレールが頷いた後、一行はそのまま歩いていき、リビングへと入った。すると、そこにイヴが嬉しそうに尻尾を振りながら駆け寄り、その後ろをシュルツがゆっくりと歩いてきた。

 

 

「わんわんっ!」

「にゃあ」

「イヴ、シュルツ、ただいま。良い子にしてた?」

「まあ岩清水刑事には可愛がってもらってたようだけどな。ただ……慣れてないからっていうのはあるだろうけど、ちょっとブラッシングが甘いな。シュルツ、風呂に入れた後にブラッシングするからな」

「イヴも後で綺麗にしようね」

 

 

 イヴが尻尾を大きく振りながら返事をするように鳴き、一鳴きしたシュルツが元気の足に自身の体を擦り付けていると、その光景にクレールは小さく息をついた。

 

 

「……これはビーストのとこの動物達が懐くのも納得だな。さてクイーン、俺はここでどういう役割を果たせば良いんだ?」

「元気やアリスさんと同じで変装をした私やジョーカー君の子供役や孫役を演じてもらうよ。君の特技である驚異的な身体能力を活かしてもらう場面もあるだろうけど、潜入とかは基本的には私がやるからね。しばらくは元気と同じでジョーカー君に格闘術の稽古をつけてもらい、その中でその身体能力を活かしながら戦う術を手に入れてくれ。護身のためにもね」

「わかった。みんな、改めてよろしく頼む」

 

 

 クレールが静かに頭を下げ、元気達がそれに対して頷いていたその時、アリスは小さく欠伸をした。

 

 

「ふあ……今日は色々あったし、もう眠くなっちゃった……」

「それならもう眠った方がいいよ、アリスさん。眠たいと思った時に眠るのが一番だからね」

「はい……あ、そうだ。元気、クレール、せっかくだから一緒に寝てくれない?」

「……は?」

「アリス……? お前、何を言って……」

「元気は前に寝てくれたけど、本で読んだお泊まり会みたいな形でみんなで並んで眠るって事はやった事無いからやってみたいの。だから……お願い」

 

 

 イヴを抱き抱えたアリスに見つめられ、クレールが顔を赤くしていると、元気はクレールをチラリと見てからため息をついた。

 

 

「クレールはアリスに魅了されて断れないようだし、仕方ないから俺も付き合うか。今回だけ特別にな」

「ありがとう。それじゃあ元気が真ん中ね」

「俺か? アリスが真ん中で良いんじゃないのか?」

「クレールも言ってたけど、元気は私達のリーダーだからね。そんなリーダー様が真ん中の方が良いの」

「……はあ、わかった。クレールもそれで良いか?」

 

 

 クレールは静かに頷く。

 

 

「お前と並んで寝るのはちょっと癪に障るけど、アリスの言う通りだからな。元気、お前の寝相はどんなもんか知らないけど、俺を蹴飛ばしてベッドから落とさないようにしろよ?」

「しない。ほら、寝るならさっさと行くぞ」

「はーい。クイーンさん、ジョーカーさん、RDさん、おやすみなさい」

「おやすみ、みんな。仲良く寝るんだよ」

「みんな、おやすみ」

『おやすみなさい、三人とも』

 

 

 クイーン達に見送られる形で元気達が歩いていくと、クイーンの表情は微笑みから真剣な物に変わった。

 

 

「それで、RD。神製教団について新しい情報はあるかな?」

『申し訳ありませんが、まだあまり掴めていません。セブン・リング・サーカスの件のように神候補となる子供達を様々な団体や富豪などに宣伝して回っている事だけは予想が出来るのですが、その足取りはまったく掴めません』

「警察に捕まる事すら恐れていないようだからな。けど、本当に神製教団を動かしているのは誰なんだ?」

「…………」

「クイーン? どうしましたか?」

「……少しだけ嫌な予感がしたんだよ。だが、これはまだ確証があるわけじゃない。だから、また今度話すよ。ジョーカー君も今日は頑張ってくれたからゆっくり休むと良い」

「そうさせてもらいます。それでは、おやすみなさい」

 

 

 ジョーカーが歩き去り、RDがシステム等の整備に集中する中、クイーンは呟いた。

 

 

「……行方知れずのミック・エルマン。そんな彼がもしも神製教団の黒幕だとしたら……果たして元気達はその事実を受け入れられるのだろうか」

 

 

 その声に答える者はなく、クイーンは誰もいなくなったリビングでワインを開け、一人静かに夜を過ごした。




政実「第45話、いかがでしたでしょうか」
元気「クイーンはミック神父が黒幕の可能性を考えてるようだな」
政実「味方だと思っていた人がラスボスだったというパターンはよくあるしね。ただまあ、神製教団並びにその構成員などの情報は少しずつ出していく予定にしているよ」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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