怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、虎は白色が好きな片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。白い虎か……まあ中国の神話では白虎なんてのもいるし、めでたそうではあるよな」
政実「だね。さて、それじゃあそろそろ始めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、幕間をどうぞ」


幕間 軽業は守護獣と共に
幕間


 セブン・リング・サーカスでの一件から数週間が過ぎたある日、クレールはリビングで一人手紙を読んでいた。

 

 

「……団長達、元気そうだな。クイーン達と協力してエジプトの博物館に『ネフェルティティの微笑み』を返してから会ってないけど、こうして手紙を送ってはくれるし、やっぱり俺にとっての家族はミック神父達と団長達って言えるな」

『クレールはセブン・リング・サーカスでの生活を楽しんでいたようですからね。その始まりこそ神製教団によるものでしたが』

「まあな。それにしても、どうやって手紙を持ってきてるんだ? ここって住所あるのか?」

『このためにクイーンが偽名を使って私書箱を利用し始めたのです。クイーン自身は他の事にも使えるだろうからと言っていましたが、使用目的の九割はこのためになると思われます』

「そうか……それじゃあクイーンには後でお礼を言っておくか。そういえば、元気達は今どこだ?」

 

 

 RDは淡々と答える。

 

 

『二人とも自室にいますよ。アリスはイヴとお昼寝、元気はフランス語の勉強中です』

「アイツららしい過ごし方ではあるな。それなら、俺もなんか勉強しようかな」

『語学を勉強したいのであれば参考書などを取り寄せますよ。元気も世界の中でも主要な言語の辞書や参考書は部屋に置いていますし、リスニング用の機材も取り寄せましたから』

「アイツ、ここでも勉強好きなんだな。教会でもアイツは外で遊ぶよりも部屋で勉強したりミック神父達に色々聞いたりしてたよ」

 

 

 RDは頷くようにカメラを動かしてから答えた。

 

 

『元気は“学ぶ”という事が好きなようですからね。そしてそれは語学や武術だけに止まらず、機械工学やプログラミング、鳥獣の扱いなど様々な事について意欲的に学ぼうとしています』

「そうか……」

『クレールとしてはやはり負けていられないと感じますか? ライバルとまではいかないかもしれませんが、元気の事を友人とはまた違った相手として見ているようですし』

「まあそうだな。最初は本当にいけすかない奴でしかなかった。後から住み始めたのに初日からアリスがすっかり懐いてたし、他の奴らだって元気には一目置いてた。でも、俺はそんな元気がやっぱり気に食わなかったし、こいつにだけは負けたくないと思った。子供っぽい考えなのはわかってたけど、やっぱり嫌だったんだ」

『そういった感情を持つのも悪い事ではないようですよ。反発や否定もしっかりとした意思表示ですし、他人に流されずに自分の意思を持つというのは中々難しい事です。理由はどうであれ、自分の気持ちに正直になってその気持ちを持ち続けたクレールは素晴らしいと思います』

「ありがとな、RD。けど、やっぱりアイツにはまだまだ及ばない。身体能力には自信があるし、ジョーカーにもスジが良いって言われてるけど、アイツはカメラアイを使って相手の動きをしっかりと観察した上でRDに撮ってもらってた映像も見返して反省点を見つけ出そうとしてるからな。そういうところはやっぱり勝てないよ」

 

 

 クレールの言葉を聞き、RDは腕を組むようにしてマニピュレーターを絡ませる。

 

 

『それだけクイーンの助手になる事に本気になっているんですよ。元気の特性上、自分が興味を持った事へのやる気は高いですし、地頭も良いので改善策なども次々に思い付きますから上達が早いのも頷けます』

「そうだな。さてと、それじゃあ俺も一回部屋に──」

 

 

 その時、リビングの扉が開き、クイーンが中へと入ってきた。

 

 

「やあ、諸君。ご機嫌いかがかな?」

「クイーンか。どこに行って……って、ソイツはどうしたんだ?」

 

 

 クイーンの腕の中でモゾモゾ動くホワイトタイガーの子供を指差しながらクレールが聞くと、スピーカーからRDのため息が漏れた。

 

 

『クイーン……犬猫に飽きたらずそんなモノまで連れてきたんですか?』

「まあね。あまり環境のよろしくない店があってね、この子が可哀想だったから連れ出してきたんだよ。因みに、無許可かつ法に抵触しそうな動物も扱っていたからその際に警察に通報はしてきたよ」

「やっぱりそんな奴もいるんだな」

「金稼ぎのためなら幾らでも悪事に手を染められる奴なんてごまんといるんだよ。さてクレール、この子は君がお世話をしてくれたまえ」

 

 

 クイーンがホワイトタイガーの子供をクレールに渡すと、クレールは驚いた様子を見せた。

 

 

「え、俺が?」

「そうだとも。元気にはシュルツがいて、アリスさんにはイヴがいるけれど、君にはお世話をする子がいなかったからね。サーカスでも虎は扱っていただろうし、猛獣のお世話を手伝った事はあるだろう?」

「まあビーストの手伝いはした事はあるけどさ。でも本当に良いのか?」

「ああ。その代わり、しっかりとお世話をしてくれ。この子だっておおよそどこかから連れてこられ、今はひとりぼっちなんだ。本当は親元に返したいけれど、いつ頃からいないかわからないから親から別の群れの個体だと勘違いされて殺される可能性だってある。だから、君に託すんだ」

「親から殺される……」

 

 

 ホワイトタイガーの子供を見ながらクレールが辛そうな顔をしていると、ホワイトタイガーの子供はクレールの顔をペロリと舐めた。

 

 

「わっ……」

『少なくとも、このホワイトタイガーはクレールに対して信頼を置いているようですよ』

「そうなのか?」

『はい。猫が顔を舐めるのは信頼や愛情の証だと言われていますし、ホワイトタイガーもネコ科ですから同じような解釈で良いと思いますよ』

「でも、初めて会ったばかりの俺の事をどうして……」

「君の中の優しい部分を感じとったんじゃないかな? 動物というのは直感力が優れていると聞くし、この一瞬で君の事を自分を大切にしてくれそうな人物だと思ったのだろうね」

 

 

 クイーンの言葉を聞いたクレールはホワイトタイガーの子供を優しく撫でた。そしてホワイトタイガーの子供が気持ち良さそうに目を細めていると、クレールの表情も安らいだ物に変わった。

 

 

「……へへっ、虎って聞くとだいぶ獰猛そうなイメージだけど、結構可愛いんだな」

「まだ子供というのもあるんだろうね。さて、君にお世話を任せても良いかな? クレール」

「ああ、任せろ。しっかりと躾をして、ビーストのとこの猛獣達にも負けないくらいの逸材に育て上げて見せるさ」

「任せたよ。RD、ホワイトタイガーの飼育についての情報は?」

『話をしながら調べていましたよ。クレールが断る可能性は1%以下だったので』

「ありがとう、RD」

 

 

 クイーンがお礼を言い、クレールがホワイトタイガーの子供を撫でていたその時、リビングに元気達が入ってきた。

 

 

「シュルツがなんかソワソワしてると思ったけど……」

「わあ、可愛い! クレールがお世話する子?」

「ああ、そうなった。お前達の犬や猫と違ってこっちはホワイトタイガーだから最終的にだいぶでかくなるけどな」

「ウチのイブもじゃないかな? RDさん、イヴの犬種ってなんでしたっけ?」

『ラブラドール・レトリーバーですよ。イエローとも言われる毛色で、盲導犬として選ばれている事もあって基本的には穏やかで賢いですが、時にはやんちゃで明るい一面もあると言われています』

「まさにイヴそのものだね。イヴは待てとか伏せもしっかり出来るし、遊びたくてもシュルツがその気じゃない時はシュルツに合わせられるもんね」

 

 

 イヴが返事をするように鳴き声を上げていると、元気は腕の中にいるシュルツに視線を向けた。

 

 

「たしかシュルツがボンベイだったな」

『はい。ボンベイは黒猫しかいない純血種で、バーミーズのオスとアメリカンショートヘアのメスを交配して出来た種です。因みに欧米では黒猫は魔女の使い魔または魔女が変身した姿だと思われており、黒猫を不吉なモノだと考えていました。しかし、日本ではその逆で夜でも目が見えるという事から魔除けや幸運、商売繁盛の象徴である縁起の良いモノとして扱われてきました』

「縁起の良い猫……そういえば、招き猫というのが日本では大切にされているというのを聞いた事があるな」

『招き猫は江戸時代の町人文化から誕生したと言われており、右手を上げているとお金を招き、左手を上げているとお客を招くと言われています。尚、招き猫には幾つかの色の種類があり、一般的な白の招き猫に黒の招き猫、他には赤い招き猫もあるようです』

「赤いのはどんな意味を持つんだい?」

 

 

 クイーンの問いかけにRDは淡々と答える。

 

 

『病除けや健康長寿のご利益があるそうですよ』

「そうなんだ……RDさんは本当に物知りだね」

『恐れ入ります。さて、飼育の方法などについては後でクレールに文章にして渡しますが、名前はどうしましょうか』

「名前……イヴとシュルツの名前の由来ってドイツ語なんだよな?」

「ああ。イヴは白を意味するヴァイスから、シュルツは黒を意味するシュヴァルツから採ってる」

「この子もそうするの?」

「せっかくだし、コイツもドイツ語にしたいな……元気、何か良いドイツ語ってあるか?」

 

 

 クレールの問いかけに元気は少し考えてから答える。

 

 

「ムート、とかどうだ? ドイツ語で勇気って意味の言葉だ」

「勇気、か……へへっ、なんか良い感じだし、それが良いかもな。お前はどうだ?」

「ガオ」

「ふふっ、良いって言ってるのかもね。因みに、この子はオスですか?」

「オスだよ。シュルツと一緒だね」

「たしかにな。シュルツ、少し体は大きくなるようだけど、同じネコ科の仲間として仲良くな」

「イヴも新しい家族として仲良くね」

 

 

 シュルツとイヴは揃って鳴き声を上げ、ムートに視線を向けた。そしてムートが小さく鳴き声を上げ、アリスがその様子を見ながら嬉しそうな笑みを浮かべていると、クイーンは微笑ましそうにその姿を見ていた。

 

 

「またいっそう賑やかになるね。その内、動物達の怪盗団の話でも誰かに依頼してみようか」

「それは勝手にしてもらっていいですが、ペット候補の動物を拾ってくるなら事前に報せてください」

『ジョーカーの言う通りです。事前に知っているのとそうでないのではだいぶ違いますから』

「わかったよ」

 

 

 クイーンはそのままソファーに行くと、その下から一本のワインとグラスを取りだし、空いている手をムチのように振るった。そしてワインの口が綺麗な断面を残して斬れると、グラスにワインを注いだ。

 

 

「新たな家族との出会いに乾杯(トスト)!」

 

 

 クイーンがワインを飲む中、元気やジョーカーはまたかといった様子でため息をついた。その後、トルバドゥールのリビングはより賑やかさを増し、その中心でムートは可愛らしい鳴き声を上げた。




政実「幕間、いかがでしたでしょうか」
元気「クレールのペットとしてムートが加わったな。もし、他のみんなもきたらその時にはペットが宛がわれるのか?」
政実「そのつもりだよ。だから、その時にはどんな動物がペットになるのか楽しみにしていてもらいたいね」
元気「そうだな。そして最後に、今作品についての意見や感想、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと……それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「そうだな」
政実・元気「それでは、また次回」
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