パーシヴァルなベルくんと最強種な姉   作:食卓の英雄

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ちょっと遅れて申し訳ない。

スウゥー…

モンハンサンブレイクゴア・マガラとエスピナス復活は熱すぎるだろ!!


「やっぱりドラゴンって強そうですよねー…」

 

 一人、部屋に佇む。

 東の空から朝日が登り、街並みを照らしてしばらく、真上にまで輝いて尚、部屋の主は動かない。

 【ロキ・ファミリア】本拠(ホーム)、黄昏の館。その一室で布団を被り、幼い少女のように蹲っている彼女の名はアイズ・ヴァレンシュタイン。色彩の薄い可憐な姿とその剣の冴えから【剣姫(けんき)】の二つ名を持つ第一級冒険者。都市最強の女性剣士と名高い総評に程遠い姿は見るものが見れば驚きと興味を惹かれることだろう。

 

 常であれば朝から一人鍛錬を行い、時間を見つければダンジョンに籠もりきりになる彼女が何故昼真っ盛りの今、部屋にいるのか。

 遠征の直後だから身体を休めている。普通ならばそう捉えるが、その普通という尺度で推し量ることが出来ないのが第一級冒険者だ。

 途中の休息でも体力を取り戻し、万全とは言えないまでも十分にダンジョンに潜る体力程度回復しきっている。ましてや、今日一日本拠はおろか自室からも一歩も出ていない。

 彼女をよく知る者からすれば珍しいを通り越して異常だとはっきりそう断言できる。

 

 彼女が想起するのは昨夜の酒場の一件。

 あの時、同僚(ベート)がそしった一団の一人。大きな躯の白騎士……ではなく、その隣に位置していた青鎧の少女。

 顔を覆う同質のマスクが面布に変わっていたが、あの姿を見間違えるはずもない。

 

(あれは何…? どうして、こんなに体が…)

 

 シーツを深く強く握りしめ、一層体を覆うがその悪寒は鳴り止まない。どこからどうみても人間である筈の彼女に、ドス黒い感情を向けてしまっている。

 

(分からない、分からない。どうして……!?)

 

 キッと眦を吊り上げ、あの表情の伺えない冷たいマスクに見られていたことを思い出し、それが己に向かってではないことに酷く安堵した。

 彼女は人間関係において恐怖を感じた場面はほぼない。かつて己より格上の冒険者に一方的な因縁をつけられ半殺しにされても浮かばなかった思考の膿。

 己の行動で誰かが傷つくかもしれない、心配をするが故の、誰かを思うが故の焦燥を抱く暇もなく、己が、己だけでも無事であることに感謝する程の、醜い心。

 

 思い出すのは、無力な少女(わたし)。誰かに守られるだけだった何も知らない小さな(わたし)。そして、わたしを置いてどこかへ去っていく、大きな背中。

 

 どうして、今。どうして人間の少女に。どうしてあの時と同じ―――。

 

 はたと、再び思考の海に陥りかけたときに気がついた。彼は、どうなんだろう。あの時、あの少女と一緒にいた、あの青年と少女なら、彼女と親しげな彼らなら、この胸のうちに燻る何かの正体が分かるかもしれない。

 悪い人ではなさそうだった。むしろアイズから見ても好感が持てた。あの人達なら――。

 

 思い立ったが吉日。装備を整え、愛剣(デスペレート)……は修理に出しているので代剣を腰に佩く。ダンジョンに潜るわけでもないのに完全装備してしまうのは身に染み付いた習慣によるものか、それともその臆病さを振り払うためか。

 

 今一歩と部屋の外へ足を踏み出し、勇気を振り絞る彼女のに冷や水を浴びせる声。

 

「ほお…? こんな真っ昼間まで部屋から出てこないからと心配になって見に来たが、随分と元気なようだな…。なあアイズ?」

「リ、リヴェリア……」

 

 声をかけたのは美しい緑髪をなびかせ、女神すらも嫉妬しそうなほど精緻に整った(かんばせ)。都市最強の魔法詠唱者の名を欲しいがままにする【ロキ・ファミリア】副首領。リヴェリア・リヨス・アールヴ。

 リヴェリアはその柳眉を弧に歪め、こめかみを痙攣させながら見つめるのは完全装備である防具と細剣。これでは朝に潜るのを警戒されている彼女がダンジョン・アタックを阻止されないため、わざと時間をずらしたのだと勘繰られても仕方がない。

 

「これは…その、違くて」

「何が違うというんだ?」

「その、あの…」

「いいから来い。常々思っていたがお前には少し余裕というものがな……」

「ハイ……」

 

 結局抵抗虚しく、その身を心配したリヴェリア(派閥の母親)により連れられしょんぼりと歩いている姿が確認されたとか。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 ぷんぷんと怒るヘスティアが夜遅くに帰宅し、ベルの胸に抱かれるメリュジーヌを引き剥がそうとして再度気絶させられた次の日。

 ベルはメリュジーヌとガレスを伴ってダンジョンへ出かけていた。

 

「やあぁぁっ!!」

『ギャアッ!?』『ゴアァッ!?』

 

「とりゃああーっ!!」

『グブゥアッッ!!?』『グェェ!?』

 

 少女が勇敢な雄叫びと共に槍を振るえばたちまち怪物たちの悲鳴があがり、薙げば諸共一掃される。

 

「よし、この辺りはもう大丈夫かな。魔石を回収しようか。ああ、大丈夫とは思うけど解毒薬を一応飲んでおいて」

「はい!」

 

 ここは『大樹の迷宮』。中層に位置する層域の一つであり、安全階層(セーフティポイント)18階層の中央樹を経由して進出する19階層から24階層の総称。

 その名に違わず深い地下深くだというのに壁や天井は木肌で出来、床は巨大な木の中を彷彿とさせる。これまでの岩壁の階層とは一味も二味も違うこの領域は、上級冒険者ですら万全の準備を整えて尚確実な生還は約束できない地。

 進路の先々では地上には存在しない大きな茸や奇妙な形の葉、色とりどりの花などが姿を見せる。広間(ルーム)によっては美しい花畑が存在するほどだ。

 

 そしてここ、最後の中層でもある24階層はあらゆる面で既階層以上に癖があり、レベル2でも最高位の能力とパーティの密度が必須となる難関の一つだ。

 

 即ち、レベル1の冒険者がマトモに立ち入っていい場所であるはずがない。非戦闘要員(サポーター)として、強者に守られ別口の働きがある者であればいざしらず、戦闘員として前線に出るのは自殺行為だ。

 

「また出てきましたよ!」

 

 しかし、ガチャリと音を鳴らして馬上槍(ランス)を構えるガレスの背に刻まれた恩恵が示す位階(レベル)は1。

 叫ぶ彼女が突貫し、現れるモンスターを片っ端から轢き潰していく突撃(チャージ)はとてもレベルに見合っていない破壊力だ。

 

「流石に中層程度のモンスターじゃあ相手にならないか」

 

 易易と蹴散らされたモンスターの群れを見て、しみじみとその実力を評価する。実際ガレスの槍の冴えは良く、多少覚束ないところはあれど、この階層ではさして問題にはならないだろう。 

 

 倒した毒茸(ダークファンガス)大甲虫(マッドビートル)熊獣(バグ・ベアー)らの魔石を取り出して先に進むと、また新たな広間(ルーム)に辿り着いた。

 

白樹の葉(ホワイト・リーフ)……、確か幾つか冒険者依頼(クエスト)が出ていたね。折角だから持ち帰ろうか」

 

 聳え立つ白大樹(ホワイト・ツリー)を発見し、その名の由来である真白の葉っぱを摘み始める。

 この通り、状態異常を扱うモンスターが多い『大樹の迷宮』だが、よく冒険者依頼で調達を依頼される採取用のアイテムが多いのもこの階層域の特徴だ。様々な種類の薬草はそのまま使っても即効性の体力回復や解毒効果が確認されている。

 回復薬等を作製するための材料としても知られ、それらは薬師達に重宝されてきた。なんなら、この階層の光源である光る苔も地上ではそれなりの値段で売買されている。

 

 余ったら知り合いの犬人(シアンスロープ)の女性へ差し入れようかと思っていると、ガレスが興奮した様子で先の道から走り込んでくる。

 周辺の警戒を任せていたんだけど、何かあったのかな。大きく腕を振るガレスはあっという間にこちらにやってくると、少し息を整えて

 

「すごいすごーい! 宝石が、宝石が成ってる樹がありましたー!」

「ええっ、そんなものが!?」

 

 ガレスが告げた情報に思わず年相応の反応を返すベル。彼だって色々と世の不可思議には触れてきたつもりだったが、それで未知への興味が失われるというわけではない。

 ガレスの案内に従いこっそりと覗くように半身を晒せば、そこには確かに宝石のなる不思議な大樹と、その根本にずっしりと構えるドラゴンの姿があった。

 

「あれは木竜(グリーンドラゴン)…」

「やっぱりドラゴンって強そうですよねー…」

 

 まるでその宝の山を守護するかのように居座るのは階層最強の竜種。レベル4という階層に見合わない潜在能力(ポテンシャル)を誇る怪物だ。それも、ただ匹敵するだけでなくレベル4を含めたパーティが複数必要になるほど。

 このように、貴重なアイテムの採取場所の前には強力な宝財の番人(トレジャーキーパー)が居座っていることが多い。ここより深い51階層の強竜(カドモス)然り、虎穴に入らずんば虎子を得ずという訳である。

 

「…どうする? あそこに行くなら戦うほかないようだけど…」

「うーん…。でもそろそろ槍が…」

 

 眠るように居直るグリーンドラゴンを尻目に相談する。その潜在能力からすれば十分討伐可能だろうが、番人と言うべきモンスター、それも他のモンスターより強力な竜種。鎧を纏っていないガレスでは万が一があるかもしれない。

 

「槍かい? ちょっと見せてくれないか」

 

 何より、ガレスが渋ったのは己の槍の状態である。ガレスの身の丈より大きく太い馬上槍はその構造から折れこそしていないが、モンスターに力強く打ちつけた際のヘコみや傷が多く、先端が潰れてしまっている。

 

「…耐えられなかったのか」

 

 そう、ガレスの場合、身に着ける武具の質が己の潜る階層と力にあっていないのだ。階層に見合わない装備はモンスターを穿けずただの鈍器と化し、実力未満の武器は使い手の使用に耐えられない。

 その二つが重なることで武器の消耗を早めてしまい、自然とガレスが潜る時間は短くなってしまう。一応予備は拠点にあるのだが、一度帰る必要があり、それも同じ品質である以上同程度の使用で壊れてしまうだろう。

 

 もっと良い品を買うことが出来るならいいのだが、オラリオの冒険者はこの地下深くのダンジョンということもあり馬上槍(ランス)を使用する者は少ない。少なくとも、それを用いて名を挙げている冒険者はいない。

 自然と、強力な馬上槍が欲しいのであれば大手鍛冶ファミリアのオーダーメイドになるが、それには金はともかく信用が足りない。いくら強いとはいえ【ヘスティア・ファミリア】は未だ無名。何のネームバリューもないファミリアの、レベル1団員に態々時間などかけてくれないのだ。

 

「うう…、ごめんなさい…」

「いや、ガレスのせいじゃないよ。…にしても、やっぱり相応の武器が欲しいところだね。流石にいつまでもこれではガレスが危険だろうし…」

「いやいや、これでも一応もとは取れてるし、もうちょっと名を挙げてからでもいいかなー、なんて」

 

 鎧だって同じ理由でガレスは着けていない。ベルの鎧と槍は特別も特別なので気にしていなかったが、いよいよもって深刻な問題になってきた。

 

「それでは、私があの竜を仕留めましょう」

「あの木に用があるの?」

 

 いつの間にそこにいたのか、槍を構えたベルの背後からメリュジーヌが声を投げかけた。

 

「相手は竜でしょ? なら、僕が話してくるよ」

 

 言うが早いか、超高速で空中を飛翔し、あっという間に辿り着くと、何事かを言って戻ってきた。

 

「大丈夫! ちゃんと襲わないように言ってきたから、安心して取りに行こう!」

 

 爛漫な笑みを浮かべ、腕を引っ張る彼女に思わず苦笑い。恐る恐る近づいてみても、木竜は警戒すらすることなくそこに佇んだ。……というよりは必死で目をつぶって頭を垂れていた。

 なまじ知能が高く、竜種であったために存在の格が違いすぎる相手だと理解できてしまった故の行動であった。

 死にたくないと怯える木竜に申し訳無さを覚えつつも、ベル達はじっくり時間をかけて宝石樹の採取に勤しんだのだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

「いやあ、ギルドの人も驚いてましたね! 今日の収入は一体何万ヴァリスなんだろう?」

「さあ、どうだろう。モンスターの魔石はそこそこだけど白樹の葉や宝石はかなり高かったからね。ひょっとするとこれまでで最大の稼ぎかもしれないね」

「あの宝石だけでも500万はいくでしょう。それ未満であるなら、ここのギルドは見る目がないとしか言えないね」

 

 少し立て込んでいる時間帯であったためか処理が遅れ、また担当官としてもこれほどの量は一人では捌ききれないと言って、後日に受け取ることとなったが、それでもいい稼ぎだったと自負している。

 神様にいいお土産も出来たことだし、軽い足取りで廃教会への足を進める。すっかり日も落ちきってしまったが、神様のご飯は大丈夫だろうかと思考していると、ガレスの姿が消えていることに気がついた。

 

「ガレス?」

 

 何処かではぐれたかと辺りを見回すと、いた。

 それはあるテナントの前。ガラス張りのショーウィンドウに鎮座されている商品をじっと眺めていた。

 

「ガレス。……ガレス」

「へ?…ってあっ、ううん、なんでもない!」

 

 手をわたわたと動かし先を急ぐガレス。こんな風にオラリオのものに目を奪われることは一度や二度ではなかったが、ふと気になってそのショーウィンドウの店の名を見た。

 どうやら、【ヘファイストス・ファミリア】の出張店の一つだったらしい。様々な武具が揃えられ、鋭利な輝きが何れもがかなりの業物だと理解させられる。それに見合うだけあってか、みな高額だ。

 

(口ではああ言っていたけど、やっぱり気になるか…)

 

 あの時、無理に笑ったガレスの顔がフラッシュバックする。

 

(……うん、コネを使うのはちょっとズルいような気がするけど、今回は特別ということで。…そのためには、まず神様を説得しなければ…)

 

 思い浮かんだ案を頭の中で組み立てながら、三人は廃教会への帰路を辿るのだった。

 





今までのガレスちゃんが使ってた槍はFGOのではなくて普遍的なただの馬上槍です。感想評価待ってます
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