怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、三大麺は一通り食べたことがある片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。まあ地元みたいだし、食べる機会は多いだろうな」
政実「まあね。冷麺以外は小さい頃に食べたっきりだけど、冷麺はわりと食べる機会は多いかな」
元気「そうか。さて、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第47話をどうぞ」


第47話 再会と新たな出会い

 岩手県盛岡市、岩手県の県庁所在地であり、あらゆる場所へ線路が伸びる駅がある場所だ。そしてそんな盛岡市の街中にある盛岡城跡公園にある人物達の姿があった。

 

 子供用の中国服を着た鋭い目付きの短い黒髪の少年と水色のワンピースを着たブロンドヘアの人懐っこそうな少女と白いトレーナーに青いデニムの短パンという格好の茶髪の大柄な少年、そして三人の保護者と思われる中国服姿の落ち着いた雰囲気の青年と中性的な顔立ちに抜けるような白い肌をした赤いスーツ姿の銀色の長髪の人物という五人であり、銀色の長髪の人物は周囲の目を引きながらもまったく動じること無く辺りを見回した。

 

 

「中々良い雰囲気のところだね。こういうところを地元の人達は憩いの場所として利用しているのだろうね」

「良い雰囲気の場所なのは認めるけど、変装をしなくて良いのか? アリスもそうだけど、クイーンがかなり人目を引いてるぞ?」

「問題ないよ。今の私は蜃気楼(ミラージュ)だからね」

『なのでたとえ見られたとしても後々の印象に残らないわけですが、変装をせずに街中を見て回りたいと聞いた時は耳を疑いましたよ』

 

 

 果たしてRDの耳はどこにあるのだろうとジョーカーが考える中、クレールは道中にある少々傾斜のある坂を見ながら楽しそうに笑う。

 

 

「こういう坂道を全力で走るのを続けたらかなりスタミナや足腰が強化されそうだな。まあ今はやらねぇけどさ」

「まあ気持ちはわかるな。ただ、ここはそういうトレーニングをするような場所じゃなさそうだな。さっきも石垣の修復をしているのを見かけたし、変な事をして地元の人間の迷惑になるのは避けたい」

「そうだね。そういえばこの近くにデパートみたいなのがあるみたいだから、後で行ってみたいな」

「それは良い考えだね、アリスさん。RD、その店の情報を後で教えてくれたまえ」

『それは良いですが、この散策はただの観光ではなく、予定日のための下調べなのは忘れないでくださいね?』

「わかっているとも。けれど、たまにはこういう時間も彼らには必要じゃないかな?」

 

 

 クイーンの視線の先では楽しそうに話すアリスやそれに対して答える元気とクレールがおり、それを見ながらジョーカーが頷く。

 

 

「それは同感です。元気君達にはのびのびと育ってほしいですからね」

「そうだとも。さて、そろそろ彼らもこの辺りに来る頃じゃないかな?」

「彼ら?」

 

 

 ジョーカーが首を傾げていたその時だった。

 

 

「あっ、アリスちゃん達だ!」

 

 

 その声の先には同じ顔をした三人の少女達と黒の背広に黒のサングラスといった長身の男性、そしてワインレッドのスーツをピシッと着たメガネの若い女性がいた。

 

 

「亜衣さん達だ! おーい!」

「……夢水清志郎達も呼んだのですか?」

「セブン・リング・サーカスの一件で連絡先を聞いておいただろう? だから、伊藤さんにここの特集をセ・シーマでしてみたらどうかと提案してみたんだよ。セ・シーマは元々旅と料理の情報誌だし、盛岡三大麺と呼ばれるものや色々な銘菓、観光スポットも多いからうってつけだしね」

「そういえば伊藤さんの担当してる雑誌って本来はそういうものだよな」

「精力的にクイーンを追ってたから忘れてたけどな」

 

 

 元気とクレールが頷き合っている中で亜衣達三人と清志郎、そして真里がクイーン達の目の前で足を止めると、クイーンは五人を見ながら笑みを浮かべた。

 

 

「久しぶりだね、諸君。伊藤さん、取材はこれからですか?」

「そうよ。さっき着いたばかりなんやけど、クイーンさんが言っとったように見たいもんがぎょうさんあるからこれから楽しみでしかたないわ」

「亜衣さん達は伊藤さんのお手伝いですか?」

「うん、そんな感じ」

「正確に言えば教授が暴走しないようにするための要員なんだけどね。教授ったら盛岡三大麺の話を聞いた瞬間に食べたそうな顔をしてたし」

「特にわんこそばへの情熱はスゴかったよね」

 

 

 美衣の言葉に亜衣と真衣が頷いていると、アリスは首を傾げた。

 

 

「わんこそば……ってなんだっけ?」

『わんこそばは盛岡三大麺に数えられる物の一つです。わんこというのは岩手県の方言で椀の事を指し、そばつゆにくぐらせた一口大のそばをわんこの中に給仕が入れ、それを食べたら給仕が次のそばを入れるという食べ方をします』

「食べても食べても次々に入れられるのか。大食漢な奴にとっては大喜びだろうな」

『因みに、長野県の戸隠(とがくし)そば、島根県の出雲(いずも)そばと共に日本三大そばの一つにも数えられており、最近では盛岡三大麺も岩手三大麺という呼ばれ方もしているようですよ』

「どうやったら終わりになるんだ?」

 

 

 RDは淡々と答える。

 

 

『基本的には満腹になるまで続け、もう大丈夫だと感じたらわんこの中のそばを食べて蓋をすれば終わりの合図となります。そしてわんこそばには起源が二つあるようで、競技会も存在するようですよ』

「そうなんだ……RDさんは本当に物知りだね」

『いえいえ。尚、他の三大麺も絶品らしいのでせっかく来たからには食べてみても良いでしょうね』

「まあ時間を見てだな。クイーン、とりあえず予告状を出した博物館に行ってみよう。この近くなんだろ?」

「そうだよ。夢水君達も一緒にどうだい? 博物館ではお腹は膨れないが、ロマンに想いを馳せたら夢は膨らむかもしれないよ?」

 

 

 清志郎がごはんと呟く中、三姉妹は顔を見合わせた。

 

 

「どうしようか」

「教授の様子的には早く何かを食べさせた方が良いけど、クイーンが何を狙ってるのかは気になるよね」

「だね。教授、まだ我慢出来そう?」

「ごはん……」

「こらあかんね。仕方ないから、まずは夢水さんに何か食べさせてあげよ。クイーンさん、なんかええ店調べとらん?」

「RDからこの近くに三大麺の一つであるじゃじゃ麺を出すお店があると聞いていますからそこに行きましょう」

 

 

 その瞬間、清志郎の目が輝く。

 

 

「ごはん!」

「教授、あまりにもお腹空きすぎてごはんしか言えなくなってる……」

「これはこれで可愛い……のかな?」

「いや、可愛くはないだろ」

「珍獣も良いとこだしな、この状態」

 

 

 元気とクレールの言葉にクイーンはクスリと笑う。

 

 

「まあ良いじゃないか。とりあえず夢水君をお店まで連れていこう。RD、案内を頼めるかな?」

『かしこまりました。では、行きましょう』

 

 

 そして一行が歩き始めようとしたその時、元気は弾かれたように背後を振り返った。

 

 

「……なんだ?」

「元気、どうしたの?」

「……何か視線みたいなのを感じた。クイーン、ちょっと見てくるから先に行っててくれ」

「別に構わないけれど、迷子にならないように気を付けるんだよ? ここは初めてのところだからね」

「わかってる。それじゃあな」

 

 

 クイーン達が店に向けて歩き始め、元気はその反対側へ走り出した。傾斜のある坂を上り、並木道を走り抜けているとRDが元気に話しかけた。

 

 

『元気、どのような視線でしたか?』

「……敵意は感じなかった。こっちに興味があるようには感じたけど、それ以外の何かも感じたような気がした」

『その何かというのが視線の主の目的なのかもしれませんね。ですが、視線の主は一体誰なのでしょうか』

「さてな。とりあえずここの上まで上がってみよう」

 

 

 石段を上がって本丸に辿り着くと、そこには一人の人物が立っていた。朱色の着物姿で立つその人物の髪は麻紐で一本に括られており、顔は中性的だった。

 

 

「……視線の主はお前だな」

「あなた達は何者? 何のために来たの?」

「俺は怪盗クイーンの助手、神野元気だ。博物館に収められている鬼の涙が今回の獲物だからそれをいただくために俺達はここまで来たんだ」

「鬼の涙……そう、なんだね」

「俺に何の用だ? 俺よりも視線に気づきやすそうなクイーンやジョーカーが気づかなかった辺り、俺にだけ用があるんだろ?」

「用事……というかお願いがあるの」

 

 

 その人物はゆっくり近づいてくると、元気の目の前で足を止めた。

 

 

「ボクはツキ。元気、あの博物館をどうにかして」

「博物館を? 何か不審な点があるのか?」

「博物館があったところには元々文化歴史館があったの。色々な展示をしたり花時計があったりしてお客さんもポツポツだけどいたよ。でも、あの博物館のオーナーが土地を買い取った結果、文化歴史館は取り壊されてあの悪趣味な博物館が建っちゃったんだ。あの博物館はヒドイよ、色々な物が展示されてるけど、全部偽物で本物は裏に隠してるんだ」

「つまり鬼の涙も偽物が展示されてるのか……」

 

 

 ツキは首を横に振る。

 

 

「ううん、それは本物。わかりやすい偽物の中に本物を隠す事で本物すらも偽物のように見せかけてるんだ」

「オーナーはだいぶ狡猾な奴なんだな……」

「そういう事。何かが届いたようだけど、他のスタッフが慌てる中でもオーナーだけは慌ててない。きっと何か考えがあるんだ。だから気を付けて」

「わかった。でも、博物館をどうにかしてってどうすれば良いんだ?」

「それは──」

「おーい、元気ー」

 

 

 アリスの声が聞こえると、ツキは残念そうに首を横に振った。

 

 

「今はここまで。元気、お願い」

「お、おい!」

 

 

 元気の制止にも振り返らずにツキが走り去っていくと、石段を登ってアリスとクレールが姿を見せた。

 

 

「あっ、いた!」

「お前、こんなとこにいたのか」

「ああ。さっきまでツキっていう奴と話してたんだ」

「どんな人?」

「朱色の着物姿で髪を一本に括ってるちょっと変わった奴だった。RD、お前はどう思う?」

『…………』

「RD?」

 

 

 元気の声にRDは慌てた様子で反応する。

 

 

『す、すみません。先程の元気の言葉について私の考えを纏めていました』

「まあいきなりだったしな。でも、有力な情報は聞く事が出来たし、後でクイーン達にも伝えよう。ところで、お前達はどうしてここにいるんだ?」

「やっぱり元気が心配だったから夢水さんをクイーンさん達に任せて探しに来たの」

「よほどヤバイ奴と出会ってなきゃお前も大丈夫だろうけど、神製教団の件もあるからな」

「アイツらがどこで何をしてるかもわからないし、注意しておくに越した事はないからな。とりあえずクイーン達のところに行こう。色々話したいからな」

 

 

 アリスとクレールが頷いた後、三人は歩き始めた。

 

 

『……元気、あなたは一体……』

 

 

 誰にも聞こえない程の声でRDが呟く中で。




政実「第47話、いかがでしたでしょうか」
元気「夢水さん達との再会もあったけど、ツキとの出会いもあったな。そしてRDの言葉も気になるところだけど、最後の方で明かされるのか?」
政実「そんな感じかな。この章は今回みたいな観光案内的な情報も交えていく予定だからこれで興味を持ってくれた人が遊びに来たら良いなあ」
元気「そうだな。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いていただけると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと……それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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