インフィニット・ストラトス The unsung love 作:チャーハン好き
[ブリタイ艦ブリッジ ]
「メルトラン ガドラ ケルカス!(女共の突撃部隊侵入!)」
「テイ マイクラーン デ ギルツ デ ザンツ!(マイクローン3体、混乱に乗じて逃
亡!)」
「アルマ デカン トガドーラ(全艦非常体制)。メルトラン ウ デ ザンツ タルニ マ
イクラーン ホルト ウ ゲルツ(敵機をせんめつし、マイクローンを捕獲せよ)ナ メルト
ラン ガドラケルカス デ カルチャー…(女共の侵入を許すとは…)」
先程イチカ達が見た機体はメルとランディの機動兵器『クアドラン・ロー』だった。
当然、艦内は侵入を許した事で騒然としていた。だが、その中でもブリタイは冷静に事態を対処している。
「タルニ ブリタイ」
「ン?」
「アルマダーン ギルケスタ マイクローン エルケスト ウケイ トウ ゴルボドル(残っ
た2体のマイクローンだけでも、総司令のもとへ届けねば)」
「ウム」
ブリタイはエキセドルの意見に賛成した。今は一刻も早くフォールドして、残ったマイクローンのミンメイ達を総司令官に届ける方が得策だ。これが 2 人の間の共通目標だった。
その頃、輝、未沙、フォッカーがブリタイ艦の格納庫にある自分達のバルキリーを発見した。
「あったぞ!」
「ええ!」
3人が機体に乗りこもうとする。そこへゼントラーディ兵たちが向かってくる 。
「あっ!」
「はっ!」
「輝! キスをするんだっ!」
VF-1Sに乗り込もうとしていたフォッカーが、輝と美沙を見て、咄嗟に大声を出す。
「え? そうか。[ 未沙に ]失礼します!」
「え!?んっ!?」
輝が戸惑いながらも混乱する美沙にキスをした。その途端、ゼントラーディ兵士達が一斉に驚愕した。
「「「「「[ 口ぐちに ]アア オオ…。ヤック デ カルチャー…」」」」」
だが、キスされた未沙にはたまったものではない。すぐに輝から身体をひき離して、輝をひっぱたいた。
「いてっ! ひでえなぁ」
「さっさと発進しなさい!」
「ちぇっ、いわれなくったって」
輝はコックピットのキャノピーを閉め、機体を起動させる。
「ミンメイを助けなくっちゃ」
輝は亜然として動けないゼントラーディ兵達の前を移動していく。
一条機の発進直後、クアド ラン・ローが1機、格納庫に侵入した。後ろが爆発した事に気づいた輝は咄嗟に機体を壁の裏に隠す。
この行動が結果的に、輝達を救った。
その頃、格納庫では紅くペイントされたクアドランローが、一方的な蹂躙撃を繰り広げていた。
立ち向かってくるゼントラーディ兵やヌージャデルガーを、次々と頭部や胸部を抉って、倒していく。
「すげえ...」
その動きはフォッカーやイチカと同等のレベルだった。やがて蹂躙撃を終えた紅いクアドランローは、格納庫から出て僚機のクアドランロー 2機と合流した。
その直後、僚機の 1 機がゼ
ントラーディの攻撃を受け、格納庫へと落ちてきた。思わずサイドスティックを握る輝の目の前で、機体が開き、中から女性の顔をした巨人が呻きながら這い出て来た。しかし女性の巨人は程なくして事切れたのか、輝と美沙の前で動かなくなった。
「女だ」
「男と女が戦っている?」
「どうなってんだ?」
輝と美沙には理解出来なかった。そこへ輝と同じように奥に隠れていたフォッカー機が現れ、フォッカーから無線が入る。
『輝、いまのうちに脱出だ!』
「了解!」
「[ 上を見あげて驚く ]きゃあ!」
脱出しようとした時、美沙が何かに驚いた声を挙げた。その声に釣られて輝が前を向いた途端、目の前を歩き出し
たフォッカー機の頭が突然潰され、フォッカー機が尻もちをついた。
フォッカー機が倒れ込んだ直後、フォッカー機の頭を潰したヌージャデルガーが、フォッカー機の前に降り立った。
「だああ〜!」
輝はフォッカーを援護するために、物陰から機体を出した。輝が飛び出して来たのを見たヌー ジャデルガーは、咄嗟にライフルを輝に向けるが突如、前のめりに倒れ込む。ヌージャデルガーが気をとられた隙に、なんとフォッカーが目視でヌージャデル・ガーを撃ち抜いたのだ。
だがヌージャデルガーはまだ動こうとしていた。
最後の悪あがきとばかりにフォッカー機にライフルで一撃を加えてから、機体を捨ててゼントラーディが飛び出してきた。
「 ウワアアア!!」
ゼントラーディ兵は雄叫びを挙げながら、フォッカー機にタックルを掛け、続けてコックピット上部に殴り込んだ。
「[ 機器にはさまれて ]おうわっ!?」
コックピットにパンチが入り込んだ事で装甲が歪み、フォッカーは機器に挟まれてしまう。
「先輩!?」
「来るな! イチカと一緒にミンメイちゃんを助けに行くんだ!」
「そんなこと!」
輝は援護しようにも、訓練仕様の VF-1D 型ではどうする事もできない。そうこうしている内にゼントラーディ兵は、コックピットの装甲を掴んで引き剥がす。そして機器に挟まれて血を流しているフォッカーが露わになった。
「やけ...くっそう...!」
フォッカーは、なんとか残った意識でガンポッドをゼントラーディ兵の背中に突き立てる。ゼントラーディ兵が気づいた時はもう遅い。フォッカーはゼントラーディ兵事、自機を撃ち抜いた。一瞬静かになる格納庫。散らばる薬莢と漂う硝煙。やがて撃ち抜かれたゼントラーディ兵が、血を噴き出しながらフォッカー機に倒れ込んだ。
「…なあ...輝よ...イチカとクローディアに...よろしくなぁ...」
家族への言付けを輝に託し、フォッカーがゆっくりと目を閉じる。
その直後、ゼントラーディ兵を巻き込んでフォッカー機が爆散した。
「せんぱ〜い!!」
「いけないわ、少佐の死を無駄にしては!」
「あんたって人は!!」
美沙に言い返そうとした輝は、美沙の顔を見て黙り込む。美沙は目の前でフォッカーが死んだ事に、動揺していた。輝はその事を察したのか、口を閉じた。美沙は悲痛な表情で言葉を紡ぐ。
「ミンメイさんには、発信器をとりつけてあります。反応の 方へ向かってください...」
「了解...」
「ガーマ ズカラ ザルク(エネルギーレベル上昇)」
「ゴルボドルザ アルケス ズカラ ダンツ エスケスタ(ボドル基幹艦隊、座標算定完
了)」
「ウ デルケ フォールド フォルトテーズ(長距離フォールド、スタンバイ)」
ブリタイ艦ブリッジでは、フォールドの最終準備を終え、フォールドしようとしていた。既にメルトランディの部隊も後退を始め、艦内の敵も粗方片付けた。
後少しだ、ブリタイはそう思った。
その頃、やっとの事で機体に辿り着いたイチカは周りの異変に気づいた。周りの景色が変に歪み、振動が始まったのだ。
「フォールドするのか!?」
ゼントラーディの目的に気づき、イチカが機体を起動させた途端、メルトランディの攻撃で外壁が爆発し、YF-3S が船外に吐き出される。
『ぐっ!?親父達は『ミンメイ‼︎』っ!あっちか!」
直ぐに体制を立て直してフォッカー達を捜すイチカの耳に、無線で輝の声が入る。イチカが前方を見ると、イチカと同じく船外に吐き出されたであろう輝の機体が再び、ブリタイ艦目掛けて飛んでいく光景があった。あの中にフォッカーもいる可能性が高い。そう考えたイチカは輝の後を追う様に、ブリタイ艦に再び取り付く。
その直後、イチカと輝達の機体が瞬き閃光と共に、ゼントラーディ艦共々土星の輪から姿を消した。
そして土星の輪の周辺は再び、静寂と星の輝きに包まれた。