綺麗なだけじゃない狼谷さん   作:狼谷さんカワ(・∀・)イイ!!

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暑いっす~~~……。。。_| ̄|○


キミと文化祭⑦ 結果

 

 

 

これはソラくんの効果か。

狼谷さんの効果か。

いやいや、クラスの皆が一丸となって宣伝から接客まで全ての面で頑張ったからか。

或いはその全てか。

 

 

兎にも角にも、1年3組はお客様方に絶大な支持を受け、他を圧倒して文化祭最終日を迎え―――その結果。

 

 

なんと前代未聞。学校創業以来初。

1年3組は、他のクラス、2,3年をも押し退けて1位優勝を果たした。

 

 

 

「んじゃあ、盛大に行くぞ!! 3日間おつかれ!! かんぱ~~~~いっ!」

【かんぱーーーい!!】

 

 

文化祭お疲れ様会。

その費用はなんと0円(タダ)

タダ券を片手に、盛大に手を上げて盛り上がる1年3組!

 

 

「せんせ~~~! そこは、カンパイ! じゃなく、完勝(カンショウ)! にする~~~って言ってなかった??」

「そーだそーだ! なんか、そのミスどっかで聞いた事あるぞーー!」

「うぐっ……、そ、そーだった……って、んな事より! お前ら飲め食え騒げ! こっちの方が重要だろっ!? 優勝おめでとうっっっ!!」

【うおおおおおお!!】

 

 

事前に、カンパイの音頭を取る際、勝ったのだから完敗(カンパイ)ではなく、完勝(カンショウ)にしよう! と言いだした発端が先生。

確かに、どこかで聞いた事のあるフレーズな気がするが………、それは兎も角騒ぎたいのが一番だから、直ぐに忘却の彼方。

 

嬉しいし、盛り上がればそれで良い。

クラスの最高の思い出を作る事だって出来たし、幸先も良いと思えるから。

 

 

「うぇ~~い、立役者、男子部門MVPな御神く~~ん、飲んでますかぁぁ!?」

「御神っち最高っ! 愛してる~~♪」

「今後ソラく~~ん、って呼ぶ様にしようか?」

「うわわわっっ、ちょ、ちょっと皆落ち着いてー! あと、それはヤメテっ! 普通で良いよっ!」

 

 

話題の人物、渦中の人物が当然真ん中に。

それは御神くんで、そしてもう一人―――。

 

 

「あはっ! 狼谷もでしょ~~!」

「さっすがっ!! 狼谷のおかげでお客さんめっちゃ来たよっっ その分、めっちゃ大変だったけど」

「女子部門のMVPは狼谷さんに決定だね!」

「いやいや、私だけじゃなく皆の力だと思うよ。皆で掴む事が出来たんだ。………勿論、御神くんも頑張ってくれた」

 

 

狼谷さんもそうだ。

狼谷さんの姿は人を惹きつけ、更に引き寄せられた後には心を落ち着かせるメロディがハートをガッチリと掴み、軈て虜にされる。

 

それが1年3組の執事喫茶の真骨頂! と言う訳で、話題が話題を呼んでお客さんが沢山の大盛況になったのだ。

 

因みに大盛況になれば当然ソラくん=御神くんの事をしっかり話しておかないと、後々言い訳が大変な訳で……(ソラがずっといれば、御神くんがずっといない、と言う事になるから)。

 

誤魔化しは不可、と言う事になり、色々とカミングアウトしたら更に場が騒然としたのは言うまでもない。

 

騒然としたが、当然クラスの皆は大歓迎。さらっと受け入れられたのは言うまでもなく、御神くんは、【御神】としても【ソラ】としても受け入れられた事に対して、思わず感涙してしまって、益々混沌になったりした。

 

そんな情緒不安定になりかかった御神くんだったが、そこは狼谷さんが傍に居てくれたおかげで、頑張って持ち直したのである。

 

クラスの男子・女子問わず庇護対象の様に感じて益々御神くんの人気が爆上がりした瞬間でもあった。

 

 

でも、その後はまた別な意味で大変だった。

演奏を聞いていたい声、アンコール等が重なり、交代休憩する事が出来ずに大変だった。

過去を振り返っても間違いなく長時間演奏記録更新だった。

 

 

 

 

―――場が盛り上がってきた所で、ちょっとした席替え。

 

 

 

 

「いっや~~、私もここに来て良いのかね~~。ま、流石に自腹だけど」

「夢川先生。勿論ですよ。先生が居なかったら、ぼくきっと潰れてますから……」

「そりゃまぁ、あれだけ人気出たら……ねぇ?」

 

 

ピアノ面では、人員が当然ながら少ない。

女子の間では弾ける者もいるには居たが、皆が小学生まで~程度であり、御神くんの演奏後に我こそは! と手を上げる者が全くいなかった。

 

話題を呼ぶピアノだったから、生半可な演奏をしてしまえば、顰蹙を買う可能性だってある訳だし、ありがたい事に目的の1つとして演奏を聞きに来てくれてる人も居る訳だから。

 

 

その代打として、音楽の先生事、夢川先生が助けてくれたのだ。

 

 

「ふふ~ん。ああでもしなかったら、狼谷と一緒に文化祭まわる~なんて事出来なかったでしょ? 最初に聞いた時は驚いちゃったよ。おまけに見事にくっつくなんて、もっと驚いた!」

「~~~~ッッ、は、はぃ……。先生には、感謝してもし足りなく………」

「あっはっはっはっは! いーのいーの! 若いって良いさね~~~。青春青春。良きかな良きかな♬」

 

 

そう―――御神くんにとって、この文化祭で一番重要なイベントの時間を、夢川先生が作ってくれた、と言っても過言じゃない。

 

折角、狼谷さんと一緒に回る事になったのに、忙しすぎて……仕事が忙しすぎてすれ違い~なんて、色んなトコでありそうな離婚理由も同然。

 

狼谷さんは、御神くん程は時間に囚われてなかったので、調節するのは訳無かったようだが。

 

 

「私も、とても楽しかった。夢川先生、ありがとうございます」

「あっはっはっは! だからいーのいーの! んで、狼谷? しっかり手綱握ってやれよ? 御神(こいつ)は、どっちかって言えば、引っ張ってってくれる姐さん女房が良いんだ。それとしっかり握ってやらないと、フラフラする可能性だってゼロじゃないし」

「! はい」

「も、もうっ! 酔っぱらってるでしょ!? 先生っ!! 水飲んでくださいっ!」

「なーに言ってんだよ、わたしゃ、酔ってねーし!! あっはっはっは! 可愛いなぁ、こいつ~~~」

「わぷっ」

 

 

何処からどう見ても酔ってる。

ジョッキやビール瓶も空が目立つ。

他の皆も、テンションが凄まじく高いから、この場で酒盛りしてるのでは? と思われても仕方がない。

 

でも、学校御用達のお店だから特に問題はない。

……勿論、未成年の飲酒等は絶対厳禁だし、普通に教師陣はクビが飛び、生徒たちも無論退学と言う名のクビを免れないから、暗黙の了解~とかになってる訳じゃない。

 

いつの時代でも、この学校の生徒たちは、先生たちは元気で賑やかだと言う事。

そして、悪い子は1人も居ない、と言う事。

それを、店主は知ってるのだ。

 

 

「御神くんの事は心配してませんよ。それにもしも、御神くんの傍に、どんなに良い人で、魅力があって、綺麗で素敵な方が、彼に惹かれて、吸い寄せられて、目の前に現れても………私はただ負けない様にするだけです」

 

 

実に対照的に、狼谷さんは毅然とした対応で返す。

夢川先生の言う事もあながち間違えてない節はあるものの、御神くんの芯の強さは狼谷さんも知っているつもりだ。そして、何より優しい所も。

そこに、自分こそが甘えてしまうかもしれないな、と狼谷さんは笑った。

 

それは見惚れてしまう微笑み。

 

 

「―――それは想像、出来ないです。だって、だって………」

 

 

御神くんは、狼谷さんの話を聞いて顔を赤くさせながらも、頭の中で想像力を働かせる。

どれだけ想像しても妄想しても夢を見たとしても、目の前の全てを受け止めて、受け入れてくれたただ1人の女性より良い人で、魅力があって、綺麗で素敵な人が想像できない。

 

 

 

「ぼく自身が もう狼谷さんしかいない、って思ったから。だから、あるとしたらぼくが愛想をつかされる事。……そんな風にならない様に頑張る以上に考えられません」

 

 

 

御神くんも微笑みを向けた。

 

 

【愛想をつかすなんてありえない】

 

 

と狼谷さんは反論し御神くんももう一度。

 

 

【狼谷さんしかいないから】

 

 

と静かに力説。

熱く言い合う事こそはしないが、2人の間を流れる空気はとても穏やか。

互いに交わる純粋(ピュア)な空間。

 

 

 

「ほんっと、良いねぇ~~。青春だね~~~。羨ましいねぇ~~。もう、こんなの旦那とは無いかな」

 

 

少々穢れた? 大人な空気とおっさんな絡み方をしてる夢川先生の酔い冷ましにもピッタリ。

そして迎え酒を入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな空間。如何に場が盛り上がって打ち上げが盛り上がって勝利の宴に酔っていたとしても、気づかない訳がなく。

 

 

「それにしてもなんか、怪しいな~~って思ってたのは事実なんだけど、ほんっとあの2人ってくっついてたんだねー。御神っちをバレー部に勧誘する時だって、狼谷ってばいつも以上に積極的だったし?」

「いやいや~~、もう。夢川先生じゃないけど、あのピュア過ぎる空間が眩しすぎるよぉぉ!! ちょこっとでも否定的な事言っちゃった日には、あの狼谷が凄く怒りそうで怖い」

「普段から優しくて、怒らない人程怒らせたら怖い……って言うのが世の常だしねぇ」

「それ、御神っちにも言えるかも? 怒りを表現したピアノ演奏!! みたいなのもするかもね~~。……まっ、御神っちが良いヤツだって事知ってるし、狼谷も知ってる。だから、そんな事しないけど」

 

 

「うぅぅぅぅ、狼谷がついに彼氏持ちか………」

「自分じゃ絶対無理だって解ってたとは言っても、正直ショックだ………。でもなんかそれ以上に見守りたい!! って気分にさせられちまうのも複雑だ!!」

「解る解る。つーか、御神が良いヤツ過ぎるんだよなぁ。ちょっとでも悪目立ちしてりゃ、文句の1つでも言ってやれるのに」

「嫉妬の念は当然送りつつ―――――お祝いだ~~~! ってなるよなぁ。最終的に」

 

 

 

男女問わずにあっと言う間に話題の中心と化していた。

 

 

 

因みに、御神くんと狼谷さんがクラス公認の仲になったのは文化祭2日目の終わり。

 

 

 

 

あのサプライズ企画でソラとして初登場し……ラブソングを2人に送った。

少し前に映画館で上映されていた恋物語の主題歌。それも式守さんと和泉くんにピッタリだと言える、主人公とヒロインが結ばれる恋物語だから、より意識させれる事が出来たと思う。

 

曲を聴きながら……少し顔を赤くさせていたから。

 

 

それはそうと、2日目開始直前。

御神くんがやや早めに登校し、もう少しで学校……と言う地点で。

 

 

「~~~~ッッ、み、御神くんっっ!!」

「わぁっ!??」

 

 

突如、背後から強烈な圧と声と衝撃の3点セットを頂いた。

思わず倒れそうになったんだけど、どうにか体感で堪える御神くん。

 

 

「あ、あ、あ、ありがとうっ! ほんと、ありがとうっっ!! ぼく、ぼく! しき、しき、式守さんとッッッ!!??」

「っっ!?? い、和泉くんっ!?? お、落ち着いて落ち着いて」

 

 

誰が背にしがみついてるのかは直ぐに解った。

見るまでもない。和泉くんだ。

 

でも、背中に抱き着く形にはなったから、そのままだと身動きが取れないし、アクションも中々取りずらい。おまけに振り払う訳にもいかない。

 

なので、暫く興奮する和泉くんを、御神くんは落ち着かせる事にした。

 

 

 

暫く御神くんの背で悶えて? る和泉くんだったが、漸く正気に戻った様子。

早めの登校で良かった。まだ通学路には学生の姿はないし、あのままの状態で見られていたら、在らぬ疑いを学校に広めてしまうかもしれない。

それは、和泉くんにとっても御神くんにとっても、ある意味式守さんや狼谷さんにとっても良いとは言えないから。

 

 

「ぼく、晴れて式守さんとお付き合いさせてもらえる様になったんだっ! 御神くんのおかげだよっ! 御神くんがぼくに勇気をくれたから!」

 

 

涙目になりながら両拳を握りしめて、訴える和泉くん。

そんな和泉くんと対照的に、穏やかな表情を作るのは御神くんだ。

 

 

「ううん。ぼくじゃなくそれは和泉くん自身の力だよ。和泉くんの人柄や優しさに式守さんが惹かれたんだと思うから。流石に、その辺りに関しては他人(ぼく)じゃどうしようもないしね?」

 

 

苦笑いしながら頭を掻く御神くん。

和泉くんは、エグエグ、とまだ涙を啜っているようだ。

構わず御神くんは続ける。

 

 

「お礼を言わなきゃいけないのは、ぼくの方も、だよ。何度だって言いたい。和泉くんがいてくれたおかげでぼくも勇気を持てた。だから、ぼく()頑張ってみる」

「!!」

 

 

そう言うと、御神くんは学校の方を向く。

徐々にではあるが、人も多くなってきた。部活は休みになってる筈だから、文化祭の2日目早朝準備等がある人達だろう。或いは委員会関係か。

 

 

「じゃあ、2日目もお互いに頑張ろうね」

「う、うんっ!」

 

 

そう言い、互いにそれぞれのクラスへと向かった。

 

 

和泉くんと式守さんが見事くっついた。

それは御神くんにとっても喜ぶべきニュースだ。

傍目から見てもお似合いだし、何より和泉くんを護ってる姿は堂に入ってる。一応、男の子な自分よりもはるかに素早く的確で、迅速に行動をして和泉くん危機を乗り越えてる姿は本当に脱帽。

何より、和泉くんに向けている眼差しを見れば、誰だって解る。

 

 

 

 

 

「2人とも。どうか―――お幸せに………」

 

 

 

 

 

心晴れやかとはこの事を言うんだろうなぁ……と御神くん。

勿論、自分も心に決めている事がある。

文化祭中に……何とか。

 

 

「…………やばい。すっごく緊張してきた。心臓の音、やばいっ……」

 

 

本人が居ないのに、それでもスゴク緊張してしまうのは、やっぱり圧倒的に不慣れだから、だろう。

和泉くんや式守さんにも背を押してもらって、狼谷さんだって待ってくれている様で………。それでも、中々に高威力。心臓が高鳴ってしまう。

 

 

「…………と、取り合えず、軽く練習をしておかないと」

 

 

御神くんは、両頬をぱちんっ、と叩くと足早に音楽準備室へと向かう。

 

玄関から入って靴を仕舞い、まだ人気のない廊下を横切って、その先にある完全防音設備の準備室へ。

 

夢川先生が扉の鍵は開けてくれていた様だから、問題なく入室は出来た。

棚に自分の荷物を一時仮置きして、ピアノへと向かう。

 

準備をして、後はピアノの最終チェック、練習をするだけだ。

本人以外からは、あれだけ上手なのに練習って必要? って思われるかもだが、練習だけは疎かにしてはいけない、と考えてる。

どんな事でも本番があるのなら、練習はしっかり積重ねる。

 

 

 

指と指が、鍵盤に吸い寄せられる様に導かれ、メロディを奏でる。

 

 

 

「(………お父さん。こんなぼくにも、また好きな人が出来たよ)」

 

 

 

父親の姿を思い浮かべながら、嘗て母親を射止めたと言う洋楽。ラブソング(ピアノver)を奏でた。

照れ笑いをしていた父親の顔を今でも覚えてる。

こんな気分だったんだろうか……? と御神くんは今更ながら父親の心境を察し、そして笑った。

 

 

 

「(……こんなぼくで良い、って言ってくれたんだ。あ、ごめんね? こんな、って言わないでって言われてるんだけど、ついお父さんには言っちゃった。………ふふ。どっちからも怒られそうだ。……もう、お父さんにも言わないよ。約束)」

 

 

 

時には静かに、時には情熱的に、奏で続ける。

取りつかれた様に、一心不乱に、音色に心を込める様に。

 

そんな事が出来るのも、この準備室だからこそ。

 

 

 

だから……だろうか。

ガラっと誰かが入室してきたのが解らなかったのは。

 

 

 

「――――――――」

 

 

 

そして、御神くんが、入出者に気づく事が出来たのは、まるで天使の様な歌声が曲に合わせて聞こえてきた時、だった。

 

 

 

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