パーシヴァルなベルくんと最強種な姉   作:食卓の英雄

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遅れてスマぬんのす。
サンブレイクとか試験とかあったんのす。


「これは、祭りの喧騒……という訳でもなさそうだ」

 

 

 きちんと必要素材を各ファミリアに納品し、結果を待つのみとなった次の日、この迷宮都市オラリオはある行事に湧いていた。

 

「怪物祭?」

「ああ、五年くらい前から始まった催し物だよ。何でもガネーシャ・ファミリアが主催でモンスターを調教する見世物をやるんだって。よかったらみんなで一緒に回らないかい?」

 

 『怪物祭(モンスターフィリア)』。オラリオの治安を担うガネーシャ・ファミリアが主催する、モンスターを公開テイムするイベントだ。

 当然、調教(テイム)というだけあって公開されるのは凶暴な迷宮(ダンジョン)産のモンスター。それが地上に持ち込まれることに最初こそ不安や苦言が呈されたが、オラリオでも指折りの大派閥であるガネーシャ・ファミリアが厳戒態勢を敷くことで、現在オラリオの名物となりつつある。

 

「成程、どおりで…。ものすごい活気だ」

「わぁー…、これがお祭り…。ひょっとして屋台とかもあるんでしょうか」

「ああ勿論あるよ! お祭り限定の屋台とか出張店なんかもあるらしいからガレスちゃんも遠慮せず好きに買っていいからね?」

「はいっ!」

 

 早速というべきか、お祭りに浮かれたガレスはあちこちに視線を巡らせている。普段オラリオをよく見て周っている彼女ならではの感動があるのだろう。

 

(…それで、神様。そちらの方はどうなっていますか?私の方は既に受け取っているのですが)

(大丈夫! 今朝イチで完成してサプライズのためにヘファイストスのところで預かってもらってるよ)

(おお、なんて仕事の早い…)

 

 実際、ヘスティアの懇願にどうにか武器を作ろうと鎚を構えたヘファイストスだったが、それが馬上槍、それも設計図付きの特殊兵装の類だと知ってはこう短期間で終わらせるのは難しかった。これが一本打であるのなら時間がかかっても一人で鍛つつもりだったようだが、特殊加工のパーツや機構から分担作業が可能であり、また湯水のように貴重な素材を使えるとあって、ある二人の団員を補助につけた結果が、ここまで迅速な仕事の秘密となっている。

 

(では時間を見つけて受け取りに行きましょう)

(うん。それまでは、純粋にこの祭りを楽しもう!)

 

 オー!と二人心を一つに、目を輝かせるガレスを微笑ましく見守っていると、先日訪れた店、豊饒の女主人の店員が何やら困ったように眉を下げている。

 

「何かあったのですか?」

「あ、おミャーはあの時の白髪頭兄妹とその仲間!」

「ボク達その他扱い!?」

 

 声をかけたのは猫人(キャットピープル)の少女。活発そうな笑みを浮かべた彼女はさり気なくヘスティア達にダメージを与えつつ、その訳を話し始めた。

 

「丁度良かったニャ。実は面倒ニャことがあってニャ。はい、コレ。白髪頭はシルと仲いいニャ。だからコレをあのおっちょこちょいに渡してほしいニャ」

 

 そう言って手渡されたのはがま口の財布だった。どこかの商業系【ファミリア】のエンブレムが刻まれたその紫色の財布は、こぢんまりとして可愛らしい。

 それは分かる。分かるのだが……ちょっと、話に筋道が立たない。いや、なんとなく言いたいことは分かるのだが、それが本当に合っているのかはこの言い方では確認することが出来ない。

 

「アーニャ。それでは説明不足です。彼らが困っているでしょう」

 

 そこに現れたのはエルフの店員が現れた。準備中だったらしいカフェテラスから歩み出て寄ってくる。

 

「成程、祭りに行ったシルさんが忘れたお財布を届ければいいんですね!」

「おお! オミャー話が分かるニャ〜!」

 

 折角出てきてくれたエルフの店員が説明を促すより早く、溌溂と言葉を返しながら財布を受け取るガレスにやはりそうだったのか…と思いながら、わざわざ出てきてくれた店員さんが恥ずかしそうに顔を歪める。

 

「リューはアホニャー。 ニャ? ちゃーんとミャーの話伝わってたニャよ? 財布だって見せたし届けるとも言ったニャ。これで分からないのは頭が固すぎるニャー。一体どこのカタブツエルフなのかニャー?」

「くっ…、ア、アーニャ!!」

 

 ニヤニヤと、なんとも苛立たしい顔で歩み出たリューと呼ばれた店員を煽り散らかし、結局いい一撃を貰って蹲る姿に心配を抱きながら、コホンと仕切り直したリューが、再び財布を指差し告げる。

 

「…と言うことですので、申し訳ありませんが仕事で離れられない私達に代わって届けてきてくれないでしょうか」

「ええ、その程度なら喜んで引き受けましょう」

「ありがとうございます。それと、バックパックは預かっていましょうか? 怪物祭に行くのなら邪魔になるかと」

「お心遣い感謝します。ですがこの後にも使う予定があるので…」

「そうですか…。いえ、余計なお世話でしたね。頼みました」

 

 もう一度深くお辞儀をし、送り出される。どうやら話によるとシルさんも祭りの中心地―――つまりは闘技場方面に向かったらしいから、行先を誤る心配はない。

 

「むー…これじゃあ貴重な僕たちの時間が」

「それに関しては同意。他にも冒険者はいただろうに」

「そんなこと言っちゃ駄目ですよお二人共!」

 

 この申し出には多少げんなりしつつも、プラン自体には影響がないのでまあまあと宥めつつ、人の往来盛んな町並みを歩いていく。

 

 道中、屋台に寄ってクレープや飴なんかを買ったりしてすっかり祭りを満喫している四人。今まで祭事に疎かったヘスティアやガレスはもとより、様々な国を訪れたことのあるベル達までもが、思わず目を奪われる活気だ。

 流石は世界の中心と言うべきか、その物流も交通も並の国をすら凌駕しているだろう。

 文字通り人混みを掻き分けて進み、いよいよ怪物祭の華である円形闘技場(アンフィテアトルム)前までやってきた。

 しかし、道中感覚を鋭くして注視してもシルの姿はとうとう捉えられなかった。

 店から同じ道をたどり最終的な目的地に着いても出会わなかったということは、既に観客席にいるのか、それとも途中で気がついて道を引き返した可能性もある。

 

「ですので、私は一度引き返してみます。ガレス達は席の確保と、シルさんが中にいたら教えに来てほしい」

「えぇー…? なんでそんな女のために…」

「ごめん。でもこんな人混みの中で迅速に情報を伝えられるのは姉さんくらいにしか出来ないから…」

「私しか出来ない…?」

「うん、姉さんなら空中から探せるし、このオラリオ中いつでも駆けつけられるだろう?」

 

 窘めるように告げるベルだが、その言葉に欠片の嘘も感じられない。恐ろしいことに、これをただの純然たる事実として言い放っているのだ。

 

「そっか、僕だけが頼りなんだ…。うん分かった!本当はそんな女どうでもいいけどキミの願いだ!」

「ありがとう姉さん。それじゃあ、なるべく急ぐから!」

 

 そう言って、ベルは人混みに逆らって走り出す。

 ヘスティアはその大きな後ろ姿を見届けた後、今のうちに槍を近くまで運んでこようかと思いついた。この闘技場の調教が終われば、それはフィリア祭の終了。祭りを堪能した直後にこのサプライズプレゼントを渡す。するとガレスちゃんは泣いて喜んでくれる。完璧なプランだ。

 

「あ、あの…ついでにボクの席もとっててくれないかな。ちょーっと、ちょーっとした野暮用を思い出してね。それじゃあ失礼するよ!」

「あっ、神様ー!?」

 

 誰が聞いても違和感を覚える焦ったような話し口調で以て足早に撤退するヘスティア。追求する間もなく小柄な女神は人の波で姿を見失い、一気にメリュジーヌと二人きりにされたガレスはかなりの気まずさを覚えながらも、四人分の席を確保するのであった。

 

 

―――…

 

 異変が起こったのは、そこから少ししての事だ。

 

「こちらにもいないか…。ならば、いよいよ店に帰っている可能性も高いかな」

 

 メインストリートを逆走するベルがその可能性を検討し、豊饒の女主人の元まで戻ろうかとしたところで、ふと何か地響きのような微かな振動を捉える。

 

「これは、祭りの喧騒……という訳でもなさそうだ」

 

 地底から何かが這いずる音。その発達した聴覚を最大限に活かし、この雑音の多い中に於いてその出現場所を探る。

 

(―――居た…!)

 

 ベルがそれを捉え、被害が出ない程度の速力で屋根を走る(ショートカット)

 ダンッと瓦を蹴り潰し、辿り着いた先はちょっとした広場。本会場程ではないにせよ、ここにだって人は大勢いる。急いで避難を呼びかけなければ――。

 

『ギシャアアアアアァァァァ―――!』

 

 現れたのは、緑黄色の鱗を纏う大蛇。石畳を貫いてその威容を見せびらかす怪物の出現に、周囲の市民は一斉に悲鳴を上げて暴乱と逃げ出した。

 

「モ、モンスターだあぁぁぁぁっ!?」

「うわぁぁぁ!?」

「ぼ、冒険者! ギルドに伝えて冒険者を向かわせろぉっ!?」

 

 人々が叫喚の渦に囚われ、その出現を皮切りにか遠方にも土煙が立ち悲鳴が上がる。見れば、そちらにも同種のモンスターが現れたらしい。見える範囲で、別々の場所に計6体。

 そして目の前の怪物が発する潜在能力は有に第二級冒険者にも勝らんとする程だ。これほどのモンスター、それも同種族の地上進行など、神ウラノスが許すはずもない。何か手を引いた人物がいるだろう。

 頭で考えを巡らせ、その体躯を殴りつける。

 

『ギャアアアアアアアアアア―――ッ!?』

「っ、これは、意外と硬いな…」

 

 槍は拠点にあり、一刻を許さない場面であるために殴打にて対処したが、この大蛇は確かなダメージを喰らいながらも耐えてみせた。 

 その際、悲鳴を上げる大蛇がその異形の口元を開く。頭だと思っていたそれには無数の亀裂が走り、ぱかりと展開する。花を思わせる真の姿を曝け出した食人花は、ベルを何よりの脅威と認識してその体躯を走らせた。

 

―――だが、それが命運を分けることになった。

 

「成程、そこが魔石(弱点)か」

 

 うねりを上げて石畳を削り突貫する食人花に、ベルは左肩を前に突き出し腰だめに深く構える。

 大口を開けて迫るそれから目を離さず、しかして瞳に恐怖を抱かず。

 

「ふんっ―――――ぬぉぁっ!」

『ギシャッ!?』

 

 激突。明らかな体躯の違い。明らかに見えた勝敗は然して、1M軌跡を刻みながらも食人花の勢いは完全に抑え込まれた。

 

「ぜいやぁっ!」

 

 受け止められ、次の行動に移る時間すら与えられぬまま、ベルの聖なる光を纏った拳が牙立ち並ぶ口腔に打ち込まれた。

 

 一瞬の余韻と衝撃。誰もがその行く末を見守っていたが、やがて食人花の体は灰と化し風に攫われる。

 ベルの勝ちだ。

 

「おおおおおおおおぉぉぉぉぉ―――!」「すげぇ…!」「あの兄ちゃんが仕留めたぞ!」「ありがとうお兄ちゃん!」

 

 上がる声援。その活躍を褒め称える者から、感謝の念まで。その場にいる一般市民からの言葉も程々に、他の場所でも確認できたことを伝えて避難するように誘導する。

 出現場所はコロッセオ近くを中心に円を描くようにして現れているため、その範囲から出ることができれば市民をわざわざ狙うこともないだろう。

 

 ―――後は、冒険者の仕事だ。

 

「行くぞっ、クントリー!」

 

 呼び声に反応して愛馬が駆けつける。オラリオ市民は道を次々と空け、さっとクントリーに騎乗する。

 

「――選定の槍よ!」

 

 手を横に出し、その名を叫ぶ。すると、遠方から槍が飛来し私の手に収まる。軽く空気を切り裂き慣らし、一直線に食人花のもとへと向かい走る。

 

「…純白の、騎士様」

 

 ポツリと、誰が呟いたか定かではないその言葉が、不思議とその名がしっくりときた。過ぎ去ってゆく遠い背中を仰ぎ見て、この事件の解決を確信した彼らは慌てずギルドの指示に従って避難を開始した。




食人花さん(強化種)瞬殺。
しかもメインウェポンなしの状態でかつ周りの被害を最低限に抑えるための戦いでだぜ?
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