エクストラダンガンロンパZ 希望の蔓に絶望の華を   作:江藤えそら

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Hello, my little despair

 

 

「人って簡単に死ぬんだよな」

 

 全てが置き去りにされた世界で、ヌイグルミの高い声だけが響き渡った。

 少し遅れて、誰かのすすり泣く声が聞こえてきた。息ができない。あまりの衝撃に、感情と共に胸から空気が押し出されたまま吸い上げることができない。意識が飛びそうになった頃、唐突に大量の空気が肺に入り込む。堰を切ったように空気の塊が胸を満たし、またすぐ吐き出される。

 

 

「"コロシアイ学園生活"とは……一体なんだい?」

 張り詰めた空気を切り裂くように低い声が投げかけられた。見ると、古代ローマ人のような布切れを羽織った体格の良い男子生徒が生徒達より一歩前に出てそう尋ねていた。彼もどこかで見たことのあるような人物だが、自分の記憶の奥底を探っていられるような余裕は俺にはなかった。

 

「オメーラがこれから過ごすこの学園での生活のことさ。分かりやすく言うなら命懸けのデスゲームってやつ?」

 

「デスゲーム……嘘だろ………?」

 前木君がポツリと呟いた。

 

「ルールは簡単。この中の誰かが誰かを殺す。殺されたら学級裁判を開く。学級裁判ではこの中の誰がクロ……殺人犯なのかを話し合ってもらうぜ。そしてクロが見事他の全員を欺いて指名を逃れたら、晴れてこの学園から卒業できるぜ!!!!」

 

 まるでゲームか漫画のようなデスゲームのルールをヌイグルミは意気揚々と話す。しかしその言葉が冗談や喜劇でないことはすぐそこに立つ焼死体が物語っている。彼女は、先ほどまで生きて動いていた彼女は…落雷のような閃光と共に唐突に焼死体となった。

 

「もちろん外に出た後にクロが罪に問われることはありません! ()()()()()()()()()ね」

 

「そんなバカなことが……。僕たち同士で殺し合えと言うのか」

「その通りだよ、"超高校級の哲学者"夢郷郷夢(ゆめさと きょうむ)君」

 夢郷君と呼ばれた男子生徒に、ニヤニヤと笑いながらヌイグルミは答えた。

「コロシアイに勝つ以外でこの学園から出る方法はアリマセーン!! もちろんコロシアイ学園生活に期限もアリマセーン!! つまり『殺すか籠るか』の二者択一! 一生この学園に籠ってれば将来安泰、インフラ食料は無尽蔵、Wi-Fi無料にドリンクバーまで付いてる!! 殺さないで籠るのもぜ〜んぜんアリだと思うぜ」

 ヌイグルミが口にした言葉は、この学園で強いられることに対してあまりにも小さなリターンの数々だった。

「受け入れられるはずがない…。そんなことが……」

 夢郷君は敵意の籠った目つきで声を漏らす。

 

「だが、逆らえば今の雷が落ちてきて、ああなるってワケだ」

 釜利谷君が目前に立つ焼死体に向けて顎をしゃくった。その死体からは相変わらず焦げた臭いが立ち込めており、その悲劇がつい数分前のものであることを否が応にも思い知らせる。

「デスゲーム主催者がやりそうなコトだよなぁ。最初に一人見せしめで()って、言うことを聞かせると」

「そんな、漫画じゃあるまいし……」

「でもデスゲーム起こそうとするならそういう漫画とかを参考にするだろーよ。事実は小説より奇なりっていう言葉もあるけどな」

 釜利谷君は何故か俺の方を向いてそう言った。この状況で俺に何の同意を求める気だ?

 

 

「なんだよ、もっと絶望すると思ったのに案外平気そうじゃねーか。吹屋さんは殺し損だなぁ…。まあいいや。気を取り直して朝礼始めるぞ~。出席番号1番、入間(いるま)ジョーンズ君」

 ヌイグルミが誰かの名前を呼ぶ。先ほども読んだ名だが、あの時とは言葉が持つ意味も、重みも、まるで違う。いつしか俺の顎からは冷や汗が滴り落ちていた。

 

 

 

「えー、出席番号1番、入間ジョーンズ君」

 

「あっ、はっ、はいっ!!!」

 

 上ずった声でスーツ姿の男子生徒が声を上げた。一ミリも状況が飲み込めないながらも、このヌイグルミの言うことに応えなければ何をされるか、それだけは本能が察していたのだ。

 

「こっち来てくれー。電子生徒手帳渡すから。あと自己紹介も」

 

 ヌイグルミは先ほどと変わらぬ態度で表彰台の上に寝そべりながら手招きする。この場の誰もが息を殺して目前を見つめる中、入間君と呼ばれた生徒は震える足を一歩踏み出す。彼と表彰台の間には先ほどまで生きて動いて喋っていた和服の少女――だったものが立ち尽くしている。それへと近づくことを足が、本能が拒む。しかしそれ以上に、ヌイグルミの命令を拒めば彼女と同じ姿になってしまうかもしれないという恐怖が、その足を一歩、また一歩と進めさせる。

 

 

 

「えー、”超高校級の翻訳者”、入間ジョーンズ君。北欧系のハーフで幼少期から26ヶ国語を操る天才訳者。現在では操る言語の数は50を超え、外国要人との通話経験も多数。著名人からの著書・広告等の翻訳依頼は後を絶たず、本人の長身や美形もあって国内外を問わず大人気のインテリ男子」

 彼の到着を待ちきれなかったのか、ヌイグルミは表彰台の下から一枚の液晶タブレットを取り出してその画面に表示されている内容を読み上げた。

 

「入学おめでとう! このコロシアイ学園生活での更なる活躍を祈ってます!」

 彼が表彰台の前に辿り着く前に、雑にそう言い放ってヌイグルミはタブレットを彼めがけて放り投げる。彼の目の前でタブレットは大きな音を立てて床に落ちた。

 

「大丈夫だよ、ゾウが乗っても壊れないんだから」

 

 入間君は表情を凍り付かせたまま、ゆっくりと顔を下げて足元に落ちたタブレットを見ると、恐る恐る床に膝を付いてそれを拾い上げた。

 

 

「気になったんだけどよー、まだ()()()()()()()()()()()()がいるんだよな。それなのにおっぱじめるって焦り過ぎなんじゃねえか? デスゲーム慣れてないのか?」

「えー、出席番号2番、”超高校級の脳科学者”釜利谷三瓶君。脳研究の第一人者である父、釜利谷尚瓶(かまりや しょうへい)医師の元で英才教育を受け、中学生の時に記憶障害治療の手法について論文を発表。天才的な頭脳を持ちながらも生来のガサツで底の知れない人柄は近親者からも賛否が分かれるという」

 唐突に投げ込まれた釜利谷君の言葉を遮るようにヌイグルミはタブレットの内容を読み上げ、ポイとタブレットを彼めがけて投げ捨てた。

「んだよ、愛想悪ぃな。てかその近親者って誰だ?」

 そんなことをブツブツと呟きながら釜利谷君は足元のタブレットを拾い上げる。

 

 

「出席番号3番。葛西幸彦君」

 

 と、次に呼ばれたのは俺の名前だった。一気に全身に緊張が走る。

 

「は、はい…」

 

 絞り出すような声と共に自らを奮い立たせ、足を前に踏み出す。大丈夫、タブレットを投げ渡されるだけだ。殺されるわけじゃない。俺は震える足を一歩、また一歩と無理矢理前に進ませる。

 

「葛西幸彦君。映画、演劇、舞台、アニメ、ドラマ、プロレスに至るまでありとあらゆるジャンルにおいて脚本や台本の製作を行う若手脚本家。その作風は極限まで徹底されたリアリティ。現実世界と見まごうほどの完成度の高い世界をシナリオ上に創出することからネット上では”世界シミュレーター”とも呼ばれている」

 

 ヌイグルミがぶつぶつと呟く言葉など一切頭に入ってこなかった。前に進む俺の横には、先ほどまで動いていた少女の焼死体が立っている。入間君と呼ばれた彼の気持ちがよく分かった。彼はこんな恐怖の中歩いていたのか。

 

 訳が分からない。希望ヶ峰学園に入学するはずだったのに、全てが夢の中の話のようだ。俺はこれからどうすればいいのだ?

 

 

 

「ほい」

 短い声と共に俺の足元に一枚のタブレットが落ちてきた。俺は焼死体を視界に入れないようにしながら恐る恐るそれを拾う。既に電源が付いているそれには、「希望ヶ峰学園電子生徒手帳」と表示されていた。一瞬遅れてパソコンのデスクトップのような画面に切り替わる。画面上には何個かアイコンが並んでおり、「校則」「校内マップ」「生徒一覧」など各種情報を示しているようだった。

 

「そいつはみんなのコロシアイ生活を大いに盛り上げ、サポートしてくれる機能がたくさん詰め込まれたタブレット型電子生徒手帳だ! 大事に使ってくれよな! まあ大事にしなくても壊しようがねーからいいか!」

 

 ヌイグルミは上機嫌そうに笑いながら次のタブレットを取り出す。俺の相手は終わった。汗がどっと額から溢れた。何もしていないのに凄まじい圧を感じる。それほど数分前の処刑劇は凄惨に過ぎたのだ。

 

 

「えーっと、次は……」

 

 ヌイグルミがそこまで告げた時、突然がらりと勢いよく扉が開く音がした。神経過敏になっていた俺はその音に驚き、躓いてしまう。膝を床に強打し悶絶した。

「わっ! 痛っ……」

 激痛に膝を押さえながら背後を見る。体育館の入り口に立っていたのは、長身で筋肉質な男性だった。Yシャツとネクタイの上に黒く大きいコートを着ており、白い髪に褐色の肌。外国人のようにも見えるが、彼は一体……。

 

 

 

「!! っわっっ!!!!」

 その時、俺の右手に焼死体の足が触れたことに気付き、俺は悲鳴と共に後ずさりした。手に付着した黒い煤を何度も服にこすりつけて落とす。怖い。怖い。燃え尽きた人の一部に触れてしまった。

 

 

 

「……ここはどこだ? お前たちは誰だ?」

 そんな俺の様子と、怯えて体育館の隅で息をひそめる他の生徒達を順番に眺め、男はそう言った。その問いに応えられる者はおらず、代わりに壇上のヌイグルミが答えた。

 

「お~~!! よく来たな、出席番号4番、リュウ君よ!! オメーが来るのをず~~っと待ってたんだよな~! ほれ!」

 ヌイグルミは嬉しそうに両手を振り上げながらそう言うと、取り出したタブレットを目にも止まらない速度で投げた。俺の頭上を通り過ぎたタブレットの風圧が伝わるほどの速度。人間でも出せないような速度を何故こんなヌイグルミが?

 

 リュウと呼ばれた男は高速で飛来するタブレットを難なく掴むと、それを開くよりも前に再び口を開いた。

 

「そこの人形は誰が燃やした?」

 人形? その言葉を受けて俺や他の生徒は辺りを見回しただろう。だがリュウ君が見ている先はヌイグルミ、そしてその間にあるのはさっき燃やされた少女の遺体。燃やされたと形容できる物体はこの空間に彼女しかいない。

 

 

 

「えーっと、いちいち説明するのもめんどいので簡潔に答えるぜ! ここは希望ヶ峰学園で、ここにいる連中についてとここでオメーらがすることはそのタブレットを見ろ! あと、そこの子はこいつらが静かにしないから見せしめに殺した!! 以上ッ」

 

「見せしめ。 …人形で、か」

 彼が彼女の死体を人形と呼ぶ理由が分からないし、この状況に全く混乱していない理由も分からなかった。

 

 

「あーあ。バレちまったな。こうなりたくなかったからこいつが来る前に殺ったんだろ? 結局こいつが来てオジャンになっちまったがな」

 釜利谷君がニヤリと笑いながら言った。

 

「リュウ……だっけ? そいつが人形って……どういうことだよ」

 前木君が恐る恐る口を開く。彼女……名前も知らないままに死んでしまった、恐らくこの場に居合わせたであろう希望ヶ峰の入学生徒。彼女は生きて喋っていた。その所作に違和感はなかったし、人形には思えない。

 

「これは人間の体組織が焼ける臭いではない。どちらかと言えばシリコン系材質……それと機械油が混ざった臭いだ。マネキンとも少し違うようだが……少なくとも人間でないことは間違いない」

 リュウ君はそう言いながらつかつかと焼死体に歩み寄る。死体は全身が焼け焦げていて、見た目では老若男女すら判別できない状態だ。彼は至近距離で遺体を見つめると…。

 

「おい、勝手な真似すん」

 そう言いかけたヌイグルミの言葉も無視して、死体の腕に手をかけて捥をもぎ取ったのだ。

 

「キャッ!!」

 女性たちの悲鳴が響き渡る。彼の行動はあまりにも常軌を逸している。

 しかし、その腕から血が噴き出すことはなかった。腕を捥がれた死体からも。

 

「……なるほどな」

 そう呟いて彼はその断面を俺の方に向けて見せてきた。俺が顔を背ける暇もなくその断面は露わとなる。黒く焦げた表面の中には、銀色のカバーとピストンのような棒状の機構、そして様々な色の配線が……。

 

「へぇ、そうなってんのか。そこまでは分かんなかったぜ」

 釜利谷君が驚いたように声を上げた。話についていけない。これは…機械? 一体彼女はなんだったと言うんだ? 彼女は確かに違和感なく生きて動いていた人間……だったはずだ。

 

 

 

「オイ、勝手な事すんなって言ったよな? これじゃ見せしめの意味ねーだろ!!」

 ヌイグルミは壇上に立ちあがって怒りの言葉を喚き散らした。

 

「ホラ、焼肉とか行くと服に残るだろ? 何とも言えない独特なニオイがさ。タンパク質と脂肪組織が焼けるニオイってすぐ分かるんだよ。()()()()()()()()()()にはな」

 釜利谷君はそう言ってジロリとリュウ君を見た後、再度ヌイグルミに向き直る。

「人間は殺したくねーんだろ? 殺し合わせたいのに貴重な人的資源減らしたくないもんな。オレ達が気付かねーとでも思ってたのかよ、なあ?」

 ニヤリと笑って啖呵を切る釜利谷君。そんなに挑発して大丈夫なのだろうか。

 

「"超高校級"ナメんな、ヌイグルミが」

 

 

 

「オイラはモノパンダ先生だ!!!!!!!」

 

 突如、モノパンダと名乗ったヌイグルミは鼓膜を破壊しそうなほどの大きく高い声でそう叫んだ。

 

「オメーラさっきから調子乗り過ぎだぞ、あ゛ぁ゛!? 言うことは聞かねえわ、勝手に動くわ、オメーラの頭脳は幼稚園児以下か!!!?!?」

 

 モノパンダの声がさっきから打って変わって低くドスの利いたものになる。一瞬、俺達を恫喝するように大声を張ると、スピーカーに拡声された音がその場の空気を震わせた。

 

「オメーラはここでコロシアイをするんだよ!! コ・ロ・シ・ア・イ!!! 誰かを殺すまで永遠にこの学園から抜け出せないエンドレス疑心暗鬼生活!!! やるって言ったらやるんだよ!!! 二度とオイラに逆らうなぁぁぁ!!!!!」

 

「…………」

 あまりの剣幕に俺達は言葉を発せない。確かに先ほどのような雷を亜光速で落とされたら生き延びられる人間はいないだろう。あのヌイグルミにはそれだけの力がある。

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間、先程起きたのと同じ閃光と爆音が俺達の視界と聴覚を支配した。

 

 

「キャー!!!!」

 

 

 耳鳴りと共に女子の悲鳴がうっすら聞こえる。俺は一瞬遅れて両耳を塞いだが、もう爆音は俺の頭蓋骨を振動させた後だった。二度目の雷鳴。それが意味するのは、つまり……。

 

 

「…………………」

 

 目の前には目を見開いたまま立ち尽くす釜利谷君がいた。体育館を見回したくない。もう一度誰かの死体を目にすることになるのが嫌だ。それでも、遅かれ早かれ目にすることになるのなら今見てしまった方が良い。そう思って俺は生唾を飲み込んで視界を横に動かす。

 

 モノパンダが座っていた壇上。そこには、真っ黒に焦げた何かの残骸があった。僅かに銀色の金属がチラリとのぞく黒い煤の塊。それが先ほどまでそこにいたモノパンダのものであることに疑いの余地はなかった。

 

「は? え? アイツ? え? な、なんで……?」

 亞桐さんが青ざめた声で混乱気味に言った。この空間で誰かを処刑できる権限を有しているのはモノパンダだけのはずだ。そのモノパンダが処刑されるという異常事態に誰もが言葉を発することもできずにいた。

 

 

 

 

 

フフ……へただなあ

 

 

 

 誰のものでもない声が聞こえてくる。一瞬体育館を見回すが、その声は最初のモノパンダのように体育館全体にスピーカーから発せられているのだとすぐに気付いた。

 

へたっぴさ……! 絶望の解放のさせ方がへた……!

 

 モノパンダのものとは打って変わって特徴的な濁声。一度聴いたら一生忘れられない声。恐ろしさの奥に何故か懐かしさを感じる。この声こそが、これから始まる長い長い絶望の象徴であると、俺の直感が告げていた。

 

 

 モノパンダの残骸を踏みつぶすように、クマのヌイグルミが飛び上がって壇上に着地した。

『きったね! どけよポンコツ!』

 新しいヌイグルミは腹立たし気にモノパンダの残骸を蹴って壇上から落とすと、俺達の方を向いてどっかりと腰を下ろした。

 

 

『あー、あー、マイクテス! マイクテス! あ、もういらないのか。初めまして、ボクはモノクマ。この希望ヶ峰学園特別分校ハンチョウ校長さ!』

 

 そう高らかに宣言するモノクマというヌイグルミは、モノパンダと違って斑模様がなくずんぐりとしている。見た目はモノパンダより鈍重に見えるのに、その瞳から感じる不気味さは比べ物にならない。

 

『マスコット暦めでたく10年を突破した世界のコロシアイマスコットとして、皆さんのコロシアイの責任者として着任できたのはとっても鼻が高いです! これから未来ある皆さんが健やかにその未来を削りあい喰らいあい燃やしあい天高~~~く羽ばたいてお空の彼方に昇って逝くことを祈ります』

 

「…………」

 あまりにも異常な光景に、皆が疲れを感じ始めていた。リアクションをすることすら億劫になり、それでも神経をとがらせ続けなければいけない。

 

『みんなそんなにポカーンとしていいの? もうコロシアイは始まっているんだよ? 開けた場所にいるの、危険じゃない? 姿勢は低くしなくていいの? 飛び道具が飛んでくるかもしれないのに? 床が抜けるかもしれないのに? キミが後ろを向いてる間に背中を刺すかもしれないのに?』

 その言葉を聞いてその場にいるほぼ全員が一斉に背後を見る。あんなことを言われたからって、すぐに人を殺すような人物がいるはずがない。それでも。「そんなわけない」はずでも、その僅かな可能性を警戒してしまう自分がいた。コロシアイは既に始まっている。この空間において、人の死という概念の重みは遥かに軽いものへと変貌してしまったのだ。

 

 

明日からがんばるんじゃない……今日……今日だけがんばるんだっ…! 今日をがんばった者……今日をがんばり始めたものにのみ…明日が来るんだよ……!

 

 

 この中の誰が明日を迎えられるのだろう。

 

 

 何度も脳内を反響する耳障りな声を、しかし一言一句聞かざるを得なかった。そこにいるのは、俺の短い人生で最も大きく底の知れない”敵”なのだから。

 

 

 

 

 

《生存人数:15人》

 

 

【挿絵表示】

 




リメイクまでしたのに初登場セリフがパロディって、そんなのあんまりだよ!

***********

 “超高校級の哲学者”
 夢郷郷夢(ゆめさと きょうむ)
 男子生徒/184㎝/71㎏
 【好きなもの】静かな時間、思考、女体
 【嫌いなもの】むさ苦しい人、うるさい場所
 【人称】「僕」「君」「苗字+君」

 高校生でありながら世界中の大学や学会で講演を行う若き思想家。元々は動画投稿サイトにて哲学に関する雑学や哲学者の紹介、哲学書への容赦のないレビュー等の活動を行っていた。若くして卓越した知識量、古代ギリシャ人を模した姿格好と長身美形の見た目、聞く人を惹きつける話術などから瞬く間に世間の注目を集め、非常に認知度は高い。マイナーなものまで数多くの哲学書の内容をほぼ暗記し、暗唱できる。常に無表情だが感情自体は豊かな方である。近しいものにしか言えないとある特殊な嗜好を持っているとされる。


 “超高校級の翻訳者”
 入間(いるま)ジョーンズ
 男子生徒/180㎝/64㎏
 【好きなもの】話好きの人、干し芋、難しい本
 【苦手なもの】話を聞かない人、ホラー系全般、高所
 【人称】「(わたくし)」「苗字+様」

 北欧系のハーフ。外交官の母と海外企業重役の父を持つ大家のお坊ちゃん。33か国語に通じる語学の天才。母の補佐として通訳作業、書籍の翻訳など多岐に渡る活動をこなし、数年前にはとある小国で起きた革命紛争を調停し平和裏な政権移譲を実現。数十万人規模の命を救うなど、世界的な活躍度合いはこの学園のメンバーの中で最も大きいと言えるだろう。正義感が強く真面目で穏やかな性格をしているが、育ちゆえかやや世間知らずで周囲に振り回されることもある。若さゆえの理想に溢れており、「どんな人間でも心を通わせて話し合えば絶対に分かりあえる」と性善説に近い考えを持っている。


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