インフィニット・ストラトス The unsung love 作:チャーハン好き
それから数日後、輸送艦隊も無事に本隊と合流した事で少しゆとりができた頃。イチカは自分の部屋に引きこもっていた。
「イチカ」
「フォッカーさん…」
息子になったイチカが心配だったらしく、フォッカーが様子を見にきた。
「親父でいい。家族なんだからよ」
優しげな笑みを浮かべ、フォッカーがイチカの隣に座る。しかし、イチカの表情は暗い。
「何か心配な事でもあるのか」
「…まだ怖いんです…あの時の事が…」
イチカは、自身の胸の内を言った。
一通り聞いた後、フォッカーは口を開く。
「そればっかりはお前自身が解決しないといけない問題だからな。俺がどうこう言える物じゃない」
イチカは再び俯く。
「偶然うまくやれたただけなんです。無我夢中で…俺は、褒められも感謝されるようなこともやってないのに…」
「……確かにな、そこにバルキリーがあったのは偶然だろう。だが、バルキリーに乗ったのは偶然じゃないはずだ」
顔を上げたイチカは、フォッカーと目が合う。
「お前は何故バルキリーに乗った」
「……ただ、死んでほしくなかっかったから……」
そっと、フォッカーがイチカの頭に手を添える。
「それでいいんだ」
「え…」
「確かに人を殺したことに変わりはない、例え相手がテロリストだとしてもな。
だから殺した責務から逃げるな。
奪った命の重さを絶対に忘れるな。
そして、その殺しの罪悪感を絶対に忘れるな。
それを忘れた瞬間、言葉通りの本当の人殺しになる」
統合軍に長く所属し、今のイチカよりも沢山の人間を殺してきたフォッカーのその言葉には、言い様の無い[重み]が感じられた。
「それと……これだ」
フォッカーは、ポケットからドッグタグをイチカに手渡す。
「お前が未来の人間だと言う事はわかっている。だがな…お前は逃げても良かった状況で、自分から他人を守ったんだ。だから…」
イチカはドッグタグを手に持ち、茫然と眺める。
「お前が守った命も、忘れるな」
イチカは両手で握りしめ、涙を流した。
自分は許されないことをした、それでも自分に感謝してくれた人がいる。
イチカは一つの決意をする、バルキリーに乗ろうと。
これからも沢山の人を殺すことになるだろう、守り切れずに涙することもあるだろう。
助けた人達から罵られることだってあるだろう。
それでも、自分が守った[命]は、こんなにも
暖かいのだから。
あの日から、4年。
今だからこそ、胸を張って言える。
迷った時や辛い時、ただ励ますんじゃなくて自分なりの手がかりをくれる人だから
疲れ切って帰って、「ただいま」って言えば、「おかえり」って言ってくれる場所だから
変わり者で厳しいけど…優しい、尊敬できる人だから
俺は、あの人の息子になれたことを…誇りに思っている。
この世界であの人に会えたのは何かの縁かもしれない。
もりかしたらまた、鈴に会える日が来るだろう。
なら自分は、その日まで生き抜くまでだ。
そう前向きな思いを抱いてイチカはいざ、寝ようと布団を被った途端ーー
『プルルルル…プルルルル…』
眠りを妨げる電話の呼び出し音が鳴り響いた。
ええい、誰だ俺の眠りを妨げるのは?
イチカはそう思いながら壁に据え付けられている受話器を取った。
「はい、こちらスカル2のイチカです。…あぁシャミーか、どうした………何ぃ!?」
ブリッジからの電話の内容に、イチカは思わず大声で飛び起きた。
「輝のバカがミンメイちゃんとのデートのために、訓練機を無断で借りて土星の輪に向かったぁ?…分かったすぐに親父を起こしてそっちに向かう!」
そう言うなりイチカはベッドを飛び出して、着替えながらフォッカーの部屋に向かう。
この事件が、後々に響くことも知らずにーー