「今日もあの子と待ち合わせかよ?」
洋樹はローラとの待ち合わせの時間より少し早めにオーシャンテラスに来ていた。テラス席に座っていると、手伝いで店番をしている航平が席までやってきて、横に座り恨めしそうな目で話しかける。
「そうだけど。店番してんだろ?早くカウンター戻れよ」
航平は洋樹の忠告を気にも留めず話し続ける。
「で?付き合ってんの?」
「いや、まだだけど……」
「え!ほんとかよ!なーんだ、てっきりもう付き合ってんのかと思ったよ〜。いやいや、それは良かった!」
「お前なぁ……、そんな喜ぶことある?あからさま過ぎるだろ」
「何言ってんだよ!恋敵に友情もへったくれもないだろ!」
「はぁ〜?なら、さっきやったルート66の、アメリカの土産、返せよ」
「いや、一度もらったもんは返さない主義でな」
洋樹は面倒くさそうに深い溜息を吐く。
「はいはい。そろそろローラ来るから、どっか行ってくれる?邪魔なんだけど」
すると航平はぐっと洋樹の肩に腕を乗せ、顔を近づけて耳元で囁いてくる。
「まぁ、告白するならここでしろよ。お前みたいな辛気臭いやつ振られるに決まってるから。お前が塞ぎ込んだところへ俺が登場して、励ます俺の優しさにあの子も心をときめかせるって言う……」
「つくづくアホだな……。そんな展開、やっすいB級ドラマでも採用しないわ。少しは文学にでも触れたら?」
そう言って洋樹が航平の手を払い除けると、同時に店の中から洋樹の名を呼ぶローラの声が耳をくすぐる。
「洋樹……!」
途端に洋樹の心は幸福感とむず痒さで満たされる。
「ローラ……!」
二人の間に走るときめいた空気感に、もはや航平はお呼びでない。航平はわざとらしく咳払いを一つすると、立ち上がって椅子を引きローラをエスコートする。
「ぅおほん。あ〜、プリンセス、どうぞこちらへ」
「あ、ありがとう……」
「ご注文は?」
航平は紳士的な雰囲気を装いたいのか、低い声色で尋ねる。
「えっと、この前の……」
「クリームソーダですね、少々お待ちを」
胸に手を当て一礼すると、航平は洋樹にジロリとやはり恨めしい視線を向けてカウンターに戻って行く。
「何?あれ……?」
「放っといていいよ。あいつ、アホだから。それより、久しぶり!」
「久しぶり、じゃないわよ!帰る日程くらい、前もって教えといてよねっ」
久しぶりに会ったローラは洋樹の帰国を待ち侘びていたようで、だいぶお冠の様子である。
「悪い悪い。大体帰る日は決めてんだけど、よく飛行機が遅れたりするしさ。現地で空いてるシート見つけて帰ってくるんだよ」
「まぁそんなとこだと思ったけど、待たされてるこっちの身にもなってほしいわ」
つん、と膨れているローラを見ていると、帰ってきたという安心感に包まれるとともに、「会いたかった……」という言葉が吐き出す息に混じって漏れ出した。
ローラは頬を膨らましながらちらりと洋樹を見ると「そういえば、これ」と、ツーリングの時に洋樹が貸したシャツを手渡した。
「ああ、そういえば、洗ってくれたんだよな。ありがとう」
二週間ローラの部屋にあったのか……。と、思わず顔を埋めたくなる衝動を抑え、少し顔を近づけると、ほんのりとフローラルな香りがした。
そこへ航平がクリームソーダを持って来る。ローラが手渡した洋樹のシャツを見て目を丸くしながら「なんだよこれ?」と口をぱくぱくさせる。説明するのも面倒なので、洋樹がしっしっと追い払う。
「ところで南之島、どうだった?」
「すごく、楽しかった。ビーチも都会と違う綺麗さがあったし、食べ物もすごい美味しくて。あと、お祭りも」
「俺も小さい頃行ったことあって、ほんといいとこだよな。お祭りって、願い事書いた石、投げるやつ?」
「ええ。洋樹もやったの?どんなこと書いたの?」
「水族館の人になれるようにって」
それを聞くとローラは笑いだす。
「やっぱり全然変わってないのね」
「ローラは?」
「……バタ足が、泳げるように、って」
「へぇ〜、人間の姿だと泳げないってこと?確かに鰓呼吸も出来ないからなぁ。じゃあ!俺が……!」
意気揚々と身を乗り出してくる洋樹の言葉をローラは遮る。
「ご心配なく。次の日にまなつ達に教えてもらって楽勝で出来るようになったから」
「な〜んだ。俺が教えてあげようと思ったのに……」
がっくりと肩を落とす下心が見え見えの洋樹に、ローラは冷ややかな視線を向ける。
洋樹は顔を上げて、ふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、夏海さん南之島から出てきてんだもんな。俺、一回夏海と会ったことある気がする」
「え?まなつ?」
「うん。やたらうるさくて、島に同年代がいないしお兄ちゃん欲しかったとか言って、しつこく追い回してくるちっこいガキがいたんだけど。トロピカってる〜とか何とか、叫んでて」
「それは、確実にまなつね」
「俺は一人で昆虫採集とか海の生き物とか探したかったのに、どこに行っても付いてきて……」
「それで、一緒に遊んだの?」
「そんなわけないだろ。穴掘って砂に埋めて逃げた」
「はぁ〜っ!?」
「いや、もちろん首までだよ?」
「それにしたって、最低……」
さすがのローラもドン引きである。
「でも、ああ言う奴はほんと懲りないから。そこまでして、なんて言ったと思う?」
「さぁ……?」
「『スイカ割りのスイカになった気分でトロピカってる〜!!』だぜ……?寒気がしたよ」
「……まぁ、まなつらしいけど……」いずれにしても洋樹の行動にはドン引きである。
ローラは心底呆れ果てて「はぁ〜」と溜息をつくと、話題を変える。
「で?洋樹は?アメリカ、どうだったの?」
「まぁ、楽しかったけど、今回はほとんど大学の下見でさ」
ローラは「大学?」ときょとんと首を傾げた。
「そう。高校卒業したら、俺、あっちの大学行こうと思ってるんだ」
「へぇ……」呆然としたようにローラは相槌を打つ。
「この街も生まれ育ったところだしすごい好きだけど、ここら辺じゃ大学も限られてくるし。東京行くんだったらいっそ向こうの方が、やりたい研究もありそうだし、自分の肌には合ってるから」
「そっか……。洋樹も、いづれこの街を出ていくのね」
「うん、まぁ、ね……。ローラに、負けてられないしな」
「ねぇ、その、大学って、どんなところ?」
「ああ、これだよ」
そう言うと洋樹はスマートフォンで撮った写真をローラに見せた。
「すごい。これ、学校?まるでお城みたいじゃない」
「歴史が長い所は建物自体すごいよ」
「楽しそうね。私もこんなところで、勉強してみたいわ……」と、瞳を伏せてローラが呟く。
洋樹はローラがいる学生生活を想像する。広い芝生や荘厳なキャンパスを歩く洋樹の隣で、ローラが笑っている……。
叶うはずもない妄想だ。しかし、やけにリアルに映像が浮かんできて、その妄想のワンシーンはその後も洋樹の心に残り続ける幻影となるのであった。
洋樹はスマートフォンに目を落とすローラを見つめ、目の前のアイスコーヒーを一口ゴクリと飲み込むと思い切って切り出した。
「ローラ、この後、時間ある?」
「え?特に、予定は入れてないけど」
「じゃあ、よかったら俺のうち、来ない?ちょっと坂登るけど、ここから歩いて五分もかからないから」
「へっ!?い、家……!?」
驚いて警戒するローラに、洋樹も顔を赤らめる。
「いや、指一本触れないから!そんなつもりないし、ゆっくり話したいだけだから!」と慌てて弁解する。
ここでは先程から航平がじっとりと視線を向けてはちょこちょこ聞き耳を立てて来るし、街もビーチも夏休みの賑わいで溢れている。告白をするのに静かな場所は……?
考えた末の苦肉の策だった。
洋樹の家はオーシャンテラスからほど近い、坂を少し登った高台にある。カリフォルニアスタイルの一軒家で、外壁は薄いグレーがかった水色の板を横に一枚一枚重ね貼りしている。
家の中に入ると、白い壁にナチュラルなヴィンテージ感のある木目の床に、所々海を連想させる薄い青のインテリアが配置されている。一階と二階は吹き抜けの造りになっていて、二階からの陽光が開放的なリビングに明るく降り注いでいる。
「椅子でも、ソファでも、どこでも座ってていいよ。俺、何か飲み物入れてくる」
「洋樹の部屋は、二階にあるの?」
「うん。階段登った奥の部屋だから、見てきていいよ。色々面白い物あるから」
ローラは二階にあがり、ドアを開け放してある洋樹の部屋に入る。洋樹の部屋もやはり白の壁と青いベッドや木目の机や棚などで構成されている。
壁に備え付けられている木製の棚の中には学術書、図鑑、小説、漫画本、雑誌等が所狭しと並び、別のもう一回り小さめの棚には海洋生物や恐竜のフィギュア、有人潜水艦のプラモデル、壁には世界地図のタペストリーに、その土地で撮ったのであろう写真が貼られている。
ローラは一通り洋樹の部屋を見て回ると、ベッドに腰掛けた。他人の家であるのだから当然だが、リビングではどことなく落ち着かなかったが、何故か洋樹の部屋だと落ち着く。
ベッドの上には、太陽系惑星のモビールが吊るされており、少し開いている窓からの風でゆっくりと回っている。
ローラは深い息を吐く。家を出てオーシャンテラスに向かう前から複雑な感情を持て余していたのだ。今日、洋樹がローラに告白しようとしていることは、ツーリングの別れ際からどことなく察している。
ローラは昨日のみのりとの会話を思い出す。その中で、分かりかけたことがあった。
これ以上好きになることが、怖い。
恋愛感情というのは恐ろしい物で、人魚としてのアイデンティティさえ揺るがしかねないような気がする。洋樹と一緒にはいたい。しかし、いづれはグランオーシャンに帰る自分が、そんなものにこれ以上踏み込んでいいのだろうか……。
ローラの心は、まだ定まっていない。
すると、「ローラ?」と、部屋の入り口から洋樹が顔を出した。
「なかなか降りてこないから、どうしたのかと思って。何か面白いものあった?」
「あ……、うん。この部屋、まるで洋樹の頭の中を再現したみたいね」
「ああ、小さい頃からプレゼントもらうのに、こんなんばっか貰ってたからね」と洋樹はフィギュアを持ち上げる。
ローラは立ち上がってタペストリーの前に行くと、イタリアに張られた、恐らく子どもの頃の洋樹と、女性が写っている写真を指す。
「ねぇ、洋樹。この写真に映ってるの、お母さん?」
「ああ、そうだよ」
「素敵な人ね、洋樹のお母さん。理知的で、愛情が深くて……。写真を見るだけで伝わってくるわ」
「そう?もともと風邪一つひかない元気な人でさ。いろんなとこに連れてってくれたよ」
「人魚に親はいないけど、まなつと碧さんとかを見てれば分かるわ。母親って、特別な存在だって。寂しかったわね……」
そう言うと、ローラは洋樹を見た。洋樹はローラの視線を受け取り微笑むと、記憶を辿るように宙を仰いだ。
「まぁ、ね。あの時は、俺の人生終わった……て思ってずっとしょぼくれてたけど、でも、亡くなってしばらくしてから、母さんが残してくれた手紙を親父から渡されて」
「手紙……?」
「うん。小さい頃から俺変わり者でさ。学校では殆ど喋んないし、あんまり友達と連むこともしないし。クラスメートからはクールとか、生意気とか変に一目置かれたり。教師からは、話せない訳じゃないんだからもう少し周りと協調したら、とか言われて。そういうのうんざりだったんだけど、母さんは俺に、友達作れとか何にも言わなかった。洋樹には、私とお父さんがついてるから、それでいいって、いつも言ってた」
「……うん」
タペストリーを見ながら語る洋樹の言葉一つ一つを逃したくない。ローラは心の奥深くまで刻み込むように洋樹の言葉に耳を傾ける。
「手紙にも、俺は周りとは一風変わってるけど、自分の思う通りに進んでほしい。母さんはそれを見てるって。自分の思う通りに生きていれば、必ずそれを認めてくれる人が現れるからって……」
洋樹はタペストリーから目を落とし、続ける。
「それを読んだら、なんか生きる勇気が湧いてきたっていうか……。俺が生きてることで、母さんも生き続けるんだって、そんな気がしたんだ」
静かに語る洋樹の横顔をローラは見つめる。その言葉を噛み締め次第に目の奥が熱くなってくるのを感じながら。
洋樹は語り終えるとローラに視線を移し、柔らかい表情を向けて続けた。
「だから、ローラが俺の生き方が好きって言ってくれた時は、本当に嬉しかったよ」
窓から涼やかな風が吹いて、カーテンを揺らす。午後の日差しがレースカーテン越しに穏やかにゆらゆらと差し込んでいる。
洋樹はローラを見つめ、迷いなく言葉を続けた。
「ローラ……。好きだ。付き合ってほしい」
自然と、しかし揺るぎなく溢れ出した告白は、暖かい風となってローラを包む。胸の中にすーっと穏やかな光が灯され、心は洋樹の元に真っ直ぐに向かおうとしている。
しかし、どうしても一歩が踏み出せない。
「……すごく、嬉しい、けど……」
「……けど?」
「でも、私は……」
ローラがそこまで言うと、ドッカーンッ……!!と、海辺の方から激しい衝撃音が響いてきた。
「はっ!」
南の窓から顔を出すローラの後ろから洋樹が海辺に目をやると、ビーチでは不穏な紫色のオーラが漂い、何やらビーチパラソルの様な怪物が暴れているのが見える。その横に、小船に乗ったドクターの格好をしている妖怪じみた女性が浮いている。
「ヌメリー!ヤラネーダ!!」
「あれが、噂の怪物か……。あの、ドクターの格好した下半身がナマコみたいな美人のおばさんは?」
「あれは、ドクター・ヌメリー。後回しの魔女の手下よ。洋樹!とにかく私、行かなくちゃっ!」
「わ、わかった……!気をつけろよ!」
「大丈夫!」
そういうとローラは急いで海辺へと向かって行った。
窓から海辺へと駆けていくローラの後ろ姿を見守りながら、「ほんとに、大丈夫かよ……」と洋樹は一抹の不安を抱えながらも、なす術がない。
と、その時。
「……るるん」
何か音が聞こえる。
「……へっ?」部屋を見渡すが、何も変わりは無い。
「くるるん!」
「へっ!?」
洋樹が振り向いてベッドを見ると、なんとくるるんと、ローラがいつも持ち歩いているマーメイドアクアポットが落ちているではないか。
くるるんは洋樹に一生懸命何かを訴えようとしている。洋樹はくるるんを抱き上げた。
「くるるん、くるるん!くるるんるん〜!」
「うん、うん……、何ぃ!?戦闘で、このアイテムが必須だから、急いで届けないと、だって!?」
「くるるん!」
伊達に時折アザラシの面倒を見ていないようだ。
ローラが海辺に駆けつけるとほとんど同時に、まなつ逹四人も集結した。
「皆んな、行くよっ!」「オーライ!」
「プリキュア!トロピカルチェンジ!レッツ、メイク、キャッチ!」
五人はチーク、アイズ、ヘアー、リップ、ネイルのメイクを済ませ、最後にドレスを纏いトロピカルージュプリキュアへと変身する。
せっかくの機会なので、ここで各プリキュア達について説明しておこう。
「ときめく常夏、キュアサマー!」はまなつ。セーラー服を模した白を基調色とした虹色配色である。元気印のサイドポニーテールは長く伸びて、水色、ピンク、黄色のグラデーションが鮮やかだ。ミニスカートと大きなハイビスカスの髪飾りが特徴的で、元気の良さを強調する。
「きらめく宝石、キュアコーラル!」はさんご。薄い紫色を基調色としてセーラ服を模した可愛いゴシック風ワンピース。ボリュームのある長いおさげに大きなニ段リボンが特徴的で、ぽこんと被る大きなマリン風のベレー帽が可愛さを倍増させる。
「ひらめく果実(フルーツ)、キュアパパイア!」はみのり。明るい黄色を基調色としてセーラ服を模したスタイル。ボブヘアーは二段のお団子となり、クラゲのような短めの丸っこいスカートと黄色のルーズソックスが愛らしい。眼鏡は外し、アイラインがエメラルドグリーンになるのが特徴的で、戦闘時には驚くべきことにフルーツのイヤリングを目に当て光線を発射する。
「はためく翼、キュアフラミンゴ!」は飛鳥。情熱的な赤を基調色としてセーラ服を模したスタイル。艶やかなストレートの赤髪に緑のメッシュ、羽根を模した髪飾りと肩の飾りが印象的で、黒い網タイツと赤いロングブーツが長身のスラリとした脚を強調して恰好良い。
そして「ゆらめく大海原(オーシャン)、キュアラメール!」がローラである。ラメールだけはセーラー服風ではなく趣向が異なる。一言で言うなれば神秘的で美しい。水色を基調色として、淡い水色とピンクのグラデーションの長いウェーブの髪に、頭の両サイドのお団子には大きな真珠のような宝石。真っ白なレギンスの上に人魚の鱗を模したミニスカート。白いたっぷりとしたフリルの優雅なアームカバーに、お腹と両肩を広く出したスタイルが女性らしくエレガントだ。
戦況は順調である。
プリキュア達は変身すると、プリキュア名で呼び合うので、それに倣う。切込隊長のサマーとフラミンゴが肉弾攻撃を仕掛け、ヤラネーダが避けたところへパパイアとラメールの攻撃。
さらに、ヤラネーダの投石攻撃をコーラルはペケバリアで防ぐと、そのまま上空に飛んだラメールに岩石をレシーブ、ラメールがそれをヤラネーダにアタックでかましてヤラネーダは倒れる。
起き上がるヤラネーダにサマー、コーラル、パパイア、フラミンゴの四人の合せ技であるフェニックスの擬態の光弾、ミックストロピカルが炸裂する。
「いまだ、ラメール!」
しかし、そこへ大問題が発生した。
「オーライ!……って、マーメイドアクアポットが、ない……!」
ラメールは血の気が引いたように固まった。サマーはそれを聞いて慌ててラメールに質問する。
「え!どこに置いてきたの!?」
「洋樹の、家……」
するとフラミンゴが血相を変えてラメールに怒鳴る。
「い、家ー!?あれだけ、軽はずみな行動は慎めって言っただろ!!」
「な、何も変なことしないって、約束したわよ!」
「そんな言葉信じられるわけないだろっ!」
「洋樹は、信じられるに、決まってるじゃない!」
そこへ抜け目なくヌメリーが近づいてきて割って入る。
「あ〜ら?仲間割れ?それにしても楽しそうなお話ね。私も混ぜてくださらない?」
二人がヌメリーに気を取られている間にヤラネーダの攻撃が飛んでくる。
「ペケっ!」
「コーラル!」
コーラルのペケバリアによって攻撃は免れた。コーラルは二人に向かって叫ぶ。
「フラミンゴ、ラメール!そんな言い争いしてる場合じゃないよっ!」
「そ、そうだな。すまん」
「そうね。とにかく、アクアポットを取りに行ってくるわ!」
ラメールがそう言うと、椰子の木々の間から声が響いてきた。
「ローラァー……!!」
「洋樹!?」
洋樹がスケボーに乗って、くるるんを抱えてやってきたのだ。
ヌメリーは駆けつける洋樹を見つけると楽しそうに「あら?王子様のお出ましかしら?」と笑いながら首を傾げる。
「ほら、忘れ物!」洋樹はそう叫ぶと、ラメール目掛けてアクアポットを力一杯投げた。
「ありがとう……!」
ラメールはそれを受け取り、キッとヤラネーダを睨む。
「マーメイドアクアポット、サーチ!黄色!やる気パワー、カムバック!」
ヤラネーダから奪われたやる気パワーを奪い返し、続いてラメールの必殺技であるオーシャンバブルシャワーを放つと、ヤラネーダは呆気なく浄化されていった。
ヌメリーは撤退する前にラメールの上空にやって来て、愉しむように挑発的な言葉で囁きかける。
「ふふ。地上での生活を随分と謳歌しているようね。でも、いいのかしら?人間と恋なんかして……。確か、王子様と結ばれなかった人魚姫は、泡になって消えちゃうんじゃ、なかったかしら?二の舞にならないといいけど。ほ〜んと、心配だわ……」
そう言ってヌメリーはくすくすと笑い出す。ラメールは唇を噛み、嘲るヌメリーを睨む。
「ヌメリー……っ!」
「ふふ。どうなることやら、見ものだわ。進展を期待してるわよ?マーメイド・プリンセス♡」
そこまで言うと、ドクター・ヌメリーは空間移動術で海底の魔女の城へと消えていった。
洋樹はラメールの目の前に駆けつけると、「大丈夫か!?怪我は!?」と心配そうに肩を掴む。戦いに慣れているラメールはそんな洋樹を呆れながら見上げた。
「何心配してるのよ?大丈夫に決まってるじゃない」
「なら、いいけど……」
洋樹はほーっと息をつくと改めてまじまじとラメールを見つめる。
「何?」
「いや、そのカッコ、めちゃくちゃ可愛いなと思って……。てっきり、戦隊ものヒーローみたいな全身タイツとヘルメットみたいなの想像してたから……」
「はぁ〜!?そんなわけないでしょ!どんな想像してんのよっ!」
そのやり取りを聞いていたパパイアはぷっと噴き出した。そこへ洋樹とラメールの元にフラミンゴが威圧感を纏いながら近づいてくる。
「おう、滝沢、おつかれ。てかお前、今どき網タイツってなんだよ。エスっ気強すぎだろうが」
それを聞いたパパイアは堪えられないとばかりにブフーッと噴き出した。
「そんなことはどうでもいいんだよ。春波、貴様、今朝、忠告したはずだが……。今日の今日でまさか部屋に連れ込むとは……。覚悟は出来てんだろうな」
そう言うとフラミンゴは変身も解かずに洋樹に殴りかかった。
ドゴーンッ……!すんでのところで攻撃を躱した洋樹はフラミンゴのパンチで崩れ落ちる岩を見て背筋が凍る。
「いや、殺す気か!」
「ああ、言ったろ、適当なことしたら容赦ないって。どうやら身のこなしはいいみたいだな……」とフラミンゴはさらに攻撃を仕掛けようとする。
「ま、待てって!ほんと、指一本触れるつもりもなかったし!」
「問答無用!ケジメはつけさせてもらうぞ!」
「おい!話を聞けって!」
再びフラミンゴの攻撃を躱した洋樹は命の危険を感じてその場を立ち去ることにした。
「ローラ、今日の話は、また今度!考えておいて!」
そう言うと洋樹は海岸を後にしスケボーに乗って逃走する。
「待て!逃さんぞ!」
飛鳥は変身を解いて洋樹の跡を追う。
「あははははー!」
「あ、いけない!」
変身を解いてローラはやる気パワーを周囲に還す。海岸は再び賑やかさを取り戻した。これにて今回のヤラネーダとの戦闘も無事に一件落着である。
しかし、洋樹と飛鳥のやりとりを見て笑い声を上げるまなつやさんごの後ろで、ローラだけが一人、思い詰めた表情で俯いている。
トロプリ皆んな大好きですが、特にラメールのキャラデザと変身バンクには心酔です。素敵すぎて……。
作中で洋樹くんはエスッ気強すぎと言っていじってたけど、私自身はフラミンゴの真っ赤なハイヒールのロングブーツと網タイツ、攻めたデザインでめっちゃカッコいいと思います。素敵。