怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、城跡公園にはよく行く片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。まあ地元みたいだしな」
政実「うん、行く機会は多いよ。好きな場所でもあるしね」
元気「なるほどな。さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第48話をどうぞ」


第48話 食休みと住民達の嘆き

「ふむ、なるほどね」

 

 

 とある飲食店の中、クイーンはじゃじゃ麺を一口食べてから元気に視線を向けた。

 

 

「そのツキという子の言葉を信じるなら、その博物館は中々悪どいようだね。ただ、その子の正体はわかっていないからこそ信憑性もまだない。服装がどこか今時ではなかったようなのが気にはなるけどね」

「そうだな。そういう服装が好きな可能性はあるけど、それにしては色々不思議な点が多い。クイーン、ジョーカー、二人ともツキの視線は感じなかったんだろ?」

「そうだね。夢水君に早くごはんを食べさせてあげようとしていたからそちらに意識を向けていたのは間違いないけれど、たしかに感じなかったよ」

「僕も感じなかった。だから、元気君の考えている通りで元気君だけを呼びたかったんだろうね」

「けど、中々不思議やね。ゲンちゃんだけが気づくようにするなんて本当に出来るんやろか? ウチやアーちゃんが気づかんかったのはまだ納得出来るけど、クイーンさんとジョーカーさんすら気づかんなんて並大抵の事じゃ出来ないと思うわ」

「たしかに……ねえ、教授。教授は何かわかんない?」

 

 

 亜衣の視線の先では清志郎がガフガフとじゃじゃ麺や他のメニューを食べていた。

 

 

「もう! 教授、聞いてるの?」

「ガルル……」

「誰も取らないから!」

 

 

 清志郎の様子にクレールは呆れたようにため息をついた。

 

 

「あの人、一応人間の大人だよな? ビーストのとこの猛獣達の方が下手したら行儀が良いぞ?」

「しっかりとしつけられてるだろうしな……」

「夢水さんのアゴを撫でながらよしよししてあげたら落ち着くかな?」

「絵面が色々危険だから止めとけ。夢水さん、アンタの意見も聞きたいから話してくれないか?」

 

 

 清志郎は一通り食べ終えると、少し膨らんだ腹を満足そうに撫でてから元気を見た。

 

 

「亜衣ちゃんや元気君が聞きたいのはそのツキという子についてなんだね?」

「そうだ」

「そうだなぁ……結構わかりやすかったと思うよ? その子の正体は」

「え? 教授、もうその子の事がわかったの!?」

「僕は名探偵だからね」

 

 

 得意気な清志郎を見ながらクイーンは笑みを浮かべた。

 

 

「流石は夢水君だね。けれど、その正体について話す気は無いんだろう?」

「はい。いずれわかる事ですし、亜衣ちゃんや元気君にはもう少し考えてみてほしいですから」

「でも、ヒントはほしいよ」

「そうだよ、教授。ヒントちょうだい、ヒント」

「うーん……それじゃあ一つだけ事実を明らかにしようか」

 

 

 清志郎はクイーンに耳打ちをした。クイーンが笑顔で頷き、RDに話しかける中、アリスは不思議そうに首を傾げた。

 

 

「事実ってなんだろう?」

「……一個だけ心当たりがあるな」

「え? 元気君、そうなの?」

「ああ。さっきのRDの言葉、ちょっと引っ掛かるところがあったからな」

「RDの言葉……なんか変なとこあったか?」

 

 

 クレールが首を傾げる中、クイーンは会話を終えて元気に視線を向けた。

 

 

「元気、RDはツキという子の姿を“見ていない”し、声も“聞こえていない”そうだよ」

「……やっぱりか」

 

 

 元気が頷きながら言う中、アリスや亜衣は信じられないといった様子で驚いた。

 

 

「えっ……!?」

「ど、どういう事……!? 見えてない上に聞こえてないってまるで存在しないみたい……」

「存在はしていた。けれど、RDでは認識出来ない存在だったんだ。だから、RDは言ってたんだよ。俺とツキの会話についてじゃなく俺の言葉について考えをまとめていたって」

「引っ掛かるところがあるってそういう事か……」

「RDが認識出来ない存在……クイーン、そんな事があり得るんですか?」

 

 

 クイーンは頷く。

 

 

「この世は不思議な事がいっぱいあるからね。世界最高の人工知能であるRDの性能でも予測出来ない事や対応出来ない事もあるって事さ」

『悔しいですが認めざるを得ません。事実ではありますし、元気の目にはめているレンズから送られてきた映像を何度も確認してもそこに映っていたのは景色だけで、音声もまるでそこにいる誰かと話をしている元気の声や風の音だけでしたから』

「こ、怖い……」

「そんなの魑魅魍魎(ちみもうりょう)の類いって事じゃないか……!」

 

 

 アリスとクレールが怖がる中で元気はため息をつく。

 

 

「幽霊だろうが妖怪だろうが関係ない。情報をくれたんならそれに沿って鬼の涙をいただくだけだ。クイーンもそれで良いか?」

「もちろん。因みに夢水君、そのツキという人物は危険なのかい?」

「僕の推理が合っているなら本来は危険です。ですが、危険なままなら元気君を襲っていたでしょうし、わざわざ助言もしません。たぶん、この街というか地域が好きだからこそ悪どいやり方をしている人間が気にくわないんだと思いますよ」

「それで私達に力を貸してくれているわけだね。ふふ、中々面白い協力者が出来たものだ」

「面白いかはさておき、信用していいんですか?」

「良いと思うよ。元気にも助言をしてくれたようだし、助けて欲しいと思うなら私は助けても良いと思う。中々ワクワクする展開だしね」

 

 

 クイーンはおもむろに立ち上がると、元気やジョーカーが呆れたようにため息をつき、クレールや亜衣達がポカーンとする中で演技がかった動きを始めた。

 

 

「地域に根差した博物館に現れるのは一人の怪盗。予告状によって呼び寄せられた警察と宝物を守ろうとする館長を前にしながらも怪盗は一つまた一つと警備を潜り抜けてお宝と対面する。そこまでだ! ようやく登場した警察や館長が目にしたのはもぬけの殻となったケースと誰もいない室内。誰もが呆然とする中で怪盗は優雅に立ち去り、お宝を手にしながら静かに悦に浸る。うん、とても良いじゃないか」

「そうですね、僕も面白いと思いますよ」

「私もです!」

「そうだろう?」

 

 

 清志郎やアリスの言葉にクイーンが笑みを浮かべる中、亜衣は元気に話しかけた。

 

 

「元気君、今のって?」

「クイーンがたまにやるお芝居みたいなものだ。一度ああなったら中々止まらないから、俺やジョーカーはほっとくようにしてる」

「なるほど、クイーンさんにはそういう趣味みたいなのもあるんやね」

「伊藤さんは伊藤さんで新しい発見に喜んでるし……はあ、こんなんで本当に大丈夫かよ」

 

 

 クレールがため息をつく中、店主はニカッと笑った。

 

 

「初めは男だか女だかわからない外人達が来たと思ったが、アンタ達は中々面白い奴らみたいだな」

「そう言っていただけて嬉しいですよ。ところで、皆さんは城跡公園のすぐ近くにある博物館にはよく行かれるんですか?」

 

 

 クイーンの問いかけに店主や他の客達は揃って首を横に振る。

 

 

「いいや、行かないな」

「そうだな」

「行こうって気にはならないな」

「おや、そうなのですか? 因みに、理由を伺ってもよろしいですか?」

 

 

 店主は頷いてから答えた。

 

 

「純粋にあの博物館は雰囲気も館長も気にくわないんだよ。内装も成金趣味って感じで目が痛いし、館長も自慢話ばかりしてくるから行きたいと思えないんだ」

「感じ悪いんだよな、あの館長。自分をスゴく見せたいと思いすぎて相手の気持ちをわかってない感じがしたかな」

「同感。あんな奴の博物館よりも前にあった歴史文化館のほうが何倍もよかった気がするよ」

「歴史文化館……その頃はどのような感じでしたか?」

 

 

 店主達は懐かしそうな顔をする。

 

 

「スタッフも感じ良いし、定期的に色々な企画をやってくれてたから楽しかったよな」

「それを外の掲示板みたいなとこに貼っててな。それを見て、ああ今回はこんな感じなんだなと思って行ってみようかなという感じになるんだよな」

「通年やってる展示もあるけど、出来はとても良いし、雰囲気も落ち着いてる感じで居心地はよかったよ。今は無くなってしまった花時計も良かったしな」

「花時計?」

 

 

 真衣の疑問に店主は頷く。

 

 

「そうだよ。前は道路沿いに花時計があって、その年によって違う花が植えられていたから毎年の楽しみになっていたんだ」

「赤い時があれば黄色い時もあって、青い時があったと思ったら紫の時もある。あれもこの街の名物の一つだった」

「だけど、あの館長はこんなのは博物館には相応しくないと言って無くしてしまったんだ」

「皆さんからの反対意見は出たんですよね?」

 

 

 店主達は大きく頷く。

 

 

「もちろん出たし、市に出すための署名運動だってしたとも」

「だけど、議題には取り上げられなかったよ。考えたくはないが、恐らくあの館長が根回しをしたんだ」

「館長め……!」

 

 

 客達は怒りを露にしており、クイーンは顎に手を当てた。

 

 

「ふむ、その館長は住民達からも嫌われているようだね。それなのに博物館は続いている。これは何か秘密があるようだ」

「そうだな。そしてその裏には……」

「神製教団が関わっている可能性がある、と」

「ああ。因みに、皆さんはツキと名乗る子供をこの辺りで見かけた事はありますか? ウチの元気が言うには、朱色の着物姿で髪を麻紐で一本にまとめた中性的な顔立ちの子だそうですが」

 

 

 クイーンの問いかけに店主達は不思議そうな顔で首を横に振る。

 

 

「いや、見たことないな。この辺りを着物姿で歩く人はいたとしても、そんな子は見たことがない」

「それにしてもツキ、か……なんだかあれを連想してしまうよな」

「あれ?」

「アンタ達も聞いた事があるんじゃないのかい? 鬼の手形の伝説に出てくる羅刹鬼の名前を」

「少し無理矢理だが、後ろの二つを取ったらツキになるからな。何か関連性があるんじゃないかと思ってしまうよ」

「羅刹鬼……」

 

 

 元気が考え込む中、ジョーカーはクイーンに話しかけた。

 

 

「ですが、羅刹鬼はもうこの地には足を踏み入れない約束をさせられたんですよね? であれば関係はないんじゃないですか?」

「そうだね。だけど、名前は少し似ているようだし、ツキという子はどうやらただの人間ではないようだ。となればたとえ本人じゃなくても関連を疑うのも仕方ないよ。夢水君はどう思う?」

「そうですね。正体はわかっていますが、その意見には賛成です」

「ふふ、よかった。では諸君、ご飯を食べたら博物館に行ってみよう。何かわかるかもしれないからね」

 

 

 元気達が頷いた後、クイーンや真里は店主や他の客と話し、アリスやクレールは亜衣達と話していたが、元気だけは食べながら何かを考えるように俯いていた。




政実「第48話、いかがでしたでしょうか」
元気「博物館の館長の悪どさがわかった回だったな。因みに、歴史文化館は今でもあるんだよな?」
政実「うん。花時計は綺麗だし、作中でも言ってたように度々何かしらの企画をしているから是非来てみてもらいたいところだよ」
元気「そうか。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いていただけると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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