泥中之蓮   作:ふみどり

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以前投稿したものを書き直しています。




 紫煙が夜の闇に吸い込まれる。白いはずのそれは、この暗闇の中では妙にくすんだ色に見えた。

 兵営の裏になんてわざわざ来るやつはいないだろうと思っての一服であったが、残念なことにそうでもないらしい。わずかに聴こえてきたひとの足音に、ひとつ舌打ちをして火をつけたばかりの煙草を踏み消す。

 

「誰です?」

 

 その足音の主は、一応気配を消していたつもりだったらしい。俺が気づいたことを理解した後は、開き直ったかのように足音を消すのをやめた。開き直るように堂々とした足取りで、暗闇からゆっくりと顔を出す。

 

「……これは失礼いたしました。気晴らしに散策などしていたのですが、まさか柊木少尉殿がいらっしゃるとは思わず」

 

 現れたのは、軍服を着崩した知った顔。話すのは初めてだが、彼の噂は耳が痛くなるほど聞いている。嫌味なほどに冷静沈着で、精密な射撃は他の追随を許さない凄腕の狙撃手。そして、――「高潔」な我が幼馴染殿の腹違いの兄。

 

「……尾形上等兵」

「柊木少尉殿にご存知頂いているとは、光栄です」

 

 まったく、慇懃な笑顔と敬語がよく似合う。すでに「山猫」の噂が知れ渡っていることを理解した上でそんな言葉を吐くのだから、なるほど確かに良い性格をしている。

 しかし俺もまた、その自虐に乗ってやるほど性格はよろしくない。

 

「もちろん、貴方の評判はよく伺っていますよ。精密も精密な射撃は他に並ぶものがいないほどとか。貴方に救われた兵も多いそうですね、素晴らしいことです」

 

 にっこりと笑顔を作ってやれば、ほんの僅か、彼の黒い目が見開かれた気がした。

 構わず、俺はそのまま口を動かす。本心からの言葉だった。

 

「いつか貴方の腕を間近で拝見したいと思っておりました。恥ずかしながら私はいまだに銃が不得手でして、是非学ばせていただきたい」

「……これは、また。よしてください、そう持ち上げられては恐縮してしまいます」

「はは、尾形上等兵は謙虚ですね」

 

 まあ、謙虚とは程遠い性格だと聞いている。

 そんな心のうちは露ほども出さず、照れたふりをしてみせる嘘くさい笑顔の観察を続ける。どうやら彼は息をつくように嘘がつける人間で、腹の内を見せる気はなく、今もこちらの出方を伺っている。

 さて、俺は彼に探られるような因縁はないはずだが、誰かの指示だろうか。それとも彼自身に何か目的があるのか。頭の片隅に浮かぶ顔がないでもないが、まだ俺は「あの人」に目をつけられるようなことはしていないはずだ。

 

「……評判と言うならば、貴方のほうが鳴り響いているでしょうに。知将と名高い柊木中将閣下のご子息であり、その頭脳はお父上譲りで、何でも医学にも精通されているとか。公正公平なお人柄で非常に周囲に慕われていると伺っておりますよ」

「階級が上だからと気を遣わなくて良いのですよ、尾形上等兵。自分の至らなさは自分が一番よく理解しております」

「なるほど、そういうところが公正公平と言われるのでしょうな」

 

 ははははは、と顔を合わせて笑ってみせる。

 まったく不毛な時間だ。雑談しかするつもりがないならお暇させてもらいたい。

 ちらと目線をやると、彼はすぐに意図を理解して声を改めた。

 

「……実を言いますと、少尉殿がたまにこちらで休憩をされているのは以前から存じておりました。見つけたのは偶然ですがね」

「ほう?」

「最近、ある方から貴方のことを伺いました。不躾は百も承知ですが、それで貴方とお話してみたいと思ったのです」

「……花沢少尉ですか」

 

 彼に俺の話をするような知り合いは、あの幼馴染くらいしか思い浮かばない。

 少尉と上等兵という立場を弁えず、彼を「兄様(あにさま)」などと呼んで堂々と関わりに行っているのは聞いていた。一応少しは控えるよう忠告したのだが、あの寂しがりの頑固者は俺の言葉など聞きはしない。

 お察しの通りです、と彼は笑顔を作る。しかし瞳は少しも笑ってはいない。

 

「あの方は、私に謝罪をしてきたのです。そして落ち込んでおられました。貴方に叱られてしまったと」

 

 ――あの馬鹿、どこまでも。

 勇作に悪意などない。そういうものとはまったく縁のない人間で、それゆえに察しが悪い。ひとの機微というものを理解できない。

 悪いことをしたから、謝った。叱られてしまったから、己の至らなさに落ち込んだ。彼にとってはたったそれだけの、当たり前のこと。

 まったく、せめて俺のことは話さないでほしかったものだ。俺は、目の前にあるこのひとと関わるつもりはなかったというのに。

 

「貴方はこう仰ったそうですね。――『何ということを言ったのだ』と」

 

 挑むような目線を投げかける彼に、俺はため息をつきそうになるのを必死に堪えた。

 

  *

 

 俺が花沢勇作と出逢ったのは幼少のころだった。

 父同士が友人とか何とかそういう縁があり、仲良くしなさい、と背を押された先にいたのが勇作だった。俺を見た瞬間にぱあっと嬉しそうに、それはそれは無邪気に笑ったのをよく覚えている。

 年齢が同じであったこともあって、勇作とはそれなりに親しく付き合う仲になった。俺は勇作のようにやさしい人間ではなかったが、別に彼を嫌いとも思わなかった。

 嫌う理由の見つからない男であった、というのが正しい。

 品行方正、清く正しく明るく優しく、何とも絵にかいたように模範的な。勇作という人間はそれを素でやってのける。俺だって相応に評判の良い人間性を演じてはいたが、演じているだけだ。勇作のようにはなれないし、なりたいとも思わなかった。

 

「勇作、まだやるのか」

「晴仁。ああ、もう少しだけ」

 

 訓練を終えて額を流れる汗が気持ち悪い。手ぬぐいで雑にぬぐい、日も傾いてきたというのにまだ走り込もうとする勇作を見る。

 順当にいけば俺も勇作も軍に勤めることになるだろう。勉学に励み、鍛錬に勤しみ、研鑽の日々を重ねた。父の期待に応えようと、勇作は少しの手抜きも許さないとばかりに打ち込んでいた。生来ひねくれものの俺は、少々あきれた目を向けてしまう。

 

「立派な軍人にならねば」

 

 そう言って汗をぬぐう彼に、俺はいっそ同情すらしたかもしれない。

 彼は善きひとであろうとしていた。いや、まごうことなき善きひとであった。しかしその在り方は、俺の目にはどうも異様で、哀れに見えた。清く、白く、清廉な、なのにどこか歪んでいるような気がしてならなかった。

 いつだったか、確かまだ学生であった時分に、我が敬愛する父上が勇作を見て零したことがある。

 

「彼は、泥中之蓮になれるかな」

 

 残念ながら情なしでひとでなしの我が父なので、同情しているというよりは面白がっているような言い方であったが、その言葉は妙に頭に残った。

 泥中之蓮。泥の中でもうつくしい花を咲かせる蓮。汚れた環境下でも、その影響を受けることなくうつくしく清廉であること。端正な顔立ちをしているとはいえ体格のいい男を花に例えるのは何とも違和感があったが、父の言いたいことはわかる。

 今はいい。学生の間、多くに守られている今ならば、清く正しいまま生きていくことはできるだろう。実際、そうやって勇作は生きてきたのだ。しかし。

 血と泥にまみれる軍においても、勇作は「高潔」なままであれるのだろうか。

 

  *

 

 射るような視線はあるのにその瞳には何の感情も見えず、なるほど冷静沈着を求められる狙撃手とはこういう眼をするのか、と頭の片隅で感心した。

 確かに俺は勇作に言った。何ということを言ったのだと。お前は自分が何を言ったのかわかっているのかと。俺は俺の思ったことを言ってしまっただけで、別に尾形上等兵に何かしらの感情があって発した言葉なわけではなかった。長い付き合いのなかでたまりにたまった鬱憤を堪えきれなくなっただけとも言う。

 

「……確かに言いました。おふたりのことに口を出すつもりはなかったのですが、堪えきれず。ご気分を害されたでしょうか、申し訳ありません」

 

 緩く頭を下げてみせると、よしてください、と尾形上等兵は両手でそれを制した。

 

「決して気分を害したというわけではなく、……そうですね、疑問に思っただけなのです。柊木少尉殿、ご無礼を承知で申し上げますが、貴方もまた、高潔な方だと思っていたので」

 

 花沢少尉と同じように。

 そう続けられた言葉に、何と返すべきかと内心で少し悩んだ。

 高潔、この俺が。許されるなら鼻で笑ってやりたかったところだが、彼に腹の内を晒すのは聊か躊躇われる。

 折衷案として、困ったように微笑んでみせた。

 

「恥ずかしながら、私は花沢少尉とは違いますよ」

「ええ、そのようですな。……無礼ついでに、お聞かせ願えませんか」

「何をです?」

 

 山猫の口角が、ぐい、と持ち上がる。

 

「貴方が彼の方の言葉を、どのように受け止められたのかを」

 

 尾形上等兵の腕に銃はない。しかし何故か、その銃口が俺に向いているような気がしてならなかった。

 

   *

 

 兄がいるのだと勇作から聞いたのは、確か日露戦争が始まってしばらくのときだ。

 腹違いの兄の存在を父がにおわせたのだと、それはそれは嬉しそうに言う勇作。わざわざ花沢中将が教えたのならば、それは「関わるな」という意味なのではと思ったが、勇作はそうは捉えなかったらしい。

 

「嗚呼、どんな方なのだろう」

 

 男兄弟に憧れていたという勇作はただ目を輝かせていたが、正直、嫌な予感がした。

 極力関わりたくないと思いつつ詳細を聞いてみれば、浮かれ切った馬鹿は堰を切ったように喋りだす。花沢中将と芸者の子、第七師団に所属する、射撃の名手の上等兵。母上の実家である茨城の育ちで、すでにその母上はお亡くなりだという。

 そこまで聞いただけで、思った。おそらく花沢中将はその「兄」に対し一切の支援をしていない。まあ普通に考えて、本妻との間に男児が生まれれば妾の子に気を配るようなことはしないだろう。花沢中将は「軍神」と名高い方だが、残念ながら慈悲深い方とは思えなかった。

 

「……で、お前はどうする気だ?」

「どうするも何も、弟としてご挨拶をせねば!」

 

 想像通りの答えに頭が痛くなる。

 妾腹の子が本妻の子を弟と認めるだろうか。親しく付き合いたいと思うだろうか。

 基本的に俺は人間をそう善いものとは思っていないので、勇作ほど呑気には考えられなかった。「兄」が聖人君子である可能性もなくはないが、少なくとも俺なら憎みこそしなくても「めんどくさい」と考えるだろう。

 とはいえ、ひとの善性を心から信じ、わりと頑固者でもある勇作が、俺の言葉を素直に受け入れるとも思えない。長い付き合いでそれはよくわかっていた。

 ならば俺は、兄君が聖人君子であるという低い低い可能性に期待をするしかない。

 

「……お前は少尉で相手は上等兵だ。規律だけは考えろよ、花沢少尉」

「ああ、ご忠告痛み入るとも柊木少尉!」

 

 返事だけは良いが、響いている様子は微塵もなかった。このとき俺は顔も知らぬ上等兵に、何となく申し訳なく思ったことを覚えている。

 そして、後になって思う。このときに俺がもっとちゃんと言って聞かせていれば、もう少し違う結末になったのではないか、と。

 

 

「……どう受け止めたか、とは難しいことを仰いますね」

 

 兄様、兄様と尾形上等兵を追いかける勇作。その噂は瞬く間に広がり、尾形上等兵の出生は公然の秘密として扱われた。

 遠巻きにふたりが話しているのを見たことがあったが、どう見ても尾形上等兵は作った笑顔で、上等兵として節度を守っていた。聞けば規律が乱れるから兄様と呼ぶな、と勇作を諫めたりもしていたらしい。上官相手に無下にも出来ず、かといって親しく兄弟として付き合うつもりもない、ときちんと示していた。

 気の毒には思いつつも俺にはどうすることも出来ないので、この高地での戦闘を終えて物理的な距離が出来るまで堪えてもらおう、と思っていた。実際、クソ真面目な勇作はもちろん、非常に優秀な兵であった尾形上等兵もまた、戦闘となれば忠実に任務を果たしている。ならばもうそれでいいだろうと少々投げやりになっていたのだ。

 だから、このまま上っ面だけの関係を保ち、平和に離れてくれればいい。そう思っていたのに、あの勇作ときたら、本当に、何というか、筆舌に尽くしがたいほどに、とにかく世間知らずの馬鹿だった。馬鹿になるように育てられていたのだと、ようやく俺は思い知ったのだ。

 

『人を殺して罪悪感を微塵も感じない人間が、この世にいていいはずがないのです』

 

 勇作自身からそう尾形上等兵に言ったと聞いたときには、久方ぶりに頭に血が上るのを感じた。もはや、何から言ったらいいのかわからないほどの、苛烈な感情だった。

 

『なんてことを言ったんだ』

『よりにもよって、お前が、言うのか』

『手を汚さないお前が、手を汚すひとにそれを言うのか』

『自分が何を言ったのかわかっているのか』

『どうしてわからないんだ』

 

 多分、そういうことを俺は口走ったと思う。俺が滅多に口調を荒げることがないからだろう、勇作がひどく驚いた顔をしていたのは覚えている。

 勇作の言葉を、どう受け止めたか。何と言葉にして良いものか難しいところではある。尾形上等兵は、と言葉を選びながら俺は口を開いた。

 

「勇作を『高潔』だと仰いましたね」

「はい」

「事実だと思います。そうあれと育てられてきたのですから」

 

 高潔――立派で、清らかで、穢れていないこと。そんな人間を育てるにはどうしたらよいか。簡単だ、あいつの見ている世界から汚いものを取り除いてしまえばいい。

 

「勇作が見ている世界には、そういうものしか存在しないんです。誰もが善い心をもっていて、人道に沿って生きるべきだと思っている。そうでないものは、勇作の世界には存在しない。あってはいけない。あるはずがない。世間知らずにも程がありますが、幼少から教え込まれている『常識』は、そう簡単に抜けてはくれない」

「花沢中将の教育の賜物でしょうな」

「ええ、だから『存在しないもの』を踏みにじっても気付かない」

 

 勇作の真意はわかる。ひとを殺すことに罪悪感などないとでも言った尾形上等兵に、そんなことがあるはずはないと言いたかったのだろう。貴方にもひとの心があり、罪悪感はあるはずだと。今はわからなくともいずれわかるはずだと。それは、ひどく「正しい」、勇作らしい言葉とも言える。

 しかしこれがまた、少なくとも俺にはあらゆる意味で最悪の言葉に思えた。

 

「……とにかく馬鹿野郎と思ったのですが、どこから言葉にすれば良いやら」

「おや、人当たりのいい仮面が外れてますよ柊木少尉殿」

 

 アンタもだろうと内心で思いつつ、ひとつひとつ、言葉にしてみることにした。自分の中でもやもやと渦巻いていたものが、明確な形を得て降り積もっていく。

 

「……まず、言い方が悪い」

 

 ともすればその言葉は、ひとを殺すことに罪悪感をもたぬひと、己をそうだと思っているひとを全否定しているように聞こえる。勇作の真意がどうであれ、聞いた側がどう受け取るか、それを考えて言葉を選ぶべきだった。そしておそらく、尾形上等兵のようにひねくれていそうなひとはそう受け取る、気がする。

 

「それから、この状況で言うべき言葉ではない」

 

 露西亜との戦闘の真っ只中、しかも激戦地。毎日、ひとが死んでいる。毎日、ひとが殺されている。日本人も、露西亜人も、どちらも。殺さなくては生き残れない、そんな狂った日常で、ひとを殺すことに罪悪感など。持っていたところで、迷うだけだ。戦場では、迷ったものから死んでいく。

 

「くわえて貴方は上等兵の狙撃手で、勇作は尉官の旗手だ。……剣すらも抜かない」

 

 当然ながら、立場が下である者ほど最前線に出るし、ひとを殺す。上の者は、手を汚すことよりも指示を出して「殺させる」ことを考えなければならない。

 その精密な狙撃で、多くのひとを屠ってきた尾形上等兵。想像するに、殺した数などもう数えられはすまい。誰より殺して、誰よりその手を汚した。それは、たとえ彼自身がどう思おうと、多くの仲間を救ってきた証でもある。罪悪感の有無の問題ではない。彼は確かに、ひとを殺してひとを助けた。

 対して、勇作は。旗手として、ある種の偶像として、ひとを殺さないことを責めるつもりはない。むしろ死亡率の高い旗手という立場で武器を抜かないなど、死にに行っているようなものだ。なのに、勇作はそれを受け入れている。その無謀とも言える勇気には確かに価値があり、実際に勇作の旗に背を押された者も多いことだろう。

 ただ、――理解はすべきだと思うのだ。

 勇作が手を汚さなかった代わりに、誰かが手を汚したということを。

 その「高潔」は、周囲を鼓舞すると同時に、周囲の犠牲と尽力によって成り立っているということを。尉官である俺たちは、彼らに「殺せ」と命じる立場であることを。

 俺たち自身が、彼らに「人殺し」という罪悪を背負わせているのだということを。

 

「それらすべてを理解したうえでそれでも剣を抜かないならばまだしも、……あまり考えていないように見えたので」

 

 他に人道を説く前に、お前はまず己の立場を真に理解しろと。その重みを、背負わされているものを、その意味を、考え、咀嚼し、呑み込んでから言葉を吐け、と。

 多分俺は、そういうことを勇作に言った気がする。今まで面倒すぎて本人に言ったことはなかったが、さすがに堪忍袋の緒は切れた。あたたかいものに囲まれ、やさしい心と高潔な思想と精神を与えられて生きてきた勇作には、きっと酷な言葉だったろうと思う。しかしあいつはいい加減、出来のいい脳味噌を自分の意志で動かすべきなのだ。

 ――どうやら、その忠告も遅かったようだけれど。

 

「……お答えになっているでしょうか」

「……ええ。不躾なことをお伺いしました。お詫びいたします」

「いえ」

 

 俺の言葉で、何かの答えは得られたのだろうか。

 相変わらず真意の読みきれない微笑みで、尾形上等兵は頭を下げた。そのとき伏せられた目元に、ああ確かに花沢中将によく似ているなどと場違いなことを思う。

 

「……尾形上等兵」

「はい」

「私もひとつ、お伺いしてよろしいでしょうか」

 

 口から零れた言葉に、自分自身で驚いた。

 聞くつもりはなかった。何故ならそれは根拠もなく、危ない橋を渡ることになる。

 まだまだ経験も浅く、権力も中途半端な俺が、「あの人」の庇護のもとにある彼に尋ねるのはあまりに危うい。しかも「あの人」の命令である可能性すらある。

 しかし俺の口は止まらなかった。何でしょうと返す尾形上等兵に、言葉を続ける。

 

「先ほど、勇作に会ってきました」

 

 青白い肌。冷たい肢体。額から流れる血はいくらか拭われて、身綺麗にその姿を整えられていた。

 額に空くその穴は――ひどく、寒々しい。

 

「ご存知頂いているようですが、私は医学を少々かじっております。だから、これは確証を持って言える」

 

 勇作を屠った銃弾は、間違いなく後頭部から頭蓋骨を撃ち抜いていた。

 

「ふと、思ってしまったのです。……私は勇作が斃れたとき離れた場所で指揮を執っていましたし、何の根拠もありませんが、まさか、」

 

 尾形上等兵、と正面から彼の顔を見つめた。

 

「勇作を殺したのは、貴方ですか」

 

 

 彼の表情は微塵も揺れなかった。憤るでもなく、否定するでもなく、まったく俺の視線から逃げようとはしなかった。それが何よりの答えだった。

 先に視線を外したのは、俺のほうだった。

 

「……ひどい乱戦のなかでした。後頭部から撃ち抜かれていたからと言って、味方が撃ったのだと考えるのはあまりにも早計です。まして、その弾丸を放ったのが誰かなど、完全に私の妄想で何の根拠もない。大変失礼なことを申しました。忘れてください」

「柊木少尉殿」

 

 話を流して逃げようとしたが、本性を隠すことをやめた彼がそれを許さない。

 

「もし、そうだと申し上げたら」

 

 その口調は、完全に俺を小馬鹿にするそれだった。

 

「私が勇作殿を撃ったのだと申し上げたら、どうされるのですか?」

 

 これは完全に俺を煽りに来ている。このままその胸倉をひっつかみ、拳のひとつもくれてやればご期待に沿えるのだろうか。しかし残念なことに、俺は他人の期待は全力で裏切りたくなる性分なのだ。意地でも期待には沿えまい。

 そもそも俺には、彼に対する怒りや憎しみといった感情はなかった。――むしろ。

 

「もしそうであるなら、……私は貴方に、感謝すらしなければならないかもしれません」

 

 今度こそ、完全に尾形上等兵は目を見開いた。

 俺すら自分で何を言っているのだろうと思う。だが、まごうことなき本心であった。決して、他で言うことは出来ない。

 

「勇作とは、幼い時分からの付き合いで、良い友人でした。ですからもちろん、彼を喪った哀しみはあります。しかし、……同時に安堵もあるのです。勇作は……あいつは、今のこの国を生きるのに向いていない」

 

 言葉にして、自分でもようやく腑に落ちた。長くあいつに抱いていた違和感、憐憫にも似た感情。

 気が合わないなりに花沢勇作という人間をそれなりに好ましく思っていた。だからこそ同時に、心配もあった。あのやさしさが、清廉さが、いつか彼を傷つけるのではないかと。国や軍や、多くのひとの思惑に塗れたとき、きっと悩み、苦しみ、絶望さえするかもしれないと。

 こうして今、半分とはいえ血のつながった兄とわかりあえず苦悩していたように。

 

「……勇作は、きっと泥中之蓮にはなれなかった」

 

 おそらく父上も、そう思ったのだろう。

 清らかな水しか知らない蓮が、どうして泥濘を這い出て花を開けるだろうか。泥の重みさえ知らぬ茎が、どうして折れずにいられるだろうか。

 これから軍で、戦場で、きっと勇作は長く苦しんだだろう。惑っただろう。見たくもないものを見、聞きたくないものを聞き、多くの決断を強いられただろう。それを考えれば、早いうちに終わりを迎えられたのは、いっそ――幸運だったのではと。

 我ながら、何と薄情な友人だろうか。

 

「泥中之蓮、ですか」

 

 静かに繰り返された言葉に、はっと意識を目の前の彼に戻す。俺としたことが、あまりにも迂闊なことばかり喋りすぎた。

 

「……妙な例えでしたかね。とにかく私には、仮に貴方が勇作の死に関わっていたとしても、貴方を恨んだり憎んだりするような感情はありません。第一、いつ誰が死んでもおかしくない状況です。友人が命を落としたからと、いちいち憎んでなどいられない。実を言いますと私、これでも結構薄情でして」

「……いえ、戦時下ですから。無理もないかと」

 

 少しだけ彼の声が落ち着いた。先ほどのように小馬鹿にするような様子は見えず、かといって最初のころのような過ぎた丁寧さも見えない。むしろこちらが驚くほどに、穏やかな声色であったように思えた。

 

「随分と長話をしてしまいました。最後にもうひとつだけ、よろしいでしょうか。柊木少尉殿」

「何です?」

「貴方は、ひとを殺すことに罪悪感を覚えますか」

 

 彼の声も、彼の表情も、完全に凪いでいた。少しの波も感じられない。

 

「……さて。考えたことありませんね、毎日毎日生き残るのに必死すぎまして。いつも気が付いたら戦闘が終わっていて、いつのまにか返り血塗れになっていると言いますか、もはや何人手に掛けたかも覚えておらず。明日、戦場で覚えていたら考えてみます」

 

 少しも偽りのない本心を言葉に乗せると、ふ、と尾形上等兵はその口元に笑みを浮かべる。小さいが、おそらくは偽りのない笑みであった。

 

「いえ、戦場ではどうぞ余計なことをお考えなさいませんよう。これで明日、貴方が亡くなったという報でも流れたら、今回ばかりは私も罪悪感を覚えてしまいそうですから」

「それはまた、心にもないことを仰る」

 

 く、とお互いに喉の奥で笑う。

 俺の笑みには少しばかり苦みが混ざったが、それには気付かなかったふりをした。

 

「ではそろそろ、戻りましょうか」

「ええ、そうですね」

 

 どうか、今晩のことはご内密に。

 そう声が揃ったことがおかしくて、また少しだけ肩が揺れる。

 

 

 その晩以降は尾形上等兵と顔を合わせることもなく、日露戦争は終結を迎えた。

 あらゆる点で釈然としない終わり方をしたことは否めない。上層の無能の責任を、前線に出ていた者たちに押し付けられた形になった。しかしまあ、こういうのは世の常というもので、だいたい釈然とする戦争の終わらせ方なんてそもそもあるのだろうかと思ったりもする。

 ただ、見逃せないことはひとつあった。花沢中将の死である。

 

「父上、よろしいでしょうか」

「晴仁か」

 

 戦争後は実家に戻り、中央で勤めつつ父母とともに暮らしていた。

 目の前に座る父は花沢中将と長く友人関係であったと聞いているが、さすがは我が父というか、友の死を哀しむ素振りは見せなかった。相変わらずのひとでなし、俺の性格の悪さの八割方は父からの遺伝だと思っている。

 何やら書を読んでいたらしい父は、俺の方に向き直った。

 

「どうした」

「単刀直入にお伺いしますが、花沢中将の死は本当に自死だと思われますか」

 

 回りくどい言い方をしても通じるわけがないことは知っている。権謀術数を巡らせて軍上層へのし上がってきた父だ。素質の上では負けているつもりはないが、培ってきた経験の差は埋めようがない。

 

「自死でなければどうだと言うんだ? 晴仁」

 

 突然の問いに怯む様子もなく、父上は面白そうに問い返す。

 

「殺害された可能性もあるのでは、と」

「証拠は?」

「ありません。勘です」

「話にならんな」

 

 その通りだ。証拠など何もない。俺はその現場を見てすらいない。もしかしたら本当に、紛れもない割腹であったのかもしれない。

 ただ俺が感じたのは、「何か」が動いているという予感だ。それを放っておいていいのか、何の対策も講じることなく気のせいだと見逃していいのか。どうも俺には、そうは思えなかった。

 

「つまり、……父上が動かれるつもりはないと」

 

 同じものを、父も感じているという確信はあった。俺よりもっと早くに感じていたのではないかとすら思う。しかし父が策を巡らせている様子はない。

 

「ないな。どう転んでも面白そうだろう」

「クソ親父」

「ンン〜〜? 何か言ったかな息子~~?」

「おいたわしや父上、とうとう耳が馬鹿になりましたか」

 

 知っている。父は、本当に、まごうことなく、面白いからという理由だけで策をめぐらすとんでもないひとでなしである。無闇に残忍なことを好むひとではないが、必要さえあれば誰にでも容易く死ねと言えるひとであった。俺も大概性格のよろしくない自覚はあるが、この父よりはましな部類だと胸を張って言える。

 やはり、父は動かない。まあ、そうだろう。そうだと思っていた。だから、手は打ってきた。

 

「ところで父上、驚きましたよ」

「何がだ?」

「軍の資金を着服していたそうで」

「……ほう?」

 

 その瞳に浮かぶものが、変わった。

 

「誰がだ?」

「貴方がです」

「証拠は?」

 

 知らず、口元に笑みが浮かぶ。

 

()()()()

 

 父上の口角も、上がった。

 

「まもなく軍からひとが寄越されるでしょう。しかしご安心を、父上の今までの功績は華々しいものがあります。話を公にはせず、御病気のために軍を退いたということになるのではないかと。ああそういえば、母上が湯治にいきたいと仰っていたので、少し離れた所に別荘を用意しておきました。どうぞそちらで静かにお過ごし頂ければ」

「晴仁」

「はい」

 

 弱味は知られることを防ぐ以上に作ってはならないもの。俺にそう教えたのはこの父である。そして、弱味がない相手であるのならば、弱味を作ってやればいいのだと教えたのもこの父であった。

 高潔たれと育てられたのが勇作なら、狡猾たれと育てられたのが俺だ。だから俺は、我が敬愛する父上を蹴落とすことにいささかの罪悪感もない。

 父は、この上なく満足そうに頷いた。

 

「立派になったな」

 

 そう、ここで褒め言葉が出るような父なのである。俺もにっこりと微笑んでみせた。貴方が教えてくれたものを、俺は俺がのし上がるために使おう。

 

「父上の教えの賜物です」

 

 ありがとうございましたと、俺は深く頭を下げた。

 

 

 俺が中央で存在感をもち、この若さでのし上がっていくためには、相応のものが必要であった。第一に、わかりやすい功績。第二に、上層からの後ろ盾である。

 その両方を解決するのに、もっともてっとりばやい手段が父を蹴落とすことであった。中将たる父の不正を暴いてみせたというのはそれだけで大きな功績であるし、それはもう四方八方から恨みを買い、しかもその能力を妬まれていた父を軍から追い出したわけなので、父を蛇蝎のごとく嫌っていたひとたちも俺には笑顔を見せた。いったいどれだけ恨まれていたのかと、改めて父には感謝するばかりである。

 とりあえず足場は固まったと言えるだろう。今まではさほど出世に興味はなかったが、事情が変わった。これから何が起きるのか確証はない。だが、何が起きても対応できるように準備は進めておかなくてはならない。

 つくづく面倒なことになってしまったとため息をついたとき、視線を感じた。

 

「……これは、お久しぶりですね、尾形上等兵」

「ご無沙汰しております、柊木少尉殿」

 

 お帰りですか、と声を掛けてくれた彼は、以前と変わらぬ不健康な顔色をしていた。しかし、その表情にはどこか晴れやかさすら見える気がする。……いや、これもまた、俺の穿った目がそう見せているだけで、ただの気のせいなのかもしれない。

 

「中央で順調に出世していらっしゃるとか。さすがは少尉殿ですね」

「恐れ入ります。ところでそれは皮肉ですか?」

「まさか」

 

 嘘臭くにっこりと微笑んでみせる彼。嗚呼、相変わらずいい性格をしていやがる。

 

「父と言えど、道を違えたからには筋を通さねばなりませんからね」

「ご立派です。……いえ、本当に皮肉ではなく」

 

 親殺しは、巣立ちのための通過儀礼と言うでしょう?

 そう言ってみせた彼に、く、と口角を上げて俺も切り返した。

 

「では、貴方も立派に巣立ちを果たされたのですね」

 

 彼は、笑みを浮かべたまま答えない。

 例によって証拠などなく、ただの勘である。勘を頼りに動くなとよく父には叱られたものだが、なかなかどうして、俺の勘というのは不気味なほどに当たるのである。

 

「……冗談ですよ?」

「ははははは、これは少尉殿もお人が悪い」

 

 とりあえず、笑って流しておく。仮に彼が花沢中将を手に掛けたのだとして、別に親殺しがどうのと道徳を並べ立てるつもりはなかった。そんなご大層な倫理を説けるような時代でもなく、背後にはまず間違いなく彼の庇護者がいるはずである。そうでなければ完全にその死を誤魔化すことなど出来なかっただろう。

 

「……北海道での任務にあたると伺いました」

「ええ、数日後には発つことになるでしょう」

「寒さが厳しい土地だと聞いています。どうかお気をつけて」

 

 恐れ入ります、と彼は頭を下げた。ゆっくりと顔を上げ、改めて俺の顔を見る。いくらか声を落として、続けた。

 

「柊木少尉殿」

「何でしょう」

「出世欲とは縁のない方のように思っておりましたが、このところのご躍進には何か心境の変化でも?」

「……そうですね」

 

 出世なんぞ、すればするだけ面倒ごとに巻き込まれ、恨み妬みに囲まれて生きることになる。父のようにそれを面白がれるほど趣味が悪いわけでもなく、適当な地位で目立たずにいたいと俺は常々思っていた。今もそれは変わらない。

 

「私は結構勘が良い方なんですが」

「はあ」

「これから、とんでもない面倒ごとが起こるような予感がしているのです」

「……!」

 

 そう、しかもこのひとの上官が何かことを起こそうとしている気がしてならない。あの二〇三高地で「あのひと」と周囲を見て覚えた違和感と、不安感。北海道という中央の目が届きにくい土地で、何をどうするつもりなのかはわからない。だが、どうも俺はそれに賛同できない気がしているのだ。

 

「勘ですが、まあ、そんな予感がしてしまった以上は、少しくらい対策というか、準備はしておこうかと思いまして。準備と言っても、多少自由に動けるようになっておこうというくらいですが」

「……なるほど」

「しかし、そんなに権力に興味がないように見えますか、私は」

「面倒ごとに巻き込まれるくらいなら田舎に引っ込みたいと本心で仰る方のように見えますな」

 

 おや、見抜かれている。誤魔化すように笑い、両手を開いてみせた。

 確かに俺は権力にも金にもこの国の行く末にも興味がない。怠けられるようなら全身全霊をもって怠けてしまいたい。

 しかし残念なことに、怠けたいという気持ち以上に優先したいことくらいはある。

 

「……嫌いなんですよね」

「はい?」

「自分になすすべもないまま、誰かの思惑によって流されてしまうのが」

 

 それくらいならば、全力をもって対抗する手段を整えよう。つまるところ、ただの負けず嫌いである。そう言うと、尾形上等兵は面白そうに笑った。

 

「……つく相手を間違えたかね」

「何です?」

「いえ、何でも。ところで柊木少尉殿、貴方がかつて『泥中之蓮』と仰ったことを覚えておられますか」

「? ええ」

 

 泥中之蓮、泥の中でも清廉に咲き誇るうつくしい蓮の花。勇作に求めるには酷すぎると、かつて俺はこのひとに零した。

 

「俺の目には、貴方こそ『泥中之蓮』に見えますよ」

 

 は、と、予想外すぎて言葉に詰まる。泥の中はさておき、清らかの代名詞とでもいうような花は、どう贔屓目に見ても俺に相応しいように思えない。

 その気持ちが顔に出ていたのだろう、尾形上等兵はまた喉の奥で笑い、軍帽のつばを軽く下げて目元を隠した。

 

「いえ、戯言です。お忘れください」

「はあ……」

 

 何となくこのひとらしくないような言葉に、けげんな顔をしてしまうのは止められない。俺が清廉に見えるのだとしたら、よほど今「清廉でない」ひとたちに囲まれて苦労をしているのだろう。気の毒な話だ。

 しかし、と、ふと思って言葉を続けてみる。

 

「……褒めていただいたのかもしれませんが、私は泥中之蓮にはなりたくありませんね」

「ほう、何故です?」

「泥の中から首だけ出して花を咲かせているわけでしょう? あんなにわかりやすい標的も他にありませんよ。銃一発で仕留められてお陀仏では」

 

 そう言うと、今度こそ尾形上等兵は景気よく噴き出した。軍帽で顔を隠したまま肩を震わせている。いやこのひとこんな風に笑うことあるのか。

 小さな声で途切れ途切れに、失礼しました、と漏らすのが聞こえた。

 

「……そんなにおかしなことを言いましたか?」

「いえ、私ごときの言葉を真面目に捉えて解釈してくださる柊木少尉殿の懐の深さにいたく感激いたしまして」

「ちょっとその言葉、私の目を見ながら言っていただけます?」

「どうかご容赦を」

 

 ぐぐぐぐぐ、と腕をずらそうと試みるが顔を隠す軍帽は外れない。このひと、これでも一応俺の方が階級上ってことをわかっているのだろうか。

 何度か深呼吸をしてようやく落ち着いたらしい尾形上等兵は、ようやく軍帽を頭に戻す。再び目が合った。

 

「……精々、お気を付けください。泥の上の蓮は確かに目立ちます。そこそこ銃を扱うものならまず外すことはないでしょう」

「……まさか貴方にご忠告頂けるとは」

「ええ、ただの気まぐれです。残念ながら俺も、その時は逃がしてやれませんのでね」

 

 たとえ泥中之蓮のように、目立つ存在ではなかったとしても。

 尾形上等兵の言葉には、そんな自信がみなぎっていた。そしてそれは決してはったりではないことを知っている。

 このひとに銃口を向けられたが最後、生き残るのは相当に難しい。

 そんな危ないことはしたくないんだがね、という気持ちがため息となって漏れる。

 

「……本来、俺は泥の中で蓮根でもやってるくらいがちょうど良いんですがね」

「煮ても焼いても食えない方がよく仰る」

 

 おっと案外、このひとも上手いことを言う。

 ひとつ呼吸をおき、俺は声を改めた。

 

「ご忠告、しかと受け取りました」

「では、これで。お帰りのところ引き止めまして」

「いえ」

 

 それだけ言ってあっさりと尾形上等兵は踵を返す。その背を見送りながら、思う。

 おそらく彼は、かの上官に心酔しているわけではない。あのひとたらしはもはや才能だが、それでも根っからの捻くれ者には通じまい。しかし、従う必要がなくなるその時までは、彼は忠実な部下であり続けるのだろう。

 

「……あと十年早く生まれていれば、俺についてくれたかな」

 

 あの狙撃の腕と頭の回転は惜しいんだよな、と小さくボヤきつつ、俺もまた彼に背を向けて歩き始める。

 できれば味方に欲しかったと思う程度には、彼のことは嫌いではなかった。

 

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