Spirit of Shadow   作:狂愛花

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 お待たせいたしました!

 亀更新による不定期での投稿ですが、第4話の投稿です。

 誤字脱字・間違った表現、またはアドバイスなど発見、思いつかれましたらご遠慮なくコメントください!

 それではどうぞ!!


第4話

 

 

Side 白狼

 

「ハァ、歯応えねぇなぁ……」

 

 脱落者のシャボンが続々と昇っていく様を眺めながら俺は退屈気にそう呟いた。

 

 殆どが俺に挑んできた連中で、逆に返り討ちにしてやったんだが、どいつもこいつも全然歯応えが無かった。

 

 まぁ、それも仕方ない事だ。

 

 自分で言うのも何だが、俺は鳳と同じく去年の特待生だった。しかも、初めて選影に参加してから去年までの四年間で二回の特待生に選ばれた経験がある。

 

 鳳には負けるが、自分はそれなりの実力者だと自負している。

 

「まぁ、大体サヴァイブなんてこんなもんだよな。だとしても歯応え無さすぎだろう。やっぱり骨のある奴は一握りしかいないか」

 

 言い方は悪いかもしれないが、選影に参加している生徒の大半は弱い連中ばかりだ。

 

 勿論、弱いと言っても世間一般から見れば、平均的な力量は持ち合わせていると思う。

 

 だけど、その程度では物足りない。

 

 頭一つ以上飛び抜けている程の実力を持っていなければ、特待生には到底手が届かない。

 

 だから俺たち特待生候補と平均的な力量しか持ち合わせていない連中とでは、正しく赤子の手を捻るようなもので、楽しくもない退屈で仕方ない事この上ない。

 

「鳳は良いよな~。千影みたいな相手がいて。今頃また追いかけられてんだろうな~」

 

 高等部で鳳と千影の関係を知らない奴はいない。特に同級且つ友人であり、同じ特待生だった俺は二人のやり取りを間近で見ていた。

 

 サヴァイブが始まって直ぐ、あちこちで戦いの喧騒が響き渡った。そんな中で一際デカい喧騒が轟き渡り、俺はそれが鳳たちだとい直ぐに気づいた。

 

 空を見上げれば見覚えのある姿が飛び回り、それを襲撃しようと飛蝗の様に跳ね上がる姿が、離れた所からでも見えた。

 

 千影に一方的に迫られる鳳。その関係を羨ましいとは正直思わない。しかし、弱い奴等の相手をするよりかは、多少なりとも腕の立つ奴と戦った方が有意義だ。それに何より俺はそっちの方が楽しめる。

 

「そう言えば一人良い感じの奴がいたな」

 

 不図、俺は控室で出会ったあの新入生のことを思い出した。

 

 ヒエラルキー最下層に位置付けられ、周囲から嘲笑され見下されるガンマでありながら、そいつは平均値しか持たないアルファやベータの有象無象の中で異彩を放っていた。

 

 一見すると周りと何ら変わらない感じを纏っているんだが、俺みたいな奴、つまりは特待生候補の奴らにはそれが直ぐに分かる。

 

 おまけにそいつは名前に“影”の文字を持っている。本人は否定してたけど、俺の勘だと間違いなく奴は旧家「御影家」の失踪した息子だろう。

 

 噂じゃ、御影の跡取りはランクが最底辺で勘当されたって言われてる。真偽は定かじゃないが、奴も同じ最底辺のガンマで失踪した息子と共通点がある。

 

 だが、奴から感じた雰囲気はとてもガンマの物とは思えない。少なくとも並みのアルファに匹敵する戦闘能力を秘めていると俺と鳳は読んでいる。

 

「アイツとなら面白い勝負ができそうだけど、サヴァイブで相手するには早すぎすよな~。まぁ、アイツならきっと無事にソリタリアまで勝ち進んでくるだろうから、我慢するか」

 

 一人そう呟いて俺は暇を潰そうと適当にブラブラして回ろうと思った次の瞬間、遠方で轟音が轟いた。

 

「ッ!?」

 

 直ぐに俺は音のした方角に顔を向けた。すると、俺の体を衝撃波が襲った。

 

「クッ! 何だ!?」

 

 激流の川に立っている様な衝撃波を受けながら俺は音のした方に目を向けた。その先には、周りの木々を優に超える砂煙の大雲がモクモクと立ち昇っていた。

 

「さっきの音、爆発とかじゃないな。何か質量のある、巨岩の落石とかそんな感じの音だった」

 

 誰の仕業か俺は考えたが、直ぐに答えは出てこなかった。

 

 特待生候補の連中の中にはパワー系の戦い方をする奴も勿論いる。好戦的で誰彼構わず見境なく襲う奴もいるから、その誰かが一気に他の参加者たちを脱落させたのかもしれない。

 

 でも、そうじゃないと俺の第六感が告げている。第六感だから確証なんてものはない。

 

「あっちに“何か”がいる……。候補連中じゃない別の強者が……ッ!」

 

 好奇心に突き動かされ、俺は雲が立ち昇るその方行へと向かって行った。

 

 そこにいるであろう新たな強者をこの目で見る為に……。

 

 

Side Out

 

 

No Side

 

 

〈GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!〉

 

 金色の獣が咆哮を轟かせる。

 

「行くぞレオンッ!!」

 

 獅吼が駆け出す。それに続き金色の獣レオンも駆け出した。

 

 レオンの巨体が一歩脚を踏み出すだけで地面がズドンッと地響きが起こる。

 

 ズドンッズドンッと地響きを轟かせながら駆けるレオンは、牙と爪を剥き出しにしながら幻進に襲い掛かった。

 

〈GAOッ!!〉

 

「ッ!」

 

 幻進は襲い来る爪の一撃をしゃがんで避け、そのまま前転してレオンの懐に潜り込みそのまま脇から外へと追撃を回避した。

 

 しかし、それを予想していたのか、幻進が回避した先には獅吼が待ち構えていた。

 

「シャァッ!!」

 

 一回転した幻進の頭目掛けて頭上から獅吼は拳を振り下ろした。

 

「クッ!!」

 

 幻進は地を蹴り前へと飛び込む形で獅吼の拳を避けた。

 

 ドゴンッ!!

 

 獅吼の拳が地面に突き刺さる。硬い地面が厚紙程の脆さに思える破壊力だ。

 

「逃がすか!!」

 

 拳を避けた幻進を逃がすまいと獅吼はすぐさま地面から拳を引き抜きレオンと共に追撃を仕掛ける。

 

〈GRAッ!!〉

 

 レオンは幻進を抑えつけようと右の前足を延ばす。

 

「ッ!」

 

 幻進は横に避けて躱すが、レオンは反対の前足を振るって幻進に爪の一撃を放った。

 

「グッ!!」

 

 幻進は咄嗟に双棍棒を交差させて直撃を防ぐが、巨体から放たれた獅吼以上の一撃に幻進の体は容易く吹き飛ばされてしまった。

 

ズザザザザザザッ!!

 

「クッ! ッ!?」

 

 足を地面に突き立て勢いを殺し何とか止まった幻進だったが、レオンの方に視線を戻した瞬間、レオンは既に幻進の目の前まで追って来ていた。

 

〈GAAAッ!!〉

 

 レオンの横薙ぎの大振りが幻進に襲い掛かる。

 

 幻進はそれを双棍棒で受け止めようとする。

 

 ダンッ!!!!

 

「グッ!!」

 

 激しくも鈍い音を響かせ幻進はレオンの一撃を受け止めた。先程とは違い地面に確りと足が付いていた為、踏ん張りが利いて吹き飛ばされることは無かった。

 

 だが、レオンの攻撃はそれで終わらない。

 

〈GRAAAAAッ!!〉

 

 怒涛の連撃。右前足の横薙ぎから左前足の振り下ろし。叩き潰しから斬撃、果ては拳を作って殴打を打ってくる。獣のそれを優に超える俊敏さで縦横無尽に攻撃の応酬が幻進を攻め立てる。

 

「(何て勢いだ!? 反撃の隙が見つけられない!)」

 

 直撃は免れているが、防御に徹し過ぎて防戦一方状態の幻進。反撃の隙を伺うが、レオンの猛攻に隙を見出せないでいた。

 

「隙だらけだよ!!」

 

「ッ!?」

 

 レオンの猛攻を受け続ける幻進の背後から獅吼の一撃が襲い掛かって来た。

 

「シャッ!!」

 

 鞭のように撓う獅吼の鋭い蹴りが、レオンの攻撃を受け止めガラ空きとなった幻進の脇腹に食い込んだ。

 

 メリッ!!

 

「グフッ!!」

 

 口から空気が漏れる。

 

 そしてガードが緩んでしまいレオンの一撃も襲い掛かった。

 

〈GYAOッ!!〉

 

 ダンッ!!

 

「ガッ!!」

 

 右の脇腹に突き刺さる獅吼の蹴り。左の肩辺りに直撃するレオンの横薙ぎ。左右からの衝撃に押され、幻進の体は車輪の如く回転しながら宙を舞った。

 

「せーのっ!!」

 

〈GRAッ!!〉

 

 そして無防備で宙を舞う幻進に獅吼とレオンは容赦なく同時攻撃をお見舞いした。

 

 ドゴッ!!!!

 

 獅吼とレオンの蹴りと爪が交差して、幻進の腹に直撃した。

 

 生々しい音と共に幻進の体はボールのように軽々と投げ飛ばされ、幾度も地面に叩きつけられるように転がった後、一本の木の根本に背を預けるような形で停止した。

 

「……」

 

 幻進は項垂れた姿勢のまま動かなかった。

 

「どうした? どうした!? この程度でダウンかい!?」

 

 獅吼が叫ぶ。

 

 幻進を蹴り飛ばした時、獅吼は確かな手応えを感じた。並みの相手ならばあの蹴りでノックアウトだっただろう。

 

 しかし、幻進は違う。

 

 自分と対等に戦える幻進ならば、まだ戦える筈だ。そう獅吼は思っていた。

 

 だから獅吼は幻進が立ち上がるのを待っていた。

 

「……」

 

 幻進は変わらず項垂れたまま動かない。

 

 当然である。

 

 獅吼のそれは自分を基準とした考え方。それが万人にも共通するとは限らない。

 

 獅吼自身は一般と比べて特別だと言える。努力の賜物とは言え、人並外れたスタミナと天才的な戦闘センスを持ち、その気になれば特待生候補にも数えられるであろう実力者。

 

 それが獅吼である。

 

 そんな獅吼と比べられては、比較される相手が哀れでならない。

 

 故に獅吼の思いは買い被りであると言える。

 

 だがそれは、獅吼が戦っているのが“普通の相手”ならばの話である。

 

「(フッ……。痛ぇなぁ~。何て威力だよ、たく。この感じ、骨に罅いってそうだな。まさか防御も出来ないでモロに食らうなんてな……。予想以上だ。流石は天下の東影学園! 歳の近い奴でここまでできるなんて、全く楽しませてくれる!!)」 

 

 幻進は歓喜に震えていた。

 

 当初、幻進は東影学園に全く期待などしていなかった。恩人である深先の勧めで渋々入学することを決めた。

 

 しかし、控室で出会った澪子と白狼を見て幻進は気が変わった。対面しただけで感じた二人の強さ。それで幻進は思ったよりも楽しめるかもしれないと考えを改めた。更には獅吼との対面でその思いは一層強くなった。

 

 それでも幻進は心の奥底で東影学園という場所、そこに通う生徒たちのことを侮っていた。

 

 だが、獅吼とレオンの先程の一撃を受け、幻進の中の驕りは打ち砕かれた。

 

 つまりは“スイッチ”が入ったのだ。

 

「どうした!? 立てよ!! ッ!?」

 

〈GRRR……ッ!?〉

 

 バッ!!

 

 獅吼とレオンは勢いよくその場から跳び退いた。

 

 次の瞬間、二人が立っていた所から勢いよく槍、いや、硬質化して槍の様に鋭利になった太い糸が突き出して来た。

 

「ハッ!! そう来なくっちゃね!!」

 

 これが幻進からの攻撃だと獅吼は直ぐに理解した。

 

 幻進が動かないでいたのは、単純にダメージを回復させていたのもある。しかし、本命は地に付けた両の掌から密かに地中へと糸を伸ばし攻撃することだった。

 

「ハァッ!!」

 

 獅吼は飛び蹴りを放つ。

 

 しかし、それは幻進に届くことは無かった。

 

 バッ!!

 

 地面から網状の糸が飛び出し、獅吼の蹴りを受け止めた。そしてそのまま網糸は獅吼を包み込んだ。

 

「へぇ~!! こんなのも仕込んでたのかい!? 面白いけど、鬱陶しいね!!」

 

 ザザザン!!!!

 

 飛び出した網糸に子供の様にはしゃぐ獅吼だったが、自分を包み込んだ網糸を容易くバラバラに切り裂いてしまった。

 

「次は何をして来るんだい!?」

 

「じゃ、こういうのは?」

 

 幻進が腕を振るう。

 

 ガガガガッ!!

 

 それに引かれ地面が盛り上がり、地中から一本の束になった太い糸が姿を見せた。

 

 ヒュッ!!

 

「ゴフッ!?」

 

 表れたその糸は、鞭のように振るわれ獅吼の横腹に食い込みながら彼女を宙へと連れ去って行った。

 

〈GRAAAAッ!!〉

 

 主を助けるべくレオンが幻進へ飛び掛かる。

 

「フンッ!!」

 

 しかし、獅吼を連れ去った糸は一本ではなかった。

 

 ガガガガッ!!

 

 幻進は反対の腕を振るいも地中からもう一本の糸を引き抜き、向かった来るレオン目掛けてそれを振るった。

 

〈GAッ!?〉

 

 糸はレオンのがら空きとなった腹部に命中し、主共々宙へと連れ去られて行った。

 

「まだだ!」

 

 幻進は立ち上がり左右の手でそれぞれ握っている糸を両手でギュッと握り直すと、大きな旗を振るうが如くブンブンと糸を振り回した。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉ~!?」

 

〈GRAAAAAAA~!?〉

 

 ただの糸ならば二人に食い込んだ後、二人を投げ飛ばして終わりなのだが、幻進の糸はそうではない。棍棒の一撃に匹敵する威力に加え、蜘蛛の巣の如く触れたモノを絡め捕る。

 

 二人は糸に打ち上げられたまま、その糸の粘着力に絡め捕られ、幻進が振り回す糸と共に慣性の法則に引かれ空中を飛び回っていた。

 

 まるで台風に巻き込まれたようである。

 

「ハハハハハハハハハ!! これ良いな~!!」

 

 常人なら激しい遠心力に苦しむだろうが、常人離れした獅吼にはダメージにすらなっていなかった。絶叫アトラクションを満喫している様に楽し気な叫び声を上げていた。

 

「ならこれはどうだ!!」

 

 幻進が糸を引っ張った。

 

「うおっ!?」

 

 急速な回転の渦から獅吼は無理やり引っ張り出された。

 

「ハァァァァァ!!」

 

 今いる場所を更地にした時と同じように幻進は一本背負いの要領で肩越しに糸を引き、獅吼とレオンの二人を地面に力一杯叩きつけた。

 

 ダァァァァァァァン!!!!

 

 轟音と共に大地が割れ噴火の如く砂煙を巻き上げた。

 

 既にボロボロになっていた大地にまるで幻進の蜘蛛の巣状の糸がそのまま地面に刻まれた様に一層亀裂が奔り、砕けた地面が連なる山の如く隆起し、叩きつけられた獅吼とレオンを地中へと飲み込んだ。

 

 そして再び衝撃波が辺りに拡散して行き、散乱する薙ぎ倒された倒木や砕けて転がっている岩石、隆起した地面によって地中から抉り取られた切り株を吹き飛ばした。

 

「危ないっ!?」

 

 衝撃波によって吹き飛ばされた倒木や岩石は、散弾となって周囲の物を無差別に破壊して行き、幻進と獅吼の戦いを観察していた澪子にも襲い掛かって来た。

 

「まるで砲弾の乱れ撃ちね……。それにしても、何て威力なの……!?」

 

 羽撃き上空に飛び上がって散弾を回避した澪子は、上空から下を見下ろし幻進の一撃が引き起こした被害を目の当たりにして冷や汗を掻いた。

 

 地中で爆発が起きたかのようにポッカリと空いた陥没。そこから湧き上がる砂煙と陥没を中心に広い範囲の木々が薙ぎ倒されていた。

 

 その中には、拡散した衝撃波とそれによって吹き飛ばされた倒木と岩石の散弾に襲われた生徒たちの姿もポツポツと見受けられた。

 

「(たった二撃で相当数の参加生徒が脱落させられた。強いとは思っていたけど、まさかここまでとは思わなかったわ……)」

 

 澪子も幻進同様に侮っていた。

 

 控室での邂逅で澪子は幻進の強さを感じ取った。

 

 それに加えて幻進の最初の一撃、集団で襲い掛かって来た他の生徒たちを絡め捕って地面に叩きつけたあの一撃。澪子はそれを直では見ていないが現場の近くにいた。

 

 聡い澪子は現場の惨状と幻進の姿を見てある程度の事態を推察した。更には獅吼を嗾け幻進の戦闘能力を実際に見て、幻進の実力を見極めようとした。完全には見定められていないが、それでも“これ位か”と澪子の中で幻進の実力を決めつけていた。

 

 しかし、その判断は誤りだった。幻進はまだ全力を出していなかったのだ。その事実を理解した瞬間、澪子の眼つきが変わった。

 

「(千影さんの成長スピードは驚異的。それは他の特待生たちや教師たちも認めてる。無鉄砲だとしても真向から戦えば彼女を確実に倒すことは困難を極める。そんな彼女の一撃、それもゲンガーとのコンビネーションによる強力な一撃を真面に受けて、反撃するだけでも驚きなのに二人纏めて地面に叩きつけるなんて……。彼の実力は去年の特待生たちに匹敵してる!)」

 

 澪子は新たな強敵の登場に危機感と高揚感を抱いた。

 

 努力で勝ち取り去年まで守り抜いてきた特待生の末席を脅かすダークホースに対する危機感。そして新たな競合者によって激しくなるであろう特待生の席取りサバイバルに対する高揚感。

 

「(今年は厳しくなりそうね!)」

 

 東影学園のマドンナ鳳澪子。その実態は、自身に厳しいストイックな向上心を持つ努力家であり、過酷な条件や逆境に立たされる程、燃えるタイプなのだ。

 

 ドゴンッ!!

 

「あぁぁぁぁぁ!!」

 

 瓦礫を押し退けて獅吼が姿を現した。

 

 陥没に呑まれた所為で獅吼は頭の天辺から爪先まで砂埃に塗れ、衣服は叩きつけられた衝撃と瓦礫でボロボロに裂け、その下の肌が顕になっていた。

 

「いや~!! 良いの貰ったわ! やっぱり闘いはこうでないと!!」

 

 見た目とは打って変わって獅吼は何とも楽しげにはしゃいでいた。まるでシャワーを浴びて汗や汚れを洗い流しサッパリとしたようであり、はたまた虫を追いかけ野山を駆け回る子供のようだ。

 

〈GRAAAAA!!〉

 

 主に続きレオンも瓦礫を押し退け姿を現した。こちらも獅吼同様、ボロボロな見た目に反して余裕な感じで身を震わせ土埃を振り払っていた。

 

「(本当に馬鹿げた体力と耐久性ね。これだけの惨状を引き起こした起点になったと言うのにピンピンしてるわ)」

 

 澪子はボロボロな見た目に反して五体満足然としている獅吼の化物じみたタフネスに呆れた。

 

「(それに彼も彼女が起き上がってくるって分かってたみたいに動じていない。やっぱり相当な実力者に違いないわね。さて、次はどんな闘いを見せてくれるのかしら? 御影幻進君?)」

 

 澪子の期待が込められた熱い視線が幻進に注がれる。

 

 しかし、当の幻進はそんな澪子の視線に全く気づいていなかった。

 

「(アレでもピンピンしてるのか。いいね。そうこなくっちゃな! ならお次は——)」

 

「今度はこっちの番だね!! 行くよレオン!!」

 

〈GAOッ!!〉

 

 獅吼がレオンが再び動く。

 

「(今度はどう来る!?)」

 

 幻進は身構え獅吼の行動を待った。

 

 しかし、さっきとは打って変わり獅吼はその場から動かないでいた。レオンも同様で獅吼の隣に静かに佇んでいた。

 

「(動かない? いや、絶対に何かある。用心して距離を取っておくか)」

 

 静かに佇む二人を警戒して幻進は後ろに飛び退いて二人から距離を取った。

 

「(こんな所か。でも、彼女の脚力を考えるとただ離れるだけじゃ心許ない。ならば!)」

 

 幻進は両手を地につけ再び地中に罠を張り巡らせた。

 

「(網糸と縄糸の二段構え。さっきと同じだが、様子見ならこの程度で十分だろう。さぁ、何をしてくるつもりだ?)」

 

 幻進は獅吼の出方を伺う。

 

「すぅぅぅぅぅ……」

 

 獅吼が大きく息を吸い込む。

 

〈Suuuuuu……〉

 

 それに続きレオンも大きく息を吸い込む。

 

 獅吼の上体が仰け反り、肺が胃が空気で広がり豊満な獅吼の胸を更に膨らませていく。レオンも同様で風船のように体が空気で膨らみ大きくなっていく。

 

「(空気を大量に吸い込んだ?)」

 

 傍観している澪子は獅吼の意図が読めず怪訝な表情を浮かべる。

 

 今の獅吼は澪子が過去に戦った時よりも圧倒的な成長を遂げている。幾ら澪子が過去の経験から獅吼の能力や戦法を熟していたとしても、今の獅吼がどの様に動くのかは全くの未知数なのだ。

 

「ッ!? まさか!?」

 

 幻進は何かを察し、地面に仕込んだ糸を離して急いでその場から跳び退いた。

 

「(逃げた!? 何故?)ッ!?」

 

 突然の幻進の行動に澪子は驚き困惑するが、流石は歴戦の猛者だけあって、澪子も幻進同様に“何か”を察知し獅吼たちから慌てて距離を取った。

 

 その直後、幻進と澪子はその“何か”の正体を身を以て知ることとなる。

 

「ウォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

〈GRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!〉

 

 

To be continued




 いかがでしたでしょうか?

 誤字脱字、間違った表現やアドバイスなどがありましたらご指摘いただけたらと思います。

 今後も亀更新での投稿になってしまいますが、次回もまた呼んで頂けたら幸いです!

 それでは、次回も宜しくお願い致します。
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