元気「どうも、神野元気です。食事に限らず、挨拶っていうのは大事だからな」
政実「そうだね。口うるさく言いたいわけじゃないけど、食事というのは当たり前に出来るわけじゃないという事は忘れずにいたいよね」
元気「ああ。さて、それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第6話をどうぞ」
食堂に着いた後、三人がそれぞれ適当な席に着くと、クイーンは手を合わせながら静かに目を瞑った。
「いただきます」
「「いただきます」」
クイーンの後に続いて元気はジョーカーと声を揃えて言った後、少し不思議そうにクイーンを見る。
「……クイーンも日本語でいただきますって言うんだな」
「ふふ、食事の挨拶は大切だし、日本語というのは面白いからね。それに、私達は他の生き物の命を貰って生きていくんだ。それなら、尚更言うべきだとは思わないかい?」
「……同感だな。ただ、あの家では言う習慣が無かったから、少し驚いた」
「そうか。さて、RD。作戦会議をする前に元気の両親を騙っていた二人について教えてくれるかな?」
『畏まりました、クイーン。まず名前からですが……父親を騙っていたのは、
次に、母親を騙っていたのは、
二人とも日本人で共に三十代ですが、特に夫婦というわけではなく、お互いを利用し合っているだけの存在のようです』
「ふむ……となると、どちらかだけをどうにかしてももう片方にはすぐに逃げられそうだし、一網打尽にする手段が必要そうだね。RD、他に情報はあるかい? その二人以外にも神製教団について情報があったら助かるけど……」
『それが……神製教団については中々情報が集まらないんです。世界各国の富豪がどこからか優秀な子供を買い付けている証拠は見つかるのですが、その取引先が神製教団であるという確証はどうにもなくて、ミック・エルマンやクリスティーナ・メイスンという人物についてもしっかりとした情報は集まりません……』
「ただ、その二人がいた教会が燃やされたという事実はあるんだろ? だったら、教会について調べたら良いんじゃないか?」
『調べはしました。ですが、元気達がいた教会というのも、元々は別の団体が建てた物を買い取って使っていたものらしく、その契約書の名前も偽名だったようです。なので、今のところは神製教団や元気の面倒を見ていた二人について調べる事は困難かと思われます』
「そうか……」
RDの報告を聞いた元気が表情を暗くすると、クイーンはグラスに注がれたワインを一口飲んでから元気に視線を向ける。
「元気、お世話になった二人について今はこれ以上はわからないけど、ミック・エルマンとはまた会うと約束したんだろう? それだったら、その時に訊いたって良いんだよ。その時になれば、ミック・エルマンも話して良いと思ってくれるかもしれないしね」
「……そうだな。RD、アリス達拐われた子供達についても何もわからないか?」
『そうですね……戸籍などもありませんでしたからこれ以上は調べられませんでしたが、一つだけ気になる情報は見つけましたよ?』
「気になる情報……?」
「RD、聞かせてくれたまえ」
『はい。強田刀二、鷺宮飛李の二人についてなのですが、どうやら今の住居を引き払おうとしているようで、二人の住居から“幼い少女”の声が聞いたという声が幾つか上がっています』
「幼い少女の声……元気君、教会には君以外に何人の子供がいたんだい?」
「……五人だ。男が二人と女が三人。みんな同じくらいの歳のはずだけど……その声の主がアリス達の内の誰かだっていう証拠はないんじゃないのか? アイツらなら、どこからか子供を拐ってきたっておかしくないし」
『私も同意見です。ですが……その子供の声を聞いたという人々は総じて“教会”や“ミック神父”という言葉を聞いたようなんです』
「え……そ、それじゃあ……!」
元気が顔を上げながら嬉しさと焦りが入り交じったような表情を浮かべると、ジョーカーはクイーンに視線を向けた。
「クイーン、どうやら確定みたいですね」
「そうだね。どういう理由があったかはわからないが、元気の仲間だった子供の中の誰かが元気の両親を騙っていた二人組に囚われていて、このまだとどこかへ連れていかれてしまうみたいだ。
そうなる前にどうにかしたいけれど……RD、いつ頃その二人が出ていこうとしているかわかるかい?」
『早くとも3日後には。二人とも逮捕された過去はありますし、大きな組織がバックについているわけではないですから、警察に今回の件を嗅ぎ付けられる前に早めにどこかへ逃亡してしまいたいのでしょう』
「となると早くしないと……誰が捕まってるにしてもアイツらのとこにいるのは絶対に良くないからな」
「だけどどうやってその二人を警察に捕まえさせた上で捕らえられている子供を助け出しましょうか……ちゃちな犯罪者だとしても子供を人質にして逃亡を図ろうとしたりいらない殺人を犯したりする可能性はありますから、下手に刺激するのは得策ではないです」
「ああ、そうだね。だけど、私は怪盗だ。必ずや元気の仲間だった子供を助け出してみせるよ。元気、家の中の様子は覚えてるかい?」
「……ああ、バッチリな。ミック神父と出会うまでのアイツらの生活リズムや癖なんかも全部覚えてる」
「流石だね。では、この話は一度ここまでにして、まずは夕食を食べ終えてしまおう。作戦会議の時にそれは聞かせてもらいたいしね」
「ああ」
「わかりました」
ジョーカーと一緒に返事をした後、元気が夕食を食べ始めると、その様子を微笑みながら見ていたクイーンに隣の席のジョーカーが耳打ちをする。
「クイーン、元気君の素性については何かわかっているんですか?」
「RDが調べたところによると、日本人とイギリス人のハーフのようだよ。だけど、それはまだ本人には伝えずにいようと思う。今は自分の事に集中してほしいし、もっとしっかりと調べてから伝える方が良いからね」
「そうですね。ですが……こうなってくると、元気君は本当に不思議な子だと言えますね。本人が知らないだけで、元気君も神製教団に関係しているんじゃないですか?」
「その可能性は高いと思うよ。だけど、その確証はまだない。だから、RDにはまだまだ調査を続けてもらおう。RD、良いかな?」
『もちろんです。ところでクイーン、捕らえられている子供を助けた後はどうしますか? 元気と一緒にここで面倒を見るんですか?』
RDからの問いかけにクイーンは静かに頷く。
「ああ、そのつもりだ。神製教団の全貌が明らかになっていない以上、絶対に油断は出来ないけれど、警察にその子の面倒を任せたってすぐにまた拐われてしまうだろうし、自分の目の届くところにいてくれた方が元気も安心するはずだ。元気、捕らえられている子は一緒にここで面倒を見た方が良いかな?」
「……そうだな。クイーン達の手に余るっていうならしかたないけど、ここにいてくれた方がまだ安全で安心出来る。それに、ミック神父にまた会えた時に俺以外に無事な奴がいたら、ミック神父も安心して喜ぶだろうからな」
「わかった。それじゃあ、RD。空いている部屋をもう一つ掃除してもらっても良いかな?」
『もう始めてますよ。衣服については救出してから身体測定をした上で入手するのでまだ用意出来ませんが、済み次第、すぐに準備を始めます。元気もこの件が済んだら身体測定を行いますので、覚えていてくださいね』
「ああ。ここにいる以上、クイーン達の仕事の手助けはしっかりと行うし、体調管理には気をつけたいからな。出来るなら、月に一度やってもらえたら助かる」
『わかりました。最初の身体測定を終わらせた時点でそれについては決めますね』
元気の言葉にRDが答えていると、それを見ていたジョーカーは感心した様子を見せる。
「元気君は本当にしっかりしてますね。けれど、これは両親を騙っていた二人組から受けていた仕打ちが原因だと考えたらだいぶ胸が痛くなります」
「まだ幼い中、擁護の余地すらない犯罪者達の元で過ごすはめになったわけだからね。もし、元気がその二人に感化されていたら、だいぶ厄介な犯罪者になっていたと思うよ。元気が持つ完全記憶能力さえあれば、金庫破りやカードの暗証番号を盗み見るなんてのも容易だからね」
「……アイツらと同じような最低の犯罪者になれたらそれはそれで幸せだったろうけどな。でも、アイツらの生活の様子や言動を見て俺はこうなりたくないって思ったんだ。
子供の俺でもアイツらがやってる事が良くない事だっていうのはわかっていたし、コイツらの言いなりになんてなりたくないって思えたからな。そのおかげでミック神父達やクイーン達に会えてアイツらに目に物を見せる機会に恵まれたわけだから、その選択は間違ってなかったって言えるはずだ」
「そうだね。だからこそ、捕まっている子もしっかりと助け出さないといけない。未来ある子供が小さな頃から下らない犯罪者の元にいるのは良くないし、大切な友人の望みならちゃんと叶えてあげたいしね」
「……俺は別にお前の友達じゃない。俺はあくまでもお前の仕事上の助手に過ぎないんだ」
「因みに、僕もあなたの友達ではなく仕事上のパートナーですからね」
『私もあなたの友達ではなく世界最高の人工知能に過ぎません』
「よよよ……三人揃って言う事はないじゃないか……」
クイーンがどこからか取り出したハンカチを目元にあてていると、ジョーカーは呆れた顔でため息をつく。
「泣き真似をしても無駄ですからね。後……元気君、クイーンの仕事の助手をするなら、何かしらの形で戦いに巻き込まれる事も少なくないんだ。だから、この件が済んで少し落ち着いたら、僕と一緒に戦うための訓練をしよう。
もしも僕やクイーンとはぐれても戦えるなら敵に捕まる恐れも減るし、それ以外の時でも護身術として利用出来るからね」
「わかった。そういえば……クイーンはワインの瓶の口を切る事が出来るって言ってたけど、それも出来るようになるのか?」
「……それに関してはクイーンから直接教わらないといけないね。クイーン、元気君もそれは可能ですか?」
「そうだね……それは元気の頑張り次第かな。ジョーカー君でもまだ会得していない物だし、並大抵の努力じゃどうにもならない。それでもやるかい?」
「……やる。進んで誰かを傷つけたいわけじゃないけど、それがあれば武器がなくても色々な物を切る事が出来るわけだからな。仕事の手伝いをする以外でも何か役に立つはずだ」
「ふふ、たしかにそうだね。では、頑張ってくれたまえよ、若き助手君」
「ああ」
返事をした元気が再び食べ始めた後、ジョーカーも静かに食べ出すと、その様子をクイーンは微笑みながら見守っていた。
政実「第6話、いかがでしたでしょうか」
元気「次回くらいから行動開始する感じみたいだな」
政実「そうだね。この件についてはあまり話数をかけないつもりだよ。その分、原作の出来事に時間をかけたいからね」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと……それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」