綺麗なだけじゃない狼谷さん 作:狼谷さんカワ(・∀・)イイ!!
「よっしゃ、今日はここまで! 片付けもそうだが、ちゃんとストレッチして、身体のケアしておけよ!」
【ありがとうございました!!】
今日も一日終わりを告げる……と言って良い。
それ程までのハードな練習が今終わりを告げたから。
部員たちの殆んどが、終わりを告げられ、挨拶をした後、身体から力を抜いてるのが傍目からみてもよく解る。
心からお疲れ様でした、と言いたい。
「はい、皆さん。今日も練習お疲れ様です。これ、差し入れです」
心からの労いと共に、用意していた差し入れを手に持ってるのは、晴れて女子バレー部のマネージャーを引き受けた御神くんだ。
芦川先生もまさか本当に引き受けてくれるとは、と大喜び。
暫くは良い意味(上機嫌)でも悪い意味(練習がより厳しくなる)でもテンション増し増しな練習になっていたのは言うまでもない。
そんな終わりの時間、差し入れ~と、女子バレー部の皆さんに差し出すと、一斉に。
「「「「きゃ~~~っ♪」」」」
黄色い悲鳴が体育館内に響いて御神くんの方へと群がった。
その声量による音圧や体育会系女子たちの威圧? 何よりも数が多いので、如何に男子の中でも身長が高い分類に入る御神くんであっても圧倒される。
「良いの!? 食べても良い!? ねぇねぇ狼谷っ!? 良いよね良いよね!??」
「―――ああ。良いよ」
最初はいつも別に自分に許可を獲らなくても~と、言うのだが恒例になってしまった事もあって、狼谷さんは苦笑いをしながらOKと頷いていた。
因みに、彼女は彼女で、最初のころは 御神くんに集まり、もみくちゃにされる事もあって、それなりに嫉妬な負なオーラっぽいのを具現化しかけていた事もある。
時には頬を少し膨らませて赤くさせるそんな狼谷さんが可愛くて可愛くて、揶揄う事が何度かあったんだけど……笑いごとじゃ済まない様なレベルの負のオーラが具現化しかけた所である程度部員たちは自重を覚えたのだ。
違う意味で 以前の、近寄りがたく、孤高な狼谷さんに戻ってしまう方が絶対嫌だ、と言う共通の認識もある。
今の柔らかくフレンドリーになった狼谷さんの方が絶対に酔い。それは猫崎さんを中心に、バレー部一丸となっての認識だ。そして1,2,3年分け隔てなく、でもある。
「えっと、今日は何かな何かな~~!?」
部活の練習は極めてハードだ。
だから当然途中で入る補給タイムは、肉食獣の様に涎を垂らす勢いで皆やってくる。
勿論、肉を持ってきたわけではなく―――。
「レモンのハチミツ漬けです。沢山作ってきたので皆さんどうぞ」
多数のタッパーの中に入れられた御神くん製 ハチミツレモン。
スポーツの試合や練習時と言えばコレだろう。
ハチミツは、果糖・ブドウ糖、糖質が消化吸収に優れていて、エネルギー源として大いに期待できる。数ある中でもハチミツは素早くエネルギーとして消化できるので、疲れた練習時、試合の途中などでは大活躍。
更にビタミンB1、B2、アミノ酸、ミネラル分……等々も多く含むから疲労回復効果も期待大。
そこに加えられるレモン。
レモンと聞けば酸っぱいイメージが強いだろう。それこそが良いとされるクエン酸で、そしてビタミンCも沢山含まれている。
ハチミツに含まれる成分とレモンに含まれる成分は相性最高。
何より疲れた身体に染み渡る。
皆がそれぞれ口に1つ放り込み、軈て煌々とした表情を見せてくれた。
そして、その後は口揃えて開口一番。
「「「「お~~~いしぃ~~~っ♡♡♡」」」」
頬を抑えて大絶賛してくれた。
「ほんと、ナミちゃんのお兄さんなんでも出来るよね~素敵っ!」
「この間のクッキーだって、凄く美味しかったし。カロリーOFFなお菓子も作れるとか
「えっへへ~~♪ まぁ、私も頑張って手伝ってるケド、リク兄の方が上手なのは複雑だけどね。あ、でも美味しいよ、って言ってくれてるし、今度私も何か作ってきてあげるねっ」
「よっしゃっ!」
「やたっ♪」
兄を褒められて嬉しいのか、ナミは胸を張っていた。
これまでは、兄が他の人に盗られる! と気が気じゃない様子を見せていたナミだったのだが、あるべき所? に収まった兄の姿を見て何処か吹っ切れた様子。
「あ~~ん、狼谷センパイと付き合ってなかったらなぁ……、絶対メチャアタックしてたよっ! それこそバレー以上に!」
「あ、私も私も! ふとした時に見せてくれる笑顔が素敵だよね……、格好いい、って言うより可愛い、って感じがするのも良い! 狼谷センパイと一緒に居る姿とか、ほんと凄くイイ! 羨まし~だよ~」
バレーボールなら何度も何度もアタックしてる。
その勢いで、御神くんに迫っていても不思議じゃない。ソレほどまでに、胃袋を掴まれてしまったのかもしれない。お世話してくれるのが心地良すぎるのかもしれない。
妹のナミは、兄のリクに対して吹っ切れた、と自分では思ってるかもしれない。
でも、この手の話を聞くと―――――。
「ダメだよっ! リク兄ぃには狼谷センパイ以外は絶対ダメなのっ」
少しはまだ残っている様子が見られる。
そんなナミの事を良く知ってるからこそ。
「大事なお兄ちゃんだもんね~??」
「素敵なお兄ちゃんだもんね~??」
「ふぇっ!?」
沢山揶揄われて遊ばれるのだ。
「ふぅ………」
「お疲れ様です。狼谷さん」
「ああ。御神くんもお疲れ様」
部活も終わり、後は帰路に着くだけ~……の所。
当然、御神くんと狼谷さんは一緒に下校をする。街灯の明かりがあるとはいえ、太陽が殆ど沈んだ薄暗い道を1人で帰す訳にはいかないから。
偶然と幸運にも、狼谷さんの家と御神くんの家は同じ方向。更に言えば、御神くんの家の方がやや遠いから、家まで送っていけるのが本当に良かった。
2人で歩くのも大分慣れた……かもしれないが、まだ時折ドキドキする。
それがまた良いんだ。
「っ………」
そんな時、狼谷さんの方できゅ~~っと、小さい音が鳴った。それがお腹の虫の音である、と言うのは当然ながら気付く。
数ある部活の中で、間違いなく5本指に入るくらいにハードな部活がバレーだ。雨の日も晴れの日も関係なく、天気に左右される事なく、体育館内だから日が落ちても続くバレー。只管ボールを追いかけ、走り跳び続けるのだから、当然お腹だって空くだろう。
狼谷さんにバレない様に、それでいて軽く微笑みを浮かべて、御神くんは《そう言えば》と切り出した。
「フルーツをカットしたのが余ってたんだった。日にち経っちゃうと鮮度が落ちちゃうし、狼谷さん、一緒に食べない?」
お腹が鳴った事は追及しない。でも、ニコッと笑った事やこのタイミングで食事系の話をしただけで、聞こえていたよ、とバラしている様なモノだろう。
「……頂くよ。ありがとう」
少し狼谷さんは恥ずかしそうに視線を下へ俯かせると、爪楊枝を1つ取り、グレープフルーツを取って、口の中に頬張った。
歯を立てると、中の果汁と共に果肉が出てきて、口の中を鮮やかで美味しく彩ってくれる。
本当に美味しい。止まらなくなりそうだ。
「次、フルーツポンチでも作って来ようかなぁ。あ、でもそれだとちょっとした紙皿やスプーンもいるから、食べやすい方が良いかな? えっと、他には――――」
御神くんは指を折り折り、次も差し入れを考えていた。
皆の為に色々と振舞ってくれるのは本当に嬉しい。
でも、この瞬間くらいは……。
「ん……。御神くん」
「え?」
自分の事を見て欲しい。
そう想った狼谷さんは、爪楊枝を突き刺す。それは赤い赤いイチゴ。心なしか、ハートの形に見えなくもないイチゴ。
「その、食べないか? ……ぁーん………と、言うヤツで」
「ッ!?」
狼谷さんが使った爪楊枝に加えて、あーん……と言うまだ未知の体験、未知の道筋を示されて御神くんは大パニック。
1年生の文化祭から2年生の今日まで、それなりに長いと言えなくもないが……まだまだ超プラトニックな2人。手を繋ぐのがやっとで、繋いだら繋いだで顔を真っ赤にさせる程の純粋純情。
恥ずかしい事極まれり、だが 狼谷さんも精一杯頑張ってるのが解る。火照って茹ってるのが解る。狼谷さんはいつもクールに見えているけど、その内にはとても熱い、温かいモノがある事を、御神くんは知ってる。
そんな彼女がこうやってくれてるのだ。答えなきゃ男の子じゃない。
「あ、あーん……」
「ん――――」
顔を真っ赤にさせながら、御神くんは差し出されたイチゴを一口。
作ってくる過程で、味見はしているし、イチゴだって今までで何度も食べてきてる。だからこそ、よく味は知っている筈なのに……。
「美味しい………、すごくっ」
これまでにない程の味がした。美味しい味、幸せな味がした。
「うん、美味しいね」
好きな人と一緒に食べる。
何でここまで味が変わって感じられるのか、本当に不思議だ。
「じゃあ、次は ぼくからも――――」
「!」
ニコリと笑う狼谷さんの姿を目に焼き付けながら、御神くんはイチゴのお返しに、パイナップルを爪楊枝に刺して、狼谷さんに あーんっ。をするのだった。
するのはまだ良い。でもされるのは信じられない程照れてしまうのを、狼谷さんも実感しつつ、幸せを味わい、噛み締め続けるのだった。
そしてそして明くる日の部活休み日、IN昼休み時間。
「か~~みやっ!」
「っと。いつもいつも遠慮が無いね、猫崎。こっちのクラスにも馴染んできてるんじゃないか?」
「えっへっへ。そかな?」
違うクラスである猫崎さんが、いつも通り? にクラスにやってきた。
基本的には同じバレー部の狼谷さんに用事が有ったり、同じくマネージャーをしてる御神くんに用事もあったり、と言う理由だが、今回は少しばかり違う。
「今日、部活休みだよね? 学校の帰りに、皆でアソビにいこーっ! って話になったんだけど、狼谷もいかない?? ほら、いつものメンバー! みっちょん、ハチミツ、和泉と犬!」
「……1人だけ、動物が混ざった気がするんだが」
狼谷さんとより仲良くなってから、更にアプローチに勤しむ猫崎さん。結果として、別クラスな筈なのに、ちょっとしたグループがいつの間にか出来てしまったのだ。
無論、クラスの皆とも仲が良いから、疎外感の様なモノは無い。
「ん………」
「勿論、カレピもOKよ! こっちにもカップルいるしね~。おーいおーい、御神っち~~」
休み時間だけど、次の授業の準備を手伝ってる御神くんに猫崎さんは声をかける。
いつもなら、御神くんも 違うクラスの人が此処にいて、突然声をかけられる~なんて、驚き声を上げてしまうのだが。
「あ、猫崎さん。どうかしたの? 部活の話?」
あまりにも猫崎さんが馴染んでる様なので、そんな事は一切ない。
「違う違う。今日休みじゃんっ! 皆でアソビにいこーっ、って話。和泉や犬たちもいるよー。後は狼谷と御神っちの2人と交渉中!」
因みに、学校内でのお喋りの類は沢山してきたが、校外への遊びのお誘いは今回が初めての事。
「何をするんだ?」
狼谷さんは、何やら興味を持った様子。
外で遊ぶ~と言うのも正直まだまだ慣れない部分があるのは事実なのだが、彼氏である御神くんが一緒に来てくれると言うのなら話は別だ。まだ返事を返したわけじゃないけれど。
「一応、ボウリング予定!」
「ボウリングか……」
「御神くんは、ボウリングはした事ある?」
「うん。結構ハマってたよ。中学校の時1人で、その延々と……………」
過去の事を思い返したのか、みるみる内に御神くんは沈んでいく。
ボッチで、気を紛らわせようとボウリングをしていた時期もあったから。
回数券だって買ったし、何なら店員さんとも仲良くなったりならなかったり。
「おりょ?? 御神っち、どーした?」
事情を知らない猫崎さん。突然沈んじゃった御神くんに首を傾げる。
勿論、過去の事をここでオープンにするつもりは無いのは御神くんは勿論狼谷さんも同じ。
肩を落とした御神くんの、その重そうな肩にそっと手を添えて。
「どうする? ……今日は部活はオフだ。御神くんも、
「!」
もう1人じゃない。
解っている事で、何度も何度も救われた。今もそうだ。過去は過去。今ちゃんと前を向かなきゃいけない。
「う、うん! そうだね。ぼくもお邪魔させてもらうよ」
「やったっ! 結構人数揃ったし、個人戦や団体戦~とかも出来そうっ! にひっ、その時はバレー部VSみっちょんズ、とかも面白そうだ………」
猫崎さんは、時々見せる何か悪巧み? を考えてる顔になった。
何度か見た事があるから、よく解る。知ってる。
そして、それは狼谷さんも同じで、軽く苦笑い。
「何か悪い顔になってるよ猫崎」
「あ、あはは……」
何はともあれ、初めて皆とアソビに行くんだ。だから、思いっきり楽しもうっ、と御神くんは笑顔を見せ、その横顔を見た狼谷さんも同じく笑顔を見せるのだった。