いつか滅びそうな世界と惑星侵略兵器ちゃん   作:天空ラスク

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今回ようやく惑星侵略兵器ちゃんが出ます。


宙から来た少女(インベーダー)

 通信を担当していた、T-187にキャットと呼ばれていた若い男が声を張り上げる。

 

E(エマージェンシー)より連絡有り! 約十分後に到着するとの事です!」

 

「十分だと!? ……仕方がない。全員武器を取れ! あの山野郎を蜂の巣にしてやる! T-90、T-223、T-237は用意ができ次第撃ち始めろ! キャット! お前は上に上がれ! 速射砲をお見舞してやれ!」

 

「「「了解ッ!」」」

 

 その声を聞いた全員が速やかに自分ように調整された火器を手に取った。約一名が、だからキャットって呼ばないでください!と叫んだが誰も聞いていない。一番早かったT-223によってトラックの後部扉が開かれ、荷台と外の境が無くなった。

 

(こんな豆鉄砲が効くわけが無い。むしろ怒りを買って速度が上がっちまうかもしれん……だが)

 

 山に向かって構えたそれ、携帯用ロケットランチャーを山の右膝に照準を合わせる。

 

「踏み潰されるくらいなら! 転んで腰でも打っていろ!」

 

 引き金に指をかけ、指に力が籠る。あと数瞬の後に放たれるそれは、しかし放たれることは無かった。

 耳障りな電子音が再び鳴り響いたからだ。

 

「計器に新たな反応有り! 現実否定度……え」

 

「何だ、さっさと言え! 小走りする山より恐ろしい物か!」

 

 運転手は口篭り、ゆっくりと、信じたくない現実を告げた。

 

「現実否定度、60。クラス……Bです」

 

「何イイイイイイイイイッ!?」

 

 現実において有り得てはならない歩く岩山でされランクD……だがそれも噂や都市伝説になる程度には現実味のある規格である。ならばクラスB……人に話せば気狂いと確実に見なされる規格の物は一体どんなものなのか。

 山に注意を払いながら辺りを見回す。しかし異常らしい異常は見つからなかった。

 

「他の部隊に散開するように伝えろ! バラバラに逃げて一人でも生き残ることを考えろ!」

 

 自分が囮になることも視野に入れ、ロケットランチャーを再び構え直した。少しでも時間を稼ぐためスコープを覗き込み、山の膝に正確に狙いをつける。舗装されていない荒れた荒野をカタログスペックを少し超えそうな速度で駆けるトラックの荷台から正確に狙うことを可能としたその技術はひとえにT-187の努力の賜物だった。

 

(これで少しでも崩れてくれれば御の字だが……)

 

 息を整え、精神に静けさを取り戻す。さながら森の大木のように微動だにせず、ただ当てる事のみを考える。

 

「小さな打ち上げ花火だが、お前にくれてやるよ!」

 

 引き金に指をかける。じわりと湧き出る汗が緊張を物語っている。ポタリ、と光る滴が銃把を伝って垂れる。

 

 その時だった。

 何かが音を裂き飛翔する音が聞こえた。

 

「クソッタレが! こちとら山だけで手一杯なんだぞ!」

 

 まだ十分は経っていないから味方ではないだろう。間違いなくもう一体の奇想展骸(オブジェクト)だ。音の発生源を探すも曇り空から聞こえてくるそれを探すことは困難を極めた。

 

 そして、それは来た。

 曇り空を突き破り、轟音を立ててそれが歩く岩山に激突した。

 

「Eはまだなのか!? 歩く岩山とあの隕石のコラボレーションなんて見たくないぞぉ!」

 

 そうは言いながらも対応する為には確認しなければならない。首から掛けた双眼鏡を掴み隕石の墜落地点に焦点を合わせる。

 

 それは一言で言えば鉄の棺桶だった。一切塗装が行われた形跡が見られないただ鉄を箱型に組み立てただけに見えるそれは、棺桶にあるべき窓が無く中に何が入っているのか視認できない。

 瞬間、棺桶の壁がベニヤ板のように内側から蹴り破られた。鉄板に空いた穴から飛び出たそれは雪のように白い華奢な足だった。

 

「アレは、人型かよ……あークソッ、参ったな」

 

 前に基地で読んだ報告書によると、人型の奇想展骸(オブジェクト)は皆特出した能力を持っているらしい。つまり、あの少女のような華奢な足が鉄板を蹴り穿ったように、自分達も一撃で血肉の花火になる可能性があるという事だ。もはや、生存は絶望的だろう。

 足が中へと引っ込み、これまた白い華奢な指が穴の側面を掴む。鉄板が鈍い悲鳴を上げるような音と共に紙切れを破るような気軽さで引き裂かれた。

 

「せめて山野郎をぶっ壊してからにしてくれよ? 人型ならギリギリ戦いになるからよ」

 

「隊長! 狙撃銃はまだ使用していないので弾薬に余裕があります! 撃ち抜きますか!?」

 

 トラックのコンテナの上から若い男の声が聞こえた。逃走中にコンテナ上部に取り付けてある速射砲を山に向かって打ち続けていたT-222……キャットだ。

 

「デカしたキャット! だが女っぽい方はまだ撃つなよ、潰し合いになるかもしれないからな!」

 

「キャット呼びはいい加減に辞めてくださいよ隊長!」

 

「ミャーミャー鳴いてねぇで撃て! 辞めて欲しかったら鉛玉であの山採掘して貴金属取って質屋で売って金にして俺達に焼肉奢れ!」

 

「アレ鉱山には見えないんですけど!?」

 

 ミャオミャオ煩いキャットを放置して観察を続行する。ようやく出てこられる大きさまで穴を広げられたのか、少し屈んで出てきたそれの姿を視認することが出来た。

 

 それはやはり、少女だった。歳は十六歳程か、雪のように白い髪は引きずりそうなほどに長く伸びている。少し幼く可愛らしい顔立ちだが、人形のように無表情で両頬にはバーコードが刻まれている。体型がそのまま出てしまうようなピッチリした金属光沢を放つ白銀の鎧のようなものはどのような手法で作られているのか継ぎ目や関節の隙間も、鎧に有るべき厚い装甲までもがまるで見当たらない。胸の中心部には昔T-237に見せられたトクサツに出てきた赤と銀の配色が特徴的な巨大ヒーローのものによく似た青いコアのようなものが淡く輝いている。関節の隙間がないということは動かせる余分な空間がないということ。それなのに先程まであの格好で蹴りや屈むといった行動が出来ているということからアレは金属に見える何かなのだろうか。それが何かまでは現時点では考察しようが無い。鎧のようなと例えたが、どちらかと言えば金属質のタイツのように肌に張り付くようなものと言った方がいいだろう。ここまでなら妙な格好の墜落事故怪力少女ですむのだがもちろんそんな訳がある筈も無い。

 

 ゆらり、とそれが自己主張するように少女の背後で揺れた。

 

 それは圧倒的な質量を持っていそうな尻尾だった。少女の服装と同じ素材でできているのか金属光沢を放つ白銀の尻尾は少女が身に纏うそれとは違い一振りで大木がへし折られそうな重厚感を放っている。長さも少女はもとより、身長が高い方である自分よりも大きい。目算だが三メートル程だろうか。太さも華奢なものではなくしっかりとした木のように逞しい太さで少女が後ろに倒れないことが不思議な程だ。先端は穴から出てきた時は丸くなっていたが、出てきた後は先端が石を放り込んだ水面のように波打ち蠍や蜂のような鋭い針が伸びてきた。

 

「あー、ありゃ戦闘が得意そうなタイプの嬢ちゃんだな。キャット録画頼んだぞ」

 

「わかりました、あと俺はキャットじゃなくてT-222……」

 

「運転手! もう後ろは気にしなくていいから真っ直ぐ飛ばせ! 山と女の子の喧嘩に巻き込まれるぞ!」

 

 何で無視するんですかー!と鳴く金髪ニャンコを無視して双眼鏡のピントのズレを修正するT-187なのだった。

 

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