怪盗の助手の非日常   作:九戸政景

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政実「どうも、人生をAIにサポートされたい片倉政実です」
元気「どうも、神野元気です。AIのサポートか……全部任せるわけにはいかないけど、欲しいと思う時はたしかにあるよな」
政実「個人的にはその日の正確な天気予報とかスーパーの安売り情報とか教えてもらったり創作に必要な知識集めをお願いしたいかな」
元気「なるほどな。さて、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第5話をどうぞ」


第5話 パートナーと人工知能

 降ろされたコンテナの中へ入ると、コンテナの扉は独りでに閉まり、静かに上がっていったが、上昇中のふわふわとした感覚に元気は嫌悪感を覚えたのか顔をしかめた。

 

「……なんだか嫌だな、この感じ」

「おや、もしやエレベーターに乗った事は無いのかい?」

「……無いな。上がり下がりする方法は他に無いのか?」

「あるけれど……いつも私がやっているようなワイヤーに捕まってそのまま昇降する方法でも良いなら今度からそうするかい? 鍛えていない君にはあまりオススメは出来ないけれど……」

「……いや、止めとく。命がいくらあっても足りなそうだ」

「ふふ、それが良いかもしれないね。だけど、やってみたいと思ったら、その時は言ってくれたまえ。出来るように鍛えてあげるからね」

「……その時が来たらな」

 

 元気がその気がなさそうな様子で答えていたその時、コンテナの動きが止まり、ゆっくりと扉が開いていくと目の前には中国服を着た仏頂面の若い男性が立っていた。

 

「おかえりなさい、クイーン。それと……初めまして、元気君。僕はジョーカー、クイーンの仕事上のパートナーだ」

「……実在はしてたんだな。それじゃあ、RDっていうのも本当にいるのか」

「ああ、いる。ただ、人工知能という事で僕達みたいな肉体は持ってないけれどね」

「けど、ここの様子はカメラから見てるんじゃないかな? そうだろう、RD?」

 

 両手でメガホンを作るようにしながらクイーンが呼び掛けると、コンテナの外にあるスピーカーから声が聞こえ始めた。

 

「はい、見てますよ。初めまして、神野元気。私はRD、日本に住む倉木博士によって開発された国防用の人工知能で、今はこの超弩級巨大飛行船トルバドゥールの制御をしながらクイーン達のサポートをしています」

「……ジョーカーにRD、そしてクイーンか。怪盗なんて本当にいたんだな」

「ふふ……怪盗はどこにでもいるんだよ。闇を駆け、多くの観客の前で華麗にあらゆる物を盗み出し、見た者全てを魅了して止まない存在、それが怪盗という物だからね」

「……元気君、クイーンの言う事はあまり真面目に聞かなくて良いからね」

「ジョーカーの言う通りです。クイーンは普段からこのような事ばかり言っていますから、全てを真面目に受け取っていたら疲れてしまいます」

 

 クイーンの言葉を聞いたジョーカーとRDが呆れ声で言う中、元気はどこか懐かしそうな表情で顎に手を当てる。

 

「……ミック神父みたいな事を言う奴が他にもいたんだな」

「ミック神父……その人が君がお世話になっていた教会の神父なんだね?」

「そうだ。俺が家にいたくなくて夜に出ていった時に声をかけてきて、自分が誘拐で捕まるリスクを背負ってでも俺を教会で保護しようとしてくれた変わり者だよ」

「変わり者、と言いながらも君はそのミック神父を信頼してるように見えるよ?」

「……そこまでのリスクを背負ったりこのロザリオを託したりする奴だったからな。少なくとも、ミック神父はこの世界の人間の中では信頼出来る相手だと思ってる」

「なるほど……RD、さっき教会からは誰の遺体も見つからなかったと言ってたよな?」

「はい、その通りです。教会の燃え具合から考えてもそのミック神父という方も亡くなっていないとは思いますが、そもそもどうして教会が燃えるなどという事になったのですか?」

 

 RDが疑問を口にした後、元気は辛そうに燃え盛る教会での出来事を話した。その間、ジョーカーは神妙そうな表情で聞いていたが、クイーンは興味深そうに話を聞いており、話が終わると同時に元気の肩に手を置いた。

 

「クイーン?」

「元気、君はその神製教団(デウスクリエイター)や君の両親だと言っていた二人をどうしたい?」

「アイツらをどうしたい……」

「そうだ。君の生まれはまだわからないが、幸せな人生を送るはずだったかもしれない君の邪魔をした人々に対して君は何をしたい?」

「……そんなの決まってる。俺の両親を騙っていた奴らは警察に捕まえさせて、神製教団からアリス達を助け出したい。俺の人生も俺を必要としてくれる人ももう誰にも奪わせないって決めたんだ。目に物を見せてやらないと気が済まない……!」

 

 そう言う元気の目の奥では怒りの炎が燃え、その姿を見たクイーンはクスリと笑う。

 

「良い目だ。だったら、まずは君の信頼のためにその手助けをしようじゃないか。ジョーカー君、RD、君達も良いかな?」

「それは構いませんが……珍しいですね、クイーン。別にその人達からは盗み出す物は無いですよね?」

「強いて言うなら、元気の人生や未来を取り返すといったところさ。これから元気がここにいるためにまずはその問題を解決しないといけないからね。

別に警察くらいなら気にする必要は無いんだけど、そういうつまらない盗みや犯罪を誇ってるような奴らに邪魔をされても面白くないんだよ。腐ったキャベツの芯の臭いがする犯罪をするような連中はここらで退場してもらおう」

 

 クイーンが両手を広げながら芝居がかった調子で言うと、元気はジョーカーに近づいてからこそこそとした声で話しかけた。

 

「……クイーンはいつもこんな言い回しをしてるのか?」

「……そうだね。ただ、クイーンがやる気になってるのは間違いないし、こうなった時のクイーンは最後までやり遂げる。だから、心配はいらないよ」

「ジョーカーの言葉に賛同します。しかし、策はあるんですか? 元気の両親を騙っていた人々を探し出すくらいならば今すぐにでも出来ますが、証拠がなければ警察は動きませんよ?」

「それくらい問題ないよ、RD。という事で、まずは元気から話を聞かせてもらおうかな。君からしたら、話すのも辛いとは思うけどね」

「……構わない。アイツらに復讐するためなら、それくらいどうってことない」

「ありがとう。だけど、まずは元気は着替えた方が良い。さっきまで雨に降られていたわけだし、話はお風呂や食事の後でも問題ないからね。ジョーカー君、案内を頼めるかな?」

「わかりました。それじゃあ行こうか、元気君」

「……ああ」

 

 ジョーカーに伴われて元気がコンテナ内から出て歩いていくと、クイーンは真剣な表情を浮かべる。

 

「……RD、君は元気をどう思う?」

「……年齢の割にはしっかりした子だと思います。ですが……話しながら彼をスキャンしたところ、彼は日本人寄りの顔ではありますが、イギリス人の血も入ったハーフである事がわかりました」

「そうか……」

「別に今時ハーフやクォーターなどは珍しくありません。ですが、彼自身はその事を知らないようですし、両親だと言っていた二人からドイツ語のフィーアをもじった名前で呼ばれていた。この事は妙だと思いませんか?」

「ドイツ語で4、か……まるでどこかの施設で管理をされていたかのようだね」

「私もそう思います。とりあえず、この件についてはしっかりとわかるまで元気には伝えずにいましょう。大切な友人達や恩人が行方知れずな上に落ち着く場所だった教会すらも無くされて心身ともに疲弊しているはずですから」

「それが良いだろう。RD、引き続き調査を頼む。元気の事だけじゃなく、ミック神父のような教会の関係者や神製教団についてもね」

「わかりました」

 

 RDが答えた後、クイーンはコンテナ内から出ると、そのまま自室へ向かい、室内で着替えをした。そして着替えを終えてトルバドゥール内の船内に置かれたソファーに座り、下に隠していたワインを取り出していると、そこへジョーカーと着替えを終えた元気が近づいた。

 

「クイーン、元気君の着替えを終えてきました」

「うん、お疲れ様……おや? その中国服は……ジョーカー君が昔着ていた物かい?」

「はい、ここには元気君が着られる程の服も少なかったので」

「たしかにそうだね。よく似合っているよ、元気」

「……それはどうも。そういえば、俺はここのどこで寝れば良いんだ? 別に壁にもたれて寝るでも良いけど……」

「いや、RDが空いてる部屋を掃除してくれてるよ。君もここにいるからには私にとって親愛なる友人で大切な存在だからね。何か足りない物があったら、遠慮なく言ってくれたまえ」

 

 すると、元気は何かを思い付いた様子で静かに口を開いた。

 

「……それなら、あらゆる国の辞書が欲しい」

「辞書……?」

「ほう、それくらい問題ないけれど、理由を聞いても良いかな?」

「俺は生まれつき見た物は忘れないみたいだからな。それを読めば、知識も増えるし、クイーンの仕事の役にも立つだろ」

「たしかにそうだけど……クイーン、これは瞬間記憶能力というものでしょうか?」

「どうやらそのようだね。だけど、忘れないのと同時に“忘れられない”というデメリットもある。元気、そうだろう?」

「ああ、そうだ。だから、アイツらからされた仕打ちも一生忘れられない。忘れたくてもな」

 

 返事をする元気の声は暗く、ジョーカーが元気に対して何か声をかけようとした時、クイーンは元気を見ながらにこりと笑う。

 

「だから、今日からは私達と共に忘れたくないくらいの思い出を作るんだ。そうすれば、忘れられない記憶よりもそっちを思い出す機会も増えるかもしれないし、元気も辛くはないだろう?」

「……さてな。というか、忘れたくないくらいの思い出って何をするつもりなんだ?」

「そうだね……今考えてるのは、私の趣味でもある猫の蚤取りと色々なおもちゃで一緒に遊ぶ事かな」

「……それは本気で言ってるのか?」

「本気だよ。まあ、私の仕事の中でも様々な出来事に遭遇していくだろうから、そういった出来事達も良い思い出にしていけば良いさ。少なくとも私の仕事は観る者全てを魅了し、あたかも一つのショーを観たかのような感覚に陥らせるような物になるよう努めているからね」

「そうか……」

「まあ、君からのせっかくのおねだりだから、辞書は揃えて部屋に置いておくとしよう。その時には私の作った辞書も贈るから楽しみにしていてくれ」

「辞書……ああ、RDが不良品って言ってた奴か」

「本当に酷い言いようだよね。私の辞書は本当に素晴らしい物なのに」

 

 自信満々にクイーンが言い、それを聞いていたジョーカーが額に手を当てる中、船内のスピーカーからRDの声が聞こえ始めた。

 

「本当に素晴らしい物ならば私もそう言いませんよ。とりあえず食事が出来たので食堂へと来てください。クイーン達もそうだと思いますが、元気はもっとお腹が空いてると思いますから」

「おっと、そうだね。日本にも空腹では戦には勝てないという言葉があるようだし、しっかりと腹拵えをしようじゃないか」

「クイーン、お言葉ですが、それは腹が減っては戦は出来ぬではないんですか?」

「戦も出来ないかもしれないが、勝てもしないだろう? だから、どちらでも問題はないんだよ」

「……東洋の神秘ですね」

 

 クイーンの言葉を聞いたジョーカーが呟き、元気とRDが揃ってため息をつく中、クイーンは二人を見回してからふんわりと微笑む。

 

「では行こうか、諸君。美味しいご飯の後は作戦会議をしないといけないからね」

 

 ジョーカーと元気の二人が揃って頷いた後、三人はRDが用意した食事が待つ食堂へ向けて歩き始めた。




政実「第5話、いかがでしたでしょうか」
元気「今回はクイーンの仲間とのちゃんとした出会いと俺について色々わかった回だな」
政実「そうだね。原作者さん本人ですらクイーン達は扱いづらいらしいから、これからも書いていくのは苦労しそうだけど、原作や既存キャラ達の雰囲気を大切にしながら元気達オリキャラともうまい事組み合わせて書いていく予定だよ」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと……それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」
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