元気「どうも、神野元気です。予想してない出来事も起きるだろうけど、色々な可能性を考えて作戦を練るのは悪い事じゃないからな」
政実「そうだね。ただ、予定外の出来事が起きたらだいぶ混乱しちゃうんだけどね」
元気「なるほどな。さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・元気「それでは、第7話をどうぞ」
夕食後、三人はRDが出したスクリーンを見ながら作戦会議を始めていた。スクリーンには
「すごいな……これ、全部RDが調べたのか?」
『このくらい大したことありませんよ。さて……クイーン、どのようにしてこの二人を警察に捕まえさせた上で元気の仲間を救出するおつもりですか?』
「そうだね……まず結構は明日にしたいかな」
「明日、ですか……だいぶ急ですが、それならば準備も急ぐ必要がありますね」
「けど、本当にそれで大丈夫なのか?」
「問題ないよ。油断は禁物だけど、今回は警察の警備も行方を阻む仕掛けもない。それならなんら難しくない。私は怪盗クイーンだからね」
「そうか……」
「それで、家の中への侵入についてだけど、ジョーカー君と元気の二人にまずは行ってもらう。ジョーカー君は子供と女性は傷つけないようにしてるけど、制圧くらいならやってくれるはずだし、強田刀二が子供を人質にしようとしてもジョーカー君の動きなら問題なく救出出来るからね。
それで元気はこの中で一番家の中の事を知っているから、ジョーカー君のアシストをしてくれたまえ。ジョーカー君が戦う事になったら、元気はとりあえず離れて、その動きを見てこの件が終わった後の特訓にでも活かすといいよ」
「わかった。それで、クイーンはどうするんだ?」
元気からの問いかけにクイーンはクスリと笑ってからウインクをする。
「内緒だよ」
「内緒って……それだとクイーンの動きがわからなくて俺達が困るだろ」
「君達は好きに動いてくれて良いよ。私は別動隊として作戦の成功のために行動するからね」
「けど……」
元気が不満そうな顔をすると、ジョーカーはその肩に手を起き、落ち着いた様子で首を横に振る。
「諦めた方が良いよ、元気君。こうなったクイーンは絶対に僕達には考えを話してくれないから」
「私だって君達には正直でありたいんだよ? だけど、こうして話さない事で成功する作戦だってあるんだ。ああ、君達に話せないのは本当に辛いなぁ……」
「……クイーン、下手な演技は止めてくださいね」
「……わかったよ。さて、私はちょっと準備する物があるから少し席を外すよ」
「準備する物……?」
元気が不思議そうにすると、クイーンは微笑みながら頷く。
「どんな相手であれ、この怪盗クイーンが出るのなら予告状は必須だろう?」
「……必要か? それ……」
「必要だよ。予告状を出さない怪盗なんて味の無いガムと一緒だからね。という事で、予告状を書いて出してくるために少し行ってくるよ」
「わかりました」
「……出してくるならそのまま救出してきてほしいところなんだけどな」
元気が呆れながら言うと、クイーンは元気の頭に手を置き、微笑みながら優しく撫で始めた。
「……何のつもりだ?」
「いや、なんとなくね。因みに、予告状を出してきた時に救出はしてこないよ。たしかにしてくれば、君もだいぶ安心出来るだろうけど、それでは君は成長出来ないからね」
「俺の成長……」
「そうさ。私の力だけで救出してきたところで、その子と君が一緒にいる時に神製教団に襲われたら今度は君まで拐われる可能性はある。けれど、今回の経験を踏まえた上で君が少しでも成長出来れば、そういう事態に陥っても対処出来るだろうし、もしかしたらそのまま制圧して情報も聞き出せるかもしれないだろう?」
「…………」
「それに、君はこのクイーンの助手を自称している。それなら、どんな相手でも手を抜かずに作戦の成功のためにしっかりと考えて行動するべきだ。今回はその練習みたいなものだよ。では、私は行ってくるよ」
そう言ってクイーンが歩いていくと、その姿を見ていた元気にRDが声をかける。
『普段は子供っぽいところもありますが、なんだかんだでしっかりと考えている。それがクイーンなんですよ』
「……みたいだな。なんだかその温度差で風邪でもひきそうだ」
『そうならないように元気も慣れていった方がいいですよ。まあ、私とジョーカーもサポートはしますし、ゆっくりクイーンという人物を知っていってください。正直、私達もまだまだ掴めていないところはありますが、何度も一緒に仕事をしている内にこういう時にはこう考えそうだとわかってくるはずですから』
「……わかった。それにしても、クイーンって本当に怪盗っていう物に拘りがあるみたいだな」
「少なくともクイーン以上に怪盗への拘りが強い人は見た事がないよ。ただ、クイーンの御師匠様はどうかわからないけどね」
「クイーンの師匠……弟子があれなら師匠もだいぶ変わり者なのかな」
元気が不思議そうに首を傾げると、それに対してRDが答える。
『そうですね……私が調べた情報とクイーンから聞いた話を総合した限りではだいぶ変わった方のようです。クイーンの師匠は『
「そうなんだな」
「その皇帝からクイーンは世界一の強さだと言われているようだけど、皇帝自身は宇宙一強いと言っているらしいよ」
「……やっぱりクイーンの師匠なだけはあるな」
『同感です。さて……では、私達は作戦会議の続きをしましょうか。元気、家の中の様子を教えてもらえますか?』
RDからの問いかけに元気は頷いてから答える。
「玄関を入ってすぐ左に行くとキッチンがあって、その先にリビングがある。リビングの隣には俺が寝ていた物置みたいにしてる部屋があって、その隣があいつらの部屋だ。
それと、玄関からまっすぐに進むと、トイレと脱衣所、浴室がある。家自体もそんなに大きくないし、あいつらの部屋と玄関がある廊下は繋がってるからリビングと元俺の部屋の窓さえ封鎖すれば後は玄関からしか逃げられなくなるはずだ」
「なるほど……つまり、家の中は一周出来るわけか」
「キッチンには食材や食器棚、リビングにはテレビやソファーみたいな家具が、あいつらの寝室にはそれぞれの私物があって物置には本棚や布団なんかがあるな。
後はあいつらの寝室には工具箱があるし、キッチンには包丁みたいな刃物、それと回収されてなければ神製教団から渡された拳銃もあるはずだから、そこは注意がいるか」
『ジョーカーならば素人程度の攻撃を受ける心配はありませんが、元気は気を付けた方が良いですね。元気、他には何か注意すべき点はありますか?』
「これといってはないな。強田刀二と鷺宮飛李に何か格闘技や武道の経験があった覚えもないし、力だけが無駄に強くて動きも大振りだから躱したり受け流したりするのも覚えてしまえば容易だったしな」
「完全記憶能力のおかげというわけだね。後は元気君の仲間の内、誰が捕まっているかだけど、元気君は誰が捕まっているかっていうのは予想出来るのかな?」
「……そこはまったくだな。ただ、捕まってるのがアリスだったら少し心配か……」
元気が不安げに俯くと、ジョーカーは心配そうに元気を見る。
「その子じゃない事を祈りたいけど、その子以外なら心配はいらないという事かな?」
「心配なのは変わらない。ただ、反射神経に優れたアルテナイと勘が鋭いアイリスと違って、アリスからは特技を聞きそびれてるからな。もしもアルテナイの双子の弟のセルゲイみたいにあまり戦闘向きじゃない特技だったら今ごろはだいぶ苦しんでると思ったんだ。
それに……何だかんだでアリスはあそこにいた子供達の中では一番俺を気にかけてくれてたからな。特にアリスに思い入れがあるわけじゃないけど、それでも悲しんでたり苦しんでたりする姿を見たいわけじゃないんだ」
『……そうですか。それならば、助け出した後にその子の心身に何か傷が残っていないかしっかりと確認をしましょうか。少なくとも、このトルバドゥール内にいれば、並大抵の悪人から守る事は出来ますが、今回の件で何かがトラウマになって、この先の生活でそれが発作として出る事も考えられますから』
「ああ、頼む。俺はクイーンの助手としてここにずっと居続けるつもりだけど、助けた奴はまだどこかに生きてるはずのミック神父や他の奴と合流させるつもりだからな。その生活の中で辛さを抱えて生きさせたくはないんだ」
「そうだね、僕も同じ意見だよ。さて……それじゃあどうやって家の中に入るかだけど、それについてはどうしようか」
ジョーカーの言葉にRDは腕を組むようにマニピュレーターを絡ませながら答える。
『極力、騒ぎになるのを避けたいですからね……元気、リビングと貴方が使っていた部屋には窓があったと言っていましたが、その窓というのは人が入ってこられるサイズで庭に面した窓ですか?』
「ああ、リビングの方はソファーが近くにあるから少し入りづらいかもしれないけど、俺が使っていた部屋には遮る物もないから、入りやすいはずだ。ただ……俺がいない内に模様替えをしていたら何とも言えないな」
「……それなら、明日の日中にちょっと様子見に行って、その窓がまだ使えそうなら夜中の内に終わらせてこよう。人通りが多い日中よりも夜中の方が人目にはつきづらいし、事前に目を慣らしておけば相手が混乱してる最中に救出はしつつ警察を誘導してこられるからね」
「そうだな」
元気達の作戦会議が着々と進んでいた時、クイーンはとても満足げな顔で元気達へと近づいてきた。
「ただいま、皆。作戦会議は順調かい?」
「おかえりなさい、クイーン。作戦会議は順調ですが……少し遅かったですね?」
「ふふ、ちょっとやる事があったからね。まあ、作戦会議が順調に進んだのなら良かったよ。さて……それじゃあどんな風になったのか聞かせてもらおうかな」
その後、クイーンは元気達から作戦の内容を聞き、聞き終えると、満足そうに頷いた。
「うん、良いね。私もそれで良いと思うよ」
「太鼓判を捺されたのは良いとして……予告状を出してきた時に何かわかった事はあったか?」
「そうだね……捕まっている子はどうやら元気が使っていたという部屋にいるみたいで、パッと見た感じではブロンドのポニーテールの色白の女の子だったね」
「……アリスだ。アルテナイなら短い金髪だし、アイリスは肌も少し黒くてセミロングの白髪だからな」
「元気君の予感が当たってしまったわけか……」
「けれど、君達が入ろうとしている窓は見たところ塞がれていなかったし、夜中ならわりと忍び込みやすいと思うよ。入る前に窓の鍵をどうにかする必要はあるけどね」
『それは私がどうにかしますね。電子ロックではなさそうなので少し面倒ですが、アナログな方法でも開ける手段は幾つもありますから』
「そうだね。では、明日の作戦を成功させるためにそれぞれ頑張るとしよう」
その言葉に元気達が頷き、それぞれ違った事をしに行くなか、その様子を見ていたクイーンはどこかいたずらっ子のような笑みを浮かべていた。
政実「第7話、いかがでしたでしょうか」
元気「次回が作戦決行回みたいだな」
政実「そうだね。次回を含めて2・3話で終わらせる予定だよ」
元気「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
元気「ああ」
政実・元気「それでは、また次回」