いつか滅びそうな世界と惑星侵略兵器ちゃん   作:天空ラスク

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奇想展骸(オブジェクト)

 (そら)を漂う粗雑な作りの鉄の棺桶。塗装もされず素材そのままの色のそれ。その中に一人、少女は眠っていた。彼女が見ているのは幸せな夢だろうか、それとも悪夢なのか。どちらにしろ、夢の中に逃げ込めるだけ少女はまだ幸福だろう。

 もっとも、その幸福すらすぐに終わるものだが。

 

「ん……」

 

 騒めきが少女の目を覚ます。体内で(うごめ)く物が少女の微睡みを許さない。文字通り体内を()き混ぜるような違和感が少女の体を駆け巡る。

 強制的に覚醒させられた少女はゆっくりと目を開いた。瞳に映る景色は絶景でも何でもない、ただの継ぎ接ぎの鉄板だ。

 

「あ……」

 

 だが少女の黄金色の瞳には、違う物が映った。鉄板の向こう、(くら)い宙の海に浮かぶ碧い星。

 

 少女が滅ぼす事になるだろう、それは美しい星だった。

 

「…………」

 

 少女は体内を駆け回る騒めきを無視して瞳を閉じた。

 あの青い星に何処か懐かしいものを感じ、閉じた瞳から透明な雫が頬に一筋の線を描いた。

 幼子のように体を丸め、(さそり)に似た形状の尾を自身を守るように巻き付ける。

 少女を載せた棺桶は真っ直ぐに目標へと飛ぶ。碧い美しい星、地球という名前の星目指して。

 

 

 

☆ミ

 

 

 時を同じくして地球、オーストラリアの都心部から遠く離れた荒野。六台のトラックが砂煙を上げ大地を駆けていた。

 

「こちらT-187。目標を視界に捉えた。探索許可を求む。オーバー」

 

『こちらMCOオーストラリア基地。探索を許可する。全員の無事と検討を祈る。オーバー』

 

小さな岩山の影に隠れるようにポッカリと空いた、トラックが楽々通過できそうな大穴目掛け六台の大型トラックが荒野を駆ける。

 特殊な加工を施され荒れた道でも走行可能になったトラックのコンテナ内部、そこに左右に配置された簡素な横長の椅子に腰掛ける部隊の顔を見回す。

 

「改めて言うが、今回の探索区域は奇想展骸(オブジェクト)が有る可能性が極めて高い。死にたくないやつは神に祈るといい」

 

 もっとも、神も実在したら奇想展骸(オブジェクト)判定が下るだろうけどな、と独り言ちる。

 

 T-187はある組織に所属する部隊の一人だ。今回下った命令は前日の大雨の後出来た大穴の調査だ。何を調べるのか、それはT-187自身も着いてみなければ分からない。生き物かもしれないし無機物かもしれない。現象かもしれないし何も無いかもしれない。だが一つだけ理解ることは、それらは地球に、人間社会において存在を知られては行けないということだ。それらが社会に知れ渡れば世界的な混乱が生じる。かもしれないでは無く確実に混乱が起こる。奇想展骸(オブジェクト)とはそういうものなのだ。

 

「隊長! 目標地点まで後400メートルです!」

 

 運転手が荒野を走る騒音に負けないように声を張り上げる。

 

「目を離すなよ、急に防衛用のレーザーが飛んでくるかもしれないぞ」

 

 双眼鏡を取り出し大穴に焦点を合わせる。少しでも不審な反応があれば即座に対応できるように身構えた。

 

 その時、

 

 運転席に取り付けられた機器のメーターが動いた。

 

「現実否定度上昇! 26、クラスDです!」

 

「何っ!? もう奇想展骸(オブジェクト)が動き出したのか!?」

 

 大穴には何も変化がない。ならば一体……と思考の海に囚われかけ、それどころでは無いと結論付けた。

 

「急ぎ確認! 何が反応しているか捜索しろ!」

 

「隊長! アレを!」

 

 部隊の一人の女性、T-223が指差した先には大穴の近くにあった岩山があった。

 

「岩山がどうし……」

 

 見つめていると違和感に気がついた。先程から少し揺れているのだ。

 ズズズズズ、と大地が大きく揺れる。そして岩山は……

 

 

 

 

 

 

 二本の脚で立ち上がった。

 

 ズズン……ズズン……と足音を響かせ此方へ向かって歩いてくる。。

 

「ッ! あれはまさか、山のような巨人、又は動く山の伝承! 昔から語られる山の伝説のモチーフになった奇想展骸(オブジェクト)か! なんつーデタラメだよ!」

 

 岩山は当たり前だが何も言わないし、何も答えない。だが当たり前のように歩く姿は決して有り得てはならない異常だ。

 

「隊長、どうしますか?」

 

「様子を見ろ、こっちに向かってくるようなら人類脅威度をクラスEn(エネミー)として仮定し対処するまでだ」

 

 岩山はふらふらと何かを探すように揺れると、探していたものに向かって歩き出した……自分達が乗るトラックへと向かって。

 

「隊長! 此方へ向かって来ます! どうしますか!?」

 

「どうしたもこうしたもあるか! 引け! あんなデカブツに効く武器なんてTには無い!」

 

 運転手に乱雑に指示を飛ばし次に行うべき行動を模索する。

 文字通り見上げるような大きさの敵を倒す武器など、探索がメインのT(トレジャー)が用意している訳が無い。分散しているほかの部隊にも超大型用の武装などない。ならば、応援を呼ぶしかないだろう。幸いにも、MCOには緊急事態に特化した部隊が居る。

 

「キャット! 通信準備だ!

E(エマージェンシー)を呼べ! 山を殺す武器の用意と俺たちの回収準備を伝えろ!」

 

 キャットって呼ばないでください!とほざいているヤツを無視して車両後方へ向かう。急カーブを挟みトラックは岩山と反対方向へと猛スピードで走りだした。しかし岩山の一歩は大きく、少しずつ距離が狭まっていく。

 

「隊長! このままだと追いつかれます!!」

 

「アクセルを限界まで踏め! 追いつかれそうになったらアイツの周囲を周り続けろ! あの図体だ、小回りは効かない筈!」

 

 運転手の焦りに応えるようにエンジンが雄叫びを上げ更に速度が上昇する。

 

「ッ!? ダ、駄目です! 奇想展骸(オブジェクト)、速度を上げましたッ!!」

 

「クソッタレ! のんびりお散歩でもしていろ山野郎!」

 

 歩きから小走りになった岩山は一歩一歩地震のように大地を震わせトラックに迫っていた。

 

(畜生! 山なんかに踏み潰されてたまるかよ!)

 

 この危機的状況をなんとか回避する策を練らなければ全員踏み潰されて大地にミンチ肉を提供する羽目になる。

 

(だがどうすればいい?積んである火器はあそこまでのデカブツは想定していないから火力が圧倒的に足りない。仮に自爆覚悟でトラック事突っ込んだとしても対して痛くも痒くもないだろう)

 

 自然と流れてきた走馬灯と生きるための思考が混ざり合い脳が燃え尽きそうになる。それでも、何とかしなければならない。世界の平和と変わらぬ明日のためにも。

 

 その空気を乱すように、耳障りな電子音が鳴り響いた。




書き溜めがあまり無いので続きはまた明日……-⁽ -´꒳`⁾-

追記・いいタイトルが思いつかないの……( ߹꒳߹ )
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