綺麗なだけじゃない狼谷さん   作:狼谷さんカワ(・∀・)イイ!!

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ボウリングがこんなに長くなるとは予想外\( 'ω')/



キミと皆とアソビに③

 

 

 

「よっしゃ! 始めるぜ!! まずはオレからな」

「ヒューーー!」

「頑張って!」

 

 

ボウリング大会のスタート。

犬束の投球から始まる。

 

当然気合は入りまくっている様子。

勿論、狙いは1位。スコアトップだろう。

 

一応言っておくが、犬束は奢って貰いたいがために気合を入れているのではない。そもそも、バイトをしているのだから、自由に使えるか否かはさておき、所持金と言う意味では、この場で2番目にお金持ちだと言えるから。

 

ただ、犬束は勝負事が好きなだけなのだ。最高に燃える、熱くなれる事が大好きなだけなのだ。そして、それに呼応するのが猫崎。

つまるところ、2人は似た者同士だったりする。だからこそ、この場で一番声を出して、一番盛り上がっているのだろう。

 

 

それはさておき――――スタート!

 

 

「オラぁ!!」

 

 

放たれた第一投……倒したのは7ピン。

上手く中心を狙って、狙い通りの球筋だったのだが……ピンの倒れ方が上手くいかなかった。ピンに嫌われた、と言う形だろう。

 

だけど、気を取り直して2投目でしっかり残りのピンを倒してスペアを獲得。

 

 

「っだ―――――!! 初っ端ストライクはムリだったか!!」

「むむむむ、ケッコー上手いじゃん……犬」

「っしゃ! 次は和泉だ! いっちょやったれ!!」

「うん、頑張るよ!」

 

 

犬束に背を押された和泉くんは、しっかりとボールを手に取って、ケガしない様に、落とさない様に細心の注意を払いながらレーンの前に立つ。

ボウリングの球は重たい……。これがケガの切っ掛けになってしまえば、これまでとは比べ物にならない程の大きなケガに、重症になってしまう可能性が極めて高いからだ。指先とかに落ちれば骨折だってしそうだし、何かの拍子で頭にでも当たれば(どうやって???)、陥没骨折とかしかねない。

 

そんな彼だからこそ、ハラハラ……と見つめるのは御神くん。

大丈夫だ、と安心させるように傍に寄り添ってるのが狼谷さん。(とは言っても、これまでの経緯を考えたらやっぱり心配は心配)

 

そして最後の砦――――細心の注意を払う式守さん。

 

 

 

「和泉くん、頑張って!」

「力、抜いてね。頑張って」

「ふぁ、ファイトです! 和泉さんっ!」

 

 

色んな思いを背負い? 和泉くんは投球。

 

 

格好良い所を魅せたい……と淡い希望を胸に抱きながら。

 

 

「ほっ!」

 

 

1つ投げて、1ピン倒れ。

 

 

「えいっ!」

 

 

もう1つ投げて、1ピン倒れ。

結果、2ピン。

それも左右の端のピン1つずつ。

 

 

その結果を見た皆の様子は様々だ。

 

 

「「ほっ……」」

 

 

何事もなく、不幸属性何一つ発動せず、特に注意していた、注意すべき最初の行動が無事に終わった事に安堵するモノ。

 

 

「あ、あははは……」

 

 

その心配を横で肌で感じ、自分自身もそれなりに心配はしていたが、それ以上の様子な2人を見て苦笑いをしたりするモノ。

 

 

「まぁ、私もスキル的には似たり寄ったりだしな。……仲間よ」

 

 

あまり得意ではない。運動自体が得意じゃない。だから、自分よりも低そうな結果を出した和泉くんに親近感を覚えて安堵するモノ。

 

 

そして、中でも一番目立ってるのが――――。

 

「「ぎゃーーーーっはっはっはっはっは!! ヒーーーー!!」」

 

 

大笑いしているモノたち。

 

 

「逆に奇跡!!」

「予想通りとは言え、ここまで一致するもんなのっ!??」

 

 

不幸属性? が和泉くんのケガ~~には繋がらず、ボールの軌道、その描く軌跡に宿った、と思ったのだろう。だからこその大笑い。

そして、和泉くん自身も思うところはあるのだろう。大笑いされている事よりも……。

 

 

「ぅぅ……、球が勝手に曲がっちゃった………」

 

 

そう落ち込んでいた。

勝手に曲がるなんて有りえないし、それなりに練習を積めば大丈夫! と思いたいのだが、下手したら物理法則? を無視しそうな勢いの彼の不幸体質を甘く見てはいけない。

 

 

「和泉くん! ドンマイだよ! まだまだこれからもあるから! 1ゲームで終わったりしないでしょ??」

「ぅぅ……ありがとう、御神くんだけだよぉ、慰めてくれるの……」

 

 

グッ、と両手でポーズを決めつつ、和泉くんを勇気づける御神くん。

ケガ無くて良かった安堵感からか、いつもより前のめりな気がする。

 

そして和泉くんは、皆大笑いしてる所で、一番先に慰めてくれた御神くんに、ヨヨヨ~~と寄り掛かった。

それを見て、ハッとするのは式守さんだ。

 

 

「そ、そうですよ! これからです! 大丈夫ですから頑張りましょう!!」

 

 

グイっ、と和泉くんの腕を抱き寄せる。

そして、反対側では。

 

 

「そうだな。見たところフォームにも改善の余地は沢山ありそうだ、と素人目ながら感じたよ。和泉くんなら直ぐに上達するさ」

 

 

狼谷さんが、御神くんの傍に居て、式守さん程あからさまではないが、そっと腕を抱き寄せた。

 

 

「次、御神くんだよ」

「! はい。頑張りますね」

 

 

見る人が見れば(狼谷さんを知ってる人達)、狼谷さんも解りやすい性格をしていると思う。

でも、式守さん程ではない。木を隠すならば森、と言った様に目立つ式守さんの傍に居れば、そこまで目立ってない。

 

御神くんの番が回ってきたよ、と言い訳っぽく言っていたが、彼女も彼女で少なからず式守さんと似た心境だったりするのだ。

男同士~とは言っても、和泉くんや犬束は要注意だと、以前言われた事があるから。

 

 

「! 沢山応援してくれたしね! ぼくも応援するよ! 頑張って御神くんっ! ケガしないでね~~!!」

「ん! 頑張るっ!」

 

 

和泉くんからの、《ケガしないで》と言う発言には少々重たいものを感じるが、激励はしっかりと受け取っておかなければならないだろう。

 

だからこそ、しっかりと自分のボールを……選んだボールをしっかり手に持って前をしっかりと見据えてレーンに立つ。

 

 

「むむむむ。優勝候補筆頭がベールを脱ぐ、ってヤツだよ、犬!」

「……ぁぁ。御神のヤツは上手ぇ、って話だからな。一応スペアは獲ったが、全然余裕は無ぇよ……」

 

 

今の今まで大笑いしていた猫崎と犬束。

御神くんの番が回ってくるや否や、一挙一動を見逃すまい、とまるで何かの公式戦での偵察部隊? かの様にしっかりと見据えていた。

 

 

「御神は上手いんだろ?」

「うん。凄く上手だ」

「……成る程。狼谷が言い切るって事は 間違いないって事か」

 

 

八満は、狼谷さんに裏を取る。

ボウリング場に来てから、子供の様に嬉々としてる御神くんを見て、色々と微笑ましさ、見守る優しさ的なポジションを楽しんでる節があった八満だったのだが、今は不敵なオーラと言うか、強者なオーラと言うか……、何処となく式守さんに通じるオーラを感じてならない。

だからこそ、ぶるっ! と身震いしてしまうのだ。

 

 

「ん―――ヨシっ!」

 

 

御神くんは、普段の立ち振る舞い、いつも微笑んでる彼とはまるで別人の様に真剣な顔つきになって、レーンの奥にあるピンを見据えていた。

 

構えて、静止して、動き出して、投球する。

一連の動作が鮮やか。思わず息を飲む……とはこのことを言うのだろう、と思える程見事な投球姿。

 

そして、最初から結果が解っていたかの様だった。

結果は勿論、全て倒してストライク。

 

 

「うおおお!! やりやがったぁぁぁ!!」

「ぎにゃーーー!! いきなりかましよったぁぁぁ!!」

 

 

うがぁ、と頭を抱えて絶叫するのは猫崎と犬束。

 

 

「おおおぉ……、すごい!」

「ああ。お見事」

 

 

式守さんは思わずスタンディングオベーション。立ち上がって拍手。

狼谷さんは、何処か当然……と言った様子で、誇らしそうに胸を張る。

 

 

「……これが強者の業か。最下位争いの相手は和泉で決定だな」

「うぐっっ、ぼ、ぼくも頑張るよ!! ……でも、御神くんすっごいや!! ぼく、これ倒れる! 全部倒れる! ってなんだか最初っから解ってた気がするよ!」

 

 

八満と和泉くんは、ただただ圧巻だった。

明らかに格が違うと感じたから。……と言うか、自分達以外の4人は皆格上だ。

 

 

ピンを倒して、振り返って はち切れんばかりの笑顔でガッツポーズをする御神くんを見て。

 

 

「……ほんっと楽しそう」

 

 

猫崎は、悔しそうにしてたのに、微笑ましそうに笑った。

そして、戻ってくる御神くんに合わせて両手を構える。

 

 

「イエーーイ!」

「い、いえ~い!」

 

 

ぎこちなさそうな様子だが、御神くんもそのハイタッチに合わせた。

 

 

「負けねーぞ! 御神!!」

「うんっ! ぼくも、もっともっと頑張る!」

 

 

続いて犬束ともハイタッチ。

そして……。

 

 

「次、狼谷さんの番だね」

 

 

狼谷さんの前に立って、同じく笑顔を向けながら。

 

 

「頑張ってね!」

 

 

大きく口を開けて、笑顔で向けられるエールの声と表情。

御神くんに背を押してもらえるこの心地良さと心強さは、何にも比肩するモノがない、と断言できるといえる。

 

 

「うん。頑張る」

 

 

狼谷さんは笑顔で軽く手を合わせた。

 

そして、式守さんの方を見る。

 

 

「直前まで考えたんだが……、やっぱり私には無理な様だったよ、式守さん」

「ッ………で、ですね」

「??? 何の話?」

 

 

狼谷さんと式守さんの話の意味が解らず首を傾げる御神くん。

 

 

「や! な、何でもないですから! なんでもですっ!!」

「あ、う、うん。了解です!?」

 

 

慌てて式守さんが否定をするからそれ以上追及する事はせずに、御神くんは空気を読んだ。聞かれたくない事の1つや2つ、無い訳がないから。

 

 

「御神くんっ! ぼくにボウリング教えてっ!!」

「あははは。うん、ぼくで良ければいつでも大丈夫だよ! 取り合えず、このゲームがんばろうっ」

 

 

少しでもついていきたい。

幾らアソビの範疇、ゲームとはいっても置いてけぼりは寂しいから、と和泉くんは御神くんに泣きついた。

勿論、断る理由は無いので2つ返事でOKを出す。

 

そして、他人のプレイを見て学ぶ事も多くあるので、直ぐに狼谷さんに注目した。

彼女も凄く上手だから。

 

 

 

「狼谷さん! がんばって!」

「がんばって!」

 

 

和泉くん、そして御神くんに応援されて 狼谷さんは少しだけ振り返ると微笑みで返事を返した。その姿があまりにも堂に入ってたので、皆が格好良い――――と思ったのはムリもない。

 

 

 

「(私には、ムリだ。………でも)」

 

 

 

そして狼谷さんは、ボウリングのボールを抱えながら考える。

 

 

『女の《下手》は《カワイイ》に変換されるもの』

 

 

幾度もその言葉が頭を過った。

 

よくよく考えてみれば、御神くんからカワイイ、と言われた事は無い気がする。

好きや綺麗を主に言ってくれて……、いや それだけでも十分過ぎる程嬉しい事なのだが、言われたいか? と聞かれたらやっぱりカワイイと言われたい。

 

八満や猫崎の言う通りだとすれば、不器用な女の子は可愛く見えると言う事なのだろう。

 

確かに言われてみれば、以前何本か視聴した映画でも、そういった描写は多々あった筈だ。狼谷さんは色々と失念していた。

でも、それも仕方がない事でもある。まさか、自分が恋に落ち、想い人と結ばれる展開になるなんて、少し前の自分なら考えもしなかったから。

そして、結ばれた時はただただ毎日が幸せだったから。

 

 

今のままでも十分幸せで、満ち足りてると言って良い……が、少々欲張りな面も持ち合わせている様だ。

 

 

 

「(――――でも、御神くんの前では、嘘をつくのはもっとダメだ。私に向けてくれてるあの笑顔だけでも、私は幸せモノなんだ)」

 

 

 

狼谷さんは目を見開いた。

しっかりと軌道を目に焼き付けている。先ほど、御神くんが決めて見せた完璧なストライクショットを目に焼き付けて、同じ軌道とボールの回転で狙う。

 

 

放たれたボールは見事、10ピンともなぎ倒し、ストライクを獲得。

 

 

 

「んげげ!!」

「狼谷まで来た!?? ……犬。男子チームVS女子チームの総力戦にしない??」

「なんでだよ! そもそも人数ちげーじゃん!!」

「そこはほら……ハンデ?」

「って、ハンデの必要全然ねーだろっ!?? 狼谷あっさり初球、開幕ストライクだぞ!?」

 

 

勝負で燃えていた2人を他所に……そこまでテンション上がってない組が頭1つ抜き出してしまった展開に焦りを覚える猫崎と犬束。

 

 

「ナイスストライクっ! 狼谷さんっ!!」

「ああ。キミに続かないと、って思ってね? やっぱり負けたく無いからさ」

「あははは。そうだったね。狼谷さんも負けず嫌いだった。ぼくと一緒だ」

 

 

ふふっ、と不敵に笑う狼谷さん。

御神くんも、以前に2人でボウリングをした時の事を思い出しながら笑っていた。

強者の笑みにしか見えないんだけど……。

 

 

 

「じゃあ、次は式守さんだね。……頑張って」

「は、はい………」

 

 

今の今まで、考えていた式守さん。

とうとう、自分の番にまで回ってきた。まだどうするか決めかねていると言うのに。

 

 

果たして、彼女はどういったプレイを魅せるのだろう?

猫崎に最初言われた通り、カワイイ彼女、を見て貰いたい、言ってもらいたいために、八満の言う秘伝を実演するのだろうか。

 

式守さんの顔を見ればわかる。今物凄く悩んでいる、と言う事に。

 

 

 

「………私には無理だ。………でも、式守さんも……」

 

 

託す様に言ったのは事実だが、彼女がわざと手を抜く~なんて事有りえるだろうか?

そんなに長い関係性じゃないし、知り合って間もない間柄だ。どんな事にも一生懸命だった。

 

少なくとも、狼谷さんの目には、そんな彼女こそがとても魅力的に想えたのは事実。

 

 

 

 

「(……何でだろう、ハラハラしてきた)」

 

 

何を選ぶのか、どうするのかは式守さん次第、と言うのに彼女の心境、その表情を見て狼谷さんもまるで伝染しちゃった様に鼓動が早くなってきた。

 

 

「?? 狼谷さん、どうしたの?」

 

 

そんな狼谷さんの様子が何処かおかしい、と思ったのか、御神くんは狼谷さんに耳打ちをする。

すると、狼谷さんは、すっと手を出した。

 

 

「いや、何でもないよ」

 

 

そう言うと同時に、御神くんの服の裾をきゅっ、と握りしめた。

多分、無意識にだ。

 

いつもとは違う狼谷さんの行動に少し驚きながらも、その仕草や様子、そして表情が何処か愛らしくも思えて……。

 

 

 

「……何だか、今日の狼谷さん、……カワイイ」

「!!!」

 

 

 

同じく御神くんも無意識に言っていた。

そしてその後は、2人そろってちょっとしたパニックになったのは言うまでも無い事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに式守さんはと言うと。

 

 

 

「式守さん! がんばって!!」

 

 

 

 

最後の最後まで悩んでいたのだが、和泉くんの応援で心を決めた。

狼谷さんに託されたつもりでもあったが、申し訳ない、と頭の中で念じる。

 

 

自分の欲に負けて嘘をつきたくない。

純粋に応援をしてくれてる和泉くんの前で、嘘をつきたくない。

 

 

式守さんが選んだ手――――それは全身全霊を尽くす、と言う事。

 

 

此処には、御神くん、狼谷さん、犬束、猫崎と強プレイヤーが沢山いる。

そして当然ながら式守さんも負けず嫌い。

 

 

 

心を決めて――――全力投球をするのだった。

 

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