インフィニット・ストラトス The unsung love 作:チャーハン好き
「バルキリー隊パイロット、一条少尉となにをしていた? 清純派卒業…」
「ええっ!?『相手は軍人。けがれた関係か』だって。」
「ほ~ら、やっぱりあたしのいってたとおりでしょう?」
「ほんとねえ、いまどき清純派なんているわけないのよねえ。」
「う~ん、芸能界なんて乱れてとうぜんよ。こんどの男だって、いったい何人めだか…」
「やあねえ、そんなふうに恋人をのりかえるなんて!」
『いま、疑惑の渦中にあるミンメイちゃんと一条輝って軍人は、出ようと思えば閉鎖区域から出られたわけ』
『ふ~ん』
『なのに、出なかった!』
『ほお』
『ここが疑問点なの』
『なるほど』
『なぜ出なかったか』
この数日間で一番の話題と言えばマクロスのトップアイドル、ミンメイの恋人の事である。そしてイチカ達はと言うと
「少佐、明日のパトロール編成表をお持ちしました」
「あ、ん、ご苦労」
イチカとフォッカーは親子揃ってグローディアと共にバーに来ていた。ついでに行く際に非番になった美沙も一緒に来ていた。そこへ来たのが、パトロール編成表を提出しに来た輝だった。
「ま、一杯飲んでけ」
「い、いいえ…」
フォッカーからの誘いを輝は断る。
何故なら数日前から険悪ムードの美沙が居るのだ。輝は帰ろうとするも
「いいから座れ」
「でも…」
「あ、あたし、帰ります」
「あ?」
「おじゃまでしょうから」
見かねた美沙が帰ろうと席を立つが、フォッカーが止める。
「ほらあ、輝。上官が気ぃつかってんだ。早う座れ」
「輝、親父が誘ってんだ。一杯ぐらい付き合え」
「はぁ…」
輝は仕方なく未沙の隣りに座るが、未沙は身をよけて顔をそむける 。
「なんだなんだ早瀬、そのツラは! ったく、職務を離れたらすこしは女らしくしたらどうだ?」
「簡単に性格は直せません」
「ふっははは!まいったな。[ 酒を飲む ]いいか早瀬、いくら士官学校首席といっても、おまえは女だ。[ グラスに酒をつぐ ]ときには男の言うことが間違っていても、そうですかって認めるのも大事なんだ」
フォッカーはそこでグイッと酒を一気に飲み、グラスをテーブルに置く。
「おい、輝!」
「は、はいっ!」
「男ってのはなあ、ときには強引さが必要なんだ。女の気持ちを考えてグタグタするな。本当に好きならば、力づくでもものにしちまうぐらいの積極性が大事なんだ」
「はあ…」
「ロイ、おしゃべりが過ぎるわよ」
既にバーに入ってから1時間。フォッカーが赤い顔で酔っ払っているのを見かねて、グローディアが止めようとするも
「いいか、これから男と女のすばらしさを教えてやる。よぉく眼をかっぽじって見ていろ」
「親父、まさか…」
「あ…ロイ!」
何かを思い出したのか、イチカが予測するとフォッカーはその予想通りの行動を起こした。なんと、フォッカーがイチカ達3人の前でグローディアにキスしたのだ。
「バ…、ふたりがあきれてるじゃないの」
「かまうもんか」
グローディアの制止も聞かず、フォッカーは再びクローディアにキスしつつ、そのまま座席に押し倒してしまう 。最初こそは抵抗していたグローディアだが、あっさりと陥落しフォッカーと楽しんでいた。
「ロイ! ロイったら!」
「ふふふふ、クローディア。ふふふ…」
「ああん。ロイ!」
「いつもあんな感じなんですか…?」
その光景見ていた輝からの問いにイチカは、何処か遠い視線を向けながら答える。
「グローディアさんの前だとこんな感じだ…」
その返答に輝は呆気に取られ、美沙は何処か切なそうな表情で顔を曇らせていた。
「失礼します。一条さまにお電話が入っております」
「僕に?」
白けた空気の中、店員が輝に声を掛けてきた。
「ご家族の方からです」
「家族!?」
思わず驚いた輝は、近づいてきた電話機の受話器を取る。
「あのう、一条ですが…。えっ!?うそぉ。わ、わかった。すぐ行く。それじゃ」
電話の相手にそう言うなり、輝は席から立ち上がった。
「どうした、輝?」
「ちょ、ちょっと家族の者が急病で。[ 敬礼 ]失礼します!」
輝はそう言いながら、走って去ってゆく。
「あ? 家族だ?」
「どうかしたんですか?」
走り去る輝を見てフォッカーが疑問符を浮かべる。
「アイツの家族はもう死んでいるぞ」
「え?じゃあ、さっきの電話って一体?」
「大方、彼女からの電話だろ」
「彼女って言ってもアイツに…あっ…ミンメイちゃんか…」
訳が分からない美沙の横で、イチカは意外な答えを見つけたのだった。
その後、酔い潰れたフォッカーを助手席に乗せて車で自宅に戻ったイチカ。なんとかフォッカーを彼のベッドに寝かしつけ、イチカは自身の部屋のベッドで天井を眺めていた。
あれから何度、この暗い天井を眺めたのだろうか。
天井を眺めながらイチカはそう思った。
どれだけ楽しい事があっても、暗い天井を見るとどうしてもあの事を思い出してしまう。
俺には優れた姉がいる。
ブリュンヒルデの称号を持つ織斑千冬だ。
逆に俺はいくら努力しても周りから一切認められず、出来損ないやら面汚しとか言われて、近所や学校でも振るわれたりもした。
味方の篠ノ之束こと束姉は何故か、女しか動かせないパワードスーツ『インフィニット・ストラトス(以下IS)』を開発して姿を眩ました為に、安息の日は無くなった。しかし出会いもあった。
鳳鈴音。彼女と一緒に居た日々は、あの篠ノ之箒といた時よりも良かった。いや、良かったと言うよりも充実すらしていた。だが、それも唐突に終わった。
第 2回モンドグロッソ。ここで俺は誘拐された挙句、姉に見捨てられた。そして激怒した誘拐犯一味によって俺は殺されようとしていた。鈴に伝えたい事があった。彼女にまた会いたかった。だが、それもここまでだ。俺は黙って運命を受け入れた。
しかし、いつまで経っても銃声と痛みが来ない。むしろ…
「おい!そこのパイロットスーツの坊主!バルキリーの訓練経験は?戦闘機ぐらい乗れるだろう!」
何故か気づいたら怒鳴られていた。
「(?ここは…基地…いや、戦艦の中?それよりも俺は一体?」
けたたましく鳴り響く警報音に、見慣れない戦闘服を着た兵士達が、それ程広くない通路を騒然と行き来している。その空気は、初めてだが戦場特有の雰囲気を醸し出していた。
「(ここは一体?俺はドイツに居た筈だ…救助されたのか?いや、それならあいつも居る筈だし…それに今来ているパイロットスーツは一体…)」
一夏は自身の身体を確かめる様に動かし、その目で確認する。
「ボーっとしている暇は無いんだ!彼奴らがまた攻めて来ているんだ!パイロットが不足している!時間がない、こっちに来い!」
灰色のパイロットスーツを着込んだ30代位の男が、一夏の腕を掴んで強引に引っ張っていく。
「待ってくれ…ここはどこだ?俺は一体?」
「ちっ、まだ混乱してやがる!しょうがねぇ!新型のVF-0が届いたは良いが、それを狙った反統合軍の連中に狙われている!空母も 2隻喰われたし…って言っても分からないよな!お前、喰われたニミッツかデヴァステーターのパイロットの生き残りか?…取り敢えずだ!敵は待ってくれない。事情説明は後だ、行くぞ!」
「ちょっ!?」
「(反統合軍の襲撃!?ニミッツ?デヴァステーター?)」
一夏は思考が追いつかない。
腕を掴んでいる男の言動には、聞き慣れない言葉が多数含まれていたためだ。
「いいか、格納庫の機体はどれを使っても構わねぇ。一刻もはやー」
男の言葉は最後まで続かなかった。突然目の前が爆発し、一夏諸共男を巻き込んだのだ。
「…う…うぅ…」
一夏が気づいた時、目の前の男は虫の息だった。
「お、おじさん!?」
「グ…!この艦を守るんだ…それぐらいなら…アンタにもできる…筈だ……」
そう言いながら目の前の男の呼吸が止まる。それを見て、一夏は前方の格納庫へと走り出した。
西暦2005年
先の宇宙船落着から勃発した統合戦争は長期化し、統合軍は異星人の技術を参考に可変式人型機動兵器『VF-0 フェニックス』を開発。このVF-0をロイ・フォッカー中尉が受領。その先行量産型を輸送中の空母艦隊が、反統合軍の襲撃を受けたのだ。そんな中一夏は、奇しくもこの防空戦に巻き込まれた部隊の生き残りと勘違いされる。そして…
「くっ…!振動が!」
初めての実戦なので、機体がフラフラと動いてしまう。それを見かねたのか、隣に味方が1機近づいてきた。
「おい、しっかりしろ!そんなフラフラ飛んでいたら死ぬぞ!」
「そんな事を言ったって…あれか!」
一夏の目の前のモニターに、敵の識別信号が表示された。続くように、モニターのFCSが連動して、敵機に照準を固定した。
「照準固定…これでっ!?」
今まさにミサイルを放とうとした一夏は、直前である事に気づいてしまった。
「(俺は何をしようとしていた?…これはゲームなんかじゃない…戦争なんだ…俺は人殺しをしようとしているのか?)」
そう、これは現実の戦争。
その事を、一夏は思い出してしまったのだ。あまりの事に一夏は、手が震えてしまう。
敵が近づく中、中々攻撃を始めようとしない一夏を見かねて、敵機へ攻撃を掛けながら、先程の機体が近づいてきた。
「何ボサっとしているんだ!早く撃たないのか!」
無線機越しに怒鳴り声が、一夏の耳に響く。
「今、撃たないと味方がやられるんだ!だから撃て!」
「…お、俺には…俺には…」
コックピット内に、一夏の震える声が漏れる。そしてーー
「うあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
一夏は、叫びながらアームレイカーの発射ボタンを押そうとした。だが、寸での所で指が止まった。
「(できない…できっこない…あれには人が乗っているんだ…そんなものなんか…」
僅かに残った理性が、指を止める。その中で、一夏は、目から溢れ出そうになっていた涙を堪えながら、叫んだ。
「撃てませぇん!」
その時だった。
隣りを飛んでいた機体が、主翼を使って、一夏の機体をはじきだした。突然の事に、面食らう一夏。その次の瞬間ーー隣にいた味方機が敵の攻撃で弾け飛んだ。
その中、一夏は見てしまった。弾け飛ぶ直前、コックピットが血に染まった光景を。
「(し、死んだ…さっきまで隣にいたのに…あの時のおじさんみたいに…)」
突然の事に亜然とていると、コックピットに警告音が鳴り響く。意識を戻した一夏はスロットルを上げた。だが、間違えてGと書かれたスロットルを上げてしまう。その直後、突如機体が減速し、外から足が、機体下部からガンポットを握った腕が展開された。
「(変形した!?こいつ、ロボットか!?)」
突然の事に驚くも機体は勝手にミサイルを避け、一夏のペダル操作で上空に逃げようとする敵機に機体が向いた。
「そこ!」
ガンポットから出された弾丸が、敵機に吸い込まれる様に着弾する。その数秒後、敵機は火を噴きながら爆散した。
その日織斑一夏が搭乗したVF-0A一般兵用バルキリーは、その一戦で15機撃墜という驚異的な撃墜スコアを記録し、統合軍攻撃空母イラストリアスに無傷で帰ってきた。だがイラストリアスに着艦した直後、一夏は先程までの出来事に脳が追いつかず倒れてしまい、そのまま医療室に運ばれた。