SAO:TS~アインクラッドで合法的に美少女になる方法~ 作:スプライト1202
設定に矛盾や間違いがあれば、指摘もらえると助かります。
……え? そもそも原作内で設定が矛盾してるし二転三転してるって?
それは知らん!!!!
「おおおおおおおお兄ちゃん!? 買えちゃった! わたし購入できちゃった!?」
「ななななななんだってぇえええええ!?」
俺は「本当か、ユリカ!?」と携帯端末を覗き込んだ。
そこには『購入が完了しました』の文字。
今日は世界初のVRMMORPG《ソードアート・オンライン》の予約開始日だった。
ふたりして「「うぉおおおお!」」と叫ぶ。
「お兄ちゃんは!?」
「……ま、まだ店頭販売があるし」
「買えなかったんだぁ~? ふぅーん? ま、フツーそーだよねぇ~」
ふてくされた俺を見て、ユリカがニヤニヤと煽ってくる。
ベータテストですら当選倍率100倍。1000人の枠に10万人が応募するという異常事態だったのだ。買えなくて普通だ。
「チッ、自分が買えたからってチョーシに乗りやがって……」
「舌打ちぃ? ほほぅ、いーのかなぁ? そんな態度取っちゃって」
「あん?」
「はぁ~、残念だなぁ~。さすがに次の入荷ってなるといつになるかわからないし、ちょっとくらいはお兄ちゃんにもプレイさせてあげてもいいかも、なーんて思ってたのに」
「女神さま、仏さま、ユリカさま! ケーキはいかがですか? ジュースはいかがですか?」
「うむ、くるしゅうない」
俺は「ははぁ~」とユリカにこうべを垂れた。
《ソードアート・オンライン》の初回ロットはたったの1万本。
そんな限られたうちの1本をユリカは手に入れたというわけだ。
ナーヴギア同梱版は税込12万9800円。
ゲーム機としては超高額。
社会人の俺でもそう感じるのだ。まだ学生であるユリカにとってはなおさらだろう。
しかし、彼女はためらうどころかウッキウキで溜め込んだお年玉を吐き出す。
俺はそれを、悔しさのあまり血涙を絞りながら見ていることしかできなかった。
* * *
2022年10月31日、日曜日。
《ソードアート・オンライン》の発売日。
我が家についにソレが届いた。
「ふわぁああああ、新品の匂い」
ユリカはピカピカのナーヴギアを被り、ベッドにダイブした。
「うぅぅ~~~~」
「ちょっとお兄ちゃん。そんな恨めしそうな目で見られてるとやりづらいんだけど」
「うぅぅぅぅぅぅ~~~~~~!」
「はぁ、もう相手してられないからね。えーっと起動は、と」
ユリカが手探りで電源ボタンを探し当て押す。
ナーヴギアが起動した。
「ええっと初期設定……アカウント作成……セットアップステージ……キャリブレーション……」
身体のあちこちをタッチしたり、
「うんしょ……よっと」
ベッドの上で足を上げたり、腕を伸ばしたり、手をグーパーしたり、
「あいうえおかきくけこ……」
と発音したり、
「うー、いー、ぼー、ぐぇー」
といろんな表情したり。
「どわはははははは! 変な顔!」
「うっさいアホ兄ぃ!」
ユリカが顔を真っ赤にして怒った。
しかしすぐにワクワクでたまらない! という表情に戻る。ちぇっ。
「よしじゃあ、今からちょっとだけフリーのVRゲーム試してくる。あ、でも。その間にわたしの身体に変なことしたりしないでよね」
「もみもみもみ」
「今なら触ってもいいって意味じゃ、ない!」
「ぐぼぉっ!?」
蹴り飛ばされた。
「ごほっごほっ……」
「あ~ごめんね~。つい、わたしの長い脚が出ちゃった」
「チビのくせに……あー、ウソウソ! グラマーなおネエさま! わかってるって。ゲームのジャマはしない」
「ほんとにわかってんだか」
言って、ユリカは目を閉じる。
「ゲーム《スカッシュ》、起動」
「……おーい? おーい!」
呼びかけるが反応はない。
今ごろVRゲームを楽しんでいるのだろう。
「うぅぅ~~。羨ましい、羨ましいなぁ……はぁ~」
ちらりと視線を脇へやる。
《ソードアート・オンライン》のパッケージが、日の光を浴びまるで宝石のように光っていた。
* * *
それからの日々は地獄だった。
「ねー、お兄ちゃん。いーのー? ほんとにー? やらなくて?」
「……いい。俺が最初にプレイするVRゲームは《ソードアート・オンライン》って決めてるんだ」
「ふーん。お兄ちゃんがいいなら、いいけど」
《ソードアート・オンライン》の発売日と正式サービス開始日にはズレがあった。
ユリカはその間にナーヴギアでフリーゲームをプレイしたり、低価格帯のVRソフトで遊んでいたが、俺は断固として拒否していた。
俺の《ソードアート・オンライン》への思い入れはユリカの比ではなかったのだ。
ファンタジー世界を舞台とした世界初のVRMMORPG。まだユリカが赤ん坊のころ、俺が小学生のころからの憧れだ。
ネタバレを回避するためネット断ちし、販売情報だけユリカから口頭で聞くという徹底ぶりだ。
そしてなにより、俺はまだ自分のナーヴギアと《ソードアート・オンライン》を手に入れることを諦めていない。
店頭販売は日を分けて行われる。初回ロット入手のチャンスはまだ残されているのだ。
俺は「今はまだ」とユリカの誘いを拒否し続けた。
「……はぁ、もう。頑固だなぁ」
そんな俺を見てユリカは、困ったものでも見るふうに肩をすくめた。
うるさいうるさい! 俺がそうしたいからいいんだよ!
* * *
そして、ついにその日が訪れた。
発売から1週間後。
2022年11月6日、日曜日。12:58……12:59……そして13:00。
《ソードアート・オンライン》の正式サービスが開始された。
「――《リンク・スタート》!」
そのひと言をきっかけにユリカは眠ったかのように反応がなくなる。
俺はそんなユリカの横顔をじーっと眺めているだけだった。
「……結局、手に入らなかった」
やれることは全部やった。
オークションにも張り付いていたし、有給を取って数日前から徹夜で店に並んだりもした。しかし、ついぞ《ソードアート・オンライン》のパッケージを入手することは叶わなかった。
初回ロット1万本。内1000本はベータテスト参加者が優先的に購入できたことを考慮すれば9000本。
徹底的な転売対策がなされていたことを差し引いても、その倍率はすさまじかった。
ただただ純粋なる熱量、あるいは運の勝負。
俺はそれに負けた。
だれも恨むことはできない。
されど羨むことは止められない。
……。
…………。
………………。
「……んんっ、ふぅ~。ちょっとだけ休憩ぎゃぁああああ!?」
「うぅぅ~」
「ってお兄ちゃんかビックリした!? え、まさかずっとそこで見てたの!?」
ユリカに言われて気づく。いつの間にか3時間以上が経過していた。
「いや、初日はわたしがプレイするって言ったでしょ?」
「だってぇぇ~」
思わず涙がこみ上げる。
「うっ……はぁぁぁ~~」
ユリカは大きく、大きくため息を吐いた。
それからナーヴギアを脱ぎ、それを枕元に置いて立ち上がる。
「あーちょっと汗で蒸れちゃったなー。わたしお風呂入ってこよっかなー」
「あれ? ナーヴギアの内部クッションは汗や老廃物を分解する新ジェル素材でできてて、丸1年被ってても蒸れないって触れ込みじゃ――」
「あーもう! うるさいうるさい! 言ったとおり、わたしお風呂だから! だからお兄ちゃん。くれぐれも……く・れ・ぐ・れ・も! 勝手にプレイなんかしちゃダメだからね!」
言って、ユリカはとてとてと部屋を去って行った。
ばたん、と扉が閉まる音が響いた。
「……」
じーっとナーヴギアを眺める。いや、視線が釘付けだった。
ゴクリと喉が鳴った。
「いやいやいやダメだ! ユリカもプレイするなって言ってたし」
なにより、ここで半端にプレイなんてしてしまったら……。
ネタバレがイヤだからとネット断ちまでしていた意味がない。
「と思ってるのに身体が勝手にぃ~」
俺は流れるような動きでユリカのベッドに滑り込み、ナーヴギアを被った。
やっぱり全然、汗臭くなんかねーじゃん。どころか柑橘系のシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐった。
思い返してみれば、ユリカはプレイ前にわざわざ風呂に入っていた。
兄妹なだけあって彼女も俺と同様に、気に入った作品へ臨む際は身も心も清める習慣があった。
「ええっと?」
手探りで電源ボタンを押す。スリープモードが解除された。
しかし、そこから先がわからない。
「んんん? ナーヴギアのアカウント追加ってどうやるんだ? 切り替えってどうやるんだ?」
こんなことなら意地を張らずユリカのナーヴギアを借りて、正式サービスが開始されるまでの1週間でアカウントを作ったり、《ソードアート・オンライン》のキャラクタークリエイトくらいはしておけばよかった。
「うーん、わからん!」
昔からこの手の設定とか説明書を読むとアレルギーが出る。
「おーいユリカ~! これってどうやる……」
いつものクセでユリカを頼ろうとして、慌てて口を閉じる。
アホか俺は。勝手に使ってるのがバレるだろーが。
幸い反応はなかった。
もう風呂の中なのだろう。
「うーーーーん、わからん!」
しばらく(5秒くらい)悩むがわからず諦める。
この面倒だと思った瞬間に諦めてしまうこと。これがいけない。
ユリカに『お兄ちゃんは説明書が理解できないんじゃなく、理解しようとしないだけ』と耳にタコができるほど言われたことを思い出しつつも、俺は迷いなく諦めた。
「ユリカが戻ってくる前に返さなきゃだし、このままでいっか!」
自分のアカウント作るのはあとにして、ちょっとだけ! ちょっとだけ先にプレイだけしちゃおう!
アプリケーションから《ソードアート・オンライン》を選択する。
ゲームが再開され、俺の意識は電子の世界へ取り込まれた。
* * *
――ぱちくり、ぱちくり。
何度か目を瞬かせる。
世界は様変わりしていた。
基本的には原作とアニメベース。
とはいえ両者はところどころ設定が異なるし、矛盾もある。
本作ではそのあたりを誤魔化したり、逆にツッコんだりしながら、都合よくつまみ食いしていく予定。