今日も愛バが可愛い
トレーニングをするマンハッタンカフェを見ながらいつものようにそんなことを考えている
まあ専属トレーナーにどのウマ娘が1番可愛いか聞いたら全員が担当している愛バの名前を即答するに決まっているので当たり前だが
そんな僕はマンハッタンカフェのトレーナーなのだが、最近1つ悩みができた
というのも・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(あの黒いウマ娘?めっちゃこっちみてる・・・・・・・・・)
「おともだち」が見えるようになったことだ
◆
「おともだち」
マンハッタンカフェのことを知る人ならば、彼女が見えているその現象について知らない人はいないだろう
カフェのみが見える存在、簡単に言ってしまうと心霊的ななにか
カフェ以外が知覚することは出来ないが、向こう側はこちらを知覚して時に物理的干渉もしてくる
まあ物理的干渉と言ってもポルスターガイストのようなものだが
前にアグネスタキオンが「おともだち」について究明するためにとカフェに実験をしようとした時には彼女の研究資料が突如発火して大騒ぎになったものだ
話が逸れた
ともかくカフェのそばにいて彼女を見守る不思議な存在であり、元々僕も存在自体はカフェから容姿について聞いていても見ることはできなかったのだが・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
(見えてるなぁ・・・・・・)
なんか見える
なんならあっちもめっちゃこっちみてる気がする
というかあんな見た目だったのか
カフェから聞いた話を元にした想像とほぼ同じでよくカフェに似ているウマ娘であった
というかついでに言うと「おともだち」以外のカフェが見えている霊的なものも見えている
「おともだち」の顔は見えないが・・・・・・
「トレーナーさん、トレーニング終わりましたよ」
「お、そうか。すまん、ちょっとぼーっとしてた」
「ふふっ、私が目の前に来てもしばらく気づきませんでしたもんね」
愛バがトレーニングを終えていたのにそれに気づかず待たせてしまっていた
こんなのではトレーナー失格である
「ごめんな、カフェ」
「いえ、トレーナーさんは少し根を詰めすぎですから。たまにはゆっくり休んでくださってもいいんですよ?」
そうは言ってもトレーナーというのは毎日のように山のような仕事があるのでまともな休みの日などほとんど存在しない
というか、休みの日でも持ち帰った仕事をしたり、気がつけばカフェのことを考えていたりするので結局休みをとっても普段と変わらない一日を過ごすことになるのだ
「カフェと一緒にいられる時間が1番楽しいから大丈夫だよ」
「そう言ってくださるのは嬉しいですけどやはり毎日働いているのを見ると心配になるというか・・・・・・」
「うーん、休みを取っても気がつけばカフェのこととかトレーニングのことを考えてるし・・・・・・」
「・・・・・・そうだ、次のお休みは一緒にお出かけしませんか?」
「お出かけ?」
「はい、少し買い物したいですしこの前行ってみたい喫茶店を見つけたので」
「そうか、わかった。次の休みの日一緒に行こうか」
「ふふふっ、楽しみにしてますね」
愛バとのお出かけが決まりテンションが爆上がりである
◆
トレーニング中、カフェに一旦休憩を指示して自分の手帳をめくる
予定を確認すると今週末はなんの予定も入っていない
来週末はレースなのでちょうどいい息抜きになるだろうか
そう考えつつカレンダーの今週末にカフェとお出かけ、と書く
服どうしようかなと思ったが良く考えれば最近家に帰っていないなぁとも思う
ずっとトレーナー室で寝泊まりしている現状だ
お風呂はトレセン学園に簡易シャワー室があるしスーツは同じスーツ3着を着ている分、クリーニングに出している分、クローゼットにかけている分でローテーションで回しているため本気で家に帰る理由がなくなってしまっている
仕事も山ほどあるためどうせ帰っても持ち帰った仕事をするだけなので帰っても帰らなくても同じなのだ
さすがに戸締りとか不用心か?と考えつつカフェの方を見ると知らない女性に声をかけられている
揉めているわけでは無さそうだが・・・・・・とりあえずカフェのそばに向かう
「私とトレーナー契約を結んでくれませんか?」
「・・・・・・ですから、トレーナーを変えるつもりはありません」
「しかし君のトレーナーは・・・・・・」
・・・・・・引き抜きだろうか?まあ最終決定権はウマ娘にあるため禁止こそされていないがとても褒められた行為では無い
なんなら悪い評価が着いたり給料の減額なども有り得ることなのだが・・・・・・
「すいません、引き抜きは遠慮して頂いてもいいですか・・・・・・?」
「あ、トレーナーさんが来ましたし今日はこの辺で・・・・・・」
「ちょっと待ってください!」
話を終わらせようと歩き出したカフェを追いかけてくる女性トレーナー
目の前に現在のトレーナーがいるのにちょっとしつこすぎないか・・・・・・?
「すいません、今からトレーニングも再開ですのでここでお引取りを・・・・・・」
「マンハッタンカフェさん!この話は絶対にあなたのためになりますから!」
「聞けよ」
まさかのガン無視である
そんなことある?と軽くショックを受ける
いくらなんでも話くらいきいてくれよ・・・・・・と思っているとカフェが女性を睨みつける
「いい加減にしてください、私は今のトレーナーから変えるつもりはありません。今後もずっと私のトレーナーさんは彼です」
・・・・・・そうはっきり言われると照れる
そう言われて黙ってしまったトレーナーを横目にカフェの方へと向かう
機嫌が悪そうなカフェをなだめつつトレーニングを再開した
◆
「やあ、おかえりカフェ。早速だが今日はこの薬を飲んでくれ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
旧理科準備室に入るなり言われたのはそんな言葉だった
目の前には真剣な目をしたアグネスタキオンがいる
彼女が凄まじい薬学の知識を有していること、紛れもない天才であることは僕も承知しているが毎日カフェに薬を飲ませるのはなんなのだろうか
しかも少し前に毎日薬を飲んで欲しいと泣きながら訴えられてカフェも思わずOKしてしまった日から一日たりとも薬を飲まなかった日はない
というかあの日はタキオンのトレーナーさんも必ずカフェのためになるからと頭を下げていてあなたいつも止める側でしょうが、とびっくりした
まあタキオンのトレーナーさんはカフェとタキオンが旧理科準備室を共有しているということもありトレーナーのいろはを教えて貰った先輩でもあるのでその先輩に頭を下げられているのだから、と僕からもお願いしてカフェには薬を飲んでもらっているが・・・・・・
「これ、今日もちゃんと光らない薬なんですよね」
「もちろんだとも、どこも光らないように細心の注意を払って作っているよ」
・・・・・・それができるなら今あなたの横で光っているゲーミングトレーナーさんにも光らない薬を飲ませてやってください
「はぁ・・・・・・わかりました、飲みますよ」
そう言ってカフェはごくごくとフラスコの中身をあけていく
「ふぅ、美味しくない・・・・・・・・・」
「どうだ?カフェ、変わったところとか視界の変化とかは・・・・・・」
「・・・・・・別に変わったところはありませんよ、では私はトレーニングに戻るので。行きましょうトレーナーさん」
そう言ってカフェは荷物も取ってトレーニング場へと向かう
僕も向かわないといけないのだが・・・・・・
「タキオンさん、毎日カフェに薬を飲ませてますけどあれ何の薬なんですか?カフェも文句を言わず飲んではいますけどそろそろ効果とか教えて貰っても・・・・・・」
「くっ・・・・・・今日もダメだったか・・・・・・やはり精神安定の方向ではダメなのか?心理的問題も大きいとは言えども気持ちが落ち着けばどうにかなるかと思っていたが・・・・・・」
「タキオン・・・・・・そう落ち込まないでくれ、彼女のためにもどうしたらいいか一緒にまた考えよう」
「モルモット君・・・・・・!」
「いや聞けよ」
何だこの2人イチャイチャしやがって
僕がまだ部屋にいるというのに2人だけの世界に入ってるし僕の言葉も聞こえてないようだし
僕もまたため息をつきながらカフェの後を追うのだった
◆
週末、カフェとのお出かけの日だ
トレーナー室にやってきた私服のカフェと一緒にまずは買い物へ向かう
今日も「おともだち」はカフェのそばに着いてきていた
「今日も『おともだち』が着いてきてるんだな」
「え?あぁ、トレーナーさんも最近『見える』と言ってましたね」
「思ってたよりカフェとそっくりでびっくりしたよ」
「えぇ、まぁ・・・・・・今日も着いてきてますね」
「どうしたんだ?なんだか嫌そうだが」
「最近ちょっと『おともだち』と喧嘩中でして・・・・・・」
霊的な存在と喧嘩ってできるんだ
「どうやら私のしていることが少し気に入らないらしく・・・・・・」
「そっか・・・・・・まあ早めに仲直りしなよ」
「はい、ありがとうございます。トレーナーさん」
カフェはそう言ってこちらに笑いかけると、僕の手を引いて歩き出した
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・「おともだち」からこっちにも視線が飛んできている気がする
見えているということは僕もいつか「おともだち」と意思疎通ができる日が来るのだろうか?
その後、なんだかそこはかとなく悲しそうな雰囲気を感じる「おともだち」と共にカフェと買い物を楽しんだ
◆
買い物も終わり、カフェと喫茶店にやってきた
どうでもいい話だがこういうお店を「カフェ」と呼ぶとマンハッタンカフェのカフェと混じってよく分からないことになるので僕はいつも喫茶店と呼ぶことにしている
カフェが連れてきてくれたのは落ち着いたオシャレな雰囲気のお店だった
ゆったりとした空気感、微かにクラシックが流れているのが聞こえる
「いいお店だな」
「えぇ、見つけた時から来てみたかったんです」
そう言いつつメニューを見ていると店員さんがやってくる
「ご注文はいかが致しましょう」
「エクスプレッソでお願いします」
「かしこまりました」
「僕も同じので」
店員さんが去っていき、カフェの方を見ると嬉しそうに微笑んでいた
「ここに来るの、そんなに楽しみにしてたんだな」
「ふふっ、それも楽しみにしてましたがそれ以上にあなたとのお出かけを楽しみにしてたんですよ?」
「僕と?」
「ええ、こんな素敵なお店にはあなたと一緒に来たかったので」
「こっちもそう言ってくれると嬉しいよ、今日は楽しかった?」
「ええ、とても。」
「それなら良かった」
エクスプレッソをひとつお持ちしました、と店員さんがカフェの前にコーヒーを置く
そのコーヒーを飲みながらカフェは心の底から楽しそうに笑っている
やっぱりカフェがこの世でいちばんかわいいなぁ、と思いながらその顔を眺める
いいリフレッシュになったのだろう
体調も万全、来週のレースが今から楽しみだ
◆
「悪いが、君の出走は認められない」
だからこそ、生徒会室に呼び出されそう告げられた時、僕は頭が真っ白になった
「・・・・・・何故ですか、理由をお願いします」
「レースに出走できるのは心身ともに健康なウマ娘のみだ、瑕疵を負っているウマ娘はそのウマ娘自身の怪我だけでなく同じレースに出走した他のウマ娘まで事故に巻き込んでしまう危険性がある」
「仰ることはよく分かります、だとしても納得が行きません。私はどこも故障していませんし健康そのも・・・」
「心身ともに、と言ったはずだが?」
「・・・・・・・・・?」
カフェの隣で僕も首を傾げる
「・・・・・・君の今の精神状態ははっきりと言って異常だ、少なくともその状態を脱却しない限りレースの出走はいつまでも認めることは出来ない」
「精神状態・・・・・・?何が異常だと言いたいのですか。別に困っていることや悩んでいることなどもありませんし、トレーナーさんとの関係も良好・・・・・・」
「そこだと言っているんだ!」
シンボリルドルフが大声を出す
その顔は怒っているようにも、悲しんでいるようにも見える
「辛いのは分かる、受け入れ難いのもわかる。だが、君はそれを乗り越えなければならない。皆が君が立ち直るのを、君がまた走るのを待ち望んでいるんだ。どうか、どうか目を覚ましてくれ・・・・・・・・・」
「・・・・・・仰る意味が分かりません。申し訳ありませんがここで失礼させていただきます。行きましょう、トレーナーさん」
「マンハッタンカフェ・・・・・・!」
そう言ってカフェは生徒会室から出ていく
僕も慌てて後を追った
「・・・・・・いいのか?カフェ。あのままだとレースに出れないと思うんだが」
「と言っても何を直せばいいのやら。私とトレーナーさんの間に何か問題があるといいたげでしたが・・・・・・」
「うーん・・・・・・僕の指導や存在が悪いならトレーナー契約解消も視野に入れないとな、カフェなら引く手あまただろうし」
「そんなこと言わないでください。私のトレーナーはあなたしかいないのですから、あなた以外のトレーナーから指導を受けるつもりなんかありませんよ」
「そう言ってくれるのは嬉しいがレースに出れないのは・・・・・・」
「そこは仕方ありません。会長さんに納得していただけるよう2人で考えましょう」
「・・・・・・・・・あぁ、そうだな。一緒に」
「えぇ、いつまでも一緒に」
◆
「・・・・・・会長」
「エアグルーヴ、聞いてたのか。ふふっ、私に全てのウマ娘を幸せにするなど言う資格はないのだろうな。私は1人のウマ娘すら救うことが出来ないのだから・・・・・・」
「そんな・・・・・・!そんなことはありません会長!私も共に彼女を救う方法を考えます!だからそんなことを仰らないでください!」
「・・・・・・・・・」
◆
マンハッタンカフェは1人廊下を歩いている
虚ろな目をして、隣に笑いかけながら
隣には誰もいない
いや、彼女には見えているのだろう
若い男性の「おともだち」の姿が