塵遁だってさいきょーなはずなんだ‼   作:エミリアーノ

1 / 2
塵遁は無敵なんだ!
塵遁は、作中すべての防御を貫ける(であろう)、さいっきょーの攻撃なんだ!
生前の無さまなら、三代目雷影だって、マダラだって消し去れるはずなんだ!



なお、この物語の塵遁使いは強化を受けている模様。



塵遁使いと木遁使い

山あいに広がる荒野。

普段なら大人数が集まるわけでもないこの場所は、多くの忍が殺し合い、怒声や絶叫、咽び泣く声であふれかえり、地獄の様相を呈していた。

阿鼻叫喚の真っただ中にいるのは二つの勢力。不倶戴天の敵同士としてしのぎを削りあってきた「うちは」一族と「千手」一族である。

乱戦状態となり鮮血で染め上げられている戦場に飛来する影が一つ。ちょうど中心へと降り立ったのは、全身に包帯を巻いて目元だけを露出させた奇異な衣装の男性。

その男はふらっと立ち上がり、両の掌を体の前で合わせる。周辺で相争っていた忍達も突然の異物の来訪に警戒し、相手を切り伏せた者たちは中心にいる男の方を向き出方を伺う。

ふぅっと長く息を吐くと、合わせていた手を広げる。

すると半透明の、眩い光を放つ円錐が形成された。

その忍術が尋常ならざるものと察知したのだろう。男の正面にいた忍が術を発動させまいとして起爆札が紐づけられた短刀を投げる。射程の長い攻撃だとしても、起爆札が相殺し、その衝撃で下手人は負傷するだろう。

輝きを放つ円錐が、引き絞られた矢が放たれるように伸長し、苦無と接触。起爆札が——消えた。

男の正面にいた忍たちは一直線に伸びてきた円柱にぶつかり、接触した箇所から消失した。男はそれだけでは終わらず、その長く伸びた光る円柱を棒のように振るい、そのまま回転した。

あるものは死角から放たれたこの術に気づかずに上半身が消え、あるものは逃げようとして間に合わず、腹から下が吹き飛ばされた。

戦場に残されたのは誰もが、体のどこか、あるいはほとんどが消滅した者たちであった。彼らは苦悶の声をあげて中心の男から少しでも離れようと、這い逃れようとする。

しかし男は深手を負った者たちにとどめを刺そうとはせず、空の向こうの一点を見つめたまま動かなかった。

 

 

 

「よもや一人で戦場の忍たちを消し飛ばすとは。なかなかに厄介な奴が出てきたものよ」

のたうち、逃げ惑うものたちを尻目に、黒髪を長く伸ばした長身の男が正面へ舞い降りる。

その惨状を作り出した男はすっと目を細め――

「これは、これは。千手の当主、柱間様自らお出ましとは。別の戦場にいたものだと思っていたのですが。向こうの方は大丈夫なのでしょうか?」

「おぬしに心配される謂れはない……。そんなことよりも、おぬしはいずこの奴ぞ。斯様に強力な術、見聞きしたことがない」

柱間は正面の男の一挙手一投足を逃すまいとじっと見つめる。

「“虚繭(うろまゆ)”一族の当主、“虚”。以後お見知りおきを。これは塵遁・原界剥離の術。触れたものを何でも消し炭にする術にございます」

柱間はハッと乾いた笑いをあげる。

「炭も残っておらんようだが?」

「そういう時もあります」

「して、おぬしはなぜ突然ここへ来た?千手うちは両族を一気に相手どれなどと命令を下した国は?」

虚は知れたことを、とのたまう。

「それを聞いてどうするのです。あなた様も仕える国を変えるではありませんか。うちはを雇った所に対抗しようとした国が、あなた方を召し抱える。その国がたとえ、かつてうちはを雇っていた国だったとしても。移り気が早いのはお互い様です」

「それも戦国の常……どんなかたちであれ我らが敵対するは必定というわけか」

虚は然り、と肯定する。

「えぇ、自明の理にございます。今更何事かと言葉を尽くすわけでもなく理解できることでございましょう。それで、柱間様は今から何をされるのでしょうか?私めと勝負されるのですか?」

「いや、マダラ以外でこのような強敵に出会ったのは初めてでな。すこしおぬしのことが知りたいと思っての。そうじゃ、おぬしはうちはマダラとあったことがあったか?」

虚は会話を続けようとする柱間を訝しがり、辺りを見やる。すると、周辺の忍は比較的怪我の少ない者たちができる限り多くの重症者を抱え、かなり遠くまで避難しているのがみえた。……この会話は時間稼ぎ、というわけだ。

足手まといにしかならなくなった忍達を、しかも敵まで逃がそうとするとは。侠気に富んだ人柄がうかがい知れる。

そう感じながらも、やはり目の前にいる人物は己に敵対する存在。ふぅっと息を吐いて、虚は気を奮い立たせる。

印を組んだ後おもむろに上昇を始める、つまり浮遊しだした虚をみて驚愕に目を見開いた柱間であったが、すぐに切り替えて虚をキッと睨む。

「おぬしがやる気なら仕方あるまい。どれ、手合わせしてやろう」

パンっと手を組んだ柱間は、彼に許された唯一無二の秘術を発動する。

「木遁・樹海降誕」

地面を割り、巨木がうねりをあげて生え、みるみるうちに木々が根のように張り巡らされていく。数本の幹が虚をめがけて伸びていく。

鞭のようにしなる木を躱し、蛇のように巻き付こうとする木を避け、刺突しようと直進してくる木を塵遁で消し去る。木遁を難なくかわしながらも虚はふと思う。己一人を相手どるなら、ここまで広大な、一面に広がる樹海は不必要なはず。樹海のすべてを己めがけて殺到させるのが合理的だろうに……と。

両の手をあわせ、開き、今日で一番大きい塵遁を柱間にむけて放つ。柱間はすぐにかわしたが光柱が通った場所は木遁で生まれた木々すら消え失せ、地面も深くえぐれた。そのとき虚は樹海の下でさらに分岐した木々により、負傷者たちが周縁へと運ばれていく様を目にした。

虚はやりづらいとでも言いたげな目で、非難がましく柱間を見る。

「他人にかまけて私を殺せるとでもお思いで?」

「ふん。別におぬしをここで殺し切ろうとは考えておらぬわ。しかし、皆がやられた以上、仕返しがないというわけではないぞ?木遁・木龍の術」

樹海から龍が這い上がってくる。すぐさまその胴体を塵遁で狙い撃ちし分断するが、すぐさま木々が伸びて接合し、何事もなかったかのように龍は虚へと突進する。

「これはまた……面倒な」

幾ばくかの突進を凌ぎ、龍から距離をとった虚は何らかの印を結び、体の前に巨大な円を出現させる。

「塵遁・朽縄の術」

円から蛇が這い出る。蛇は龍と衝突すると、その頭部を消し飛ばし、胴体に巻き付いて龍の体を消滅させながら柱間へと向かう。

「ううむ。よけることは難しくないにしても、これは虚とやらに決定打を与えるのがむずかしいのう」

猛追してくる蛇を躱しながら柱間はなおも円を展開している虚を視界の端にとらえ、さっと手を組む。

「木遁・木人の術」

すると虚の後ろから木の巨人が現れ、振り上げたこぶしを落とす。

虚は術を解き素早くよけた後、木人を覆うほど巨大な立方体の塵遁を展開し、木人の膝から上を消し飛ばした。

「ふむぅ……どうやら千日手じゃのう、虚とやら。この度は引き分けとなさんか」

「……意外ですね。足手纏いもいなくなった今、本気を出してくれるものと期待していたのですが」

「……そこまでいうなら仕方あるまい。マダラに使う前によもやおぬしに使うことになるとは思わんかったが」

柱間が合掌し、目を瞑る。

瞬間、纏う空気が一変し虚も思わず体が強張る。

眼や額に特徴的な隈が浮かび上がり、ただならぬ気配を発っしている柱間は目を開き、虚を視界にとらえたまま、術の名を重々しく呼号する。

「仙法、木遁・真数千手」

 

 

 

その背には無数の手を備え、その体は山々を遥かに凌駕し、その圧迫感は尾獣すら怯ませる。まさしく神の化身。有無を言わさぬ制裁の鉄拳を備え、己を砂粒にすら感じさせる巨大な質量が大地を割って姿を現した。

対する虚は腕を振り上げ、体の前に何枚、何十枚もの光る円を無数に並置する。

両者の奥義が今、激突する。

「仙法、木遁・頂上化仏」

「塵遁・多連剥離の術」

大仏は千もの巨大な拳を、虚ただ一人にめがけて殺到させる。

虚はその円から、天使の階段の如く神々しく眩い光を次々と放つ。

光柱によって大仏の腕が穿たれ、砕かれるが、なお余りある拳が虚を破壊せんと猛進する。百……二百……三百と虚は大仏の拳を破壊するが、だんだんと光柱と拳が衝突する境が後退してくる。このままでは相手の手が尽きる前に突破されるかもしれない。

焦燥感にかられた虚はさらに円を展開し、歯を食いしばって全力で塵遁を放つ。

「耐えろッッ‼‼」

対する柱間は攻撃の手を一切緩めることなく続けながらも、虚の注意がすべてこちらに振り向けられていることを感じ取る。

「頃合いかの」

 

正面まで迫る拳をなんとか塵遁で凌いでいる虚の直下。

樹海から木龍が突き出て、虚へと突進してきた。

大仏への対処でいっぱいの虚は龍の接近に気づくのが遅れ、丸呑みにされた。

龍がぐるぐると宙を舞い、体を捩じっていると腹の中から塵遁が放たれ、龍は木っ端みじんにされる。

虚の体中にまかれていた包帯は破れ落ち、露出した肌は血に染め上げられている。特に、だらんと力なく垂れている左腕は傷が深いようで、虚は右手で傷口を押さえつけていた。それでも虚はその目に鮮烈な闘志を灯していた。

「……あれほどの術を囮に使うとはな。強い。まさに『正を以て合い、奇を以て勝つ』戦いぶり。油断ならない傑物よ」

柱間は世辞などいらぬとばかりにフンっと鼻で笑う。

「仕留めたとおもったんだがのう。じゃがこれで“痛い目”にはあっただろう」

「あぁ。我も体がもう少し丈夫になるように仙術を修めようと思う」

「……もっと強くなるのはやめてほしいんだが」

「仕方ない。我には現状それに対抗する手段がない」

凌ぐのですら精一杯の――もしかしたらそのまま押し切られていたかもしれない――千の手に加えて、同時に木龍を放てるとあっては、防ぎきれという方が酷であろう。己の負けを認める率直な感想であった。

「浮世は戦国。またどこぞで相まみえるやもしれん。そのときはよしなに」

「あぁ。そのときはまた、“一対一で”戦おうぞ」

術が互いに大規模すぎる故に、両者は必ずサシで事を構えるだろう。再び邂逅する時を幻視しながら、虚はその場から飛び去った。




皆様にとってはボリューム不足かもしれません。ここまでが限界でした。誤字脱字や、私が原作設定を誤解している箇所などが見られましたらお知らせください。感想もお待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。